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2021年の年間ベスト・メタル・アルバム10選

Rolling Stone Japan / 2021年12月30日 17時45分

courtesy of John McMurtrie; Clay Patrick McBride; courtesy of Portal; Nedda Asfari

アリーナの帝王からアンダーグラウンドの住人まで、米ローリングストーン誌が選ぶ2021年最高のメタル・アルバム10選。


10位 パノプティコン『…And Again Into the Light』

パノプティコン(Panopticon:別名オースティン・ラン)は10年以上前から、ブラック・メタルとアパラチアのフォーク・ミュージックとの融合というユニークなスタイルを追求してきた。彼は両ジャンルの中核に流れる、精神を病んだような荒廃の中に共通点を見出したのだ。『…And Again Into the Light』は彼の最高傑作となるだろう。爆発的なビートと歪んだギターリフに、アコースティックギターの爪弾きと裏で流れるフィドルがパワフルかつエモーショナルに絡み合い、「Dead Loons」「A Snowless Winter」「The Embers at Dawn」などの壮大な楽曲が生まれた。人の心の中に棲む悪魔を威嚇することが、アルバム全体に共通するテーマとなっている。粗暴かつ荒涼とした楽曲がカタルシス効果と高揚感をもたらし、暗い日々を過ごす今の我々が聴くのにぴったりな作品だと言える。(by DAN EPSTEIN)



9位 キング・ウーマン『Celestial Blues』

キング・ウーマン(King Woman)の2ndアルバム『Celestial Blues』は、40分間を通じて、シンガーソングライターのクリスティーナ・エスファンディアリのヴォーカルに圧倒される。タイトル曲「Celestial Blues」からは、彼女の息づかいが伝わって来る。「Golgotha」では、スモーキーで幻想的な優しい歌声が聴ける。「Boghz」(ペルシャ語で、エスファンディアリ曰く”言葉では表現できない苦悩や切望”の意)の荒々しいシャウトは苦悩に満ち、「Psychic Wound」には、思い切り解き放たれた彼女の姿が浮かぶ。アルバムには、陰のあるゴス・キャバレーから黙示録的なヘヴィ・ドゥームまで、幅広いジャンルの印象的な楽曲が凝縮されている。エスファンディアリは本作を通じてついに、天国と地獄を恐ろしくリアルに感じさせる抑圧的なキリスト教のしつけ方から解放されたという。悲哀と激怒の大波を経験し、最終的に寛容の境地に至ったのだ。アート・メタルは衰退しつつあるものの、気持ちを高めてくれる作品を通じて、彼女の辿った道のりを一歩ずつ感じられるだろう。(by HANK SHTEAMER)



8位 スケプティシズム『Companion』

臨終の儀式と天罰との共通部分にあるのが「スケプティシズム」だ。このバンドはフューネラル・ドゥーム・メタルのパイオニアとして、30年に渡りジャンルを先導してきた。フィンランド出身のスケプティシズム(Skepticism)は、極端にスローなテンポ、教会オルガンによるフーガ的なフレーズ、体の底から絞り出すヴォーカルによって、永遠の苦悩の真髄を導き出した。6枚目のアルバム『Companion』は、魅力的で超越した作品になった。「Calla」「The Inevitable」や驚くほどアバンギャルドな「Passage」に代表されるように、エーロ・ポユリュのオルガンがアルバムの中心的な役割を果たし、印象的なギターリフと悪魔のようなヴォーカルと調和している。バンドのサウンドは、アルバムのラストを飾る最高の葬送歌「The Swan and the Raven」でクライマックスを迎える。こんなにも素晴らしい死に際はない。(by KORY GROW)



7位 ポータル『Avow』

エクストリーム・エクスペリメンタル・メタルのポータル(Portal)はオーストラリアのバンドということになっているが、この6枚目のアルバムは、まるで最も不快で忌み嫌われる奈落の底でレコーディングしたかのようなサウンドだ。オープニングの「Catafalque」「Eye」からラストの「Drain」まで、怒涛の攻撃が続く。チェーンソー・ギターがいつでも皮を剥いでやると隙を伺い、ドラムはまるで、新たに地獄へ堕ちた新参者に近づく巨大な悪魔の足音のように激しく鳴り響く。ヴォーカルのザ・キュレーターが悪の呪文を次々と吐き出すたびに、リアルに地獄の腐敗臭を感じるような気がする。本作を最後まで聴いても生き残った人には、同時リリースのアンビエントノイズ・アルバム『Hagbulbia』もお勧めする。(by DAN EPSTEIN)



6位 トリビュレーション『Where the Gloom Becomes Sound』

ミステリアスで邪悪ながら、スリリングな映画を思わせる、スウェーデン出身のデス・プログ・サイケ・メタル・バンドによる5枚目のアルバム。前作『Down Below』(2018年)からさらに壮大なゴス色を強めた本作では、アリーナを意識した曲作りがますます顕著になっている。「Hour of the Wolf」「Leviathans」「Daughter of the Djinn」といったダークでドラマチックなアンセムは、明らかに会場の最後尾まで広がるサウンドを意図して書かれているものの、悪臭が漂う遺体安置所の雰囲気は残している。結成メンバーの一人でギタリスト兼ソングライターだったヨナタン・フルテン抜きでのバンドの方向性は、未知数だ(彼は本作のリリース後に脱退した)。しかしトリビュレーション(Tribulation)は本作によって、バンドとしての最初の1ページを輝かしい勝利で締めくくった。(by DAN EPSTEIN)



5位 コンヴァージ『Bloodmoon: I』

ハードコアのレジェンドであるコンヴァージ(Converge)は、2016年から、ゴシック・フォークの女司祭チェルシー・ウルフと彼女の音楽パートナーであるベン・チザムや、ケイヴ・インのスティーブン・ブロドスキーらとのコラボを続けてきた。我々は長く待った甲斐があった。いわゆる”スーパーグループ”のプロジェクトによく見られる、妥協や手加減は一切ない。メンバー全員がそれぞれのビジョンと才能を発揮してベストを尽くした結果、記憶に残るポスト・メタル作品が出来上がった。メロディアスかつアトモスフェリックな激しくスカッとする一連の楽曲は、参加したメンバーの過去の作品と比較しても特に際立っている。今からもう『Bloodmoon: II』が期待される。(by DAN EPSTEIN)



4位 カーカス『Torn Arteries』

リヴァプール出身のエクストリーム・メタル・バンド。再結成後の2013年にリリースされたアルバム『Surgical Steel』では、バンド初期の高速テンポの曲調と、1996年の活動休止時期までに磨きをかけ洗練されたロックンロールとを融合させて、見事に歴史を書き換えた。バンド第2章の2ndアルバムとなる本作で、彼らはついに閉じ込められていたサウンドの殻を破って進化を遂げた。10分間の壮大な組曲「Flesh Ripping Sonic Torment Limited」や、ミドルテンポでハードなグルーヴを効かせた「Eleanor Rigor Mortis」から、聴き慣れた激しいデス・スラッシュまで、過去の作品にはない幅広さを見せつけている。バンドとしての音楽的な幅を広げつつも、カーカス(Carcass)になくてはならないジェフ・ウォーカーの発する毒のある強烈なグロールや、ビル・スティーラーの完璧なリフ・ワークは健在だ。(by HANK SHTEAMER)

【関連記事】カーカスが語るデスメタルの真髄、「リヴァプールの残虐王」が歩んだ35年の物語



3位 ゴジラ『Fortitude』

煌めくギターハーモニクスとピッチに変化を付けた高音のフィードバックに絡む魂のシャウト。本作は、ノイズがメロディーを圧倒する瞬間を美しく感じさせる。フランス出身の屈強な男たち、ゴジラ(Gojira)による7枚目のスタジオアルバムは、彼らの代名詞でもあるノリの良いギターリフと陶酔できるメロディーが、見事に融合している。さらに、いつまでも聴き続けたくなるような心地良さが、そこかしこに散りばめられている。本作ほど多くのテクスチャーが絡み合った作品は、ストレートで純粋なサウンドを信条とするメタルには珍しい。さらに、森林破壊(「Amazonia」)、人間の強欲さ(「Born for One Thing」)、全体主義(「Into the Storm」)など社会の不公正を糾弾するギタリスト兼ヴォーカリストのジョー・デュプランティエによる見事な表現力が、本作の重み(ヘヴィさ)をさらに増している。(by KORY GROW)



2位 マストドン『Hushed and Grim』

マストドン(Mastodon)の過去数枚のアルバムは、キャリア半ばのコンフォートゾーンに頼った作品だった。彼らのプログレ・メタル・バンドとしての特性が発揮された『The Hunter』(2011年)から2017年の『Emperor of Sand』までは、リスナー受けするお決まりの路線から外れようとしていない。ところが本作『Hushed and Grim』ではリスナーに対する大胆な挑戦状を叩きつけ、見事に成功した。90分間に近い彼らの過去最長時間のアルバムだというだけでなく、タイトルに相応しいムーディーな作品に仕上がっている。「Had It All」でどっぷりとバラードに浸かったと思えば、「The Beast」では哀愁漂うロカビリーを聴かせている。また、マストドン史上最もメロディアスなロック曲と言える「Teardrinker」や「Pushing the Tides」から、「More Than I Could Chew」や「Gobblers of Dregs」といった荘厳な大作まで、実に幅広い音楽が展開する。アルバム全体を見渡すと、我々が好んで聴いた70年代の見開きジャケットの名盤に通ずるものがある。(by HANK SHTEAMER)



1位 アイアン・メイデン『Senjutsu』(邦題:戦術)

「Run to the Hills(邦題:誇り高き戦い)」や「The Trooper(邦題:明日なき戦い)」などの名曲の焼き直しを望むファンもいるかもしれないが、ベテランのヘッドバンガーたちは、決して後ろを振り返らない。17枚目のアルバム『Senjutsu』は、彼らの最もプログレッシブな傑作と言える。ケルト民謡を彷彿させるバンドの特徴的なギターリフは健在で、フロントマンのブルース・ディッキンソンも、ジョン・ヘンリー張りに空襲警報との戦いに勝利する態勢を整えている。しかしバンドは2015年のアルバム『The Book of Souls(邦題:魂の書~ザ・ブック・オブ・ソウルズ~)』以降、40年前よりも複雑な曲の構成と洗練された歌詞により、ソングライティングの質をさらに向上させている。本作に収録された大作「Hell on Earth(邦題:この世の地獄)」や「The Time Machine(邦題:タイムマシーン)」は圧巻で、リスナーは彼らの行く方向へグイグイ引き寄せられる。アイアン・メイデン(Iron Maiden)はレジェンドであると同時に、今なお時代の先駆者でもあるのだ。(by KORY GROW)

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From Rolling Stone US.

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