BTSが描いた「未来」の姿 米ローリングストーン誌カバーストーリー完全翻訳版
Rolling Stone Japan / 2022年3月8日 20時15分
1967年に米国にて創刊された「Rolling Stone」誌の歴史において、 アジア人のグループで表紙を飾るのはBTSが初。 昨年2021年6月25日発売の「Rolling Stone Japan vol.15」では、世界的に話題となった本号のBTSの表紙とBACK COVERのスペシャルW表紙仕様で、撮り下ろしの写真とともに、 メンバーの素顔に迫ったインタビューを掲載した。その本国版ノーカット日本語訳の記事をWEBにて初公開する。音楽ビジネスのルールを書き換え、世界で最もビッグなグループとなった若きスーパースターたちの軌跡とは?
※本記事は、2021年6月25日発売「Rolling Stone Japan vol.15」に掲載されたものです。
世界を制したBTS
「すごくシリアスで深い質問ですね」。いま世界で最もビッグなバンドのリーダーを務める、26歳のRMはそう話す。彼は押し黙り、どう答えるべきか熟考していた。あらゆる境界線を無効化し、業界の常識を覆して世界制覇を果たした、韓国出身の才能ある7人からなるBTSが描くユートピア的にしてディストピアンでもある未来像は、誰もがつながっている21世紀という時代における新世界のイメージを地でいくように思える。
有無を言わせぬカリスマ性、ジャンルに縛られないクールかつパーソナルな音楽、「有害な男らしさ」とは無縁のカジュアルな佇まいまで、BTSのあらゆる魅力はより希望に満ちた未来を想起させる。しかし、目の前のRMが今考えているのは、世界各地でアジア系の人々に対する不当な暴力と差別が頻発する不穏な状況と、BTSという存在がどういったコントラストをなすのかということだ。
「僕たちはアウトサイダーです」。RMはそう話す。「僕たちはアメリカの音楽市場に参入し、大きな成功を収めました」。キャリアの開始から7年目にあたる2020年、BTSにとって初の完全英語詞のシングル「Dynamite」はNo.1ヒットとなり、韓国の大統領である文在寅は前人未踏の偉業を讃えるコメントを発表した。韓国は長い時間をかけて、Korean Waveと銘打った海外での自国文化の推進に投資してきた。
「いうまでもなく、今はユートピアなど存在しません」。RMはそう続ける。「光が差すところには、必ず闇が生まれる。僕たちの行動のすべて、そして僕たちの存在そのものが、外国人を排斥しようとするネガティブな風潮に対するアンチテーゼになってくれればいい。それが僕たちの考え方です。マイノリティに属する人々が、僕たちという存在からエネルギーと勇気を少しでも受け取ってくれたらと思っています。外国人を忌み嫌う風潮は確かに存在するけれど、オープンなマインドを持った人々だってたくさんいる。僕たちがアメリカで成功を収めたという事実そのものが、とても大きな意味を持っているんです」
2021年6月米ローリングストーン誌の表紙を飾ったBTS( 左から:SUGA: JACKET, PANTS, AND SHOES BY GIVENCHY. RM: JACKET, SHOES, NECKLACE, AND RING BY GIVENCHY; SHOES BY INSTANTFUNK. JIN: SHIRT BY GIVENCHY; SHOES BY PRADA. V: JACKET, TOP, AND PANTS BY GIVENCHY; SHOES BY PRADA. J-HOPE: SUIT, SHIRT, SHOES, AND RING BY GIVENCHY. JUNG KOOK: JACKET, PANTS, AND RING BY GIVENCHY; SHOES BY PRADA. JIMIN: SHIRT AND PANTS BY GIVENCHY; SHOES BY SYSTEM HOMME.)
韓国・ソウルに拠点を置く所属レーベル本部の防音室にいるRMは、同席している通訳者の保護を目的とした白の医療用マスク、黒のバケットハット、LA発のラグジュアリーブランドFear of Godのパーカーを身につけている。アメリカでのトークショーで何度も語ってきたように、彼は『フレンズ』のDVDをくり返し観ることで、その見事な英語力を身につけたという。それでもなお、会話の内容が複雑になる場合には、彼は通訳をつけることにしている。
RMは複雑なものを好む。当初は一流大学に進学する予定だった彼は、韓国のグループEpik Highとの出会いを通じてヒップホップにのめり込んだことをきっかけに、スーパースターダムへの道のりを歩み始める。BTSの所属レーベルBig Hit Entertainment (現・HYBE)の設立者であり、キャラは強烈だが理解ある叔父のような存在である大物プロデューサー、パン・シヒョクは、2010年にまずRMと契約し、彼のラッパーとしての才能とカリスマ性をベースにしてBTSを形作っていった。シヒョクはこう話す。「RMと初めて会った時、その音楽的才能と物事に対する考え方に惹かれた私は、彼を一流のアーティストに育て上げることが自分の使命だと感じました」
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7人の個性が揃うまで
2013年にBTSがデビューを果たした時点で、3つの大手レーベル(シヒョクはその1つであるJYPの専属プロデューサーだった)がパワーを持っていた韓国の音楽業界において、Big Hitはいち弱小レーベルに過ぎなかった。また同レーベルは、ミュージックビデオの制作中に資金が底をついたと報じられていた。しかし現在、BTSが収めた成功のおかげでHYBEは巨大な株式公開会社となり、先日ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデを抱えるアメリカのマネージメント会社を買収した。「私たちは非現実的にさえ思える目標と基準を設け、少しでもそこに近づこうと常にベストを尽くしています」。シヒョクはそう話す。「それは当時から変わっていません」
長期にわたる人材発掘とオーディションを経て、RMと同じくラッパーのSUGAとJ-HOPE、シンガーのJUNG KOOK、V、JIMIN、JINの6人がBTSに加入することになった。最年少メンバーでありながら、圧倒的にソウルフルなテナーボイスの持ち主であるJUNG KOOKは、複数のエージェンシーから契約の話を持ちかけられていたが、RMの存在を理由にBig HitとBTSを選んだという。「RMがとにかくクールだったから」。JUNG KOOKはそう話す。「僕はシンガーがどういうものなのかを、よく理解していませんでした。でも彼がラップするところを見て、ものすごく刺激を受けたんです。運命が僕たちを引き合わせてくれた、僕はそう信じています」
RMに続いてSUGAとJ-HOPEが加入した時、シヒョクはストレートなヒップホップのグループをイメージしていた(当初は他にも複数のラッパーを訓練生として抱えていたが、ポップミュージックとのハイブリッドというBTSの方向性が定まったことで、代わりにシンガーを迎えることになった)。同じくEpik Highのファンであり、T.I.等のアメリカのラッパーも好きだというSUGAは、グループに加入した時点で既に優れたラップのスキルを身につけていたが、両親には理解されなかったという。「父も母も、ラップは好きじゃなかったんです」。SUGAはそう話す。「だから僕が進もうとした道に、2人が反対したのも無理はなかった。両親に認めてもらいたいがために、僕はより努力を重ねることができたと思うんです」。2016年発表のハードなソロ曲「The Last」(Agust Dの名で発表)で、SUGAは自身がOCD、社会不安、そして鬱と格闘していることを告白した。「今は楽になったし、気分もいいんです」。彼はそう話す。「それでも、ネガティブな感情というのはふとした時に訪れます。そういった感情は隠すのではなく、口にすることで誰かと話し合うことが大切だと思う。どんな感情を抱えていても、僕はそれを表現するだけの覚悟が常にできています」
グループいち明るい性格の持ち主であるJ-HOPEは、メンバーたちから愛されるムードメーカーだ(「J-HOPEなら世界の大統領になれるんじゃないかな」というVのコメントに、RMがこう付け加えていた。「少なくとも、僕たち6人の票は得られるでしょうね」)。J-HOPEは突出したスキルを持つダンサーだが、訓練生だった頃にメキメキと力をつけた彼のラップスタイルは驚くほどアグレッシブだ。「僕がトレーニングを始めた頃、他のメンバーは全員ラッパーでした」。彼はそう話す。「教室に入るとビートが流れていて、誰もがフリースタイルでラップしていました。慣れるまでは少し苦労しましたね」
元々は演技の勉強をしていたJINは、単にルックスがいいという理由で、Big Hitのスカウトマンから路上で声をかけられた。今では確かな音楽的スキルを身につけた彼は、自身の容姿が取り沙汰されることへの冷やかしをむしろ楽しんでいる。「はっきり言って、僕はとんでもなくモテました」。最近出演した韓国のバラエティ番組内で、彼はそう語っている。その一方で、彼は自信に欠ける部分もあるという。「僕には欠点が多いんです」。彼はそう話す。「他のメンバーは一度のレッスンで振り付けを覚えて踊ることができますが、僕にはできない。だから他のメンバーの足を引っ張らないよう、僕は人一倍努力しないといけないんです」
ジャズとクラシックとエルヴィス・プレスリーが大好きで、特徴的なバリトンボイスの持ち主であるVは、オーディションに参加した友人の応援に駆けつけたところ、Big Hitの訓練生として迎えられることになった。BTSが2013年6月にデビューするまで、彼は数々のビデオブログやオンラインプロモーションに一切登場しない「影のメンバー」だった。
「今でもよくわからないんですよ」。彼は笑ってそう話す。「何のために、どういうコンセプトがあってのことだったのか、まったく理解できていませんでした」(シヒョクはその疑問にこう答えている。「BTSというチームが完全な形になったことを発表する前に、世間の期待を膨らませる必要があったんです。Vはルックスとパーソナリティの両面で魅力的でしたから、インパクトを生むために最後に発表するべきだと思いました。グループ全体のイメージを形成することと、各メンバーの個性について知ってもらう上で効果的な戦略だったと思っています」)。
加入前からダンサーとしてのトレーニングを受けていたJIMINは、BTSの中でも屈指のハイトーンボイスの持ち主だ。また、彼は何かにつけて完璧志向である。「僕にとって、ダンスは自分だけの世界に没入する手段でした」。そう話すJIMINは、非の打ち所のないパフォーマンスはBTSのファンがあってこそだと考える。「彼らのひたむきな情熱に応えるためにも、ミスを犯すわけにはいかないんです」
彼はチームのメンバーたちとの間に、強い絆を感じている。「BTSはまるで異なるパーソナリティの持ち主が集まって生まれたグループです」。JIMINはそう話す。「もちろん、当初は口論が絶えませんでした。でも多くの時間を共に過ごすうちに、以前は苦手だったメンバーの特徴が魅力にさえ思えるようになりました。共に過ごした時間が互いの距離を近づけ、家族のような絆が生まれたんです。どこに行こうとも、いつだって自分が帰るべき場所。今の僕にとって、このグループはそういう存在なんです」
RMが2017年にラップ・モンスターという当初のステージネームから正式に改名したことは、その名前が自身の実直なイメージと結びつきにくいからだろう。彼は取材の場でニーチェや抽象画家のキム・ファンギの言葉を引用したり、レアなファインアート本の再版を実現させるために、26歳の誕生日に約8万5000ドルをある博物館の基金に寄付するような人物だ。二重もしくは三重の意味を持つライムを次々と繰り出すRMとSUGAのスキルは、BTSの存在を気にかけたことのなかったアメリカのラップリスナーたちを驚かせたが、彼らが韓国語を理解できるか、その意味をオンライン翻訳で調べれば、さらに大きな衝撃を受けるはずだ。「言葉の壁を避けて通ることはできないですからね」。そう話すSUGAは現在、英語力の改善に日々努めている。
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根底にあるテーマ
分析心理学に基づいたアルバムのリリースサイクル、冥王星の惑星としての地位の喪失をロマンチックなメタファーとして用いた曲「134340」、迷宮のように複雑な単一のストーリーラインを紡いでいくミュージックビデオの数々など、深淵なテーマの探求はBTSの個性のひとつとなっている。ステージにおける曲間のMCでも、深いテーマに言及することが少なくない。「僕たちは誰もが、心の中に宇宙を有しています」。アリーナを埋め尽くしたファンに向かって、RMはそう言った。「毎日仕事に出かけていく僕の父、不動産業者の母、まだ幼い妹、路上で見かける野良犬や野良猫、さらには道端に転がる石にさえも、それと同じことが言えるのです。しかし、この世を去る瞬間までそれに気づかない人々もいます」(彼が共同作曲者としてクレジットされているBTSの2019年作「Mikrokosmos」では、類似するテーマが取り上げられている)
ステージからファンに語りかける際に、メンバーが涙を流すことは決して珍しくない。メイクや玉虫色のヘアも含め、古めいた男らしさの定義を否定することはBTSの本能だと言っていい。「男らしさというのは、今や時代遅れのコンセプトです」。RMはそう話す。「僕たちはそれを破壊しようとしているわけではありません。しかし、自分たちがポジティブなインパクトを生んでいるとしたら、とてもうれしく思います。僕たちは今、そういったレッテルや制限が不要な時代に生きているのですから」
「No More Dream」や「N.O.」などに見られるように、初期のBTSは学校や雇用市場での継続的なプレッシャーや他人との比較など、韓国の若者たちが抱えるフラストレーションをストレートに表現していた(90年代に同様のテーマを掲げていたK-POPの先駆者ソテジワアイドゥルは、当時のメインストリームだったアメリカのヒップホップやR&Bをベースにしていたという点においても、BTSの祖先にあたるような存在だ。彼らの1stシングルは、パブリック・エネミーの「Bring The Noise」をサンプリングしていた)。BTSは初期に発していたそういったメッセージと、より最近の曲の歌詞に見られるアイデンティティや自己愛、メンタルヘルス等のテーマが世界共通であり、自分たちがその代弁者になり得ることを自覚するようになった。そして実際に、彼らは国際連合総会の場で二度にわたってスピーチを行っている。
BTS, photographed in Seoul on April 6th, 2021
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Vs coat and top by Fendi; pants by Lemaire. Sugas shirt and pants by Dior Men. Jins jacket, top, and pants by Dior Men. Jungkooks coat, top, and pants by Fendi. RMs shirt, pants, and bracelet by Fendi. Jimins shirt and necklace by Louis Vuitton. J-Hopes coat and pants by Fendi; ring by FOTL; necklace by Wilhelmina Garcia.
「そういったメッセージを持つ曲を書いた時、当然ながら、僕たちはアメリカや他の国の教育制度などを意識してはいませんでした」。RMはそう話す。「当時、僕たちはみんな10代でした。学校という場の不条理や、ティーンエイジャーに特有の不安や恐怖など僕たちが実際に感じたり経験したりしたことを歌にしていました。しかし、若者のそういった考えや感情に国境はなく、アメリカをはじめとする欧米諸国の人々も、韓国で暮らす僕たちと同じように感じていたんです」
BTSの正式名称はBangtan Sonyeondan(防弾少年団)であり、その意味を大まかに説明すると「魂のレベルで結びついた若者たちの友人」となる(彼らは後に、BTSが「Beyond the Scene」の頭文字でもあることを明言した)。「彼らを偶像にはしたくありませんでした」。シヒョクは以前にそう語っている。「BTSはファンにとって、親友のような存在であるべきだと思っていました」
去年の12月、パンデミックに支配された1年に対するポップミュージックからの決定的回答というべき切ないバラード、「Life Goes On」でBTSは再びアメリカのチャートの頂点に立った。しかし、歌詞がほぼ全編韓国語だったため、同曲がアメリカのラジオ局で流れる機会は皆無に等しかった。チャートアクションはストリーミング回数とダウンロード販売に支えられており、同曲に対するニーズの高さに疑いの余地はなかったが、各ラジオ局の態度は頑なだった。それでもRMは、その壁が崩れる時がやって来ると信じている。「心で感じてもらえたら、彼らの考えは変わると思うんです」。彼はそう話す。「壁は確かに崩れつつあり、止まることはありません」
BTSは5月21日に、「Dynamite」に続く全編英語詞のシングル「Butter」を発表する。エンターテインメント志向の強かった「Dynamite」と同様に、「Butter」にも重みのあるメッセージ性は見られない。ブルーノ・マーズにも通じるレトロなタッチに、ジャム&ルイスを思わせるシンセと”バターのような滑らかさ”、そして”スーパースターとしての輝き”を持った同曲は、ピュアでエネルギーに満ちたダンスポップだ。「すごくパワフルな曲になりました」。RMはそう話す。「とても夏っぽくて、ダイナミックなパフォーマンスが魅力です」。発表を控えているのは同曲だけではない。過去にBTSとタッグを組んだ複数の欧米のソングライターたちは現在、彼らと新曲を制作中だという。
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音楽性の秘密
BTSは一流の制作陣を迎えることで、従来のK-POPアクトだけでなく、売れっ子ソングライターたちの独壇場となっているアメリカのポップスとも一線を画してきた(最近ではARMYと呼ばれる彼らのファンの間で、BTSがK-POPなのかどうかという議論が白熱しており、その多くは彼らがその枠組みを超越していると主張している)。「彼らはオーガニックでユニークな存在だ」。BTSのファンであり、深夜のトーク番組の司会を務めるジェームズ・コーデンは、2017年以来彼らを複数回番組に招いている。「彼らは機械の一部だという感じがしない。彼ら自体がマシーンだからだ」
RMとSUGAは何年も前から楽曲制作を続けており、SUGAは他のアーティストの楽曲にも数多くクレジットされている。彼らが手がけた曲を除けば、BTSの楽曲のプロダクションと作曲の大半はシヒョクと、Big Hitの専属プロデューサーおよびソングライター陣とのコラボレーションを基本としていた。2017年頃からは欧米のソングライターとプロデューサーを起用する機会が増えたが、彼らもあくまでチームの一員に過ぎない。
プロデューサー勢を束ねるPdoggは、世界中に散らばるクリエイターたちの作品の中から選りすぐりのメロディとセクションを使う場合が多い。「送った曲に対して、『この部分とこの部分が気に入った』みたいなフィードバックが返ってくるんだ」。2020年発表の「Black Swan」「On」に参加したフィリピン系カナダ人プロデューサーのオースト・リゴはそう話す。「そこから『このヴァースを使用して、このセクションは見送る』という具合に進めていく。BTSとのコラボレーションは、一緒にパズルのピースをはめていくような感じなんだ。2日間とかで完成するようなものじゃなくてね。数カ月かけて、修正を6〜7回繰り返す」
イギリスを拠点とするプロデューサーのデヴィッド・スチュワート(ユーリズミックスのメンバーではない)と、彼のクリエイティブパートナーで同じく英国人のジェシカ・アゴンバーが手がけた「Dynamite」は例外だ。HYBEはBTSが全編英語詞のシングルを制作中であることを事前に公表した上で、BTSと共に複数の候補の中から同曲を選んだ。「BTSが予定通りにツアーに出ていれば、『Dynamite』がリリースされることはなかったでしょう」。シヒョクはそう話す。「あのプロジェクトを選んだのは、パンデミックがもたらした状況に対する反動としてムードを変えるためでした。BTSに合っていると感じたし、あのトレンディな雰囲気には英語詞の方がフィットしたんです」
パンデミックによる規制下でも交流できる「安全圏」をメンバーたちで形成したBTSは、昨年の大半をスタジオでの作業に費やした。
「Dynamite」をシングルとして発表した後、11月には彼らのディスコグラフィーにおいて最もメロウかつ洗練されたアルバムであり、「Life Goes On」を収録した『Be』をリリースした。それでも、2020年は彼らが訓練生としてBig Hitに迎えられて以来、最もオフの日が多かった1年となった。何年もの間、彼らは苦笑いを浮かべながら睡眠が足りていないとぼやいていたが、ようやく身体をしっかりと休めることができた去年は自分を見つめ直すことができたと語っている。口にこそ出さなかったものの、訓練生時代に配達員のアルバイトをしていた頃から肩の痛みに悩まされていたというSUGAは、昨年手術を受けたという。今ではすっかりよくなったというが、SUGAはこう話す。「ステージでのパフォーマンスで、十分に腕を上げられない時期もありました」
ARMYとの絆
BTSとARMYの絆は固く、メンバーたちはファンとの交流とツアーの日々を心から恋しく思っている。「ツアーに出られなかった時、誰もが喪失感と無力感を覚えていました」。JINはそう話す。「すごく悲しかった。そういう気持ちを克服するまでには、しばらく時間がかかりました」
「オーディエンスとARMYの歓声が、僕たちは大好きなんです」。JUNG KOOKはそう話す。「彼らを恋しく思い、会いたい気持ちは募るばかりです」
ファンが彼らにそうするように、BTSはARMYの熱意に応えることに情熱を傾ける。「ARMYは僕たち以上に冷静なんです」。RMはそう話す。プロ級のドキュメンタリー制作、多大な労力を伴うリサーチや翻訳作業、 BTSがブラック・ライヴズ・マター・ムーブメントの支援目的に寄付した額と同じ100万ドルをわずか25時間でかき集めるなど、ファンはメンバーたちが寄せる信頼に幾度となく応えてきた。
メンバーの何人かはBTSに加入する前に交際相手がいたことが知られているが、グループの結成後はメンバーの誰1人として恋人の存在を認めていない。彼らは忙しすぎる、というのが公の見解となっている。多くのポップ系グループがそうであるように、ファンがそういった話題に敏感に反応することを懸念していると思われがちだが、少なくともSUGAはそういった見方をはっきりと否定している。「そういう質問の意図が、僕にはよく理解できないんです」。彼はそう話す。「ARMYはとても多様な集団です。『もし〜だったら』という仮説的な状況を受け入れる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。恋人の存在であれ、それ以外のトピックであれ、彼らは皆いち個人であり、考え方はそれぞれ異なって当然です」
2018年、BTSはシヒョクが率いる会社との契約を更新し、以降7年間はグループとしての活動に専念することに同意した。その過程で、各メンバーはHYBEの株を保有することになった。「とても意味のあることだと思っています」。RMはそう話す。「それは僕たちと会社が、お互いを真のパートナーとして認めている証拠です。Big Hitの成功は僕たちの成功であり、その逆もまた然りです」。昨年にHYBEが株式公開した際に、彼らはグループとして数百万ドルの利益を手にした。「特筆すべき事実ですね」。RMは大きな笑みを浮かべてそう言った。
BTSは今後、韓国の男性ポップアクトが避けて通れない課題に直面することになる。依然として続いている北朝鮮との摩擦を理由に、韓国の男性は28歳の誕生日を迎えるまでに21カ月間の兵役に就くことが義務付けられている。JINは昨年12月4日に28歳になったが、同月に韓国政府は彼に猶予を与えることができる法案を通過させた。同法案では、「国内および海外における韓国のイメージ推進に大きく貢献したとして、文化体育観光部長官の推薦を受けたポップカルチャーのアーティスト」は、兵役の開始を30歳まで延期できることになった。
「『君は頑張っているから、少しだけ時間の猶予を与えよう』というのが国のメッセージだと解釈しています」。JINはそう話し、兵役に対する自身の考えを述べた。「僕たちの国にとって、それはとても重要な義務です。だからこそ、自分の順番が回ってくるまでは、自分にできることを精一杯やるつもりです」
法律が再び変えられ、期限が再延長されることはないと想定しているJINは、BTSがしばらくの間彼抜きで活動を続けていくだろうと考えている。「メンバーたちは正しい判断を下すはずだと信じています。彼らがどうすべきか、僕が口を出すことはできませんから」。彼はそう話す。「(BTSが6人組として活動することになれば)悲しいですが、ネットで彼らの活躍ぶりを見ながら応援するつもりです」
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現在28歳のSUGA、27歳のJ-HOPE、そして今年27歳になるRMもまた、遠くないうちに同じ状況を迎えることになる。少なくともK-POPグループの神話(SHINHWA)は、メンバー全員が兵役を終えた後で活動を再開し、結成から23年が経った現在でも活動を続けているが、BTSが彼らと同じくらい長いキャリアを築く可能性もある。「そうですね、今と同じようにARMYに会いたいと感じているでしょうね」。Vはそう話す。「その願いは必ず叶うと信じています。兵役のことや、自分たちの今後について具体的に語り合ったことはありませんが、きっとうまくいくはず」
少なくともJIMINにとっては、BTSは永遠の存在だ。「このグループの一部としての自分、それ以外は想像できないんです」。彼はそう話す。「自分1人で何かをするということも。歳をとったら髭を伸ばすかもしれませんが」。彼は筆者が蓄えた髭をジェスチャーで示し、笑顔を浮かべてこう続けた。「歳を重ねて踊れなくなった時は、メンバーと並んでステージ上に座り、ファンに向かって歌ったり語りかけたりしたい。そういうのも良いと思うんです。少しでも長く活動を続けていきたいと思っています」
※Rolling Stone Japan vol.15 掲載
From Rolling Stone US.
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