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性犯罪者の元恋人が公判中に「法廷画家」を逆スケッチ、当事者が語る

Rolling Stone Japan / 2021年12月22日 6時45分

法廷で法廷画家ジェーン・ローゼンバーグ氏をスケッチし始めたギレーヌ・マックスウェル被告(Photo by Jane Rosenberg/REUTERS/Alamy)

未成年の少女らを性的虐待したとして起訴され、拘置所で死亡した米富豪のジェフリー・エプスタイン元被告。エプスタインの元恋人で性的虐待の容疑で起訴されているギレーヌ・マックスウェルの裁判が継続中だ。今回、その裁判をスケッチし続ける法廷画家、ジェーン・ローゼンバーグ氏に話を聞くことができた。

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ローゼンバーグ氏は話題の裁判で被告人を描き、人間の哀れな境遇を深く掘り下げることでキャリアを重ねてきた。ハーヴェイ・ワインスタイン裁判やエル・チャポ裁判、R・ケリーの公判にも彼女はいた。スティーヴ・バノン氏の罪状認否や、ウディ・アレンの保釈審理、ジョン・ゴティ裁判にもいた(公判中ゴティは二重あごを指さして、あごを小さく描くようローゼンバーグに指示した)。コスビー裁判やボストンマラソン爆弾テロ裁判も取材した(もっともこの裁判では傍聴席が満席だったため、ジョハル・ツァルナエル被告の姿がほとんど見えなかった、と本人は嘆いている)。

そして今、ローゼンバーグ氏が担当しているのがマックスウェル裁判だ。元恋人のジェフリー・エプスタインによる未成年者への性的人身売買を幇助した罪に問われている社交界の名士は、2019年に獄中死したエプスタインの性的願望をかなえるべく少女たちを寄り集めたとして訴えられている。ローゼンバーグ氏の仕事は可能な限り中立の立場を保ちながら、複数の媒体に代わって裁判を取材することだ。「毎回、自分なりの意見はあります。でも追い求めている瞬間を、見たままにとらえようとしています」と本人は言う。「(裁判に対する)私の意見は反映されていないと思います」

だがごく最近、ローゼンバーグ氏自身も話題の人となった。彼女が描いたスケッチのひとつ、マックスウェル被告が公判中にローゼンバーグ氏をスケッチしている様子を描いたものがTwitterで拡散されたのだ。インターネットでは大勢がこのスケッチを面白がり、マックスウェル被告による「力の逆転」だと解釈した。だがローゼンバーグ氏いわく、公判中に被告が彼女をスケッチするのはこれが初めてではない。キャリアの初期にはエディ・マーフィや(「彼はポストイットにスケッチしたものを私にくれました。頭を振って、私をからかっていました」)最近ではルディ・ジュリアーニ氏の元側近レヴ・パルナス氏も公判中に彼女をスケッチした(「あれはちょっと落ち着きませんでした」)。

だからマックスウェル被告が自分をスケッチしていることに気づいた時も「私にとってはネタのひとつで、全く困ることはありませんでした」とローゼンバーグ氏。「あら、彼女が私をスケッチしてるわ、私も容赦しないわよ、と思いました」。彼女は必ずしもマックスウェル被告による力の逆転だとは考えていないが――「彼女の胸の内はわかりません」――これまでスケッチしてきた被告人と比べると、マックスウェル被告は異常なほど弁護団に対して感情を示している、と指摘する。またマックスウェル被告は、判事の許可を得て公判中に兄弟たちと一瞬言葉を交わした。こんなことは今までほとんど見たことがない、とローゼンバーグ氏は言う。

「彼女は法廷で、弁護団としょっちゅうハグやキスをしています。めったにみない光景です……愛情に飢えているのでしょうね。ずっと独房に隔離されているからでしょうか」 。マックスウェル被告が「大半の被告と比べて、動きが多い」ことも付け加えた。「みな椅子にじっと座ってほとんど何もしないので、私には助かるんですけど」


法廷画家を志した理由

マックスウェル被告のほうからローゼンバーグ氏と接触を試みたこともあった。ある時には体の向きを変え、マスクを下ろして「長い1日よね?」と言ってきた。ローゼンバーグ氏も、そうですね、と答えた。「それ以来、ある種の関係を築いています。失いたくないですね」。本人によれば、これがスケッチ作成に大いに役立っているという。「彼女が私に頷く。私も眉毛をあげて、頷き返す。私にとっては最高です。このままずっと続いてほしいですね。私のためにポーズを取ってくれるんですから。最高です」

ローゼンバーグ氏が法廷画家を本職としたのは1970年後期のことだった。ファインアート学校を卒業したばかりだったニューヨークシティの「しがないアーティスト」は、イラストレーター協会で法廷画家の講義を見て、これで食べていこうと考えた。最初はNBCに雇われ、クレイグ・クリミンス裁判でスケッチを描いた。1980年、公演の幕間中にメトロポリタン・オペラのバイオリン奏者ヘレン・ヘインズさんを殺害したいわゆる「メット殺人鬼」だ。それ以来、彼女は刑事司法制度とマスコミ報道の進化を目の当たりにしてきた。1990年代に裁判のTV中継が導入された時には、失業の危機にも瀕した。

「マスコミの報道には、(取り上げる裁判について)様々な傾向があるようです」と彼女は言う。「今はほとんどが#MeToo運動や性的暴行です。バーニー・マドフ絡みの金融裁判が流行った時もありました。9/11以降はISISやテロ関係の裁判が多かった時期で、次から次へとテロリストの裁判が続きました。今はもうあまり報じられていないようですが」 9/11以降は法廷に足を踏み入れることも少々ためらったと本人も認めているが、たいていは法廷内の方が安心できると言う――地球上でもっとも危険な犯罪者とわずか数フィートしか離れていない状況だとしても。

パンデミック中はZoomで被告人をスケッチしなくてはならなかった。今は法廷に戻ったものの、やはり新型コロナウイルスの規制で多少の不便はある。マスクに関していえば、「顔の半分しか見えません。顔全体が見える時と比べると面白みに欠けます。目元に工夫するしかありません」と彼女は言う。「時々(ギレーヌは)マスクを鼻の下に下げたままでいることもあります。よくずり落ちますからね。でも大事なのは、身体の動きや表情をとらえることです」

中立の立場を保たなくてはならないものの、時には法廷で示される凄惨さにローゼンバーグ氏の決意が揺らぐこともある。例えばスーザン・スミス被告が2人の子供を車に閉じ込め、車が川に横転して子供たちが溺れ死ぬをの眺めていた事件の裁判は、ローゼンバーグ氏にとっても辛いものだった。「被告が現場から立ち去る間、子供たちは『ママ、ママ』と叫んでいたそうです。私の子供も同じぐらいの年齢でした」と彼女は当時を振り返る。「あの時泣いたのを覚えています。とてもおぞましかった」。だがたいていの場合、感情が彼女の作品に影響することはない。短時間で締め切りまでに仕上げなくてはならないからだ。「涙がこぼれ落ちると、パステル画は台無しです」と彼女は言う。「私が法廷にいる目的はただ絵を描くこと。裁きを下すためではありません」

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from Rolling Stone US

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