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私立恵比寿中学が語る、デビュー10周年「エビ中」ならではの多様性の広がり

Rolling Stone Japan / 2022年4月5日 18時0分

私立恵比寿中学(Courtesy of SMEレコーズ)

私立恵比寿中学が通算7枚目となるオリジナルアルバム『私立恵比寿中学』をリリースした。今作は、昨年加入した3人の新メンバー桜木心菜、小久保柚乃、風見和香を入れた9人体制として初のアルバムで、これまでもその傾向はあったが、より一層<歌>に力を感じる内容に仕上がった。それと同時に、彼女たちの表現が新たなステージに突入したという意味で、今作は重要な役割を果たしているように感じる。

【大きなサイズで写真を見る】私立恵比寿中学

Rolling Stone Japanには2年4カ月ぶりの登場となる今回は、初期メンバーの安本彩花、星名美怜、2014年加入の中山莉子、そして新メンバー風見和香の4人を迎えて話を聞いた。内容は多岐にわたり、メジャーデビュー10周年、歳を重ねたことによる表現の変化、新作、新体制、ツアーについてなど過去最大のボリュームでお届けする。最後は、風見和香が思う<いま一番エビ中らしい曲>で締めることになるのだが、果たして新メンバーの彼女が選んだ楽曲とは――。

―今年でメジャーデビュー10周年ということで、僕としては「もう10年も経つんだ」という感覚なんですけど、ご本人たちとしてはいかがですか?

安本 この10年、他のメンバーよりも先に入ってる私たち(安本と星名)は子供から大人になる大事な時期をエビ中として過ごしてきていて、10年って人生の半分だからそう考えるとすごく長い期間このグループでやらせてもらっているし、あっという間の気持ちもあるけど私的には長いなと思います。

―星名さんはこれまでの活動を通じてどんなことを感じていますか?

星名 メジャーでの10年の活動を通して、普通の学生生活では味わえない経験をしたり、景色を見ることができたと思うし、アイドルって次のステップへ進むためにやられてる方もたくさんいると思いますけど、私たちにとってエビ中は自分の人生と言えるぐらい大切なものになってると思います。メンバー同士の絆もそうだし、私立恵比寿中学というものに対する想いの深さは、こうして長く活動を続ける上での感謝にもつながってると思うので、「10年やってきたし、このへんがゴールかな」みたいなことは思わないし、どこがゴールかわからないのがエビ中のワクワクできるところかなと思います。

―エビ中が中1から始まったとすると今は大学4年。そう考えるとすごく長いですね。

安本 長いし、濃い。

星名 濃いね! うん。

―10年も経つと自分たちの歌や楽曲との向き合い方も変わってくるのかなと思います。今になって歌詞がしっくりくるようになった曲はあったりしますか?

中山 私は加入する前からエビ中のことが好きでよく聴いていて、その頃好きだったのが「Im your MANAGER!!!」(2013年発表のシングル『未確認中学生X』カップリング曲)とか「踊るガリ勉中学生」(2013年発表のシングル『梅』カップリング曲)だったんですけど、21歳になった今は好みがどんどん変わってきていますね。たとえば、「曇天」(2019年発表のアルバム『MUSiC』収録曲)を18歳の頃に録ったときはすごく大人な曲だと思ったのでいろいろ想像しながら歌ったんですけど、今は、歌詞に出てくるような経験はないけど、ちょっと理解できるようになってきたと思います。そういう意味では自分に対して大人になったなという感覚はありますね。







―歌詞の理解が深まると歌に込める思いも変わってきますよね。

中山 はい、表現の仕方が変わってくることで自分でも新しい発見ができているので、今、すごく楽しいです。


「子供の気持ちもわかるけど、大人の気持ちもわかるんだよな、みたいな」(安本)

―安本さんは自分の表現の変化という点で印象深い曲はありますか?

安本 難しいな。私は年代でも変わるんですけど、その日によっても変わるタイプなので……でも、「大人はわかってくれない」(2012年発表のシングル)は当時メンバーみんな正に反抗期だったので(笑)、とにかく「なんでわかってくれないの!?」っていう気持ちで歌っていたんですけど、いま私たちは大人の立ち位置になって、こうやって3人の新メンバーが加入して、3人はナウ反抗期で子供としてもがいているところなので、そんな私たちが一緒に歌うことでこれまでとはちょっと違う目線で曲を感じるようになりました。



―ああ、なるほど。

安本 大人がなんでそういうことを言うのかという気持ちが私たちにもわかってきたからこそ複雑になってきてて。

星名&中山 (笑)。

安本 子供の気持ちもわかるけど、そう言いたくなる大人の気持ちもわかるんだよな、みたいな。

―では、風見さんはこの曲をいまどう捉えていますか?

風見 お母さんとかに対して、「なんで私がこう言ってるのに、そんなこと言ってくるの?」ってけっこうイラついちゃったりすることがあるので、そういう気持ちを込めて歌ってますね。

―いま、風見さんにとって歌詞に一番気持ちが乗っかる曲ってなんですか?

風見 え~、なんだろう……今まで歌った曲で言うと、ファンクラブイベントで(安本)彩花ちゃんのソロ曲「またあえるかな」(2013年発表の『エビ中のユニットアルバム 青年館盤』収録曲)を歌わせてもらったときに、今まで考えてなかった、「どんな子が主人公で、どんな物語なのか、どういう表現をしたらいいのか」っていうことを深く考えるようになりました。



―風見さん、すごいですね。まだ加入して1年も経たないのにもうそこまで考えていて。

安本&星名&中山 たしかに。

―メジャーデビュー10周年を迎えるグループに入るって相当なプレッシャーだったと思います。

風見 エビ中はもともとライブでの歌唱力やダンスがすごかったので、新メンバーが入ることでそれが落ちるのは嫌でした。

―そうですよね。

風見 でも、そう思っていながら自分に新メンバーとしての甘えがあることに気づいて、いつの頃からかレッスンのときからライブを意識して全力で踊って、パフォーマンスが落ちないように意識するようになりました。

―お姉さんメンバーとしては、新メンバーが入ったことで、パフォーマンス面、メンタル面でどんな変化が起こってますか?

星名 最年長の真山りかが25歳、最年少の(風見)和香が14歳で、11歳差もあるんですけど、3人の声が入ることでユニゾンが明るくなりました。今までの私立恵比寿中学はすべての楽曲に対して魂でぶつかっていくパフォーマンスが多かったんですけど、そこにフレッシュさ、アイドル要素がプラスされたので、私立恵比寿中学全体としてもフレッシュ感を取り戻した感じはすごくあるかなと思います。

―そういう変化って事前に想像できていましたか?

星名 考えてなかったよね。

安本 うん。

星名 未知過ぎてわからない部分がありましたね。新メンバーも手探りだったと思うんですけど、私たちも手探りで。でも、ヒントになったのが昨年末にあったReboot(「私立恵比寿中学 大学芸会2021 ~Reboot~」)というライブだったのかなと思います。





新メンバーの躍進

―あのライブは本当によかったですよね。3人がすっかりグループに馴染んでいる姿にびっくりしました。傍目には、新メンバーがすごい勢いで”私立恵比寿中学になっている”ように見えるんですけど、メンバーから見てもそういう感覚はありますか?

安本 ありますね! 私たちが新メンバーと同じ年代の頃は、さっき和香が言ってたみたいに歌詞の意味を考えようとしてもわからなくてアドバイスを聞いてたぐらいなのに、3人は自分でちゃんと理解して「じゃあ、こうしよう」って考えられてるので本当に頭のいい子たちだと思うし、吸収も早いんだと思います。自分もこういう子たちと接しているなかですごく刺激をもらってて、改めて「エビ中って何が魅力なんだろう?」「この曲のどこに魅力があるんだろう?」ってさらに深堀りしていくようになりました。だからこそ、既存の6人のメンバーもエビ中に対して、楽曲に対して、向き合い方が深くなっているので、3人の成長とともに私たちも成長のヒントをもらってると思いますね。

―やっぱり、3人から受ける刺激は大きいんですね。

安本 人としても成長させてもらってると思います。

―人として、というのはどういうところから?

安本 たとえばカホリコ(小林歌穂と中山)だったら、今まで最年少だったふたりが後輩を迎えることでひとつ大人になって。「後輩を迎えることとは何か」って考えることですごく変化しているのを感じます。

―なるほど。

安本 そうやって立場がひとつずつ上がっていくのをほかのメンバーを見ていても感じます。最年長の真山は最年長としての在り方がすごく変化してるし、ほかのみんなからも年頃の女の子がどんどん大人になっていくのを感じるし、自分に対しても感じるし、そんな空間にいるのが面白いなって思います。

―中山さんは後輩ができてどうですか?

中山 私が加入したときは彩花ちゃんが教育係としていろいろ教えてくれたので、今度は私が新メンバーに教えてあげたいと思って、新メンバーが加入したときに教育係に立候補したんです。でも、実際はやっぱり難しいこともあって。自分は「ここはこうだよ」ってしっかり教えてあげられるタイプではないので、教育係になりたいとは言ったものの初っ端からひいちゃった部分もあって。でも、そういうことがあったからこそ「自分がやるべきことはなんだろう」って考えることができたのでいい期間だったと思います。

―安本さんがしっかりカホリコのおふたりを教えてきたことがちゃんと受け継がれているんですね。

安本 そ、そうなんですかねぇ? 私、なんにも教えてないんですけど……!

一同 (笑)

中山 彩花ちゃんはメンタル面で支えてくれて、ダンスとかはひなたちゃんも一緒に教えてくれました。私はメンタル面を支えてくれた彩花ちゃんみたいになりたかったんです。

―それは安本さんとしても教育係をやってきた甲斐がありますね。

安本 教育係をやってきたことで、ふたりを成長させたことよりも自分が成長できたという手応えのほうが大きかったのでふたりにはすごく感謝していたんですけど、こうしてふたりが後輩をもったときにやっと「自分はエビ中の一員としてちゃんとふたりに何かをあげることができたんだな、ちゃんと使命を果たしたんだな」って実感できて、それは純粋にうれしいです。

―いい話ですねえ……。

全員 (笑)


『私立恵比寿中学』の裏側

―では、最新アルバム『私立恵比寿中学』についてお聞きしたいと思います。今作は前作『playlist』以上に歌のアルバムになったと感じましたが、いかがですか?

安本 レコーディングしている間は正直不安な気持ちもあって。今までとタイプの違う楽曲が多かったし、「エビ中らしいアルバムになるのかな?」ってけっこう怖かったんですよ。だけど、全曲集まったときに「エビ中はやっぱり挑戦を止めないグループなんだな」って実感したし、「……あ、それがエビ中らしさなんだ」ってスッと自分の中に入ってきて。ファンの皆さんからするとこれは新しいエビ中なのかもしれないけど、どんどん新しくなっていくのもエビ中らしさなのかなと思ってます。

星名 曲を提供してくださるみなさんが自分の曲のように愛情を込めてつくってくださったので、それが本当にありがたいと思ってます。だからこそ、私たちはその曲のカラーに染まりつつも、あくまでも<私立恵比寿中学の楽曲>として歌っていけばいいのかなって毎回考えてます。今回のアルバムも石原慎也(Saucy Dog)さんとか大橋ちっぽけさんとかと出会うことができたし、そういう出会いが自分の感性の幅が広がるきっかけになってるので本当にありがたいと思います。

―今回、みなさんの声がすごく前に出てきてませんか?

安本 たしかに、これまでは「自分の気持ちをこの曲に閉じ込めよう」みたいな気持ちがあったんですけど、今回のアルバムは「何かキラッとするものをみんなに届けられたらいいな」という気持ちで歌えたので、そういうのがボーカルの雰囲気にも出てるのかなと思います。「外に開けよう」という気持ちが私にはありましたね。

―たしかに、単に歌声というより、人間が聞こえてくるように感じて、それぐらい声の質感が生々しく感じたんですよね。

星名 歌い方の統一にそこまでこだわらなかったのも大きいのかもしれない。今回は個人個人のニュアンスを大事にしたり、自分たち自身で曲を噛み砕いてレコーディングしたんです。『playlist』は完全に型どおりに録っていて、そうすることによって楽曲としてまとまりのあるものになったと思うんですけど、今回はそこが違ったんだと思います。



―たしかに、『playlist』のときは歌い方の統一を意識したとおっしゃってましたね。今回はどういうテーマがあったんですか?

星名 多様性というキーワードはあって。こんなにもメンバーの年齢の幅が広がったので、25歳と14歳が同じように曲のニュアンスを捉えられるかっていったらそうではないと思うんです。なので、そういう違いを大切にしたのが今回のアルバムだと思います。9人体制最初の形としてそういう部分を押し出せたのでいいアルバムになったのかなと思います。

―かつてのエビ中の特徴だった遊びのある曲が今回はないですよね。

安本 うーん?

星名 そうなのかなあ?

安本 自分たち的にはけっこう遊んでると思いますね。

―たとえば?

星名 「シュガーグレーズ」はけっこう遊んでるなって感じだし、「トキメキ的週末論」は完全に遊んでるし。





安本 もしかしたら、プロの遊びになってきてるのかもしれない。

中山 今までは学生の遊びだったけど、大人な遊び方になったというか。

星名 「ふざけるときも全力で」がちっちゃい頃からエビ中のポリシーなので、見てる方をどれだけ楽しませることができるかっていう真面目なふざけ方になったかもしれないね。

―鬼ごっこしてたのが六本木に飲み行くようになった、みたいな。

全員 あはは!

星名 まあ、いまだにブランコではしゃいでますけどね。


お姉さんメンバーからの影響

―(笑)アルバムの収録曲を選ぶにあたって基準はあったんですか?

星名 アーティストさんに「これがエビ中っぽいと思う曲」とか「エビ中なら歌えそうな曲」みたいな発注をするんではなくて、そのアーティストさんの曲をエビ中が歌ったらどうなるかと思えるような曲、こういう曲をエビ中に歌ってほしいと思う曲をお願いしているので、だからこそ「この中にいくつのキャラクターがいるんだ?」っていうぐらいのアルバムになってるんじゃないかと思います。

―風見さんは初のオリジナルアルバムで、相当難易度の高いレコーディングだったと思います。

風見 曲自体難しかったし、「ここ、どう歌えばいいんだろう……?」ってすごく悩みました。これは私だけが感じていたことなんですけど、「Anytime, Anywhere」の<溢れて>とか、正直もうちょっと上手くできたんじゃないかなって思ったところもあったので、お姉さんメンバーの歌声との差をなくすために……というわけではないんですけど、ボイトレの先生にどうしたらいいか相談したら「(風見の声だけ)浮いちゃってるよ」って言われて浮かないような歌い方を教えてもらったので、そういうところをレコーディングでは気をつけました。あとは、曲の表現とか解釈を家で考えて、ボイトレの先生に「こう思うんですけど、どうですか?」って聞いてみたり。



―軽く国語の授業じゃないですか。

安本 たしかに(笑)。

―そして、そんな努力の甲斐あって「シュガーグレーズ」のオープニングパートという大役を任されたんですね。

星名 ね!

風見 本当にびっくりして! これまでああいう曲を歌ってこなかったのでどう歌えばいいのかもわからなかったし、自分の声だとどうなるのか不安で、レコーディングが終わったときは「大丈夫かな……?」って思ってたんです。でも、最初のパートをいただけてうれしかったです。

―風見さんは今回のレコーディングに参加していろいろとお姉さんメンバーから学ぶこともあったと思うんですが、いかがですか?

風見 レコーディングはひとりずつ歌うんですけど、私がスタジオに入ったときにお姉さんメンバーがボイトレをしていることがたまにあって、その様子を見てるとお姉さんメンバーは力を抜いたりして自由に歌ってるんです。でも、私は「ここはこう歌って」とか「ここは伸ばして」みたいに教えてもらってるので、これは新メンバーだから仕方がないことなんですけど、先生の指導の仕方が違うのはそういうことなんだなって。だから、なんて言うんだろう……。

星名 自由に歌ってみたい?

風見 そう、先生から「自由に歌ってみよう」って言われるようになりたいなって思ってます。

―できる先輩が身近にいると成長も早そうですね。

星名 自分たちも和香ぐらいの歳の頃に同じような苦労をしてたし、私たちはずっとエビ中という形を残していきたいという気持ちがあるので、いつかこの3人がグループを引っ張っていくときに苦労しないでほしいなっていう気持ちはすごくあります。


「力を抜くこと」の大切さ

―今作の収録曲についてですが、僕は「さよなら秘密基地」「ナガレボシ」「宇宙は砂時計」の流れが大好きです。

全員 ああ~。

星名 絵本みたいだよね。

安本 ね。

―「宇宙は砂時計」の歌詞が特に好きで。

安本 本当にいい曲と出会えてるなって思いましたね。この曲のレコーディングが一番最後だったんですけど、そのときに「あ、このアルバム、いい方向に向かうんだろうな」って安心しました。自分の中でもすごく思い入れのあるレコーディングになりました。



―先ほど声が生々しいという話をしましたけど、この曲の星名さんの<戻らない>はそういう意味でもすごくいいと思いました。

星名 ありがとうございます! ふふふ。

―この曲に限らず、声を張らない曲が多くないですか?

星名 そうですね! エビ中といえばロックが多かったのに、今回は一曲もない。

―そういう意味でも難しかったんじゃないのかなと。

安本 難しい。

星名 そうですね。「ハッピーエンドとそれから」をこないだ歌唱したんですけど、いつものようにアイドルとして踊ったりパフォーマンスしながらあの歌のニュアンスを出していくのがすごく難しくて。そこは自分たちでも苦戦しているところだし、新しい挑戦だと思ってます。



―これってそう簡単に答えが出なさそうですね。

安本 そうなんですよね。「さよなら秘密基地」もいま流行ってるボカロの雰囲気があるし、これまでソウルな感じで歌ってきたエビ中の真逆をいってるので、その中でどうやって感情を表現していくかめちゃくちゃ苦戦してます。



―力の抜き方が重要なのかなと思ったんですけど。

中山 それはレコーディングですごく言われました。今回は声を張る曲がなかったので、ボイトレの先生から「とにかく(力を)抜いて、リラックスしてやりなさい」って。

星名 張るのは「トキメキ的週末論」ぐらいだもんね。

―今回のような楽曲が増えてくることで、エビ中の表現力というものが本格的に問われる段階に入ってきてるというか。

安本 ちょっと女優の気分を味わってる(笑)。

星名 わかる、曲によって毎回歌い方が違うからね。

―では、今作の収録曲で自分のパート以外のお気に入りを教えてもらえますか?

安本 私は「きゅるん」の2Aの(柏木)ひなたのパートです。あそこってすごく色っぽいニュアンスだなと思ってて、歌詞というよりもメロディラインに色気があって気に入っていたので、正直、めっちゃ歌いたかったんですよ。



―そうだったんですね。

安本 レコーディングもすごくこだわったんですけど、完成したのを聴いたときに「あ、ひなただったか! クソ!」って(笑)。でも、ここは好きですね。

星名 私は「ハッピーエンドとそれから」のBメロ、柚乃の<年はとったけど>のニュアンスの感じがめちゃくちゃ好きだったので、自分のパートがなかったときは「ああ、悔しい……!」って思いましたね。このパートはニュアンス以外にも歌詞の表現とかワードチョイスの絶妙な感じがすごくかわいらしいのに切なさもあって、「これはきっと、今の私の歳だからこそ表現できる歌い方があったんだろうな、歌いたかったな」って思いました。

中山 私、自分のパートでもいいですか?(笑)

―どうぞ(笑)。

中山 「きゅるん」の2B、<さみしいなんて 馬鹿ね子供じゃないんだし>です。ファンの方は私に対して「りったん(中山の愛称)は幼い」みたいなイメージがあったり、私のそういうところが好きと言ってくださったりもするんですけど、このパートを歌うことで「もう21歳だぞ、大人になってるぞ」っていうところを見せられるんじゃないかと思って、ライブをすごく楽しみにしてます。

―あはは!

中山 ここはすごく歌いたいと思ってたパートだったので、すごくうれしかったです(笑)。


「いい英才教育を受けました」(星名)

―風見さんはいかがですか?

風見 私は「さよなら秘密基地」の一番最後の(小林)歌穂ちゃんのパートなんですけど、ここは本当に歌いたくて。この曲の中で一番どうやって歌おうか考えたし、レコーディングでも頑張ったところだったので、ここをもらえなくて「ああ~」って思ったけど、改めて歌穂ちゃんの表現はすごいなって感じたのでお気に入りです。

星名 自分が歌いたいと思ってるパートってだいたい自分にこないよね。

安本 うん、気合が入り過ぎちゃう(笑)。

星名 で、「あ、(自分のパートは)ここかぁ!」ってなったりする。

―曲がこれだけ変化していくと、それに伴って振付も変わっていくのかなと思うんですが。

星名 今回は何曲かだけなんですけど、「この先生に振付をお願いしたい」ってメンバーから相談してて、いくつかそれが叶いそうです。今回は曲の幅がだいぶ広いので、それぞれのジャンルが得意な先生につけていただけたらいいなと思ってます。あと、「ハッピーエンドとそれから」はTikTok世代にも刺さるようにということでTikTokで映えそうな振付になっていて、自分たちも変わってきてますけど時代も変わっているので、そういう部分で戸惑ってはいるんですけど新しい発見もあって楽しいですね。

―自分たちが希望する先生に振付をしてもらうというのはこれまでもあったんですか?

安本 「この曲、絶対あの先生がいいよね!」みたいな雑談の中からアイデアが生まれて、それを提案して実現したものがちょこちょこあるって感じです。

―以前、自分たちに判断を任せてもらえる機会が増えていると話していましたけど、今も引き続きそういう感じですか?

星名 増えてはいるよね。ベースはアイドルなのでスタッフさんが中心になって決めてくださるけど、その中でも自分たちで挑戦したいことを提案するようにはなったかなと思ってます。

安本 自分たちも大人になったことで、「エビ中への想いはスタッフの皆さんよりも強いぞ!」っていう自信があるし、だったら対等に向き合ってもらいたいなってことで自分の思いを伝えることは年々増えてると思います。今回のレコーディングでも、「こういうニュアンスで歌いたいんですけどやってみてもいいですか?」みたいな感じで提案してみたり。

―今作を聴いて改めて思ったんですけど、エビ中は今やいくつになっても歌い続けていける歌を歌っているというか、言い換えると<一生青春>みたいな、人生の一瞬だけ輝くような瞬発力のグループではなくなっているなと。

安本 たしかに,自分自身「一瞬」よりも「一生」っていう言葉がしっくりくることが何においても多いので、それをエビ中でも体現できてるんだと思います。

―この先、どんな曲でも歌っていけますよね。

安本 うん、その自信はすごくありますね。なんでもやれると思います。

―その自信はどうやって身についたんですか?

星名 エビ中は、これという形を決めることなくやってきたのが長続きしてる理由のひとつだと思うし、挑戦することに対する恐怖心がまったくないのは、小さい頃からキョンシーをやったかと思ったら(2011年発表のシングル「オーマイゴースト?~わたしが悪霊になっても~」)、急に真面目になって「スーパーヒーロー」(2015年発表のシングル)みたいな曲を歌ったりしてきたからだと思うんです、大人の方に思いっきり振り回されて、そこに自分たちも身を委ねてきた結果が今につながってる。だから、「いつでもどんとこい」の姿勢でいつまでもいられるんだと思います。





―かつては振り回されるメンバーの姿を見るのもエビ中の楽しみ方のひとつだったけど、今はそういう経験を経て身についた皆さんの度胸を楽しむとき。

星名 そうですね。いい英才教育を受けましたね(笑)。


「ライブは一番自分たちらしくいられる場所」(安本)

―4月から全国ツアーが始まりますが、どんな内容になるんでしょうか。

安本 今回はアルバムを引っさげたツアーになるんですけど、9人でツアーを回るのは初めてなので、新しいエビ中のよさはもちろん伝えていきたいけど、ライブは一番自分たちらしくいられる場所だと思ってるので、私たちの人間らしさをアピールしていきたいです。コロナ禍になってからエビ中を好きになってくださった皆さんの中には、まだ私たちの動物っぽい部分を生で見れてない方も多いと思うので、「私たちはこうやってエビ中をやってるんですよ!」って全国の皆さんに挨拶まわりみたいな感じで伝えていけたらいいなと思ってます。

―アルバムの曲を中心に披露していくことになると思いますが、これだけ名曲が増えてくるとそれ以外にどの曲をやるかっていうのは本当に悩ましいところですね。

安本 そうですよね。今は3人にいろんな曲の振り落としをしている最中なので、「この曲、(ツアーで)やる可能性あります」っていうお知らせがスタッフさんからポンポン届くんです。なかには「これ、9人でやるんか! 9人でやったらどんな曲になるんやろう!?」みたいな曲もけっこうあるのですごく楽しみですね。

―最近ライブでやってないけど久々にやりたいな、みたいな曲ってありますか?

中山 (食い気味に)たっくさんあります!

全員 (笑)

中山 私、Instagramのストーリーでやりたい曲をアピールしてるんです。「この曲やりたいわ~!」って。そうしたら実際に(セットリストに)入った曲もあったので、こういうアピールも大事だなって(笑)。

―たしかに、そうやってアピールしていかないと容易に埋もれてしまいますよね。

中山 いい曲が眠りすぎてるので。

安本 全部出していきたいよね。

―風見さんは「まだ覚えてないけど、これ歌いたいなあ」っていう曲はありますか?

星名 ああ、気になる。

風見 私、「ちがうの」(前作『playlist』収録曲)がすごく好きで……。



安本・星名・中山 ああ~!!

安本 気持ちはわかるぅ!

風見 踊りはかわいいんだけど曲はちょっと大人っぽいので、実際にどう歌えばいいのか悩むとは思うんですけど、やってみたいなって。

中山 「ちがうの」いいなあ!

―その一方で、皆さんの成長とともに「この曲はもう違うかな?」みたいな曲も出てくるんですかね。

全員 ああ~。

安本 6人の頃は、インディーズ時代のちょけまくってる曲はもう合わないのかなあって悩んだりもしてたんですけど、3人が入ったことによって「まだまだガンガンイケるぜ!」みたいな、「待って、可能性広がり過ぎじゃね?」っていう気持ちになってます。

―それはうれしいですね。じゃあ、いま一番エビ中らしい曲ってなんだと思いますか?

安本 むずっ!

星名 ああ~。

―ちなみに、約3年前に同じ質問をしたときは真山さんが「元気しかない!」(2019年発表のアルバム『MUSiC』収録曲)を挙げていました。

安本 ああ~、たしかにウチらしいな。

中山 私は「フォーエバー中坊」(2017年発表のアルバム『エビクラシー』収録曲)。こないだ久しぶりに聴いたら涙出てきちゃった(笑)。最近はアーティスト寄りの曲もやらせていただいてるけど、これを聴くと自分たちの原点を思い出すし、「めっちゃいい曲じゃん!」って思うんですよね。



安本 「元気しかない!」に通ずるものがあるね。

―そのラインはブレないんですね。

星名 マインドが中学生だから。

安本 ほかのチームじゃ絶対に歌えない世界観だもんね。

中山 うんうん。


エビ中の見え方

―じゃあ、新メンバーの風見さんにも敢えてエビ中らしい曲を聞いてみましょうか。

風見 ええ~!?

安本 和香が思うエビ中!

星名 和香が想像してるエビ中は私たちと違いそうだよね。

風見 えっとぉ……ええっ!? なんだろう……。エビ中らしい……?

―じゃあ、風見さんには引き続き考えてもらうとして、残りの3人には、来年目指しているという神宮球場でのライブについてお聞きしたいと思います。

星名 実はその話をしたときはこの体制になると思ってなくて。

安本 6人として目指すものとして話してたんです。

星名 だから、今はそのときとはまた変わっちゃったかなと思ってて。

―ああ、新メンバーが入ったことで。

星名 そのことでエビ中のカラーがまた変わったというところはあって。神宮球場は私たちの魂をぶつける場所としてやってみたかったんですけど、今もそういう部分はありつつも、ポップだったりアイドルらしい部分を取り戻したエビ中としては、アリーナみたいな場所で、かわいらしいセットで、この人数感を目で見て楽しんでいただけるような演出でできたらいいなという気持ちがあります。

―なるほど。

星名 今はいい意味で気持ちが崩れてきているというか、私立恵比寿中学というものに対する捉え方やニュアンスがメンバーのなかでちょっとずつ変化しているので、それに合わせてやりたい会場もやりたいことも少しずつ変化していると思います。

―作品としてはすごく大人な内容になったけども、アイドルとしては原点回帰している?

星名 むしろ、新しいエビ中というか。私立恵比寿中学はメンバーの入れ替わりが多いグループで、その時代によってグループカラーが全く変わるのがよさだったりもするので、6人時代も大好きですけど、今の新しいエビ中も本当に大好きなので、新しい時代が来たなという気がしています。

―わかりました……さあ! 

星名 さあ!

中山 (風見を見ながら)めっちゃ悩んでる(笑)。

―では改めて……風見さんが思うエビ中らしい曲はなんでしょう?

風見 全然わかんないんですけど……「キャンディロッガー」(2015年発表のシングル「夏だぜジョニー」のカップリング曲)。



―へぇ~!

風見 ええ~、なんだろうぉ!?

―いやいや、面白い意見ですよ。

風見 なんか……カッコよさもありつつ、裏声を使うところもあったりして……。でも、カッコいいだけじゃなくて……なんだろう?

星名 カッコいいけど、いろんな味がある?

風見 うーん、カッコいいも違うんだよなあ! ……なんか、そんな感じです(笑)。すみません。

―いや、いいセレクトだと思いました。

星名 びっくりした。

中山 びっくりした!

安本 でも、それが答えなのかもね。人によってエビ中の見え方って全然違うから、それこそがエビ中なんだよ。



<INFORMATION>


7th FULL ALBUM
『私立恵比寿中学』
私立恵比寿中学
SMEレコーズ
発売中

●完全生産限定盤A 【CD+BD】  SECL 2740-1  11,000 (税込) 
●完全生産限定盤B 【CD+BD】  SECL 2742-3  9,000 (税込)
●初回仕様通常盤 【CD】 SECL-2744  3,300 (税込) 

https://ShiritsuEbisuChugaku.lnk.to/gMJqK8gX

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