会議中に「お前は俺の妻か?」と罵倒、米タブロイド紙の編集部で繰り広げられたセクハラ地獄
Rolling Stone Japan / 2022年1月20日 6時45分
米ニューヨーク・ポスト紙の元デジタル編集長ミシェル・ゴットヘルフ氏が、同紙の元編集長から性的な嫌がらせを受けたとして、元編集長らを相手に訴訟を起こした。
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「20年以上もの間、私は全米で愛読されている媒体で、自らの仕事に大きな誇りを持って取材に励んできました」と、ゴットヘルフ氏は声明のなかでこう述べた。「自分がニュースになるとは夢にも思いませんでしたが、私の身に起きた真実は認知されてしかるべきです。同僚と離れてしまうのは名残惜しいですが、こうして声を上げることで、ポスト紙で働く他の女性たちにプラスの変化がもたらされればと願っています」
ニューズ・コーポレーション(News Corp)とニューヨーク・ポスト紙にコメントを求めたところ、広報担当者はこのように述べた。「本日公表された(ゴットヘルフ氏の)辞職に関し、不正をほのめかす発言には根拠がありません」
ゴットヘルフ氏はニューヨーク南地区裁判所に申し立てた訴状の中で、2001年から2006年まで編集長を務めていた元上司コル・アラン氏が「嬉々として」女性を蔑み、しばしば記事に出てくる女性たちを「売女」「ばかな女ども」と呼んでいたと主張した。またポスト紙の1人の記者を「陰険なレズビアン」とも呼んでいたという。ゴットヘルフ氏の主張によれば、彼女が2007年に地域面の副編集長を担当していた際、アラン氏は「この仕事には強い男が必要だ」と言って、彼女を差し置いて別の男性を編集長に昇格させた。
2013年ごろ、アラン氏による性的嫌がらせやゴットヘルフ氏が言うところの「侮蔑的行為」により、職場環境は次第に劣悪になっていった。彼女の主張によれば、編集会議中によく「自分を何様だと思っているんだ、俺の妻か?」と言われたが、やがてアラン氏も、不当な仕打ちをしたのは彼女が「怒りっぽくて」自分の妻を想起させからだ、と認めたそうだ。彼女は直属の上司に苦情を申し立てたが、相手にされなかったという。彼女の話では、嫌がらせは2015年に最高潮に達し、アラン氏は会社のディナーの席で「一緒に寝よう」と性的関係を持ちかけたそうだ。
ゴットヘルフ氏によれば、誘いを拒んでからというものアラン氏の侮辱は激化し、ある時などは彼女が用意したネタのリストを破り捨て、男性が大半を占める同僚の前で「会議から出ていけ」と怒鳴ったという。彼女が同氏の言動を人事部に報告したことで、アラン氏は2016年に退職を余儀なくされたが、ポスト紙を発行するNews Corp社のオーナーであるルパート・マードック氏は当時退職の理由を知らず、「長年にわたる模範的勤務」で同氏を称賛した。
2022年1月12日、解雇を告げられる
訴訟によると、アラン氏がいなくなってから社内では「性的嫌がらせの苦情を申し立てた報復として」、ゴットヘルフ氏の権限を制限する動きが出始めた。彼女いわく、編集責任者であるにもかかわらず編集部の意思決定の場から外され、自分より報道経験の浅い若者が発言権を増していったそうだ。
2019年、出版社はアラン氏を再雇用したが、ゴットヘルフ氏への侮辱は続き、E・ジーン・キャロルがドナルド・トランプ氏からレイプされたという疑惑でも、「根拠のないガセねた」と言い、記事を取り下げるよう命じられたという。彼女が人事部に苦情を申し立てると、アラン氏が「やれと言ったら、その通りにしろ」と言われたそうだ。
「コル・アレン氏がゴットヘルフさんに性的関係をもちかけた後、ポスト紙が同氏の再雇用を決定したことは、News Corp社が運営する編集部の実態を如実に物語っています」と、ゴットヘルフ氏の弁護士ダグラス・ウィグダー氏は声明を発表した。「我々はポスト紙の責任追及と、ゴットヘルフ氏の権利保護を強く求めていく所存です」
2021年初め、ポスト紙はキース・プール氏を編集長に迎えたが、ゴットヘルフ氏の主張によれば、彼は数週間アレン氏から「状況説明」を受けていたようだ。2021年11月、プール氏はゴットヘルフ氏に、アラン氏との間に何があったのか尋ねた。アラン氏から性的嫌がらせを受けていたこと、セックスを持ちかけられたことをゴットヘルフ氏が打ち明けると、2カ月後の2022年1月12日、彼女は理由もなく解雇された。
News Corp社とポスト紙の広報担当者は、プール氏からスタッフに宛てたゴットヘルフ氏辞職を告げるメールを転送した。メールの中には「この機会に、20年以上にわたる彼女の貢献に感謝を述べたいと思います。彼女の今後のご活躍をお祈りします」という一節もあるが、その後に2名の昇進が発表されている。「数日のうちにさらなる昇進が発表される予定です。2022年のポスト紙の成功のためにも、今後も努力を重ねていきます」
ゴットヘルフ氏は訴状の中で、彼女が受けた不当な差別や報復による「金銭的ダメージ」の他、「屈辱、不面目、ストレス、不安、自尊心や自信の欠如、精神的苦痛」を負ったとして、損害賠償金の支払いを求めている。
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