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サンダーキャット×フライング・ロータス対談 創造力が育んできた2人の絆

Rolling Stone Japan / 2022年3月23日 17時55分

サンダーキャット、フライング・ロータス(Photo by Samuel Trotter for Rolling Stone)

8月18日(金)に幕張メッセで開催されるソニックマニアで、サンダーキャットとフライング・ロータスが揃って再来日。それを記念して、米ローリングストーン誌の名物企画「Musicians on Musicians」で実現した両者の対談企画をお届けする。


フライング・ロータスとサンダーキャットは、2人の関係がかけがえのないものであることを自覚している。常に時代の先を行くプロデューサーのスティーヴン・エリソンと、エキセントリックなシンガーにして超絶ベーシストのスティーヴン・ブルーナーの創造的なパートナーシップは10年以上に渡って続いており、2人は時代を決定づける作品を多く生み出してきた。その中にはケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』(両者ともに参加)、フライング・ロータスが2010年に発表した目の眩むようなビートコラージュのマスターピース『Cosmogramma』、そのフライローがプロデュースしたサンダーキャットの2020年作で、グラミー賞を受賞したプログレッシブ・ファンクの一大叙事詩『It Is What It Is』(4枚目のソロアルバムとなる本作を含め、全アルバムがエリソンのレーベルBrainfeederから発表)が含まれる。これらにとどまらない様々な活動を通じて、2人はアーティストとして確固たる地位を確立したが、彼らの関係は以前とほとんど変わっていないという。

「どれだけブランクがあっても、いざ会うと久々っていう感覚がまるでしないんだよな」。エリソンはブルーナーとのビデオ通話でそう話す。「俺はいつも何か作ってるし、お前はあちこちでベースを弾いてる。あっという間に時間が過ぎてく感じさ。また何か一緒に作るべきだって、常に誰かから念押しされてる。でも結局のところ、俺たちは分かってるしな」

「あぁ、分かってる」。ブルーナーも同意する。「僕らは知ってる。みんな僕らのことを知ってるつもりだけど、実は何も分かっちゃいない」

「確かに分かってないよな」。エリソンがそう返すと、2人は爆笑した。

パンデミックの最中にフォーカスを保つ方法(エリソンはキーボード、ブルーナーはボクシングの本格的な訓練による養生法を実践していた)、非現実的な「ソファーでのグラミー」、そして2人が音楽的ソウルメイト同士だと悟った瞬間について、気心の知れた2人が語ってくれた。

グラミー賞とボクシング

ーあなた方はどちらも精力的に活動していて、常にコラボレーションや新プロジェクトのローンチを進めています。お2人はパンデミックの世の中にどう順応していますか?

フライング・ロータス(以下、FL):俺はピアノの練習と、クラシック音楽の勉強に励んでる。自分のスタイルをもっと広げたいんだ。このプロセスを通じて、自分がアーティストとして成長したって感じたいんだよ。学ぶことをやめ、前に進もうとしないのはアーティストとして失格だ。マジでさ。俺がこれまでに身につけた技術や知識に、より磨きをかけようとしてるんだ。あれ(Netflixのアニメシリーズ『Yasuke』のサウンドトラック)は面白いプロジェクトだったし、グラミーを受賞したことも嬉しかった。なぜかというと……。

サンダーキャット(以下、TC):自宅のソファに座ったまま受賞した(笑)。

FL:士気が下がってたからな。グラミーの受賞はいい刺激になった。



ーグラミー賞の最優秀プログレッシブR&Bアルバム賞に輝いた『It Is What It Is』は、Brainfeederにとって初のグラミー賞受賞作品となりました。世界が今のようなムードにある中で、こういった素晴らしい成果をあげられたことをどう思っていますか?

TC:ちょっと複雑な気分だった。家族やBrainfeederのチームと一緒にお祝いできたことは、素直に嬉しかったよ。もし授賞式に出席してたら、そういう親しい人たちとは一緒にいられないだろ?

FL:確かに、それはすごくよかったよな。

TC:一緒に祝うべき人たちといられたわけだよ。それはすごくクールだったね。ただ、会場でもらえるはずのギフトバッグが届いてないことは納得できない。すごく上等なスキンケアのクリームやお菓子が入ってるやつさ。

FL:お菓子は欲しいな。

TC:そう簡単に諦めるつもりはないよ。グラミーのお菓子、マジで欲しいからさ。それはともかく、すごくクールな経験だったよ。感謝の気持ちでいっぱいさ。アルバムを出したときには、こんな風に評価されるなんて思っていなかった。あれを出した時は、世の中が静まり返ってたからね。(アナウンサー調の声色で)「満を持してアルバム発売! いや、ちょっと待った」みたいな感じさ。(『It Is What It Is』は)世の中が完全にストップした後に出たんだ。




FL:何もかもが急停止したタイミングだった。予定されてたツアーも中止になったしね。計画が全部お釈迦になって、作品を出したっていう実感さえ得られないような状況だっただけに、グラミー賞の受賞っていう形で報われたのは嬉しかったよ。ところでキャット、最近はどういう曲の練習をしてるんだ? 今も手に持ってたりするのかい?

TC:最近は週5でボクシングをやってるよ。これはマジな話(笑)。

FL:ベースはもうやめたのか?

TC:あぁ、僕は『ブラッド・スポーツ』の世界に進む。なんてね、冗談だよ。不思議に思うだろうだけど、僕は多くのことをステージ上で学んでいるんだ。曲を覚えたり、練習したりっていうのは常にやってるけど、オーディエンスの前で演奏するっていう体験は他の何にも置き換えることはできないんだ。

FL:完全に別物だよな。ボクシングの練習はそれに近い部分があるのかもね。どんなに訓練を積んでも、実戦の代わりにはならないだろうからさ。

TC:そう、顔面にパンチを食らわなきゃダメなんだ。10歳の頃からステージに立っている僕の人生は、ずっとライブを中心に回ってきたんだよ。そこで常に何かを学んでいるからこそ、作品という形でアウトプットできるんだ。

FL:ライブって、自分自身とオーディエンスとの対話だからな。それを糧に成長するわけだから、相乗効果みたいなもんだ。

2人を繋ぐケミストリー

ー過去10年間で、あなた方は素晴らしい作品を数多く生み出してきました。2人が深いレベルで繋がることができると初めて感じたのはいつでしたか?

FL:彼が初めて俺の家に来た時だろうね。部屋の中を見回して、「こりゃすごい」なんて言ってた。

TC:「このレコード持ってるの?!」って。

FL:あぁ、『北斗の拳』のサントラのレコード盤だ。あれはヤバかった。

TC:完全にやられたよ。まさに「(キャラになりきって)お前はもう死んでいる」

FL:本格的にコラボを始めたのは『Cosmogramma』の頃からだ。あのアルバムを一緒に作っていた時に、彼が『君のレーベルからレコードを出したい』って言ったんだ。あれは俺の人生において大きなターニングポイントで、「よし、何から始める?」って俺は返した。それ以来ガッツリ組んで、ずっと一緒にやってきた感じだな。



TC:お互いにシンパシーを感じてたんだよ。僕の片想いじゃなくてね。深く考えたことはないから、言葉でうまく説明できないけどさ。何ていうか……。

FL:マジックさ。言葉で説明できるようなものじゃないってことだよ、何かと理屈をつけようとする人は多いけどね。俺たちの間にはケミストリーがあって、お互いを理解しあってる。それだけのことさ。

TC:そう、だから続いてるんだ。ハイライトと言うべき瞬間は、実際には山ほどある。一本の道をずっと歩んでる感じだね。

FL:そうだな。どんなプロジェクトでも、客観的に見て「ワオ、よくこんなの作ったな。なんでこんな形になったんだ?」って驚かされる瞬間がある。『Cosmogramma』で繋がった俺たちは、『It Is What It Is』で勲章を1つ手にしたんだよ。

TC:(笑いながら)その通り、よく言ってくれた。あのアルバムは僕たちの勝利宣言さ。

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From Rolling Stone US.



SONICMANIA
8月18日(金)幕張メッセ
公式サイト:https://www.summersonic.com/sonicmania/

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