グラミー賞は「おかしい」のか? 確かに存在する現実として受け取るべきか?
Rolling Stone Japan / 2022年2月8日 20時0分
音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年12月25日発売号の誌面に掲載された、第64回グラミー賞のノミネーションを受けて書かれた記事。
最近はノミネーションが発表されるたびにリスナーやメディアやアーティストから批判や不満が噴出するのが恒例となっている。だが、本当はこの事態をどのように受け止めるべきなのだろうか?
ここ数年、グラミー賞のノミネーションが発表されるたびに、リスナーやメディアからの批判が噴出することが恒例となっている。昨年はザ・ウィークエンドが大ヒットを飛ばしながらも、ノミネーション数0だったためボイコットを宣言。それ以前からも性差別や人種差別的な傾向が問題視され、批判は絶えなかった。もちろん理不尽な差別は一刻も早く是正されるべきだ。ただ差別の問題を差し引いても、グラミーが熱心な音楽リスナーの感覚からズレていることは何も今始まったことではない。そもそもグラミーは極めて保守的で権威主義的な賞である。2010年代に入るまでは鼻にも掛けないというスタンスのリスナーやアーティストも多かったはずだ。
ところが、2010年代はグラミー賞に再び人々の注目が集まるようになった。それは今振り返れば、2010年代半ばが商業性と芸術性が両立したポップ音楽の理想的な時代だったことも関係しているだろう。その年のもっとも先進的な作品がもっとも権威のある賞にノミネートされる――誰もがそれを期待することが許された数年間が奇跡的に存在したのである。だが、その状況も徐々に変わってきた。それはグラミーが時代に置いていかれたというよりは、そもそも保守的で権威主義的だったグラミーの価値観と進歩的なリスナーやアーティストの価値観が再び乖離した結果でしかない――そんな風に捉えることも出来るのではないか。
最多ノミネートはジョン・バティステで11部門
ただ、グラミー賞も過去数年の批判を踏まえて変わろうとはしている。今年度の一番大きな変化は、ノミネーション選定時のブラックボックスだった秘密委員会の撤廃。ザ・ウィークエンドがノミネート数0となったとき、特に問題視されたのが秘密委員会の存在だった。その代わり、今年度からは1万人を超えるグラミー賞会員の直接投票で候補が決まることになった。主要部門のノミネート枠も8組から10組に変更して門戸を広げている。
ではその結果はどうなったのだろうか? 最多ノミネートはジョン・バティステで11部門、ドージャ・キャットとジャスティン・ビーバーとH.E.R.が8部門、そしてビリー・アイリッシュとオリヴィア・ロドリゴが7部門と続く。
ビリーやオリヴィアやドージャは順当だが、ジョン・バティステの圧倒的なノミネート数には疑問の声も多い。バティステは映画『ソウルフルワールド』の劇中音楽を担当し、(グラミー賞授賞式が生中継される)CBSのトークショー番組でハウスバンドのリーダーを務める人物。音楽的には多才だが、同時に無難なアーティストだとも言える。
ほかにも批判が多いのは、グラミー無冠のアバが40年ぶりの新作で主要部門にノミネートされたこと、BTSがあれだけ全米大ヒットを飛ばしながら今年も主要部門にはノミネートすらされなかったこと、昨年は女性のノミネートが多くて称賛されたロック関係の部門がどれも大御所の男性アーティストばかりに戻ってしまったこと、などだろうか。
確かにどれも苦言を呈したくなるのはわかる。だが、批判は一旦置いておき、今年のノミネーションを客観的に見て明らかになった事実があるとすれば、なにも秘密委員会の存在がグラミーを歪めていたわけではないということだ。会員の直接投票の結果がこれだとすれば、やはりグラミーは米国音楽業界の保守的な価値観の表象にほかならない。時にはそこに不満をぶつけたくなるもなるだろう。ただ、いまだにグラミーのような価値観が強固に存在すること――それもひとつのリアリティなのだと我々が理解することの方が大事なのではないだろうか。
【関連記事】田中宗一郎×小林祥晴「2021年ポップ・シーン総括対談:時代や場所から解き放たれ、ひたすら拡張し続ける現在」
Edited by The Sign Magazine
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
第67回グラミー賞、ビヨンセが最多ノミネート 坂本龍一さん、ジョン・レノン“親子”も候補に
クランクイン! / 2024年11月11日 17時30分
-
K-POP、グラミー賞候補2年連続なし…大きく感じられる「BTS」の空席
Wow!Korea / 2024年11月9日 16時21分
-
第67回グラミー賞(R)ノミネーション発表!2025年2月3日(月)午前に授賞式の模様をWOWOWで独占生中継にて放送・配信!
PR TIMES / 2024年11月9日 11時45分
-
『第67回グラミー賞授賞式』、WOWOWで独占生中継が決定
マイナビニュース / 2024年11月8日 21時0分
-
第67回グラミー賞(R)授賞式を今回もWOWOWで独占生中継にて放送・配信!
PR TIMES / 2024年11月7日 18時45分
ランキング
-
1「また干されるよ」ヒロミが「もう辞めるか?」のボヤキ、視聴者が忘れないヤンチャ時代
週刊女性PRIME / 2024年11月26日 11時0分
-
2「火曜サザエさん」27年ぶり復活!「懐かしすぎ」ネット歓喜「さすが昭和」「時代感じる」「涙が…」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 19時11分
-
3山下智久、国際エミー賞で快挙!主演海外ドラマ「神の雫」が連続ドラマ部門受賞「夢が一つ叶いました」
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年11月26日 15時27分
-
4私立恵比寿中学・星名美怜、突然の「契約終了」 残るメンバーは謝罪...ファン衝撃「本当にちょっと待って」
J-CASTニュース / 2024年11月26日 12時55分
-
5辻希美&杉浦太陽の長女、芸能事務所入り たった2時間でフォロワー8・5万人!両親も宣伝「おめでとう」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 15時11分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください