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ムーンチャイルドが語る、ひとりで音楽を作れる時代にコラボレーションから学んだこと

Rolling Stone Japan / 2022年3月17日 18時0分

ムーンチャイルド

ムーンチャイルドが2012年の『Be Free』でアルバムデビューを飾ってから10年が経過した。2015年の次作『Please Rewind』でその唯一無二のサウンドとクオリティの高さで注目され、たちまち人気が定着した彼らはその後も『Voyager』(2017年)、『Little Ghost』(2019年)と素晴らしい作品をリリースし続けてきた。アンバー・ナヴラン、マックス・ブリック、アンドリス・マットソンの3人はいまや世界中のフェスで引っ張りだこ、忙しそうにワールドツアーを行っている姿が当たり前の光景になっている。

僕もこれまで3人に何度か取材してきたが、ムーンチャイルドについてずっと不思議だったのは、どこのシーンのどんな場所に属しているのか見えてこないことだった。南カリフォルニア大学のジャズ・スクールで結成され、LAが拠点であるのは間違いない。カマシ・ワシントン、スティーヴィー・ワンダー、ジ・インターネット、ジル・スコットのツアーの前座を務めていたりもする。だが、それ以上の交流がなかなか見えてこなくて、孤高のグループみたいな印象もあった。

そんな彼らのイメージは、最新作『Starfruits』で大きく変わった。レイラ・ハサウェイ、アレックス・アイズレー、タンク・アンド・ザ・バンガス、イル・カミーユ、ムームー・フレッシュ、シャンテ・カン、ジョシュ・ジョンソン、ラプソディといきなりゲストが多数参加。このコラボ主体のアルバムで、一気に彼らの交流関係が見えてきた。そこから調べてみると、アンバーはラプソディやムームー・フレッシュに起用されていたり、ロバート・グラスパーやクリス・デイヴの作品に参加していたり、もともと引く手数多であることに気づく。そういった様々な交流が結実した成果が『Starfruits』だと言えるかもしれない。

だが一方で、これだけ個性的なゲスト陣が参加しているにもかかわらず、『Starfruits』の音楽性はいつものムーンチャイルドでもある。それぞれのキャラクターを活かしてはいるが、自分たちのフィールドに引きずり込んでもいる。コロナ禍だろうが、構成を変えようが全く揺らいでいないムーンチャイルドの確固たるスタイルと、相手を受け入れられる柔軟さ、その自信の根拠にもなっているであろう3人の成長について聞きたいと僕は考えた。



ムーンチャイルドのメンバーがゲスト参加した曲を集めたプレイリスト

―以前のインタビューで「常に曲を書いていて、ある程度の曲ができた時点で一旦それまでにできた曲を集めて、コンセプトをどうしようか考える」と話していました。今作はゲストも多いし、ゲストがいる曲といない曲が交互に並んでいるし、構成により強いこだわりを感じます。これまでのアルバムとは制作の進め方も違ったのかなと思いましたが、どうですか?

アンバー:いや、これまでの作り方に近かったと思う。1カ月ほど1日1ビートという感じで3人がそれぞれ同時に作っていって、アルバム収録曲の多くはその過程のなかから生まれたもの。それで曲が少し形になってきたところで、どの曲を誰に送るか、誰をフィーチャーするかを決めていったという感じだった。

アンドリス:ほぼ同意見。つまり、それぞれが個別に作ったものを持ち寄るという部分。それからパンデミックによって、ずっと一緒にやりたいと思っていた人たちがみんな家にいて時間があったから、声を掛ける機会が巡ってきたんだよね。

アンバー:もし世界的パンデミックが起こらなかったら絶対に叶わなかったことだと思う。平常時の彼女たちは多忙だしツアーやライブをやってることが多いから。それは予想外の恩恵だったかも。

―では、『Starfruit』のコンセプトを教えてください。

アンバー:バンドとして10年やってきたということがまず一つあって、だからゲストもこれまでフェスで会ったり、ムーンチャイルドとして活動する中で出会った人たち。それがメインのコンセプトかな。10周年と、これまで受けてきたあらゆる影響と、これまで習得してきたスキルと、これまで出会った人たちと。歌詞の部分はいろんなコンセプトがあるけど、音楽に関して言うとそういう感じになるんじゃないかな。

―『Starfruit』のインスピレーションになったものを挙げるとしたら?

アンドリス:たとえば「Love I Need」は、スライ・ストーンやディアンジェロのサウンドに大きな影響を受けているね。

アンバー:あと「You Got One」は電話の音にインスパイアされた曲で、「Dont Hurry Home」はフルートのサンプルで……。

マックス:僕らは新しいサウンドをいじってるうちにひらめいたりするんだよ。

アンドリス:僕は、ギターやウクレレといったアコースティックなものと電子ドラムのサウンドを混ぜることに結構ハマっていて。ボン・イヴェールとか他のアーティストがそういうことをやってるのを聴いて、かっこいいなと思って自分もやってみようと思ったんだよね。



―『Starfruit』について、音楽以外のインスピレーションだとどうですか?

アンバー:私は詩をよく読んでいて、そこからコンセプトだったり構造だったり自分が共感するフレーズなんかをノートに書き留めてる。それで自分が書きたいトピックをひとつ決めて、ノートをパラパラめくってそこからインスピレーションを得たり、方向性を探ったりすることもある。でも他のあらゆること、個人的な経験や、身近な人の話からヒントをもらうこともあるし、つまり人生が歌詞に影響を与えていることは間違いないと思う。たとえば「What You Wanted」はツアーの経験についての曲で、たとえキツくなっても、これは自分が望んだんだってことを忘れないようにする内容だしね(笑)。

―アンバーさんは以前から女性詩人や作家のことを度々語っていたと思いますが、本作でも言葉からのインスピレーションがあるんですね。

アンバー:もちろん。今自分の本棚を見てるんだけど……詩人だとナイイラ・ワヒード(※1)やイルサ・デイリー・ウォード(※2)の2人が一番好き。あとはパーシヴァル・エヴェレット(Percival Everett)とか……タンク・アンド・ザ・バンガスのタンク(タリオナ ”タンク” ボール:Vo)も詩集を出していて、彼女の詩もすごく好き。詩は常にチェックしているけど、でもフレーズを抜き出して使うのは好きじゃなくて、読んでいて曲のアイデアがひらめくとか、あと細かいディテールがひたすら羅列してあって、最後にようやくどういう意味なのかが分かる詩を読んで、私も曲でそれやりたい!と思ったりね。最初は細かいディテールだけを重ねて、サビになるまで何のことなのか分からない、みたいな。だから構造の部分で影響を受けているという。

※1 Nayyirah Waheed:愛、アイデンティティ、人種、フェミニズムなどを扱う「Instagramで最も有名な詩人」。素性やバックグラウンドは明かされていない。
※2 Yrsa Daley-Ward:1988年、ランカシャー生まれの作家/モデル/俳優。『The Terrible』(2018年)などいくつかの著書を発表。ビヨンセ『Black Is King』『The Lion King: The Gift』にも携わっている。

アンドリス:それって「What You Wanted」でやってた?

アンバー:まさにそう。あとはマヤ・アンジェロウ(アメリカの黒人女性作家/詩人、公民権運動家としても活躍)も好き。言葉について考えるのって本当に面白いと思うし、言葉がすべてである人たちの言葉にはすごく刺激を受ける。言葉を学んで、自分の心も魂もすべて言葉をクリエイティブに扱うことに注いでいるわけだから。多くの作詞家やラッパーも同じようにしていると思うけどね。もちろん音楽からも刺激を受けるけど、でも時には、音楽や曲に合うようにとか、歌いやすいようにとか考えて言葉を使わなくていい人たちのやり方にシフトチェンジしてみるっていうのは面白いと思う。



―サウンド面の話に戻ると、2019年の前作『Little Ghost』では新しい機材やプラグインの話をしていましたが、今回はどうですか?

アンドリス:新しいオモチャは常に仕入れてるよ(笑)。今回は結構ボーカルのエフェクトを色々試していて、アンバーがオクターブペダルとか使ってたよね。

アンバー:オクターブ系もいくつか使ったし、あと最近はSerato Sampleを結構使っている。それから私たちのドラマーのEfa Etoroma Jr.が出しているドラム・パックがあって、彼のサウンドだけを使ってビートを作ろうとしたり。今作でもそのドラム・パックからいくつか使ってるし。

マックス:あと、今作では新しいストリングのプラグインも使ってる。単音だけテクスチャーとして使うといい感じになったりするんだ。本物の弦楽カルテットは雇えないから(笑)。あとは、これまであまり使ってこなかったハーモナイズド・クラリネットを今回は使ってみたり。

アンドリス:それから今回初めて、マックスがアンバーの声をサンプリングしてたよね。

マックス:うん、『Little Ghost』のアカペラのところを「Takes Two」で使ってる。



―『Little Ghost』ではアンドリスがアコギやウクレレを使っていたのも新鮮でしたが、今回は楽器についてのチャレンジは何かありますか?

アンドリス:前作から引き続きという感じだけど、これまでやったことがない楽器の使い方、組み合わせ方を試してたね。たとえば「By Now」の終盤でフリューゲルホルンとアンバーのボーカル、エレクトリック・ギターが交代でコードを引き継いだり。それからさっき言ったようにマックスがクラリネットを使ったり、過去にはそれほどフィーチャーしてこなかったものを新たに取り入れているよ。

アンバー:(アンドリスは)今回結構かっこいいギター・トラックを披露しているよね(笑)。

アンドリス:ハハハ。結構ファンキーなトラックがあったから、頭の中にアイデアが浮かぶままに指を動かしたという感じだね。何度でも好きなだけテイクを重ねてレコーディングできてよかったよ。

マックス:『Little Ghost』では全編アコギを使っていたけど、今回はエレキが多かった。そこも違うよね。

レイラ・ハサウェイ、タンク・アンド・ザ・バンガスなどから得たもの

―ここからは『Starfruit』の多彩なゲストについて聞かせてください。まず、どういった基準で選んだんですか?

アンバー:単純に自分たちが素晴らしいと思っている大好きな人たち。ずっと一緒にやりたかった人たち。それから女性をフィーチャーしたい気持ちもあった。音楽業界で女性、または黒人女性にスポットライトを当てることは大切だと思うし、でもたとえ私たちにそういう考えがなかったとしても、たぶん同じ顔ぶれに声をかけていただろうなと思う。本当に、今回依頼した人たちのただの大ファンだから(笑)。実は「コラボレーションしてみたい人リスト」にはもっとたくさんいたんだけど、どの曲に誰が合うのか検討して組み合わせていったら、最終的にこうなった。

―それぞれにキャラクターも音楽性も異なるボーカリストです。彼女らが歌うなら、必然的にムーンチャイルドの楽曲もいつもとは少し違うものになると思うのですが、いかがですか?

マックス:まず、誰にどの曲を送るのか決める前に、事前に基本的な曲の構成はできていたんだよ。でも送り返されてきたものがあまりにかっこよくて興味深いことが多くて、曲を最初とは別の方向へ持っていきたくなったというのはある。たとえば「Bet By」なんかはそうだった。

アンバー:「Need That」もイル・カミーユのヴァースが返ってきてから、彼女のヴァースを強調するためにかなり変えているけど、その作業もすごく楽しかった。それから「You Got One」の最後のアレックス・アイズレーのアウトロ部分は、変更前はフルで演奏が入ったトラックだったけど、あまりにも美しかったから声とキーボードだけに解体している。

アンドリス:ラプソディの「Love I Need」も、ヴァースを目立たせるために曲を手直ししたよね。

アンバー:あと個人的にはバックコーラスを加えるのがすごく楽しかった。そこは自分が勝手に楽しみにしていた部分で、たとえ同じ場所で一緒に歌ってなくても、彼女たちと一緒に歌いたかったから(笑)。ボーカルのちょっとしたことを付け加えるっていうのが本当に楽しくて。

アンドリス:それを聴くのも楽しかったよ。ゲストから曲が戻ってきてから1〜2週間後にアンバーがボーカルを加えたバージョンを聴いて、その曲に合った形でいい感じに混ざり合っていてすごくよかった。楽しい実験だったよね。

―ゲストが参加していると、リリックもこれまでとは変わってくると想像しますが、どうですか?

アンバー:ほとんどのゲストは、自分がやる部分は全部それぞれが書いてくれたもの。リリックもメロディもね。こちらから送ったのはオープンな部分を残したトラックで、好きにやってくださいと伝えて。彼女たちが普段からやっていることがすごく好きだから。唯一こちらでリリックを書いたのはレイラ・ハサウェイをフィーチャーした「Tell Him」だけど、それも彼女がメロディに当てはめる上でとても美しく変えているし、彼女が加えたボーカル・パートもあるしね。



―ゲストにもよると思いますが、そもそもどういうきっかけで知り合った人たちなんですか?

アンバー:ライブとかフェスとか、レイラとはいろんなところで何度もばったり会っていて。ロバート・グラスパーがLAでやる時に観に行って、彼女がそこで歌って、そのあとで演奏するとかね。彼女もLAに住んでるからいろんなところで偶然会うし。本当に気さくで包容力があってバンドのことも応援してくれてる。実はいまだに彼女に対しては、スターを目の前にした感じになっちゃうけどね(笑)。「遊ぼうよ!」とか言われると「え、私と?!」って内心思っちゃう。とにかくレイラに関してはすべてをリスペクトしてる。2人は?

アンドリス:いや、もう、彼女のボーカルを最初に聴いた時は「何だこれは!」って思わず立ち上がったし、実際に曲が完成した時には感動したね。レイラが彼女の自宅でレコーディングした時もアンバーが手伝っていて、すごく独特のものがあったよね。



アンバー:そうだね。じゃあ次はアレックス・アイズレー。

マックス:彼女も最高のボーカリストの1人で、リスペクトしかないよ。

アンバー:彼女のメロディってこの世のものとは思えない、あまりに美しすぎて。私はナインス・ワンダーとコラボしたことがあって、彼女もそのとき一緒だった(2018年の『9th Wonder Presents: Jamla Is The Squad II』、ラプソディも参加)。私がナインス・ワンダーから曲を聴かせてもらってどう歌おうか考えていた時に、その同じ曲で彼女が歌ってるものを聴いて、「すごい、こんなのどうやって思いついたの?!」となって、もう本当に感心しちゃって。自分は同じ曲を前にして「どうしたらいいか分からない」となってたから余計にね。ということで私は彼女の最高に素晴らしい声に加えて、メロディの選び方も大好き。

アンドリス:さっき「You Got One」のアウトロの話が出たけど、あの声の繊細な複雑さから言っても、彼女がハーモニーから何から熟知していることが窺えるよね。一見簡単そうだけど難しいことをやってるんだ。



アンバー:イル・カミーユについては、直接会う前に彼女の存在は知っていて、私は彼女の大ファンで、SNSでお互いにフォローして好きな気持ちを伝え合っていたんだけど、ついにあるライブで彼女と直接会って連絡先を交換して、お互いLA在住だからばったり会うこともあったしね。私は彼女のフローと声のトーンが好きで、心を穏やかにしてくれて、でもすごくかっこいいハードな感じにもなるっていう」

アンドリス:実をいうと、僕は直接彼女と会ったことがないんだけど、アンバーの意見には100%同意だよ(笑)。声のトーンとかまさに。アンバーが彼女の『Harriett』を車で聴かせてくれた時に心を奪われたんだ。タイミングとかフレージングとか本当に魅力的で。世界がもっと彼女を知ってくれることを願ってやまない。




―タンク・アンド・ザ・バンガスについてもお願いします。

アンドリス:たぶん3人とも覚えてるのがNPRタイニー・デスク・コンサートの動画で、あの瞬間から大ファンになったんだよ。実際会うなんて想像もしていなかったけど、自分たちのライブがニューオリンズであった時に彼女たちがほぼ全員で来ていて、サウンドチェックかライブ終了後か忘れたけど……会ったんだよね。

アンバー:確かネットで観に行くって教えてくれてたと思う。それでライブ後にFaceTimeで話したんじゃなかったかな。帰らなきゃいけないとかで。

アンドリス:あ、そうだ!




アンバー:それでRoots Picnic(ザ・ルーツ主催のフィラデルフィアで行われているフェス)でばったり会って。直接会ったのはそこが初だったと思う。タンクはとにかく個性が際立っていて、ステージに立って輝き、歌っても輝き、ラップしても輝くっていう。本当に力強い声を持っているし、他の誰とも似ていない本当に個性的な人で、遊び心に満ちていて、ほとんど歌ってる内容が関係なくなるくらい。私にとっては彼女の歌を経験すること自体が喜びをもたらしてくれるもので、ステージ上の彼女を見ていても同じ気持ちになる。

アンドリス:まったくその通り。

アンバー:「Get By」は結構古い曲で、『Little Ghost』に入れそうになったくらい古いもの。今回改めてあの曲を見直して、曲とゲスト候補のリストを並べた時に、彼女の雰囲気があの曲に合ってるんじゃないかと思って選んだ。もちろん曲を送ってそれが戻ってきた時に、彼女がやったことを踏まえて変更を加えたりはしてるけどね。それにしても『Little Ghost』で使わなくて本当に良かった(笑)。全然こっちの方がかっこよくなったから。

DJジャジー・ジェフからの大切な学び

―ラプソディに関してはどうですか?

アンバー:ラプソディとはダーラムのThe Art of Cool Festivalで会って。彼女は本当に優しくて以前からバンドのことを応援してくれていたんだけど、初めて会った時、ロビーの向こうから走ってきて盛大にハグしてくれて。本当に嬉しかったし、スタジオにも招待してくれて……あれ、私たちの曲をサンプリングした(2016年作『Crown』収録の「Fire」でムーンチャイルドの「Winter Breeze」をサンプリングしている)のってその時だった? その翌年?



マックス:翌年だったと思う。

アンバー:そうだ、それでその翌年に同じフェスに出演したんだけど、彼らがムーンチャイルドの曲をサンプリングして使ってて、それをスタジオに行って聴かせてもらって大興奮して。私たちはラプソディの大ファンだし、自分たちの声とコードとサウンドが大好きな誰かの曲で使われてるっていうのがとんでもなくすごいことだと思って。彼女とはずっと連絡を取っていて、今作ってる新しい音楽を聴かせてもらったり、コラボしようっていう話もいつもしていて。忙しくてなかなか実現しなかったけど、今回ついにそれが叶って。ラプソディについても全部好きだし、リリックも、テーマも、フローも、すごくクリエイティブで。ビートの選び方も、女性をエンパワーメントすることもね。というかJamla(ナインス・ワンダーのレーベル)の人たちはみんな最高。

アンドリス:本当に。ノースカロライナの彼らのスタジオに行くと、本物のファミリーっていう感じが伝わってくるんだよね。一歩スタジオに入ると、そこでは常に誰かがビートを作っている。それぞれの街ごとにシーンがあるけど、彼らもその土地で起こっている何かすごくクールなものの中心にいる感じがあるんだよ。自分たちがノースカロライナでライブをやる時にも、観客の中に本物の音楽好きがたくさんいるのを感じるというか、そういうカルチャーがあるのが感じられて面白いんだよね。

―ラプソディの『Eve』が歴史的に偉大な女性アーティストへの言及があるアルバムで、イル・カミーユも女性のアーティストをオマージュ、セレブレートするような曲を書いていますが、彼女たちに関しては、そういう部分での共感もあるわけですよね?

アンバー:もちろん!



―ではムームー・フレッシュについては?

アンバー:彼女とはPlaylist Retreatで会って……違う! その前だ。あるフェスに出演した時にグラミーのセミナーか何かがあって、そこに彼女もいて、私たちが入っていった途端に「ウソでしょ! 私はあなたたちの大ファン!」って言われて。その何年後かにPlaylist Retreatで再会して「ここで会うなんて信じられない!」と驚いて。そこで実際に友達になって、そのあとも連絡を取り合ってた。ムームーの声は本当に素晴らしくてフローも最高で、彼女みたいに完璧に歌ってラップできる人って滅多にいないし、唯一無二でパワフルで本当に特別だと思う。特に「Dont Hurry Home」では、彼女がヴァースを書いていた時に私もそこにいたんだけど、笑ったり冗談を言いながらあの曲を遊び心があって楽しいものにしてくれて、それが本当に素晴らしかった。



―PLAYLIST RetreatはDJジャジー・ジェフ主催の企画で、キーファーやDJハリソンも参加していたようですが、どんなものなんですか?

アンドリス:僕にとってはミュージシャンとアーティスト向けの大人のサマーキャンプみたいなものだった。スーツケースを転がして到着してみたら、そこには自分のヒーローたちが勢揃いしていたという(笑)。それからたとえばDJだったり、違う分野の人たちと同じ環境に置かれるというのも面白くて、ボーカリストとホーン奏者とDJとドラマーといった感じでランダムにグループに分けられて、そのグループで1週間で何か作るといったことをしたり。コラボレーションについて多くのことを学んだね。

マックス:このリトリートは、超ハードなツアー・スケジュールをこなすミュージシャンのための休息という趣旨もあって、だからマッサージがあったり、すごくリラックスできる環境だったんだ。それにやっぱりすごいアーティストたちと話せたのはよかった。DJジャジー・ジェフはフィラデルフィア出身で、僕らはジル・スコットをはじめとするフィリーのレコードにすごく影響を受けているから、そういったレコードをプロデュースした人たちとカジュアルに接することができるっていうのが本当に刺激になったよ。

アンバー:それから公開トークみたいなものも結構あって、作曲やミキシングのパネルがあったりして。それをメモを取りながら聞いてて、ずっと聞いていたいくらい面白くて。あとキーボードの新機種とか新しいソフトウェアとか、あらゆる音楽関連の会社が来て新商品、新機材を説明してて。Serato Sampleのこともその時に知って、それ以来かなりの頻度で使ってる。でも私が一番いいと思ったのは、DJジャジー・ジェフが参加者を全員集めて、「ここにいる全員が理由があってここにいるから、まだ知らない人がいたら自己紹介して知り合った方がいい」って言ったこと。彼はいかにコラボレーションが重要かというのも語っていて、特にかなりのところまで1人でできてしまう時代だからこそ余計に大事だと。音楽はより多くの人が関わってお互いのアイデアを出し合うことでより良くなるんだってことを言っていた。私たちもグループ内ではその大事さを認識していたけれど、でも今作で他のミュージシャンたちとそれを経験できたことはすごくよかった。あと、これはこの業界にありがちだけど、横柄な態度で誰か有名人と仕事したことがなければ話もしてくれないっていうような人も珍しくないなかで、あんなにみんなが楽しそうで、「あなたは誰? 会えて嬉しい! 一緒にジャムろう!」みたいな愛に溢れた環境は本当にステキだった。



―では最後に、シャンテ・カンとジョシュ・ジョンソンについてお願いします。

アンドリス:確か3人とも、Jaspectsの「Find My Way To Love」を聴いて、出だしの彼女の声に心を奪われてしまったんだよ。

アンバー:まずネット上で交流していて、アトランタに行った時に彼女から「直接会おう」と連絡が来て。それでMoodsという店で会ってお互いに大好きだと言い合って、そのあと彼女が何度かLAに来た時もライブを観に行ったり遊んだり車でビデオ撮影したり、とにかく連絡はずっと取り合っていたの。

アンドリス:ジョシュ・ジョンソンはLA在住の素晴らしいサックス奏者で、LAの音楽シーンで出会ったんだよ。彼はモンク・インスティテュート出身で、あの辺のミュージシャンがBlue Waleっていうクラブでよくライブをやっていて、そこで知り合ったんだ。今作の終盤に楽器奏者が欲しいっていうのはみんな思っていたんだ。彼はホーン奏者であると同時にピアノも弾くしプロデュースもする人だからメロディックな傾向があって。この曲での彼の演奏は完璧だったよ。







ムーンチャイルド
『Starfruit』
発売中
日本盤ボーナストラック収録
※LPは4月22日発売
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12184


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