Black Country, New Roadが語る「脱退」とその先の人生、若者が大人になること
Rolling Stone Japan / 2022年2月14日 17時30分
今からお届けするのは2月1日に行ったブラック・カントリー・ニュー・ロード(Black Country, New Road、以下BCNR)のインタビューでの会話だ。その前日の1月31日、バンドは結成時からのメイン・ヴォーカルで作詞を担当してきたアイザック・ウッドの脱退を発表した。
正直、このタイミングでの取材は難しいかなと延期や中止の可能性も覚悟して臨んだが、インタビュイーの二人──タイラー・ハイド(Ba)とチャーリー・ウェイン(Dr)はとても穏やかに、新作について、そしてアイザックやバンドのことについて答えてくれた。
まだ20代前半の彼らの成熟に驚かされるのは、人間性についてばかりではない。むしろその音楽こそ彼らの驚異的な成長を物語っている。2月4日に発売された2ndアルバム『Ants From Up There』は、わずか1年前にリリースされた前作『For the first time』からの飛躍的な進化を物語る作品だ。彼らの音楽的な才能──アイデアの豊富さやそれを実現する演奏や作曲の技術力の高さが遺憾無く発揮されており、このアルバムを20代前半の若者たちが、著名なプロデューサーを雇うといったことをせず、ほぼ独力でバンドとして作り上げたことは驚嘆に値する。
Z世代(BCNRがしばしば抗ってきたラベリングだ)の若者たちによる極めて冒険的で志の高いチェンバー・ロック……音楽的にはまずはこのように表現できるこの作品が、しかし本当の意味で素晴らしいのは、技術的な洗練以上にポップ・ミュージックとしてのリスナーとの感情的な繋がりを強く求めているからだ。このあとの本文にもある通り、僕はこのアルバムを大きく言えば「若者が大人になること」がテーマの作品だと思った。だから文脈は違っていても、インタビューの最後に、タイラーが人生について話してくれたことには何らかの意味を感じた。
今この文章を書く手元には『Ants From Up There』のCDのボックスと付属のブックレットがある。その中には、ワイト島でのレコーディングの時期に撮ったと思われる7人の親友たちの本当に楽しそうな写真がいくつも収められている。ポップ・ミュージックは、人生から生まれてくる。『Ants From Up There』を聴く時、あなたはきっとずっと、そのことを思い出す。
左からアイザック・ウッド(Vo,Gt)、ジョージア・エラリー(Vln)、ルイス・エヴァンス(Sax)、メイ・カーショウ(Key)、タイラー・ハイド(Ba)、ルーク・マーク(Gt)、チャーリー・ウェイン(Dr)
―素晴らしいアルバムを届けてくれてありがとうございます。前作についてメンバーのどなたかがミックステープに喩えていてなるほどなと思ったのですが、対して今回のアルバムは全体のスルーライン(物語の要素をまとめる一貫したテーマ)を意識したという意味でも、バンドの新しい1stアルバムと呼べる作品になったと思います。
チャーリー:うん、僕もそう思う。もちろん前作も気に入っているけど、当時は曲のコレクションを作ること以外はあまり意識していなかった。でも今回は、スルーラインを持たせて、一つの大きな作品としてアルバムを作り上げることが目標だったから、それを感じ取ってもらえてすごく嬉しいよ。
―全体的に前作よりも遥かに構築的で、アコースティックな楽器のサウンドが強調されています。前作から今作に至る一番大きな変化は何だったと思いますか?
タイラー:いくつかあったと思うけど、一番大きいのは「誰のために音楽を書いたか」だと思う。私たちはこれまでずっと「自分たちのために音楽を書いている」と答えてきた。でも、今思うと最初のアルバムは完全にはそうではなかった。基本的にはギグでのパフォーマンスを元に曲が作られていたから、オーディエンスのリアクションを意識していた部分があったと思う。でも今回は(コロナ禍の影響で)ライブができなかったから、自分たちの判断力と分析力をもっと磨いて、何もかも100%を自分たちで判断しなくちゃいけなかった。バンドの間でたくさんディベートをして、全員が賛成するまで続けた。それが一番大きな変化。前回の何倍も頭の中で色々と練って作られたアルバムだと思う。
―スルーラインという点について、僕個人がアルバムから受け取ったのは「少年性をパッケージすること」や、そのための「儀式」、そして「死」といったイメージでした。改めて、あなた方がアルバムを作っている時に考えていたスルーラインについて、メッセージという面から教えてもらうことはできますか?
チャーリー:歌詞的には、あまりスルーラインは定義できないな。メンバー全員がそれぞれ違う意見を持っていると思うし、これがテーマだ、というハッキリしたものはないから。でも音楽的には、もしかしたら歌詞のスルーラインとも繋がるのかもしれないけど、アルバム全体で、悲しみや希望、ノスタルジアが表現されていると思う。僕らは、自分たちの友達と一緒に、自分たちの友達のために、アルバムの音楽を書いた。だからリスナーの皆がアルバムを聴いて、彼ら自身やその友人の経験と結びつけてくれたら嬉しいな。
―そうしたフィーリングは、どこからきたものだと思いますか?
タイラー:曲を書いている時は意識してなかったんだけど、アルバムをレコーディングする前、ツアーの間に書いた曲をメンバーの前で演奏していて初めて、「今はノスタルジックな音楽を作ってるんだな」って気づいたんだよね。そして、皆が曲に繋がりを感じてくれた。一人で曲を作っている時点では、その曲がどんな意味を持っていて、それを聴いて他の人がどんな気持ちになるのかは分からない。外に出して人の反応を見ることで、それに気づかされるんだよね。
―新作はワイト島の「Chale Abbey Studios」でレコーディングされたそうですね。ロンドンから離れた環境で、バンドと親しいエンジニアで離島に籠ってレコーディングをするという判断は、勢いに乗るバンドとしては大胆な選択だったと思います。同じタイミングで、ヒット・メーカーと働くことを選ぶバンドもいると思いますが、なぜ今回のような方法を採用したのでしょうか?
チャーリー:まず、レコーディング前に分かっていたことの一つは「ロンドンではレコーディングしたくない」ということだった。なぜかはわからないけど、メンバー全員がロンドンでレコーディングをするのは違うように感じていて、どこか海に近い田舎町に行きたがっていた。ワイト島は海を渡らないと行けないから、ロンドンから切り離された感じがすごく良かったんだ。
あと、もう一つ分かっていたのは「プロデューサーを雇いたくない」ということ。できるだけリアルなライブ・サウンドにしたかったからね。最終的にはサウンド・エンジニアのセルジオがプロダクションを手がけてくれて、彼と(Chale Abbey Studiosのエンジニアの)デイヴィッド・グランショウが、僕らが作ったサウンドをより良いものに進化させてくれた。セルジオは、すごくエネルギーとアイデアを持っていたし、これまでアルバムに関わったことが無かった分、お互いにとって新しい経験を得ることができたという意味ですごく良かったと思う。一方のデイヴィッドは経験豊富で、僕らの若いサウンドをキュレートしてガイドしてくれた。二人のおかげでレコーディング全体がすごく落ち着いて、リラックスして取り組めたよ。
「シンプルに聴こえて実は複雑な音楽」
―そう言えば、チャーリーは昨日(1月31日)のツイートで「the second best album of all time」(=新作アルバムのこと)をリリースすると書いた後に、「llinois #1」と呟いていましたよね。
タイラー:チャーリー! なんでそんなこと呟いたの?!(笑)SNSなんてやってないでドラムに集中してなきゃ!
チャーリー:ははは(笑)。そう。スフィアン・スティーヴンスのアルバムのことだよ。
―少し意地悪な質問ですが、新作が『Illinois』に負けているかもと思う点と、負けてないと思う点を、それぞれ教えてもらえますか?
チャーリー:まず初めに、僕がSNSで発言したことについて質問されたのは初めてで、これが最後になることを祈ってる(笑)。もちろんあれはジョークだよ!
でも、『Illinois』は僕にとって不動のお気に入りアルバムの一つで、本当に非の打ち所がないアルバムと思う。今回のアルバムを作る前に何度も何度も聴いたレコードで、あの演奏の濃密さが好きだし、とにかく美しいアルバムだと思う。ハーモニーも完璧だし、その完全な世界にどんどん惹き込まれていく感じがする。色々な要素が詰まっているんだけど、静かで余白が感じられる部分もあって、『Illinois』以上に惹きつけられた作品はないんじゃないかな。
これは負けないという点は、『Illinois』ではカズーが使われてないところかな(笑)。僕らのアルバムでは、「Basketball Shoes」の終わりの方でカズーがふんだんに使われているからね。
―実はこの質問をしたのは、あなた達がいつもバンドの音楽が目指しているものを単に「良い音楽」や「ポップ」のような、とてもシンプルな言葉で説明しているのを読んで、そういった言葉にどういう基準が含まれているのかを詳しく聞きたいなと思っていたからなんです。BCNRの音楽はアレンジの一つまで注目したらすごく複雑に作り込まれています。だからこそ、そこで言う「ポップ」という言葉のニュアンスを知りたくて。
タイラー:ポップって幅が広すぎて定義するのはすごく難しいよね。でも共通して言えるのは、多くの人に受け入れられているって部分だと思う。一番好まれているジャンルということでもそうだし。
私にとっての良いポップ・ミュージックは、シンプルに聴こえて実は複雑な音楽のこと。ポップ・ミュージックの良いところは、シンプルで、どこかで聴いたことがあるようなサウンドだと思わせるところで、それって実はすごく良いフィーリングだと思う。聴いたことがないはずなのに聴いたことがある感じがする、つまり(リスナーが)繋がりを感じられるサウンドを作るっていうのは、本当にすごいことだよね。
去年、私たちは曲の構成を学ぶためにABBAの音楽を聴いたんだけど、実際に研究をしてみると実はすごく複雑な音楽なんだと気がついた。シンプルであると同時にリスナーが繋がりを感じられる曲を作るには、勉強が必要なんだって心の底から思った。自分では予測できないようなコード進行もあって、そういうのって一見シンプルさとはかけ離れているように感じるけど、実は繋がっている。複雑なものが音として空気に漂うと姿を変える。それは新しい発見だったな。
―ではバランスという点ではどうですか? BCNRのメンバーは楽器演奏に長けていて一曲の中での音楽的な参照点も多い。「Bread Song」でのスティーヴ・ライヒや、「The Place Where He Inserted the Blade」でのボブ・ディランの参照もそうですし、他にも例えば「Basketball Shoes」にはカマシ・ワシントンからの影響があるように思いました。
チャーリー:あぁ、うんうん。
―そういった風にアイデアが豊富な一方、曲をシンプルに保つことは大変なのではないかと想像するのですが、メンバー内ではどのようなやりとりをして、そのバランスを取るのでしょう?
タイラー:それは意外と簡単なんだよね。というのも、意見はたくさんあっても、全員一致で賛成する意見は少ないから。私たちは曲を作る上で、全員が「イエス」というアイデアしか採用しない。反対の人がいたら、その人を説得するか他の解決策を見つける必要がある。もしくは逆に反対の人が賛成のメンバーを説得するか。選択肢がたくさんあっても、皆がオープンになって積極的に意見を言い合えば、採用されるものは時間をかけずに自然と見えてくるんだ。私たちは親友同士でお互いをすごく信用しているから、全員がその過程に関わってる。特に誰が主導権を握っているみたいなことはなくて、全員が平等にね。
―じゃあ、時には誰かがどこかで「これはやり過ぎだ」と判断する?
タイラー:そう。何回もね(笑)。でも、1stの時よりはだいぶ減ったと思う。あのアルバムで、音の中にスペースを与えることを学んだから。お互いに音の空間を与え合うことの大切さを、今は前よりも理解できていると思う。
―メンバーの平等性という話とも関係するかも知れませんが、BCNRの音楽をポップ・ミュージックとしてユニークに感じる点のひとつに「必ずしもヴォーカルが曲の中心にあるわけではない」というところがあります。昔レディオヘッドが「自分達はバンドというよりオーケストラ」という比喩を使っていましたが、BCNRもまさに一種のオーケストラとしてバンドがいて、ヴォーカルもその構成員という感じがします。
チャーリー:レディオヘッドと比較してもらえるなんて光栄だよ。オーケストラとまではいかないけど、その要素はあるんじゃないかな。確かに、どの楽器もヴォーカルと同じくらい大切だし、大きな役割を果たしているからね。言葉と同じようにストーリーを語れるわけじゃないから、ヴォーカル程の強いインパクトはないかもしれないけど、曲を作るにあたっては楽器もヴォーカルと同じくらい欠かせないものだと思ってる。そういうバンドのあり方が、僕たち全員にとっての、このバンドの正しいイメージなんだ。
―そういう点で影響を受けたり、共感する他のバンドやアーティストはいますか?
タイラー:うーん……(二人とも悩んでいる様子)地元のバンドについて考えてみたけど、たぶんdeathcrashかな。
チャーリー:確かに! それは良いチョイスだね。
タイラー:ヴォーカルの出て来る感じが、ルイスのサックスのメロディが出て来る感じと似ていると思う。色んな楽器やヴォーカルが絡み合った感じ。誰かが前に出てきて演奏して、また戻って次の誰かのためにスペースを与える部分も似ていると思う。
―なるほど。ただ、先ほどスフィアン・スティーヴンスの話もしましたが、彼やアーケード・ファイア、あるいは、ザ・ナショナルやディランなど、あなた達の新作を聴いていると北米産の音楽との繋がりを感じることが多い一方で、ブラック・ミディなどの例外を除くと、今のロンドンのシーンに音楽的な共通点を持っているバンドは多くない気がします。ロンドンあるいはサウスロンドンのシーンと自分達の音楽の関係性について、今はどのように捉えていますか?
タイラー:ロンドンのシーンも、ここ数年はパンデミックの影響を大きく受けているよね。皆が同じベニューで定期的にプレイできなくなって、お互いの演奏を観なくなったから音楽的に前ほどコネクトしていない気がする。
でも、それとは関係なく、私たちは最初からあまりそういうシーンの中心にはいなかったようにも感じるな。それに「サウスロンドン・シーンのバンド」と言ってもサウンド的な共通点って元からあまりなくて、ユニークなサウンドを作っているバンドがたくさんいる。だから、サウスロンドンっぽいサウンドっていうのは実は無いのかなとも思う。
チャーリー:僕も同じ。僕らは「サウスロンドンのバンド」と呼ばれるほど、そこに関わってないと思う。サウスロンドンではそこまで演奏もしてないしね。ファット・ホワイト・ファミリー、シェイム、ゴート・ガール、ブラック・ミディ、それに僕らみたいな、ウィンドミルから出てきたバンドという意味でのシーンみたいなものなら以前はあったと思うけど、今はそこからまた枝分かれしてる。
その辺りのバンドがいまだに一括りにされるのは、パンデミック前にウィンドミルで演奏していた最後のバンド達だったからじゃないかな。その後は、そもそもギグが無かったから新しいバンドに注目が向いてないだけで。だからまた以前のように、皆が活発にギグをできるようになったら、ウィンドミルからも色々なバンドが出てきて、以前僕らがそう認識されていたように彼らが「サウスロンドンのバンド」と呼ばれるようになるんじゃないかな。
―では、もっと大きな括りで、「英国のバンド」という意味ではどうですか? 自分達が英国のバンドだと感じることはある?
タイラー:英国生まれではあるけど、それを代表しているわけじゃないかな(笑)。偶然イギリス出身というだけで、イギリスらしさとかそういうのは意識してない。
チャーリー:うん、僕もそう思うね。
アイザック脱退に思うこと
―最後に、昨日の出来事について教えて下さい。アイザックの脱退が発表され、北米を含む今後のツアーも全てキャンセルとなりました。今回はアイザックの気持ちを考慮しての結論で他に選択肢はなかったと思いますが、アルバムの発売を控えた時期での大きな決断だったと思います。改めて今の心境を教えてもらえますか?
タイラー:正直ホッとしてる。私たちの中だけでずっと秘密にしていたけど、そこから解放されたから。これに関しては長いこと話していたから、いきなりアイザックがバンドをやめるわけじゃないんだ。だから大きなショックを受けたとか、そういうのはなかった。
でも一番悲しいのは、一緒に活動を続けて作品を作ってきた過程で、皆の距離がもっと近くなったのに、バンドが大きくなったことでアイザックへのプレッシャーが増えてしまっていたこと。自分が大好きな人が辛い思いをしているのを見ているのは辛いよね。彼がバンドを抜けてしまったのはすごく悲しい。でも、彼がそれでよりハッピーになれるならそれが一番。だから、私たちも大丈夫。皆にとって良いことだし、皆がより良い方向に行けると思う。
―彼の脱退については、アルバムを作っているタイミングから話していたのですか?
チャーリー:いや、アルバムの制作中はその話はしていなかった。ヨーロッパ・ツアー(※)の後、アイザックがバンド活動に対して難しく感じるようになってきて、去年の末に「これ以上バンドにいるのは難しい」ということを僕たちに話してくれた。タイラーが言った通り、その決断をしてから彼はすごく健康的に見えるし、それが僕らにもすごく嬉しい。彼が抜けて大変な部分もあるけど皆がハッピーなのが一番だから。
※BCNRは2021年11月、同年中に予定されていたヨーロッパ・ツアーを中止・延期することを発表していた。
―アイザックは脱退しますが、新作はBCNRの作品として残り続けます。このアルバムのアイザックの歌を、どんな風にリスナーに聞いてもらいたいですか?
タイラー:それは考えたことなかったな。アルバムは、聴く人それぞれが好きなように、自分自身のために聴いて欲しいから。
チャーリー:そうだね。僕らは自分たちの音楽を「この部分はこのメンバーがメイン」みたいに分けて考えていないから、彼がバンドを抜けたからといってアルバムの捉え方や受け取り方は変わらないし、それが作品の内容を変えるわけでもないと思う。例えばアルバムのレコーディング中に僕が足を怪我したとしても、そのアルバムが「足を怪我したチャーリーが作った作品」になるわけじゃないみたいな感じかな。もちろん、アイザックが参加した最後の作品にはなるけど、アルバム自体はそれを意識した作品じゃないし、それ以上のものがたくさん詰まった作品だと思うよ。
―では、あなたたち自身は本作の彼の歌声を今どのように聴いていますか?
タイラー:もしかしたらアルバム全体を通して脆弱性は感じるかもしれない。でも、それも思い込みかもね。アルバムを作っていた時は、アイザックはハッピーだったから。ワイト島にいた時は本当に楽しかった。7人の友達全員で音楽を作って、素晴らしい時間を過ごせて、皆それがすごく嬉しかった。だから、彼のヴォーカルを聴いて悲しさを感じるのは違う気がする。その悲しみはレコーディングの時には存在していないし、サウンドに反映されているわけじゃないから。
―発表によれば、既に新しい曲にも取り組んでいるそうですね。
チャーリー:うん。今はタイラーが本当に素晴らしい曲を書いているところで、ヴォーカルはグループ全員に振り分けようと計画しているところ。
タイラー:最近は「週に何回練習をするか」みたいな自分たちのルーティンをまた整え始めたところ。今年はそうやって穏やかにスタートして、年内のどこかでショーを始められたら良いなと思うけど、まだいつになるかは決まってないんだ。次のサウンドについても、考え過ぎると逆に曲が書けなくなっちゃうから、あまり意識しないようにしてる。今はただ、皆と自由に時間を過ごして、曲を書いていようと思う。
歌詞やヴォーカルを通して自分をさらけ出すのって、すごくチャレンジングなことだと思うんだけど、アイザックはバンドの中で一番それをやっていたんだよね。だからこれからは、私たち全員がより均等に自分たちの感情を見せていくことが大切になってくると思う。例えば、ショーの時にもし私がその日あまり気分がすぐれなかったら、チャーリーでもルイスでもメイでも、誰かが代わりにリードをとれるような状態を作っていけたら良いな。
―インタビューはこれで終わりですが、スフィアンの話で思い出したことがあって。2008年に『Illinois』のツアーを東京で見たのですが、その時のギタリストが後のセイント・ヴィンセントだったということを後から知って……。
タイラー:そうなんだ!彼女は最高のギタリストだよね。
―はい。それで、BCNRのメンバーもそれぞれ別のプロジェクトに参加していますよね。今のロンドンは、そういうコラボレーションが増えることで、よりクリエイティブな状態になっているのだと思うのですが、一方でスケジュールの面などで難しさを感じる場面はないのかな?と。
チャーリー:活動を続けてきて、今はこのバンドにもっと時間が掛かるようになってきたね。特にジョージアは、BCNRと自分のプロジェクト(ジョックストラップ)の間でバランスを取るのが大変になってきたんじゃないかな。でも時間がある限り、そういう活動をすることは素晴らしいし、楽しいと思う。その経験をバンドに持って帰ってくることだってできる。僕ら全員にとって、BCNRがメインの活動だし、このバンドで音楽を作るのが一番楽しいというのは共通して言えることなんじゃないかな。
タイラー:グループとは別の部分で情熱を持つことって、すごく大切だと思う。いつも同じ友達の輪の中にいるだけじゃなくて、それ以外の友達とも関わるのが大事なのと同じように、BCNR以外の世界を見ることもやっぱり大事だよね。それがバンドにとっても新しいインスピレーションになる。私たちの人生そのものはBCNRよりもずっとスケールが大きい。だから、人生全体を見ながら、その一部としてバンド活動をする、というのも重要だと思う。
ブラック・カントリー・ニュー・ロード
『Ants From Up There』
発売中
国内盤CD:歌詞対訳・解説、ボーナストラック収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12146
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