矢沢永吉、ロックシンガーとして不屈の闘志を見せたツアーファイナル
Rolling Stone Japan / 2021年12月28日 11時45分
矢沢永吉が2021年12月25日(土)、約2年ぶりとなる全国ツアー「Im back!! ~ROCKは止まらない~」のツアーファイナルとなる横浜アリーナ公演を行い、2021年を締めくくった。
10月5日(火)、石川県金沢歌劇座を皮切りにツアーをスタートさせ、この日まで全国にロックショーを届けてきた矢沢。2017年のツアー以来4年ぶりとなる日本武道館では4公演を行い、最終日で146回目を記録。自身が持つ単独アーティストとしての武道館最多公演数を更新した。そんな武道館公演を経てのツアーファイナルだけに、会場には開演前から白い上下のスーツとハットでキメたファンが集まり期待に胸躍らせている様子だった。
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会場に入ると、ステージセットのスクリーン上、”WELCOME ROCKN ROLL SHOW”とギラギラな電飾が観客を迎えていた。時節柄、「永ちゃんコール」も「タオル投げ」も禁止となっているのは残念だが、開演時間が近くなると、客席からは手拍子が自然発生。やがて大きな1つの大きな音になり永ちゃんコールに代わってステージに向けられた。
17時を過ぎた頃、アナウンスととともに観客は総立ちに。画面に2017年からのライブ映像が映し出されて、時計の針が進んでいく。ステージに登場したダンサーたちの動きと共に、時計の針が20から21へと行きそうでいかない、コロナ禍でのもどかしさが表現されていた。ようやく針が21を指すと、炎と共に「Im back!!」の文字が画面に映し出されて、サングラスをかけた矢沢がバンドメンバーと共に大拍手に迎えられてゆっくりとステージへ上がった。オープニングを飾ったのは、「ラスト・シーン」。力強いサウンドに乗せて情感を込めて歌う、まさに矢沢永吉ならではの大人のロッカバラードだ。観客はドラムのビートに合わせて手拍子で一体となっている。客席からのエネルギーがステージにも勝るとも劣らない迫力で圧倒された。エモーショナルなギターのメインフレーズがエンディングへと向かうと、「長い黒髪」ではハンドマイクでステージの左右を歩きながら歌い、身を乗り出してファンの近くで歌う姿が印象的だった。
「みなさんようこそいらっしゃい!とうとう来ちゃったよ、31回目のファイナルの夜が!今から2時間半、楽しんでください!」
そんなMC第一声から続いた「背中ごしのI LOVE YOU」は、オリジナルとは違うどっしりとしたリズムのライブアレンジとなっていた。”何も見えない 明日はどっちだ”との歌い出し、”この先が荒野でも 幸せにするぜ”と歌うサビは待ちわびたファンには涙もののフレーズだっただろう。アコースティック・ギターを持つと、キャロルのナンバー「最後の恋人」をリラックスした歌と演奏で聴かせた。続いてもキャロルの「やりきれない気持ち」が披露されたが、効果的にエレキギターのオブリガードが入るハードでブルージーなアレンジで懐かしい曲に新しい魂を吹き込んでいた。続いて70年代から一気に時代は飛んで、2019年にリリースした最新アルバム『いつか、その日が来る日まで…』からのバラード「愛しているなら」が歌われた。MCでは今日がツアーで31本目のライブになることに触れ、「若いときは年間100回は当たり前。でも今はあのときにないものが出てきている。生のステージが僕は大好きです。来年、デビューして50周年を迎えることになります。本当にありがとう!」とファンへの感謝を示した。
画面に映し出された列車の汽笛から、「恋の列車はリバプール発」が始まり、一気に会場が華やいだムードに。ステージのせり出しで周辺の客席のファンに囲まれて、早くも”ロックンロールに感謝しようぜ!”と決めフレーズが飛び出した。クリスマスのライブで聴くことができる特別な曲「Last Christmas Eve」の歌い出しでは、客席から盛大な拍手が沸き起こった。ひと際丁寧な歌い方は、矢沢自身にとっても特別な曲であることを伺わせる。間奏と終盤では、横浜アリーナの高い天井に吊るされたミラーボールが回り、会場中がキラキラと輝く演出も。ロマンティックなムードは続く3連符のバラード「DIAMOND MOON」に引き継がれた。優しく包み込むような美しいメロディに会場中が酔わされたコーナーだった。「今日はなんか来るね、来るよ。こうやってずーっとステージに立ち続けられる。幸せなことですね。みなさん、本当にありがとうございます」としみじみと語ると、大きな拍手が贈られた。
80年代からのライブアンセム、「YOU」が勢いよく始まった。ロックでタイトなモータウンサウンドで、曲調は明るくポップなのに、なんだかたまらなく泣けた。”傷つくだけと言いきかせても あなたに会いたくて”と歌う矢沢流の切ないラブソングの名曲だ。また、この日はエッヂの効いたギターサウンドがリードする曲が目立った。2本のギターがリフを刻む「GET UP」では、サビに合わせて拳が突き上げられる。コーラスの女性2人が矢沢と共にフロントに立ち煽る場面もあり、大いに盛り上がった。「BIG BEAT」で文字通りの豪快で大きなビートに乗せてパフォーマンスすると、”Im A Rockn Roll Man!”と溜めにためて叫んだ矢沢に観客のリスペクトの念がこもった怒涛の拍手が鳴り響く。激しいロックチューンの後に、間髪入れずに「AZABU」「この海に」としっとりとした曲を見事に歌い上げる矢沢。高音でもまったくピッチのずれない正確無比な歌唱技術の高さ、ステージを縦横無尽に動き回るスタミナを維持している肉体は驚異的だ。
「これからもまだまだいろんなことがあると思うけど、我々は必ずそれを越えて、越えて、越えていけるんだなと思っています。今年は2年振りのステージで、(初日の)金沢のMCの一発目で本音が出ました。”会いたかったよ、みんなに!”って。今日もその通りです」
ここで、”さいこうのバンドメンバー”が紹介された(大郷良知(Sax)、米川英之(Gt)、近田潔人(Gt)、MORIO(Ba)、吉田佳史(Dr)、松本圭司(Key)、桑迫陽一(Perc)、Annette Marie Cotrill(Cho)、ArgiePhine(Cho)、湯本スーパーホーンセクション)。そして、ライブは後半へ。王道ロックナンバー「世話がやけるぜ」から、ツアー後半、武道館などではオープニング曲となっていた「JEALOUSY」へ。切れ味鋭いギターリフが牽引して、ピアノの艶めいた音色が間を縫って走っていく。マイクスタンドを掴んでステージ前に移動して熱唱する矢沢。この曲は無骨なロックのようでいて、ループしてカオスになっていくダンスミュージックだ。そして、畳みかけるように始まった「PURE GOLD」。両手で大きく手拍子する観客を前に、一瞬歌えなくなり天を仰ぐ矢沢。今回のツアーに至るまでの思い、ファイナルを大観衆と共に迎えられた思いがこみ上げてきたのだろうか。長年ステージに立ち続けてきた叩き上げのロック・ミュージシャン矢沢永吉の心境をわずかながら共有できたような、感動的なシーンだった。
アンコールでは、真っ白なスーツを着て登場。感傷的なムードを打ち消すように、「サイコーなRock You!」からラストはおなじみの「止まらないHa~Ha」へ。レーザー光線が飛び交う中、ハットを被った矢沢が観客を煽ると、タオルは上げられないかわりに両手を頭上にあげて応えるファンたち。トロッコに乗り込んだ矢沢が客席中央まで運ばれて行き会場のど真ん中でパフォーマンスすると場内は最高潮の盛り上がりとなってエンディングを迎えた。凄まじい熱気を残してステージを去ると、暗転した客席には英語バージョンの「Last Christmas Eve」がBGMとなり、横浜アリーナ周辺のファンたちの姿、ステージでのリハーサルの模様がスクリーンに映し出され、「矢沢、必ず帰ってきます! また会える日まで! Merry Christmas」とのメッセージで、ライブは終了となった。
全22曲、13000人の観客からのエネルギーを全身で受け止めながら、走り抜けた2時間のステージ。ツアーを通してロックシンガーとしての不屈の闘志を見せた矢沢永吉が、これからも最高のパフォーマンスでステージに立ち続けるであろうことを確信した、感動的なツアーファイナルだった。
EIKICHI YAZAWA CONCERT TOUR 2021「Im back!! 〜ROCKは止まらない〜」
2021年12月25日(土)横浜アリーナ
セットリスト
1. ラスト・シーン
2. 長い黒髪
3. 背中ごしのI LOVE YOU
4. 最後の恋人
5. やりきれない気持ち
6. 愛しているなら
7. 恋の列車はリバプール発
8. TOKYO ZOO
9. Last Christmas Eve
10. DIAMOND MOON
11. YOU
12. GET UP
13. だから、抱いてくれ
14. 夜間飛行
15. BIG BEAT
16. AZABU
17.この海に
18. 世話がやけるぜ
19. JEALOUSY
20. PURE GOLD
アンコール
21. サイコーなRock You!
22. 止まらないHa~Ha
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