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爪切男とアセロラ4000、作家2人が語る「一番スゲェのがプロレス」な理由

Rolling Stone Japan / 2022年4月5日 19時0分

左から、アセロラ4000、爪切男(Photo by Jumpei Yamada)

2018年に小説『死にたい夜にかぎって』で文壇デビューを飾り、同作はドラマ化、2021年には3ヶ月連続で書籍を刊行するなど、注目の作家・爪切男。一方、2021年にキャバクラを舞台にしたおじさんの恋愛青春小説『嬢と私』を上梓した40代バツイチ独身新人作家・アセロラ4000。2人に共通するのは、プロレスをこよなく愛していることと、文章の中に、プロレスをテーマにした文章やオマージュした表現が登場することだ。お互いのことを認識はしていたが、ちゃんと話すのはこれが初となる2人。対談を進めていくと、同じプロレス好きでも、週プロ派とゴング派で文章の書き方にも違いがあるなど、意外な事実が浮かび上がって来た。団体も増え、細分化されながらも活況を見せる現代のプロレスについて、2人のプロレス遍歴を辿りつつ、ざっくばらんに語ってもらった。

―お二人とも小説内でプロレスネタを引用されることが多いですが、世代はちょっと離れているんですよね?

爪:俺は今年で43になります。アセロラさんは大先輩です。

アセロラ:いやいや。年齢は私のほうが上ですが、小説家としては爪さんのほうが大先輩ですよ。ルーツでいうと、地元に来たプロレスを見たのが始めなんですか?

爪:プロレスを見ていたのはTV中継がメインで、初観戦は1992年のオリエンタルプロレスの旗揚げ戦(入場無料)でした。家が貧乏だったのでなかなか会場に足を運べなかったんです。そういえば、昔の新日本プロレスの地方興行って、メインが8人タッグとかで、とりあえずみんな自分の得意技をちょこっと出してくれて、最後に木村健悟が勝つのを見せられるみたいな感じだったのをよく覚えています。

アセロラ:木村健吾さんが第一線でやっていたときですね。(※1)

※1:新日本プロレスの元レスラー。必殺技「稲妻レッグラリアット」を武器に、新日正規軍の名バイプレイヤー的に活躍。

爪:昔、アマレスをやっていた俺の親父は、なぜかプロレスがあまり好きじゃなかったんです。それもあって俺は逆にプロレスに興味が湧きました。それが小学4年生ぐらいだったんですけど、意地悪な親父が、あれはこういうことで、こういう仕組みなんだよと、プロレスのファンタジーの部分を全部バラしてきたんです。

アセロラ:「プロレスっていうのはこうなってる」みたいなことを言ってきたわけですね。

爪:意地でも俺をプロレスから引き離そうとしたんですけど、逆にのめり込んでしまったんですよね。そんな胡散臭いエンターテインメントが、何千人もの人を熱狂させてるのか!と。プロレスの他にマジックも好きで、引田天光とかナポレオンズが大好きでした。とくにナポレオンズの、すごい技術を持っているのに、あえてしょうもないマジックをするという「能ある鷹は爪を隠す」の姿勢がかっこよかった。ぶっちゃけウソとかリアルとかタネとかどうでもよかったですね。人生は楽しければそれでいいみたいな。達観し過ぎたイヤな子供でした。



アセロラ:僕の世代だとUWF ができた頃なんですけど、UWFが生まれてこれまでのプロレスが1回否定される時期があったんですよ。リアルなプロレスを求めて団体が生まれたし、観客も熱狂していた時期を経験してるんですけど、そこはどうですか?

爪:俺は「U」を経験できていない世代なんですよ。闘魂三銃士の直撃世代であり、武藤敬司の大ファンだったこともあり、リアルの追求よりも見た目が派手で楽しいプロレスのほうが俺は好きでした。でも、「U」を知らないのはちょっと負い目ではあるんですよね。ここ数年UWF関連の本がたくさん出版されましたけど、あれを読んで盛り上がれる人たちがちょっと羨ましかったです。とりあえず後追いで全部読んではいます(笑)。

アセロラ:なるほど、そこの違いって結構大きいかもしれないですね。爪さんは79年の生まれですけど、自分の中でプロレスにどっぷりはまり始めたなというのは何歳ぐらい?

爪:1991年頃ですかね。小学6年生でした。G1クライマックスが始まった年ですね。とにかく武藤さんが大好きで、フラッシング・エルボーやスペース・ローリング・エルボーを真似してました。武藤さんが一時期苦手にしてたスコット・ノートンって、アームレスリングの世界チャンピオンだったじゃないですか。そんな化け物みたいな外国人レスラーが、武藤さんのああいう感じの側転エルボーを喰らってのたうち回る。うん、やっぱりプロレスには夢があるなと。

アセロラ:あはははは。

爪:自分がクラスで陰キャの方だったから、武藤さんの持つスター性と、いい意味での天真爛漫さに憧れたんです。


爪切男(Photo by Jumpei Yamada)

ーアセロラさんの原体験はなんだったんでしょう。

アセロラ:ある日テレビをつけたら、いわゆる初代タイガーマスク=佐山聡さんが出ていたんです。それ以前にも、お爺ちゃんが見ていた全日本とか、ブッチャーの時代の試合もちらっと見たんですけど、ちゃんと見た覚えがあるのが初代タイガーマスクで。同時にアニメもやってたので、「あれ? タイガーマスクが本当にテレビで動いてるぞ!」と。ただ、うちの親父とかも、こんなのインチキだとか平気で言うわけですよね。それに傷ついているところに、プロレスのいわゆる決まりごとみたいなものがないんだよというUWFが誕生した(※2)。キック、パンチ、関節技、ロープに飛ばないとか、衝撃を受けました。それが後々の総合まで繋がる歴史になっていくんですけど、見始めた世代によって違うと思うんですよね。

爪:俺は、藤原組(※3)とかUインターは世代的に間に合ったので見ていました。

アセロラ:新日とUの対抗戦は?(※4)

※2:新日本プロレスを突如離脱した前田日明をエースとして1984年に立ち上がった第1次UWFのこと。
※3:第2次UWF解散後、藤原喜明が中心となり船木誠勝、鈴木みのるらと立ち上げた団体。
※4:1995年10月9日に東京ドームで行われた新日本プロレスとUWFインターナショナルの全面対抗戦。

爪:東京ドームに行きたかったけど金がなくて無理でした。TVの生中継もなかったから朝からずっと悶々としてて(笑)。1995年のあの頃って、今みたいにインターネットが普及していなかったので当日の結果速報を知る術がなかったんですよね。そんなときに役立ったのが『週刊プロレス』が運営していたテレフォンサービス。試合終了直後に週プロの記者が試合結果を肉声で吹き込んでくれるんですね。それを頼りに電話をかけるんだけど、俺と同じ境遇のファンが全国から電話してるから全然繋がらない(笑)。貧乏な我が家はダイヤル式の黒電話を使っていたので、リダイヤル機能があるプッシュフォンを使ってる奴等よりも不利でした。結局、朝の4時になっても繋がらない。すると、深夜にずっとジーコ……ジーコ……と電話をかけ続けている俺に腹を立てて、親父が起きてきちゃったんですね。こちらの説明を聞かずにいきなり電話線を引っこ抜こうとするもんだから、電話が繋がらないイライラも合わさって、俺は電話の近くにあった厚みのあるタウンページで親父を思いっきりぶん殴っちゃったんですよ。そうしたら当たり所がよかったのか親父を失神KOしちゃったんです。呼吸を確認したらちゃんと息はしていたので、保健体育で習った通りに気道確保だけしてあげて……倒れてる親父を横目に、またジーコ……ジーコ……と電話してました。

アセロラ:人を殺めるかもしれないぐらい知りたかったんですね(笑)。

爪:そこまでしてでも、メインの武藤敬司vs高田延彦の結果が知りたかったですね。朝の5時ぐらいにようやく繋がって、「試合時間16分16秒……足四の字固めで……」という記者さんの声を聞いた瞬間にもう頭の中でいろいろ妄想しましたね。うわ! 高田性格悪い、と。

アセロラ:どうしてですか?

爪:アキレス腱固めとか「U」の技を使わずに、あえてクラシックな技で武藤を沈めて、格の違いを見せつけたのかなって思ったんです。どうしても武藤と高田ってなると高田が勝つんだろうなって思ってたんですよね。だから「武藤敬司の勝ち!」って聞いたときは、もう畳に突っ伏して泣いた! ただ泣いた! ですよね。その後、息を吹き返した親父にボコボコにされて殺されかけるんですけど、武藤が勝ったことが嬉しかったので、あのまま殴り殺されていても悔いはなかったですね。



―爪さんはプロレスにエンターテイメントの魅力を強く感じているのが伝わってきましたが、アセさんの見方はなにか違いはありますか?

アセロラ:プロレスの魅力ってよく聞かれるんですよ。人間ドラマですって答えもあるんですけど、人間ドラマを見たかったらドラマを見ればいいじゃんと思うんです。プラス何があるかといったら、そこには勝負がある。新日本対UWFインターナショナルって、それこそ普通のプロレスと、ロープに飛ばないプロレスの戦いが初めてそこで激突した、古舘さんがかつて実況で言っていたいわゆるイデオロギー闘争ってやつですよね。やっぱ人間同士の持ってる意志のぶつかり合いっていうか、そこで勝敗を決するところは、どんなにファンタジーだとかドラマとか言っても結果として残る。それがインターネットがない時代に親父を殺めても知りたいっていうぐらいおもしろい部分なんだと思うんです。

爪:自分にはそんな思想はないとばかり思っていたのに、リアルタイムで新日本とUインターのイデオロギー闘争を体験したときに、ああ、俺はやっぱり新日本に勝ってほしいんだなってことに初めて気付いたんですね。あのときってアセロラさんはUWFを応援していたんですか?

アセロラ:新日側でした。会場に見に行ったんですけど、一緒に行った一つ上の友だちがボクシングをやっているやつで、ガチガチのUWF派だったんです。しかも大の高田ファンだったので、負けた直後に立ち上がって「八百長だー!」って叫んだんですよ。

爪:まさかの北尾光司状態! やばいっすね(笑)。

アセロラ:まわりの目が怖くて、すぐ会場を後にしました(笑)。でも、爪さんは借金取りに武藤さんのスペース・ローリング・エルボーをしたとか、スコットノートンが武藤にやられてるのをピュアに受け止めてるっていうのは驚きました。

爪:毎月借金の取り立てに来ている二人組をプロレス技で退治してやろうとすごく練習しました。プロレスの技は喧嘩でも通用すると信じてましたね。

アセロラ:武藤が好きだったとしても、プロレスにはもっと殺人的な技があるじゃないですか? パイルドライバーとか。

爪:どうしてもスペース・ローリング・エルボーで倒したかったんですよね。派手なやつがよかったんです。

アセロラ:借金取りを殺すのも、やっぱりエンターテイメントの中で殺そうとしてるんですね(笑)。スペース・ローリング・エルボーとか、そういう派手なキャッチーな技の名前とか派手な動きが好きなんですかね。

爪:そうですね。でも一番衝撃的だったのはあれです。スタイナー・ブラザーズ(※5)のスコットが使ったフランケンシュタイナーって名前を初めて聞いたとき、なんてかっこいい名前なんだ! って衝撃を受けましたね。

※5:兄リックと弟スコットによる兄弟タッグチーム。合体殺法やフランケンシュタイナーなど、独創的なオリジナル技で90年代の新日本プロレスマットを席巻。武藤敬司をはじめ日本人レスラーに影響を与えた。



アセロラ:あははは。たしかに名前格好いいですよね。どんな由来かは全然わからないですけど。私は、正直言うと、2012年ぐらいのオカダ・カズチカ登場ぐらいまで、ちゃんとプロレスを見てない時期があったんです。2000年のヒクソン船木の試合が行われた「コロシアム2000」とか、「PRIDE」を中心に見てたんですけど、爪さんはそのあたりどうでしたか。


アセロラ4000(Photo by Jumpei Yamada)

爪:もちろん「PRIDE」とかも見てたんですけど、やっぱりプロレスを裏切れないと思ってましたね。永田とか棚橋がとにかく頑張ってたあの時代。ジャイアント・バーナードや中邑もいい試合してたなぁ。

アセロラ:中邑真輔選手の「一番スゲェのはプロレスなんだよ!」っていう名セリフ(※6)はそうであってほしいとは思いつつも、総合に出て行って負けてしまう選手が多かったですからね。

爪:そうですね。あの頃は確かにちょっと肩身が狭かったですね。たとえば、ケンドー・ナガサキ(※7)が負けた時は1個の神話が終わったじゃないですか。

※6:2004年3月28日両国国技館大会でボブサップに向けてのマイクアピール。「K1とかPRIDEとかよく分かんねえけど……一番スゲェのはプロレスなんだよ」
※7:喧嘩最強との呼び声も高かった、落ち武者スタイルのヘアスタイルと顔面ペイントが特徴的な元プロレスラー。2020に逝去。

アセロラ:ジーン・フレージャー戦ですね。

爪:ナガサキはガチなら強いんだっていう神話があっけなく終わりましたねぇ。

アセロラ:昭和のプロレスラーは実は道場で一番強いとか、そういう神話みたいなものを聞かされてきたのに、総合格闘技のブームになってリングに立ったら30秒ぐらいでいろいろ壊されちゃった。その時期は、第2期プロレスファン傷つき期だったと思うんですね。

爪:もう誰が出ても傷つくっていうのがありましたね。そう思うと中邑が頑張りましたよね。イグナショフ(※8)と戦ったときも。

※8:キックボクサーのアレクセイ・イグナショフ。2003年大晦日及び2004年5月に中邑と対戦した。

アセロラ:今でこそ、 WWE でスターになってますけど、私はしばらくイグナショフ戦のイメージが強かったです。そういう意味で、総合に行っちゃった私みたいなあまりプロレスに優しくない人間と違って、爪さんはプロレスをずっと見続けてきた。

爪:スポーツというかこの世の即興芸術の中で一番優れているのがプロレスだとずっと信じているので。総合格闘技にも芸術的なシーンもあるかもしれないです。でも先ほどアセロラさんがおっしゃった通り、そこにイデオロギーや人間ドラマや胡散臭さが合わさった一級品のエンターテイメントとして考えるならプロレスが最強ですよ。



―それぞれ、小説にプロレスネタが入ってくるのは、どういう気持ちからなんでしょう。

爪:無理やり入れるんですよ。絶対入れる必要のないときにかぎってどうしても書きたくなっちゃう。たとえば「ソバージュヘア」と描写すればいいところを、「冬木(弘道)に似た髪型の……」って書いてしまう(※9)。冬木じゃ伝わらないと思いますって言われてもかまわず書く(笑)。

※9:国際プロレスでデビュー、全日本~SWS~WAR~インディー団体で活躍した「理不尽大王」。2003年に逝去。

アセロラ:伝わらなくていいと思って書いてますもんね。

爪:どうしても冬木じゃないと嫌なんです。プロレスに詳しくない人には申し訳ないんですけど、冬木でクスっと笑ってもらえる数少ない同志に向けて書きましたね。

アセロラ:間接的にそこを伝えているところをわかってほしいですよね。私も、言いたいけど周りに伝わる人もいなくて(笑)。でも文章の中に入れて発信すれば誰かしら拾ってくれるだろうと。私の小説『嬢と私』の中で、主人公がうまい棒を食べたときに、「一番うまいのはサラミ味なんだよ!」ってセリフが文中に出てくるんですけど、それは先ほどの中邑選手の発言から来てますし。

爪:うまい棒とその名言を結びつけるのは素晴らしいマッシュアップです!

アセロラ:私はプロレスを言葉の文化でもあると思って見ていて。長州さんの名言とかって本当にすごいんです。今でこそ面白そうなおじさんみたいに扱われてますけど、意図的にこういう言葉を使っているんだろうってことは多いですよね。

爪:おっしゃる通り、頭がいいのを隠してると思いますね。いまの面白い長州さんは、自分で別のフェーズに入られたのかなって。

アセロラ:そこは前田さんと違うところで、前田さんは本能的にやってる感じがするんですよ。長州さんはより一層、ちゃんと考えてやってる感じ。そこが現役時代のお2人の道を別れさせた気がします。あと週プロとかゴングとか、ご自分の中で文章を書くときに何か影響を受けていると思いますか?

爪:週プロには影響を受けてると思います。週プロの記事って、パラパラって流し見をしても、表紙のキャッチコピーとか見出し文だけは絶対覚えているようなことが多かったですね。

アセロラ:私は週プロじゃなくてゴング派でした。

爪:そこにも派閥がありましたよね!



アセロラ:週プロもゴングも両方買っていたんですけど、週プロって、下手したら試合の経過とかを書いてないときもあったんですよ、当時。ゴングは割と試合経過を克明に書く。だから自分は今、仕事でライブレポートを書くときも、できるだけ時系列に沿って曲を書いていって、見てなかった人が追体験できる書き方をしているんです。それはゴングの影響が大きいかもしれないですね。週プロって概念的で。私の中では、「週プロとロッキンオン」、「ゴングとクロスビート」で派閥を分けて考えていました。

爪:わかります。俺、雑誌とか新聞紙なんかの紙の匂いが好きなんですけど、ゴングとクロスビートは紙質が硬いんですよ、ロッキンオンと週プロはちょっとやわらかい紙を使ってるんです。その違いには絶対何かあるんじゃないかと思ってます。

アセロラ:あははは。紙質の違いは今考えるとたしかにそうかも。週プロは今も買ってますか?

爪:一時期みたいに定期購読はできていませんが、今も買ってますね。



―団体も増えてるし、情報もインターネットで見れるような状況の中で、どうやってプロレスを見ていけばいいのかわからないので、オススメを教えてほしいなと思っていて。

爪:確かに多いですよね。俺の周りだと学生プロレスを見ている人も多いんです。下品で最高ですよ。プロにかぎらなくても、面白いことやっている団体は多くて。俺の地元の香川県の「UDONプロレス」みたいなローカルプロレス団体も盛んですよね。

―注目している団体や選手がいたら教えてもらえますか?

アセロラ:自分から言わせていただくと、スターダムがオススメです。私は80年代の全日本女子プロレスも観ていてクラッシュギャルズのLPレコードを買ったりしていたんですけど、私と同世代の人には、女子プロレスと男のプロレスを比較するような人もいると思うんです。でも、プロレスに男だからとか女だからとか関係ないですよ。特にスターダムは技の精度とか試合のクオリティが高くて、自分たちができないことをやっているという意味で、昔からのプロレスラーと変わらないと思うし、その中でもずっとアップデートされてると思います。コスチュームが派手だったり、試合の見せ方が面白いとかの変化もありますけど、昨年は昔の長与千種対ダンプ松本のような髪切りマッチをやったりとか、過去の全女がやってたようなことも間違いなく継承していると思います。それと、選手のビジュアルを見てファンになることもあると思うので、まずプロレスラーのSNSを見ていく中で、推しを見つけると入ってきやすいんじゃないかなって。それは新日本もそうなんですけど、「この人すごくかっこいい」とか、「すごく飛び跳ねて面白い」とか。発言が面白いことで注目される選手もいると思いますし、Twitterとかを見ていると自然と目に飛び込んでくるプロレスラーはいるんじゃないかなと思います。

―アセロラさんの推しは?

アセロラ:スターダムの舞華選手です。元柔道家なのでアスリートとしての実力を持っていて、凛々しくてかっこよくて、お顔立ちも綺麗なんですよ。得意技のひとつがオーソドックスなブレーンバスターなんですけど、あれだけ古典的な技一発で会場を沸かせるのは本当にすごいですし、昭和からのプロレスファンとしては嬉しいです。ひめか選手、なつぽい選手とのタッグチーム「まいひめぽい」も好きですけど、今年はシングルプレイヤーとして「シンデレラトーナメント」や「5★STAR GP」優勝や、ベルトも獲ってほしいですね。それともう1人、スターライトキッド選手も推しています。キッド選手はヒールターンして大ブレイクした感がありますし、コロナ禍のスターダムを牽引してきた功労者ですよね?

爪:キッド選手をはじめ、魅力のあるレスラーはみんなSNSでの発信方法を工夫している気がします。スターダムの選手たちはそこも頑張ってる印象が強いですね。スターダムの今の勢いは男女問わず業界ナンバーワンじゃないですかね。

アセロラ:他団体だと、ラム会長。去年の大晦日に初めて試合を見たんですけど、前半はオーソドックスなレスリングを見せて、途中で中指立ててうえーいって、試合運びとか見せ方がすごく上手いと思いました。

爪:キッズレスラーのはしりだった会長がいまやベテランの風格ですもんね。会長はツイキャスも楽しいです。プロレスをずっと続けてくれて本当にありがとうという気持ちです。ラム会長と怨霊さんが所属する暗黒プロレス組織666も是非。

アセロラ:ラム会長は非現実的な世界の住人って感じがするし、注目ですね。

爪:プロレスに何か偏見を持っている人ほど、プロレスを見てほしいかもしれないですね。俺、道頓堀劇場によくストリップを見に行くんですけど、ストリップってエロ要素が全てじゃないんです。純粋にダンスの素晴らしさとか、踊り子さんの人生が垣間見えるショーの構成に感動しちゃうんですよね。同じというとどちらにも失礼かもしてませんが、それに近いことがプロレスでも起きるような気がするんです。偏見の中にこそ人生を変えるヒントがあるかもしれない。もしハマらなかったときはおとなしく離れてください(笑)。



―爪さん的に今注目してる団体とか選手も教えてください。

爪:最近、人助けでも注目を浴びましたけど、グレート-O-カーンですかね。新日本プロレスの中ではちょっと異質で、いい意味で胡散臭い。岡倫之さんのときから応援しています。

アセロラ:僕も昔、新宿FACEでやった「ヤングライオン杯」で観ました。

爪:アマレスの元日本王者ですからね。そして時折見せる笑顔がかわいい。でもかわいいといえばEVILが最強ですね。ヒールなのにあの可愛さは卑怯。ヒールになってからやけに生き生きとしてるSHOからも目を離せません。あとはスターダムの渡辺桃が、かつての冬木弘道を彷彿とさせるようなふてぶてしいヒールになったらいいなぁと思って注目しています。



―初心者が観に行くのにオススメの団体はありますか?

爪:全日本プロレスは初めて見に行くのに適してるかもしれない。単純にでかくて、激しい体のぶつかり合いは誰にでもわかりやすいですよね。シンプルな昔ながらのプロレスをしているので最近の派手なプロレスはちょっとなと思ってる人にもおすすめできそう。

アセロラ:確かにみんなデカいんですよね。そこは昔ながらの馬場・全日本から脈々と受け継がれている感じがありますね。

爪:今年は新日とノアの対抗戦とかが盛り上がって、話題的に蚊帳の外に置かれてるのが悔しいですね。

アセロラ:同じ50周年にも関わらずさみしいですよね。全日本も良い選手が揃っていると思いますし、今年は宮原(健斗)選手に頑張ってほしい。

爪:マスコミ受けもするし、マイクもうまいし。

アセロラ:試合もおもしろいですもんね。

爪:あと、すいません。個人的にバラモン兄弟を最後に推させてください。プロレス界史上最高のタッグチームはバラモン兄弟で間違いありません。異論は大いに認めます(笑)。

アセロラ:今は多団体時代で、それこそ毎日のようにどこかで何かしらのプロレス興行が行われていますよね。プロレス興行って1人で観に行く人も多いですし、詳しくなくても全然いいと思います。なんとなく日常が退屈だなあって感じているような人は、一度フラッと後楽園ホールに足を運んでみてください。刺激的な体験ができると思いますよ。


爪 切男(つめ きりお)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。同作は賀来賢人主演でドラマ化。2021年2月より『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、3月『働きアリに花束を』(扶桑社)、4月『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)、の3ヵ月連続のエッセイ集刊行でも話題となる。

アセロラ4000(あせろらよんせん)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る元派遣社員。2021年『嬢と私』(SW)で小説家デビュー。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。バツイチ独身。

アセロラ4000『嬢と私』



本体:1500円+税
四六判変形 224ページ
ISBN:978-4-909877-06-2
発売:日販アイ・ピー・エス
Amazonにて購入

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