tricotが語る、「恋愛」を音像化した新曲の裏側
Rolling Stone Japan / 2022年2月16日 18時0分
4人組オルタナティブ・ロックバンド、tricotが今年最初のシングル「エンドロールに間に合うように」をリリースする。
この曲は、佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)×見上愛のW主演でドラマ化された『liar』のオープニング主題歌として書き下ろされたもの。男性目線と女性目線が入り乱れながら進んでいく新感覚のラブストーリーを、プログレッシヴな楽曲展開やフリーキーなギターサウンド、恋愛におけるもどかしい気持ちを綴った歌詞が見事に音像化している。昨年、バンドとしての新境地を切り開いた3rdアルバム『上出来』を出したばかりの彼女たち。すでに次のフェーズへと進んでいることを示すこの曲の制作エピソードについて、メンバー全員に話を聞いた。
─新曲「エンドロールに間に合うように」は、ドラマ『liar』の主題歌ですが、原作を読んでどう思いましたか?
中嶋イッキュウ(Vo, Gt):お話をいただいたときに、まだドラマの映像は出来上がっていなくて原作の漫画と台本を先に読んだのですが、女の子の焦ったい感じ、くっつきそうなのに「くっつかへんのかい!」みたいな感じがすごく面白かったです。オープニング主題歌のオファーをいただいて、やはりそこをフォーカスしたいなと思いました。しかも、ドラマの最後にはちゃんと主人公2人の恋愛が成就してほしかったので、「エンドロールに間に合うように」というタイトルにしました。
─なるほど、タイトルにはそんな意味が含まれていたのですね。ドラマは男女間のすれ違いを、男性目線と女性目線の両方から描いています。
ヒロミ・ヒロヒロ(Ba, Cho):結構、胸がキュンとするようなポイントもあったり、かと思えば急に突き放されるようなシーンもあったり、感情の波が激しいストーリー展開じゃないですか。観ているこちら側も、ドキドキしたりもどかしくなったりと感情移入しやすい作品だなと思いました。私はやっぱり主人公の女性目線にいつの間にかなっていて、とにかく深く考えずに読んでそのままの気持ちで取り組ませてもらいました。
キダ モティフォ(Gt, Cho):女性目線でいうと、「そういうこと、あるよね」と思うことがたくさんあって。話が噛み合わなくなったり、変なところで気持ちがすれ違ったり、周りの人たちの話を聞いていてもよくあるエピソードだなって。そういう意味で、誰にとっても身近なテーマを取り扱っているのかなと。
吉田雄介(Dr):自分は男性なので、他のメンバーとドラマの捉え方が少し違うのかなと思い、そのズレみたいなものを少し楽曲に入れられたらと思いました。男女混成バンドならではというか、どちらかの目線だけにならないような、そういう空気感を曲の中にも入れられたらいいなと思っていましたね。
─実際、バンドの中でも男女の捉え方の違いみたいなことを感じることはありますか?
中嶋:どうですかね。結構、私はメンバーのことをすごく特殊な人たちだなと思うんですよ。みんなジェンダーレスというか、吉田さんの中にも女性っぽいところを感じるし、逆に自分自身や他の女性メンバーの中に男性っぽさを感じるときもあって。メンバー以外の友人と会っている時は、女性だったら「女の子っぽいなあ」とか、男性なら「やっぱ男やな」と思うことの方が多いんですけどね。tricotのメンバーといる時だけは、そういうことをあまり感じない。常に一緒にい過ぎるからなんですかね、本当に性別を感じさせない存在なんです。
吉田:僕もそうです。こういう「男女の違い」について描かれた作品に触れる時は、あえて自分の中の「男性らしさ」を引っ張り出しているというか(笑)。「一般的に、男性目線だとこういうことなんだろうな」というふうに想像している感じで、普段はそんなに「男性らしさ」みたいなことを意識していない。割とフラットな方だと思っています。
─主題歌を作るにあたって、ドラマサイドからは何かリクエストなどありました?
中嶋:オープニングなので、ドラマを盛り上げるためにも疾走感のある曲にしてほしいと言われて、そこは結構苦戦しました。楽曲で表現する疾走感にもいろんな種類があるし、監督が思い描く疾走感を汲み取るまでにはちょっと時間がかかりましたね。「こんな感じかな?」「こういうことなのかも」みたいに、スタジオに入ってみんなで試行錯誤しながら作っていきました。
中嶋イッキュウ(Vo, Gt)
吉田雄介(Dr)
tricotらしい「うねり」の正体
─実際に出来上がった楽曲を聴くと、疾走感の中にもtricotらしい「うねり」みたいなものを感じさせますよね。
中嶋:特にDメロはそうですよね。楽曲全体では、どちらかというとキャッチーさを意識していたのですが、”根くらべでは恋は叶わない”と歌う部分はコード進行も複雑にして、「どこへ向かっていくのか分からないような感じにしよう」と思いました。
吉田:ドラマの中で使っていただくのは楽曲の前半部分ですが、それを聴いて気になってくださった方たちが、続きが気になって聴いてみると「こんな展開があるのか」「こんなことをも歌っているのか」と思ってもらえたらいいなと。それを踏まえて最初から聴き直してみると、また違った感じ方をしてもらえると思います。
─ギターのサウンド面ではどんなことにこだわりましたか?
キダ:上の方で鳴っているギターは、突き刺すような鋭い感じのフレーズや音色を意識しましたね。「溢れ出た女性の感情」みたいなものが表現できたらいいなと。ナンバーガールの田渕ひさ子さんが弾いているような、ショートディレイのかかった音色とか、ハヌマーンの山田亮一さんみたいなギターサウンドを参考にしていますね。
─イントロ部分で鳴っている、高速の低音ギターも印象的です。
キダ:心がざわついているような感じが出せたらなと。
ヒロミ:ベースは、ギターが高音で鋭い感じだったのもあって、あまりジャキジャキし過ぎず曲の下の方でどっしり支えるような感じにしたいなと思いました。原作の中の、尖った部分と柔らかい部分が同居しているような感じが音色でも出せたらいいなと。
─”特別でいたいなら ほんの少しくらいはいつも 損しなければいけないよ”というフレーズは、どのように思いついたのでしょうか。
中嶋:原作の中に近いセリフがあるんですよ。例えば恋人や家族みたいに距離が近い関係性だと、取り繕ったりカッコつけたりしなくていいぶん雑に扱われることってあるじゃないですか。ちょっと他人くらいの方が優しくされる。それって理不尽やし、「その人にとって特別でいる方が損やん」と思うこととか実際にあったので(笑)、このセリフは是非とも歌詞にして入れたいと思いました。
─”根比べでは恋は叶わない”というラインは、どんなふうに思いついたのですか?
中嶋:自分にその経験があったかどうかは分からないんですけど(笑)、原作の二人がどっちも「自分」をさらけ出さずに我慢して、それでくっついたり離れたり不器用に繰り返しているところを見て、すごくもどかしさを感じたので、こういう表現の仕方でエールを送ったつもりです。
─先ほど男性目線、女性目線の話になりましたが、メンバー同士で恋愛話などすることもあります?
中嶋:私はめちゃめちゃしたいんですけど(笑)、ネタが全然なくて……。ほんと、想像を絶するくらい何もないんですよ。なので人の恋愛の話をしたり、自分が恋愛をしたいという話をひたすらみんなに聞かせたりしています。
─あははは。
ヒロミ:私も面白いことがあったら話したいんですけど、特に目立った動きがないので(笑)、イッキュウが話してくれる、それこそ女性らしい恋愛話を聞いたりとかして盛り上がっています。
中嶋:もっとバンドマンに打ち上げとかで口説かれるのかなとか思ってたんですけど、12年間誰も一度もない!(笑)「ほんとにないですよね?」と3人に念を押しても「ほんとに何もない」って。
ヒロミ:3人もいるのになあ(笑)。
中嶋:そっか、ギャルバンって意外とモテへんのや……と思ってたら、周りのギャルバンはみんな口説かれた経験があった(笑)。なんでなんでしょう。
─吉田さんに「男性の立場」からの意見を聞くことはないんですか?
中嶋:他の男友達には男性目線のアドバイスをもらうんですけど、吉田さんは私たちと同じギャル目線で一緒に話しているので(笑)、あまり参考になる意見がないんですよね。
吉田:僕はよそでいっぱいくっつけてるから。
中嶋:なんで私たちはくっつけてくれないんですか!
全員:(笑)
キダ モティフォ(Gt, Cho)
ヒロミ・ヒロヒロ(Ba, Cho)
「ツアーって楽しいなあ」ということを久しぶりに思い出した
─今はちょうどツアー中なんですよね。昨年リリースしたアルバム『上出来』を携えてのライブだと思うのですが、手応えはいかがですか?
中嶋:今回のツアーは、東名阪以外はすごく久しぶりに訪れるところばかりなんです。コロナ禍になる直前の『真っ黒リリースツアー「真っ白」』で行って以来の場所や、それよりもさらに前に行ったきりの場所もあって。その間にアルバム『10』も出しているし、まだ届けていない新曲もたくさんあるし、今回は過去曲も『10』や『上出来』の曲も、ちゃんとバランスよく入れたセットリストにしました。結構とっ散らかった感じになってしまうかなと思ったのですが、ちゃんといい流れになっていたのが自分の中では大発見やったし、新曲に対するお客さんの反応を見ても、期待以上に受け入れてもらっていることが実感できて、やって良かったと思いました。
─マスク着用が義務付けられるなど、制限の中でのライブでもお客さんの反応はちゃんと伝わっているのですね。
中嶋:目から上しか見えなくても、楽しんでくれているのはしっかり伝わってきました。お互いの「生存確認」みたいな感じもあって、本当にやって良かったと思っています。久しぶりのツアーで、自分たちもどんどん勘を取り戻している感じもあったし。
吉田;お客さんの適応力ってすごいなとも思いました。今のこの制限の中でも楽しみ方を見つけているというか。コロナ禍を決して「いい状態」とは言えませんが、この二年くらいで僕らの見せ方も慣れてきたのもあるし、その受け取り方も慣れてきたのもあって、こういう状況でも100パーセント楽しめるのは大事なことやなと思いながらやっています。
ヒロミ:声は出せないけど、拍手をいつもより強くしてくれたり、ハンドサインで「いいね!」をくれたり、拳をたくさんあげてくれたり、その表現も場所によってちょっとずつ違うのも面白かったです。ずっと関東でのライブが多かったのですが、地方へ行ってお客さんの温かみを改めて受け取って嬉しいし、何より「ツアーって楽しいなあ」ということを久しぶりに思い出したというか。自分自身が一番お客さんに楽しませてもらっていますね。
中嶋:コール&レスポンスのような、お客さんとのコミュニケーションは難しいけど、逆に「音楽をちゃんと届ける」ということに対しては、今まで以上に集中できるし、お客さんも今まで以上に集中して聞いてくれているし、そういう意味での緊張感もあって。
吉田:やる側が、お客さんの熱量に甘えられなくなったよね。勢いだけではどうにもならない。今までとは違うやり方も含め、演奏や演出をしっかり届ける気持ちでやらなきゃいけないなと。そういう意味でも「怪我の功名」というか、状況は決してよくないけど、今はいろんなことを学ばせてもらう期間やなと思っています。
キダ:私は今回、新しいペダルエフェクターを色々と導入して、その踏み替えなどがややこしくて大変でした(笑)。でも回を重ねるごとに馴染んでいく感覚があって、それも久しぶりに味わうことだったので「ツアーやっているなあ」としみじみ思いました。久しぶりの土地に降り立って「こういうライブがあったなあ」とか「こういうイベントに出たなあ」みたいなことを、ライブ中に頭の中を駆け巡る瞬間があって、めちゃめちゃエモい気持ちにもなりましたね(笑)。
─3月からは、ヨーロッパにて9カ国18公演を予定しているんですよね。無事に開催されることを祈っています。
中嶋:ありがとうございます。ただ、今のところはまだ全然分からなくて……キャンセルにもなっていないし、絶対に開催できるとも言い切れない状況なんです。行けたらもちろん全力でやろうと思っていますし、もし難しくなってしまった場合でも、何か面白いことをヨーロッパのお客さんに向けてやれたらいいなと思っていますね。
<INFORMATION>
「エンドロールに間に合うように」
tricot
cutting edge/8902 RECORDS
https://tricot.lnk.to/Endroll
最新アルバム『上出来』
https://tricot.lnk.to/Jodeki
■tricot info
HP: https://tricot-official.jp/
Twitter: https://twitter.com/tricot_band
Instagram: https://www.instagram.com/tricot_band_jp/
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC8Xp4bKmRn8cmAzi0cc66KQ?sub_confirmation=1
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