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ロシアの女スパイ、ウクライナは自国を爆破していると主張

Rolling Stone Japan / 2022年3月11日 6時45分

ロシア連邦国家院議員のマリア・ブティナ。下院選挙後に首都モスクワで行われた第8新議会にて。(Photo by Ilya Pitalev/Sputnik/AP Images)

ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中、銃ロビー団体の全米ライフル協会(NRA)に潜入し、数名の共和党員たちを魅了したのちに18カ月の禁固刑を言い渡されたロシアの元工作員マリア・ブティナがプーチン派の熱心な支持者として頭角を現している。ウクライナを荒廃させているのはロシアではなく、ウクライナそのものであると主張しているのだ。

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「ロシア軍が民間人に危害を加えたり、爆弾を落としたりしていないという証拠は無数にあります」と、ブティナは現地時間3月9日に英BBCラジオのプレゼンターを務めるニック・ロビンソンに語った。

ブティナの発言は、「あなたは本気でウクライナが自国に爆弾を落としていると思っているのですか?」というロビンソンの詰問が引き金となった緊迫した会話の終わりに出てきたものだ。「(こうした攻撃が)ロシア軍によるものであるという確かな証拠を見せてください」と述べてから彼女は、攻撃にさらされているウクライナの諸都市から市民を避難させるために「人道回廊」を設けるというロシア政府の計らいを擁護した。だが、これらの人道回廊の行き先はロシアとベラルーシだ。「彼らはウクライナ国民です。彼らには、ウクライナの領土に避難する権利があります」と、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の報道官はロイター通信に語った。

「ウクライナの諸都市を破壊している爆弾は、ウクライナ軍が自ら放ったものだとおっしゃるのですか?」と、ロビンソンは再度訊ねた。

「そうではないといいのですが」とブティナは答えた。「自国民に爆弾を落とす人がこの世いるなんて思いたくありません。そんなことは信じたくありませんし、誰かが正教会の司祭を拷問するなんて考えたくないです。でも、彼らの多くはそうしているのです。これは異常事態です」

その後もこのようなやりとりが続き、会話の中では自らの主張を立証することも否定することも避けた。

その後ブティナは、メッセージアプリ・Telegramの「ゼレンスキーはウクライナにいない」という投稿とともにウクライナが自国を爆破しているという主張を補填した。「ゼレンスキーがキエフにいる? 実際はその反対です」というメッセージとともに彼女は、ゼレンスキー大統領の髪型の変化を大統領が自国を逃れた「証拠」ととらえる投稿のリンクを貼り付けた。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ゼレンスキー大統領はウクライナに留まっている。それだけでなく、3月7日の夜には首都キエフの執務室で動画も撮影した。


ウクライナ侵攻を支持する女スパイは他にもいる

ブティナはロシア政府の工作員としてアメリカで数年間活動していたが、2019年に国外退去処分を受けた。現在はロシアの国会議員として活動する一方、その悪名を利用してウクライナ情勢に関するディスインフォメーション(訳注:意図的に大衆をあざむくことを目的に作成された虚偽または誤解を招く情報)を拡散してはロシアの暴挙に対する支持を表明しているのだ。

そのひとつが、「Z」を着るという行為だ。先月からロシア軍の戦車を飾りはじめたこの文字は、ウクライナ侵攻を支持するシンボルとなっている。投稿された動画の中でブティナは、ジャケットの襟に自ら「Z」と書く。それだけでなく、彼女のInstagramは「Z」のイメージであふれている。

ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところによると、「兄弟たち、仕事をしなさい」とブティナは動画の中で述べた。「私たちは、どんなときもあなたたちを支持します」

ブティナは「Z」の熱烈なファンなのだ。

Remember Maria Butin? Imprisoned as a foreign agent, she now sits in Russias lower house of Parliament. She made Z shirts that appear to be modeled on the Z painted on many Russian military vehicles attacking Ukraine. ”Team in support of our army and president. Work, brothers!” pic.twitter.com/kkxfBkicql — Valerie Hopkins (@VALERIEinNYT) February 28, 2022

英BBCのためにロシアの国営放送を監視しているフランシス・スカーは、先月ブティナがロシアのトーク番組に出演し、ウクライナ政府は国民に武器を与えるべきではないと主張したことを指摘した。「国民は武器の扱い方をわかっていないし、事故によって子供が自宅で命を落としてしまうかもしれない」というのが彼女の主張だ。

「Right to Bear Arms(武装権)」というNPO団体をブティナがロシアで立ち上げたことを踏まえると、彼女の発言は皮肉のように聞こえる。この団体は、ブティナが渡米してNRAとはしゃぎまわる前に設立された。その後、彼女はトランプ政権とロシア政府の間に裏ルートを設けようとしたことで有罪判決を受けた。

NRAに取り入ることに成功したブティナは、その後、数名の共和党員とも接触した。それだけでなく、2016年にはトランプ支持者たちのコネクションを利用して国務長官候補者の選定にも手を貸したと主張している。

さらに彼女は、トーマス・マシーといった議員とも親交を結んでいた。マシーは、ウクライナ支援案に反対票を投じた3名の共和党員のひとりである。

ロシアによるウクライナ侵攻を支持する女スパイはブティナだけではない。2010年に共謀罪などの疑いで起訴され、国外退去処分となったアンナ・チャップマンもウクライナ侵攻によって湧きおこった「愛国主義の波」を利用して自身のアパレルブランドを宣伝している。

この投稿をInstagramで見る АННА ЧАПМАН ANNA CHAPMAN(@anya.chapman)がシェアした投稿

「なんという愛国主義と忠誠心でしょう。ロシアの人々のこのような心情を目の当たりにするのは初めてです……本当にありがとう」とチャップマンはInstagramに綴った。「この愛国主義の波に、ロシアへの愛を込めてつくった私のアパレルブランドを捧げます」

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from Rolling Stone US

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