Surrounded By Enemiesが語る、楽曲に込めた等身大な葛藤
Rolling Stone Japan / 2021年12月21日 19時0分
2018年に結成され、岩手県盛岡市を中心に活躍するSurrounded By Enemiesが、2ndフルアルバム『NewtroGrade』を12月15日に全国リリースした。
邦楽ラウドロックの系譜を受け継ぎ、完成度の高い9曲を揃えた本作は、来年で4年目を迎える彼らにとって大きな転機となりえよう1枚に仕上がった。今回は京都からのライブを終えて帰路にいた彼らメンバーのうち、ボーカルのYUYAとギターのFUJiTORにインタビューを試みた。メンバーや音楽との出会いから会話は始まり、この2年近いコロナ禍を通して抱えていた葛藤、そこから本作の制作について語る中で、地元への愛情とコロナ禍でもへこむことのない強さが浮かび上がった「単発でも僕らに声をかけてくれるところがあればどこでもやりにいきたい」と語る彼らのマインドは、恐ろしく貪欲に見えた。
関連記事:OWlが語る野望「メロディックパンクを楽しみながら世の中に広めたい」
―メンバーの皆さんはいまおいくつでしょうか?
YUYA:26歳ですね。自分と同い年なのがkoccy(ドラムス)で、ベースのAbeKen(ベース/コーラス)が24歳になります。
FUJiTOR:僕は28歳ですね。一番最年長にはなります。
―結成されたきっかけはどういったところからでしたか?
FUJiTOR:僕とkoccyが以前のバンドで一緒にやっていたんです。そのバンドが解散したタイミングでkoccyと2人で「もう一度バンドを組もう」という話をして、「じゃあボーカルは誰がいいだろう?」という話のなかでYUYAの名前があがっていて、そこでバンド結成のオファーをした感じですね。
―当時から現在と同じような音楽性で活動されていましたか?
YUYA:音楽性の違いは結構大きかったですね。当時はキーボードとボーカルを任されていて、かなりポップス寄りなバンドをやらせてもらっていました。
FUJiTOR:僕はラウドロックとギターロックをミックスしたようなバンドをやらせてもらっていて、いまのバンドはその延長線上にあるみたいな所はありますね。
―メンバー4人は皆さん盛岡に在住なんでしょうか?
FUJiTOR:koccyは盛岡市の隣にある町で生まれたみたいですけど、盛岡に住んでいるようなものですし、盛岡中心でがんばってやらせてもらっています。
YUYA:自分は大学のころからですね。AbeKenが僕の大学の後輩で、彼も大学の時にバンドを始めたみたいです。
FUJiTOR:逆に僕とkoccyは高校からバンドを始めていました。それももう10年前くらいですね。
―音楽と出会った最初のきっかけはなんでしょうか?
YUYA:自分はレミオロメンの「粉雪」を買ったのが最初なんですけど、中学の友人にONE OK ROCKを薦められて、「ロックバンドってこういうカッコいいものなんだ」と教えられたんです。ちょうど「恋ノアイボウ心ノクピド」という曲をテレビタイアップで見て、「これからこの人たちもドンドン凄くなるんだろうなぁ」なんて思っていたくらいでしたね。
FUJiTOR:僕はBUMP OF CHICKENですね。ゲームの主題歌だった「カルマ」にハマって、ギターを始めたんです。ギターをもったのは中3の頃でしたね。ネットに弾いてみた動画もたくさんあったので、その影響もありました。高校に入ったあとはガチガチなメタラーになりまして……(笑)。Metallica、SLAYER、ANTHRAX、MEGADETHなどメタル四天王だったりメロデスと言われるようなバンドも聴いて、かなり練習しましたね。
―自分に影響を与えてくれたロックバンドをあげるとするならどのバンドになるでしょうか? また人生を変えた1曲を挙げるとすると?
YUYA:SiMが一番最初にあがりますね。ONE OK ROCKやNOISEMAKERも憧れのバンドといえますし、影響はうけてますね。ピンボーカルに憧れがあって、ライブでの振る舞いや楽曲でどう表現するか?というのを含めてとても注目して見ています。人生を変えてくれた1曲というと、SiMの「Killing Me」になりますね。アルバム含めてアホみたいに何度も聴きました。ジャンル自体も馴染みが無くて「なんじゃこれ……」と最初はなりましたけど、聴いていくうちにドンドン好きになって、自分の音楽やピンボーカルへの憧れが固まっていくきっかけになったバンドかなと思います。
FUJiTOR:自分は先ほども名前が挙げましたけどBUMP OF CHICKENとメタリカ、あとはIn Flamesもあげたいなと思います。ここ最近だとSaosinやTaking Back Sundayなど00年代のエモやスクリーモのバンドをよく聴いてますね。人生を変えた1曲は色々考えちゃいますけど、メタリカの「Master of Puppets」ですね。この曲を聴いてギターを本気で練習しようと思ったし、高校の時にメタル好きな友達とバンドを組もう!となったきっかけにもなりました。この曲がなければ、いまの自分はいないと思いますね。
―お2人は高校も大学も完全に別々ですよね?
YUYA:そうですね。ライブハウスに出てバンドをやっていくなかで出会いました。FUJiTORさんのバンドがライブ企画をするためにデモ募集していて、自分らのバンドがそこに音源を送ったのがきっかけですね。その時のFUJiTORさんの印象は「ギターが弾けるちょっとコワイお兄さん」というのが第一印象でした。なにかおかしい態度を見せたら怒られるんじゃないか?とビクビクしていました(笑)。
FUJiTOR:当時彼がやっていたバンドは、メロディが良くて、YUYAのボーカルも素晴らしかった。素直に「これはやられたな」と思ったんですよ。一緒に企画にやるのもオッケーということで共演させてもらって、そのときに彼と会ったときは「親しみやすくて物腰の柔らかいヤツだな」と思ったのが正直なところですね。その印象がSurrounded By Enemiesを組むときに影響しているのは間違いないです(笑)。
―2020年から現在にかけてコロナ禍がさまざまな影響を与えてきました。どのような気持ちでバンド活動に臨まれていましたか?
YUYA:コロナ禍のなかでやはりライブキャンセルが立て続いて、「どうしようか」と考える日々が長く続きましたね。ライブができないしファンの皆さんに会えないという気持ちもあって、そこはすごく葛藤しました。ただ、こうしてアルバムを1枚完成させることができたし、良い期間にもなれたとプラスに考えています。最近では僕らも少しずつライブができるようになってきていて、ここから少しずつ以前のような状況に戻って欲しいという気持ちでやっています。やっぱりライブハウスがなければ、自分たちのようなバンドが表現できる場所がないので、単発でも僕らに声をかけてくれるところがあればどこでもやりにいきたい!という気持ちです。
FUJiTOR:コロナ禍の間はライブはできなかったですけど、活動が止まっていたわけではなかったんですよね。アルバムや音源の制作にかなり力を入れていて、それはそれで良かったんじゃないかとYUYAと同じようにプラスには捉えてます。ライブをしないことが影響してか、曲作るにあたって「ライブ演奏を想定した曲作り」をしなくなったんですよね。ライブハウスで聴くことを前提にした曲を作ってしまうと、そこを理解してくれるリスナーがいまの状況だとグッと減っているわけで、どうしようかと頭を悩ませることにも繋がりました。
―2018年に結成して活動を開始して以降、毎年EPやアルバムをリリースしていて、そもそもペースが速いですよね。ライブハウスを回って活動されているからこそ、新曲をたくさん制作して回るというのは大きな意味を持ちそうですし、FUJiTORさんの悩みはかなりダイレクトに刺さりますよね。初期のころからすると作風が少しずつ変化してきたのは、意識されたりとかしますか?
YUYA:ぼくは主に作詞を担当していますけど、意識して変えよう!というのはないですね。あくまでその時の自分の心情について書いていることが多いんです。一番最初の音源は大学生の時の自分について書いていたりしますが、今作だとコロナ禍のなかで生きている自分、社会人として生きている自分について書いています。あくまで等身大の自分、ありのままの自分を歌詞に込めています。
FUJiTOR:この作品はこういう作風にしようと狙って作ってきたことはこれまでないです。その場でインスピレーションで制作していくことがやはり多いので。抒情的な曲、エモい曲が好きなので、曲の中に必ずいれようとは思ってます。
―バンドの曲作りは誰から発案していくんでしょうか?
FUJiTOR:曲作りの中心は自分になりますね。ギター・ベース・ドラムの音をほぼほぼ作ってメンバーに共有して、YUYAにメロディをつけてもらうんです。そのあとスタジオに集まったときに4人で音を合わせて、編曲やアレンジをそこからしていく流れですね。メンバーなりの味やアレンジをフレーズにいれることも含め、曲作りに関しては結成してからほとんどこのスタイルで続けてきました。
―先ほど「コロナ禍のなかでライブ演奏を想定した曲作りをしなくなった」と話していましたが、実はぼくも同じことを感じたんです。今回発表する『NewtroGrade』はSiM、Survive Said The Prophet、NOISEMAKER、Fear, and Loathing in Las Vegasといった日本の方がラウドロックの系譜にずばりとハマるサウンドであり、音の詰め込み方、重ね方、響かせ方がとてもよかった。反面、4人バンドでここまで詰めていいものかなと。どのように考えながら制作されていったんでしょうか?
FUJiTOR:ギターが足りないとかそういうのは一度置いておいて、曲の完成度が高くなれば何をしてもいいと思っていましたね。初期の音源は「バンドらしい音」みたいなのを意識していましたけど、いろんなバンドの作品を聴いていくうえで「そこまで考えなくてもいいんだ」と思えて、思いついた音はとにかくトライしてみて、取捨選択して曲の中に加えてみることにしました。
―これまでの作品でも使用していましたが、今作はオートチューンを使ったボーカルパートが多いように思います。少しツッコんだ質問になりますが、オートチューンを使うことにためらいはありますか?
YUYA:ボーカルのメロディや歌詞を考えているのは僕なので、オートチューンを使う使わないの判断を最初に僕が出して、そのあと「ここは必要」「ここはいらない」とメンバーにも判断してもらうという感じになってます。オートチューンを使うことには正直ためらいはないですね。加工がかかった声、ダブリングして聞こえる部分とか、そちらのほうが僕は好みなので、その質感が今作には反映されたのかなと思います。
―5曲目がセミや鈴虫の鳴き声が聴こえてくるインスト曲で、そこから6曲目の「September」に繋がっていきますよね。何か意図はあるんでしょうか?
FUJiTOR:そのインスト曲を分け目に、今作のキーである「古さと新しさ」みたいな部分が関わっているんです。序盤4曲は割と昔のラウドロックの楽曲を揃えていて、インストを挟んで後半4曲では近未来的な雰囲気に近いシンセなどを使ったラウドロックになっているんです。
―なるほどです。あと今作を聴いて強く感じたのは、変に強がったり気取ることなく、赤裸々で真摯なメッセージを全面に出ているという点です。英語と日本語で歌詞を書き分けている部分も影響はしているかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
YUYA:先ほども話しましたけど、あくまで等身大の自分だったり、ありのままの自分を歌詞に込めています。例えば1曲目の「Peter Pan Syndrome」では「地獄みたいな1年と4か月」という歌詞がありますけど、ここはコロナ禍について歌っています。4曲目で「Under the Sky」で「RESTART」という言葉を使っていますが、この曲はNHK盛岡放送局「いわチャン」のテーマソングに使われた曲です。東北の震災から10年経って、もう一度力強く歩き出したいという気持ちをこめて使ってますね。実際に自分が出会った出来事とかをアイデアにしている部分はあります。
―大学を卒業されてからの経験なども、ある意味ではフィードバックして歌詞を書かれている部分もあったり?
YUYA:うーん……正直に言えば、社会人として働いているときの自分とバンドマンとして音楽をやっている自分、心の中に自分が2人いる状態になって、どうしても比較してしまうんですよね。「自分の居場所はどこなんだろう? やりたいことはなんだろう?」と葛藤する時期が一時期ありました。コロナ禍で活動がうまく進まない焦りみたいな気持ちもありましたし、今回の楽曲はそういう葛藤の気持ちがかなり入っています。ネガティブな話になっちゃいましたけど、アルバムを通してポジティブなメッセージを届けられていたら嬉しいですね。
―今後の展望や目標などがあればお願いいたします。
YUYA:最近AbeKenに誘ってもらってNOISEMAKERのライブを観たんです。コロナ禍のなかでなかなかライブを観れていなかったんですけど、ライブ一本分が一つの作品のように感じられて、「僕らにとっての一つのゴールはこういうライブができることだな」と感じさせてくれたんです。NOISEMAKERは北海道の札幌から地道にがんばってきたバンドで、自分たちと重なる部分が多いなとも思いますし、僕らはまだまだ若いバンドですが、いつかああいうライブができるようにならないといけないなと、強く思いました。それは一つ目標ですね。
FUJiTOR:僕はYUYAみたいに憧れの存在みたいになりたいというのはあまりないですね……「いしがきMUSIC FESTIVAL」のメインステージに立つとか?
YUYA:確かに。地元バンドとしてメインステージ「ISHIGAKI STAGE」のオープニングアクトとして立つことができるんですけど、自分たちはまだ立ったことがないんです。一番近くて達成したい目標かもしれないですね。フェス自体で強烈な記憶があるわけではないですけど、大学の時に八食サマーフリーライブでSiMと出会ってもの凄く食らったことがあって、そういう意味でもやはり出たいなというのはありますね。
FUJiTOR:「いしがきMUSIC FESTIVAL」は中学の時に初めて観て、まずまさか自分が出れるようになれるとは思っていなかったですし(笑)。これまでにサブステージのほうに2度出演させてもらいましたけど、こうしてバンドをやっていくなら、地元のフェスのメインステージには出たいですね。
<リリース情報>
Surrounded By Enemies
2nd フルアルバム『NewtroGrade』 発売日:2021年12月15日(水)
価格:2200円(税込)
品番:EGGS-068
レーベル:Eggs
=収録曲=
1. Peter Pan Syndrome
2. in sight
3. ONE ROOM
4. Under the Sky
5. The Ad-v-Erse
6. September
7. Out of Control
8. UPSET
9. FUTURE
Surrounded By Enemies 公式HP:https://artist.aremond.net/sbe/
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
Billyrrom、「風」の時代に台風の目となる6人が語る自信と挑戦
Rolling Stone Japan / 2024年11月22日 18時30分
-
WONKが語る、東京起点のビート・ミュージック・クロニクル、久保田利伸との共鳴
Rolling Stone Japan / 2024年11月13日 18時0分
-
新東京が語る、幾何学的なサウンド、メタ的な視点をテーマにしたコンセプトEP
Rolling Stone Japan / 2024年11月12日 18時0分
-
HOMEが語る、今を生きるバンドが考える「モダンポップス」
Rolling Stone Japan / 2024年11月8日 19時0分
-
ハンブレッダーズ日本武道館公演、声なき人の声を代弁したロックミュージック
Rolling Stone Japan / 2024年10月30日 18時0分
ランキング
-
1私立恵比寿中学・星名美怜、突然の「契約終了」 残るメンバーは謝罪...ファン衝撃「本当にちょっと待って」
J-CASTニュース / 2024年11月26日 12時55分
-
2「また干されるよ」ヒロミが「もう辞めるか?」のボヤキ、視聴者が忘れないヤンチャ時代
週刊女性PRIME / 2024年11月26日 11時0分
-
3辻希美&杉浦太陽の長女、芸能事務所入り たった2時間でフォロワー8・5万人!両親も宣伝「おめでとう」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 15時11分
-
4山下智久、国際エミー賞で快挙!主演海外ドラマ「神の雫」が連続ドラマ部門受賞「夢が一つ叶いました」
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年11月26日 15時27分
-
5テレ朝 松本人志の裁判終結で吉本興業幹部から“報告とお詫び”も…「今後のことはまだ決まってないと」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 14時28分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください