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BREIMENワンマン完遂、真の表現者たちが追究する「自由」の意味

Rolling Stone Japan / 2022年1月17日 21時0分

BREIMEN(Photo by renzo masuda)

1月15日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて、BREIMENがワンマンライブ「ANTAGATADOKOSA」を開催した。配信映像のアーカイブは1月21日23時59分まで視聴可能。

【写真】 BREIMEN ONEMAN LIVE「ANTAGATADOKOSA」

本公演はリリースに伴うツアーではない単発公演であり、BREIMENの「これまで」を総括しながら「これから」も見せる内容だった。そしてそんな内容が証明したのは、BREIMENは非常に優れた表現者集団であるということ。各メンバーがChara、TENDRE、Tempalay、eill、Nulbarich、Kan Sano、Mega Shinnosukeなど様々なアーティストのプレイヤーとして活躍していることで、BREIMENは「業界最前線プレイヤー集団」と言われる場面が多く、それも紛れもない事実であるが、世の中や人間に対する思想とリアルな生き様を作品に昇華させることのできる感性とスキルを持っている、真の表現者たちであるということがはっきりとわかるライブだった。


Photo by renzo masuda

昨年5月にリリースされた2ndアルバム『Play time isnt over』は、個人的に2021年ベストアルバムの上位に入ってくるほど素晴らしい作品だった。2021年は「少し耐え忍べばまた元の日常に戻るだろう」という希望が打ち砕かれてコロナ禍が続き、未来は予期できないことをさらに突き付けられ続けた1年であった。しかも、「多様性と調和」という言葉が掲げられるもののそれは机上の空論で、日々現実社会では自分を守ることで精一杯な言い争いやぶつかり合いが、小さなものから大きなものまで巻き起こり続けていた。そんな世の中に対して、新たな生き方の指針を示してくれたのが『Play time isnt over』というアルバムである。



身の回りの遊びから戦争のはじまりまで、今こそあらゆることに敏感になって「気づく」ことが大切であるということ。人それぞれ違う正義を抱えているのは当然で、そのどれをも否定する必要はなく、また同じ正義を持つ必要もなく、「対話」をすれば思想が違う者同士でも同じ人間として少しは愛を持てるはずだということ。たとえばコロナ、もしくは権力者たちから、何かを奪われてしまったとしても、自分たちの遊びを続けていくことはできるということ。――こうやって文字で書くと綺麗事のように胡散臭く、かつ説教臭くなってしまうが、それを押し付けがましくなく表現し、グルーヴに揺らされる中でハッと見方を変えさせてくれるのがBREIMENの音楽だ。

また、ルーツがばらばらな5人が集まって、1曲の中にもR&Bやファンク、ジャズ、ゴスペル、ハードロックなど様々な要素を混ぜ込んでいるサウンドは非常にエクスペリメンタルで新しいものを生み出しており、なおかつそれは、さきほど述べた彼らなりの「多様性と調和」「異なるものの共生」への提示や、遊びに対して真摯である思想がサウンドでも表現されていると言える。星野源、米津玄師、Official髭男dism、King Gnuなどのトップアーティストたちが今、多様なリズムとあらゆるジャンルの要素を混ぜ込んだ曲をヒットさせることで「ポップスの複雑化」が進んでいる今の国内音楽シーンの一部の流れを、さらに面白くしてくれる存在になり得るという期待を個人的には持っている。


高木が歌う”決めつけないで”の一行

この日のワンマンライブは、前身バンド・無礼メンで鳴らしていたようなクールでコミカルな表現の名残がある楽曲から、1stアルバム『TITY』で表現した恋や愛やエロについて、2ndアルバム『Play time isnt over』の楽曲、そして最新曲「あんたがたどこさ」と「CATWALK」まで全18曲を惜しみなく演奏し、BREIMENというバンドの歩みを総括するような内容だった。中盤では風俗のことを歌った「PINK」のサトウカツシロのギターソロとジョージ林のサックスが吹き荒れた壮大なアウトロから「脱げぱんつ」へとスムーズに繋げたり、終盤では「Lie on the night」から「noise」「You were my muse」とメロウに仕立てたゾーンがあったりと、BREIMENの楽曲のバリエーションの豊富さがライブの流れに緩急をつけていた。そして、時代や作品によって表現の内容に変化はあれど、BREIMENとしてずっと変わらない地続きの部分もあるからこそ1本のライブにまとめることができているということも示す内容だった。たとえば5曲目「ODORANAI」(1stアルバム収録曲)から6曲目「utage」(2ndアルバム収録曲)と繋げたシーンは、女の子に踊らされている描写から、SNS、資本主義、そして国家へと踊らせてくる対象を広げて歌っていくような流れが見事だった。


Photo by renzo masuda


Photo by renzo masuda


Photo by renzo masuda



この日のMCで、5人はびっくりするほど自由だった。高木祥太(Vo&Ba)がいい話をしているのに、やたらとツッコむサトウに、ステージ上からツイートを投稿しているいけだゆうた(Key)。5人は出自も違えば、同じクラスにいても仲良くなってないかもしれないくらい性格もばらばらのように見える。演奏においても、それぞれの個性がダダ漏れである。そうやって、全然違うものが合わさることで笑える面白さが生まれることや、一人ひとりがのびのびしながら個性や得意なことを発揮する空間こそが幸福であるということを、BREIMENはステージ上の佇まいで体現している。歌の言葉、鳴らしている音、バンドとしての佇まいが、すべて一貫しているのがBREIMENの表現者としての強度であるのだ。


Photo by renzo masuda

”何でも鑑定団”というユーモラスなワードからはじまる「色眼鏡」では、ヴォーカル・高木以外のメンバーが歌を回していく。レコーディングの際には「え、俺が歌うの?」なんてリアクションが他メンバーからあったのではないだろうかと想像する。So Kanno(Dr)、ジョージ、いけだが半笑いで歌を回したあと、Bメロに入って高木が歌うのは”決めつけないで”の一行である。自分に何ができるかできないか、何が楽しいか楽しくないか、何が正しいか正しくないか、すぐに「決めつけないで」とするのは、『Play time isnt over』で一貫していたBREIMENの姿勢だ。


Photo by renzo masuda


Photo by renzo masuda





社会の中にいる自分のこと、そして人間愛について、音楽を鳴らし続けている

開場中のBGMには尺八や箏の音を鳴らし、和をテーマにした衣装を身に纏ってステージに上がったこの日、1曲目に演奏したのは最新曲「あんたがたどこさ」(1月26日リリース)。日本人なら誰しもが知ってる、童歌「あんたがたどこさ」をモチーフにした楽曲だ。この童歌の起源については諸説あるが、日本に西洋音楽が入ってくる以前に生まれたものであることは確か。西洋音楽が輸入される前から日本人の血に流れているリズム感・揺らぎや旋律、語感を取り出して、クラップという肉体性丸出しなリズムからマリンバや現代的なビートも混ぜて展開していき、さらにAIのような声で「ギター」と鳴らしてハードロック調のギターソロに入るなど、非常に面白い構成に仕上がっている。この曲から感じることは、音楽的なセオリーから自由になろうとする気概と、無意識の中でとらわれている規則や規範から意識的に離れて、本来自分の心や身体に備わっているものや純粋に反応するものに向き合おうとする意志だ。



昨年11月にリリースされこの日の7曲目に演奏された、「猫踏んじゃった」のフレーズを引用しアレンジした「CATWALK」も同様だ。いかに音楽的セオリーから自由になれるか、そして自分の血に流れているものを出せるかということが、BREIMENがこの先さらに追究しようとしていることかもしれない。「あんたがたどこさ」でそんなサウンドに乗せて歌われるのは、出身地や肩書きといったラベルに縛られず、今目の前にいる人から発されるものを受け取って、人対人で向き合おう、といったもの。この曲でもまた、音の表現と言葉の表現が見事に一致している。



この日のステージセットには、BREIMENの「I」がそびえ立っていた。それに触れて、高木が「(I=私、アイ=ラブであることから)ずっとアイを探しているっていうコンセプトのバンドにするのはどうかな」と話す場面があった。サトウに「俺はアイを知ってるから」とツッコまれて笑いが起きていたが、BREIMENが「私」と「愛」を歌うバンドであるということは何も間違ってなければズレてもない。1stアルバムの『TITY』は「アイデンティティ」から用いた言葉であったように、BREIMENは社会の中にいる自分のこと、そして人間愛について、音楽を鳴らし続けているのだから。


Photo by renzo masuda

ソングライター・高木の人生観や、バンドとしての佇まいが、リアルに作品に昇華されている。そしてそれを受け取ってライブ会場をあとにしたとき、自分自身と自分の目に映る他者に対する目線が少し変わった感覚があった。それだけで十分、BREIMENの音楽・ライブは素晴らしいアート作品であると評するに値する。さらにその上で、これまでのセオリーに捉われずに、歴史を継承した上で更新する音楽を生み出し、オリジナリティを追求しようとする姿勢とスキルも獲得しているのだから、彼らの今後にはどうしたって期待をしてしまうのだ。


Photo by renzo masuda


Photo by renzo masuda

【関連記事】BREIMENの高木祥太が語る、私小説的な歌の世界と音楽ルーツ

【配信チケット詳細】
BREIMEN ONEMAN LIVE
ANTAGATADOKOSA
配信チケット
アーカイブ〜2022/1/21(金)23:59
視聴チケット価格:¥2,000〜
https://eplus.jp/sf/detail/3400550003

【リリース情報】
2022.1.26 Release
BREIMEN Digital Single
「あんたがたどこさ」
https://ssm.lnk.to/Antgtdks
 
【ライブ情報】
スペースシャワー列伝 第147巻
~幽玄(ゆうげん)の宴~
2022.1.28(金)東京・Shibuya eggman

<出演>
Ochunism
chilldspot
BREIMEN

チケット詳細
https://eplus.jp/sf/detail/0142620001

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