山崎まさよしが語る、DIYライフと「等身大の思い」を綴ったプライベートアルバム
Rolling Stone Japan / 2022年2月14日 18時0分
音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。コロナ禍でも歩みを止めず、活動のフィールドを広げていく山崎まさよし。昨年2年ぶりのフルアルバム『STEREO 3』を発表。デビュー25周年イヤーを締めくくる作品の制作舞台裏だけでなく、近年TV番組などでも注目されているDIYのこだわりについても語ってくれた。
Coffee & Cigarettes 32 | 山崎まさよし
※Rolling Stone Japan vol.16 2021年9月25日発売号掲載
2020年9月25日にデビュー25周年を迎えたシンガーソングライターの山崎まさよしが、昨年アニバーサリーイヤーの締めくくりとなる2年ぶりのオリジナルアルバム『STEREO 3』をリリースした。本作は、彼のファンにとってはお馴染みである「プライベート・アルバム」として位置づけられる『STEREO』シリーズの第3弾。ここでいうプライベート・アルバムとは、作詞作曲はもちろん、楽器演奏、ヴォーカルそしてコーラスまで全てを山崎一人でこなしたプライベート色の強い作品のことを指す。そんな「一人多重録音アルバム」は、実は『STEREO』シリーズ以外にも存在するが、公式のディスコグラフィーでも他のオリジナルアルバムとはジャンル分けされることが多い本シリーズは、山崎にとって特別な意味を持つ作品ということになるのだろう。
「自分以外の『他者』と関わりながら作る作品は、様々な人の意見が反映されるから広がりが出るんですよね。でも『STEREO』シリーズのように一人で作る作品の場合は、全て一人でジャッジしなければならない。『この曲はちゃんと人に響くのか?』とか、客観的には分かりにくいじゃないですか。そこがいちばんの違いかもしれないです」
確かに、そういう意味では「独りよがり」になりやすい。そのぶん山崎にしか出せないドラムのグルーヴやベースのタイム感、ギターの手ぐせなどが積み重なった、非常に密度の濃い”山崎まさよしサウンド”になっているのも事実だ。くしくも山崎がリスペクトしてやまないあのポール・マッカートニーも、昨年コロナ禍で「一人多重録音アルバム」となる「マッカートニー」シリーズの第3弾『マッカートニーIII』をリリースした。その話を向けたところ、「気づかなかったけど、言われてみれば確かに一緒ですね!」と目を少年のように輝かせていた。ちなみに『STEREO 3』の制作場所は、山崎が今からおよそ3年前に作った自宅のプライベートスタジオ。趣味のDIYが高じ、至るところに手作りの棚や収納ラックが置かれた「秘密基地」のようなその場所は、彼が童心に戻れる大切な聖域なのだ。
「海外のプライベートスタジオなどへ遊びに行くと、例えば反射板や吸音材などは大抵ハンドメイドなんですよね。『ちょっとスタジオの響きを変えたいな』と思ったら、余った板材で吸音材などをパパッと作って壁に打ちつける。そういう、自由でフレキシブルな環境に憧れていたんです。DIYの楽しさは、その構造まで理解できるところにもある。最近、スマホ用のウッドスピーカーを自作してみたんですけど、ウーハーやコーンがどうなっているのかなどよく分かったし、そうするとメンテナンスも自分でできるようになる。このご時世、なるべく自分のことは自分でできるようにしておくと、何かと便利でもあるんです」
以前からエレキギターのピックアップを「はんだ付け」するなど、楽器まわりのDIYはできる範囲でよくやっていたという山崎。音楽以外のことで、何か無心になれるものがあるのはストレス発散にもなっているそうだ。今年4月からは、YouTubeの自身のチャンネル上でDIYに特化した番組『クラフトパパ』を始めたが、彼が木材や工具と格闘しながら「ギターを弾くのにちょうどいい椅子」や「超多機能ティッシュボックス」などを作り上げていく様子は見ているだけでも楽しい。
「何かをイチから作り上げるとか、美味しそうなご飯をただ食べているとか、そういう企画とYouTubeは相性がいいんだなと思いました。その人の生活を覗き見るような気持ちになるんでしょうかね。あるいは一人で家にいても、誰かと一緒にいるような『安心感』が生まれるのかもしれない。それこそコロナ禍のステイホーム期間中に、こういう番組が見たくなるのはよく分かります」
コロナ期間中はDIYにも力が入り、ウッドガスストーブを作って子供たちと焼き芋作りを楽しんだという。
「やっぱりこのご時世キャンプに行ったり、アウトドアを楽しんだりするのも憚られるじゃないですか。何とか家で楽しめたらいいなという思いで作ってみたんです。家族のリクエストにも応えて色々作っていますよ。『ここに棚があったらいいな』と奥さんに言われたら、余った木材を使ってパパッと取り付けたりして。例えばアメリカ人って、なんでも自分で賄っちゃうんですよ。車のメンテもそうだし、壁紙を貼って色を塗るとか、ドアを付け替えるとかもそう。日本人で『ドアを付け替える』なんて発想の人はほとんどいないじゃないですか(笑)。まあ、そこまで本格的なDIYはやらないまでも、ちょっとしたキャビネットやサイドテーブルを作るくらいだったら、そんなに場所を取らずにできますよ」
ちなみに『STEREO 3』に収録された楽曲「斉藤さん」では、後先考えず何かに夢中になることの大切さ、つまりDIYへの熱い思いについて歌っているが、この「斉藤さん」とはひょっとして彼の友人でもある斉藤和義のことだろうか。
>>関連記事:斉藤和義が語る、年齢を重ねながら紡ぐ「音楽」とコロナ後の「希望」
「そのとおりです(笑)。せっちゃん(斉藤のあだ名)も、自分でギターを作ったりしてるじゃないですか。それで仮タイトルを『斉藤さん』にしていたんですけど、仕上げていくうちに馴染んできてしまったのでそのまま本タイトルにも使うことにしちゃいました。もちろん、せっちゃんには許可をとっていますよ」
そう言って笑いながらタバコに火をつける。朝起きると豆を挽いてコーヒーを作り、それを飲みながら一服するのが山崎にとって至福のひと時だという。
「タバコは大好きですね。曲作りの時とか、注意力が散漫になってきた時に吸うと、集中力がぎゅーっと研ぎ澄まされる気がする。それに、誰かと一緒にタバコを吸っていると、コミュニケーションがいつもよりも円滑に進む気がするし便利なツールです(笑)。ただ、喫煙室のような狭いところで吸うのはあまり好きじゃないかな。どちらかというと緑に囲まれた、自然の中でのびのび吸いたいですね」
デビューから四半世紀経った今もなお、飾らず等身大の魅力を放ち続ける山崎。ファッションも基本はアメカジで、ファッションブランド「TMT」のTシャツを好んで着用している。『STEREO 3』の完全生産限定盤には、山崎をデフォルメしたプラモデルが付属されているが、そのプラモデルが着ているTシャツも「TMT」とのコラボレーションだ。
「昔はスカジャンとかよく着ていたんですけど、最近はちょっと勇気が要るかな(笑)。チノパンやジャケットなどミリタリー系のアイテムは今でもお気に入りですね」
さて、冒頭で述べたようにコロナ禍で制作されたプライベートアルバム『STEREO 3』には、ステイホーム期間中に山崎が考えていたことをテーマにした楽曲が並んでいる。例えば「霧雨」には、”狼狽ながら 俯きながら 僕らはきっと 前に進んでるはず”というラインがあるが、まるで先の見えない未来に向かって手探りで進む私たちの心境を綴っているかのようだ。また、”正しいことが何なのか分かんないけど 立ち止まることだけは気が進まない”と綴った「サイドストーリー」も、様々な「正義」がぶつかり合い、対立と分断が繰り返されるコロナ禍で戸惑う私たちへのエールとして響く。
「そうはいっても、こんな未曾有の事態でなかなか前に進んでいるような気持ちにはなれないですよね、それは僕も同じです。ただ、これまでも先人たちは様々な感染症や疫病などを克服し、この世界を築き上げてきたわけじゃないですか。僕らミュージシャンは、医療従事者のように人の命を救うことはできないですけど、音楽の力で『免疫力』を上げることくらいだったらできるかもしれない。僕が作る音楽や、ライブで歌う姿を楽しみにしてくれているお客さんの、ストレスを放出させるくらいはしたいなと、おこがましくも思っているんですよね」
一つひとつの言葉をまるでカンナで削るように丁寧に磨き上げ、今年50歳を迎える山崎まさよしの「等身大の思い」を綴ったプライベートアルバム『STEREO 3』は、長引くコロナ禍で疲弊した私たちの「心の免疫力」を、きっと高めてくれることだろう。
山崎まさよし
1995年に「月明かりに照らされて」でデビュー。1997年公開の主演映画『月とキャベツ』の主題歌「One more time, One more chance」がロングヒットしブレイク。全国各地のライブハウスやフェス、イベントへの出演、セッション参加なども数多く、音楽ファンのみならず多方面から支持を得ている。
https://www.office-augusta.com/yama/
『STEREO 3』
山崎まさよし
ユニバーサルミュージック
発売中
YAMAZAKI MASAYOSHI”ONE KNIGHT STAND TOUR 2021” [DVD]
発売中 6600円(税込)
この記事に関連するニュース
-
香取慎吾、ソロ歌手としての覚悟固まる「これからも…」 決意表明の新作で中森明菜とコラボ「幸せ」
マイナビニュース / 2024年11月23日 10時0分
-
「影響を受けたものの存在を隠さずに表現する」Cody·Lee(李)が語る音楽ルーツとライフスタイル
Rolling Stone Japan / 2024年11月16日 12時0分
-
アパレルブランドKnuth Mar3周年企画 / 夢は今の仕事を長く続けること--藤原さくらとKnuth Marfが語る「続ける力」
PR TIMES / 2024年11月15日 17時40分
-
Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味
Rolling Stone Japan / 2024年10月31日 19時0分
-
『美味しんぼ』ブーム再び!? YouTube公式チャンネルは50万人登録。ハマり過ぎて全曲美味しんぼライブを企画するサックス奏者も。
CREA WEB / 2024年10月31日 11時0分
ランキング
-
1サザエさん&マスオさん 結婚の“意外な真実”にネット衝撃「面白過ぎる」「斬新」「びっくり」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 20時9分
-
2「出しちゃダメ」「復活して」純烈、武道館に“DV報道”元メンバー登場で乱れるファン心理
週刊女性PRIME / 2024年11月26日 16時0分
-
3橋本環奈 昔からの悩みを激白 一方で「毎日の楽しみ」明かしフォロワー反応「乾杯」「似合う」の声
スポニチアネックス / 2024年11月26日 21時15分
-
4「火曜サザエさん」27年ぶり復活!「懐かしすぎ」ネット歓喜「さすが昭和」「時代感じる」「涙が…」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 19時11分
-
5「また干されるよ」ヒロミが「もう辞めるか?」のボヤキ、視聴者が忘れないヤンチャ時代
週刊女性PRIME / 2024年11月26日 11時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください