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ピンクパンサレス以降に台頭が続く、「ガーリー」なドラムンベース新世代

Rolling Stone Japan / 2022年2月10日 18時45分

ピンクパンサレス『to hell with it』アートワーク

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年12月25日発売号の誌面に掲載された、ピンクパンサレスのブレイク以降、TikTokを主な現場として広がっている新たなドラムンベースの潮流についての記事。このムーヴメントを牽引するのはZ世代の女性が中心だというが、彼女たちは90年代UKクラブカルチャーから生まれたこの音楽を如何に再定義しているのか?

2021年の音楽シーンにおけるもっとも喜ばしい傾向のひとつは、Z世代が新たなムーブメントを次々と牽引し始めていることだろう。その一例として挙げられるのは、オリヴィア・ロドリゴ「good 4 u」以降にメインストリームでも顕在化したポップパンク/エモの隆盛。そしてもうひとつの注目したいムーブメントは、本稿のテーマであるドラムンベースの再定義だ。

この潮流の火付け役は英バース出身、若干20歳のピンクパンサレス。彼女は2020年末にTikTokアカウントを開設以降、投稿した曲が次々とバイラル。瞬く間に同世代のTikTokスターとなり、今年10月にリリースした初ミックステープ『to hell with it』は本国イギリスで20位、アメリカでもいきなりトップ100入りという快挙を成し遂げた。



そして現時点での彼女の代表曲「Break It Off」は、ドラムンベースのプロデューサーであるアダムFによる95年のフロアヒット「Circle」を大胆にサンプリング――というか、ほぼそのままのトラックにヴォーカルを乗せたもの。それ以外の曲もドラムンベースやUKガラージを下敷きにしたものばかりだ。

Pink Pantheress - Break It Off



このピンクパンサレスのバイラル以降、TikTokを主な発信地としてドラムンベース新世代が台頭している。マンチェスターのピリ&トミー・ヴィラーズ、ロンドン拠点のニア・アーカイヴス、シドニー出身のヴィエーレ・クラウドなど枚挙に暇がない。しかも彼らは皆20歳前後という若さだ。

piri & tommy villiers - soft spot



Vierre Cloud – moment



これらのアーティストの多くに共通する音楽的特徴は、ドラムンベースのマッシヴなビートを援用しながらも、フロア向けというよりはベッドルームミュージック的なドリーミーさがあること。そして囁くようなヴォーカルには、ピリの言葉を借りれば「ガーリー」なムードが漂っているということだ。


Spotifyにはプレイリストも存在

Spotifyにはこのムーブメントに特化したplanet raveというプレイリストがあるが、そこで紹介されるアーティストの80%が女性、リスナーも大半が女性なのだという。オリジナルのドラムンベースが非常に男性的な力強さを持った音楽であることを考えれば、この数字は驚きに値する。



Z世代は男性中心主義的だったポップパンクを女性と有色人種が主導する音楽へと上書きし、2020年代へと適合させてみせた。ピンクパンサレス以降のドラムンベース新世代もまた、そのアグレッシヴなビートを「ガーリー」に読み替えることでモダンに生まれ変わらせているのかもしれない。優れたポップ音楽は過去の参照と再定義によって生まれると歴史が証明しているが、Z世代はまさにそれを実践している。

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Edited by The Sign Magazine

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