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カミラ・カベロが語る「自分らしさ」とラティーナの誇り、多様性のセレブレーション

Rolling Stone Japan / 2022年4月12日 18時0分

カミラ・カベロ

カミラ・カベロが2年半ぶり3枚目となる最新アルバム『ファミリア』をリリース。エド・シーランやウィロー(ウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミスの娘)も参加した本作について、日本盤ライナーノーツを執筆した音楽ライターの新谷洋子に、カミラ自身の発言も交えつつ解説してもらった。

ダイアナ・ロス、ビヨンセ、そしてカミラ・カベロ――などと名前を並べるのは、時期尚早だろうか? そもそも人気ガールズ・グループから独り立ちして、グループ時代以上の成功を収めたアーティストを探しても、このふたりくらいしか前例がない。そういう意味では、5年前にソロ・デビューしてからというもの、偉大な先輩たちの背中を追って邁進してきた彼女にとって、本作『ファミリア』は重要な一歩になるような気がするのだ。

もとを正せば、アメリカ版『Xファクター』第2シーズン(2012年放映)のオーディション過程で、同じく音楽界を志す4人の女性とフィフス・ハーモニーを結成し、3位入賞を経てデビューを果たしたカミラ。アメリカでは、ビヨンセを擁したデスティニーズ・チャイルド以来の大型ガールズ・グループとして彼女たちは着々とブレイクに至ったのだが、2016年に脱退したカミラは、ソロで再出発してからも順風満帆にキャリアをナビゲートしてきた。翌年秋にはシングル「ハバナ feat. ヤング・サグ」で英米ほか各地のチャートで1位を獲得し、2019年にも当時交際していたショーン・メンデスとのデュエット曲「セニョリータ」で、世界中でナンバーワン・ヒットを記録。1stアルバム『カミラ』(2018年/全米チャート最高1位)と2作目『ロマンス』(2019年/同3位)はアメリカ国内で相次いでミリオン・セラーとなり、チャート成績においてはフィフス・ハーモニーを超えて、現代アメリカきっての若手女性ポップスターのひとりへと成長を遂げている。




じゃあ、彼女がソロ・アーティストとしての立ち位置を難なく確立できたのはなぜか? ひとつに、12歳の頃からアコギを練習して曲を作っていたカミラが、シンガー・ソングライターとして一貫して自分自身の言葉で歌っていることが挙げられる。と同時に、ヒスパニック・アメリカンという出自をより鮮明に打ち出したことも無関係ではないだろう。前述した2枚の全米ナンバーワン・シングルを始め、ラテン・ポップに接近した曲を織り交ぜるようになっただけでなく、殊にトランプ政権下では移民の視点から積極的にポリティカルな発言を行なってきた。メキシコ人の父とキューバ人の母を持ち、幼い頃に生まれ故郷のキューバからアメリカに移り住んでマイアミで育った彼女は、次のように自分の家族を語る。

「両親と私と妹は、厳しい経験をしてきたことによって結束が固くなったわ。父と母がアメリカに渡ったのは、すでに32歳くらいになっていた頃だと思うんだけど、ふたりはとても苦労したの。そして私自身も大変だった。両親は私が受け入れられ、愛されていると感じられる自分の居場所を常に作ってくれたし、私と妹のためなら何でもやってくれた。というわけで、私の家族に何らかのルールがあったとすれば、それは、お互いを支え合い、忠実であることの重要性ね。忠誠心というのは、私の家族の中ではとても大切なことなの」。



そんなカミラが、かつてなくヒスパニック・アイデンティティを前面に押し出し、自分のルーツに、そして自分の内面にも深く踏み込んでいるのが、ここに完成した3rdアルバム『ファミリア』なのだ。世代や人種やイデオロギーによる分断線があちこちで露出している昨今の世界において、多様性のセレブレーションと呼ぶべき本作は、広く社会的なインパクトを持ち得る作品だとも言えよう。

「毎回アルバムを制作している時は、聴き手のことはあまり意識しないの。私自身のためのものであって、喜び、透明性、感情の解放、創造的表現といった意味で自分が何を得られるのか、ということ。だから私自身とコラボレーターたちの間で、どうやったら最高に楽しめるかが全て。感情的、精神的、創造的、そして気持ちの上でどうやって最高のものを引き出すかということね。だから、完成してこんな風にアルバムについて話すようになるまでは、世界の人が聴くのだということをあまり意識しない。でもそういった社会的なインパクトについては、うれしく思うわ。私はラテン系を代表していることを誇りに思うし、女性であること、答えを模索している若者であることを誇らしく思う。そういう私の姿に人々が自分を重ねるというのがうれしいの」。

『ファミリア』を象徴する3つの収録曲

まるでその誇りを世界に見せつけているかのようなマリアッチ・ホーンで始まる『ファミリア』は、メキシコとキューバの伝統音楽を中心に、長年彼女が聴き親しんできたラテン・アメリカ圏の音楽の様式に彩られ、スペイン語詞があちこちから聴こえてくる。クレジットを見ると、エドガー・バレラ(J・バルヴィンやCNCOの作品を手掛けたメキシコ人プロデューサー)やチェチェ・アララ(ラテン・グラミー賞の音楽監督を務めるコンポーザー/アレンジャー)といったラテン・ポップ界の売れっ子サウンドメイカーの名前がある上に、オーセンティックなナマ音にこだわって敏腕プレイヤーが多数起用されており、有名なところでは、キューバ人の名パーカッショニスト=ルイス・コンテや、同じくキューバ人のベーシストでチック・コリアらとプレイしているカルリートス・デル・プエルト辺りだろうか? トランペットやサックスが鳴り響き、スパニッシュ・ギターやアコーディオンがメランコリックな旋律を奏で、ティンバレスやコンガが複雑なリズムを刻んで、カミラの声を縁取っている。

「自分らしさ、そして自分がどういう人物になりたいかというのは、私が受け継いできたキューバとメキシコの伝統によるところが大きいと思う。私の開放的なところや遊び心、官能性、カラフルさ、プライドは、それらの文化から来ている。このアルバムでスペイン語の歌詞を書くようになる前から、時々スペイン語でフリースタイルで話して、どんなメロディが生まれるかを試してみたりしていたの。自分の中の異なる部分に耳を傾けようとして。だから私にとっては、より遊び心のある側面が引き出されると感じるわ。そして、無意識のうちに子供の頃から親しんできたラテン音楽にも影響されているのだと思う」。

もっとも、アルバムに着手した時にカミラの頭にあったのは、ラテン・ポップ作品を作ることではなかった。「私にとってこのアルバムを作るというのは、とにかく無防備でありたい、正直でありたいという心境になること。それがやり易かったのは、その瞬間に感じたことを何でも話せると思えるような、安心できる環境をコラボレーターたちが作ってくれたから。”演じる”必要はなくて、ありのままの自分でいられた」と説明する。ここで言うコラボレーターとは、エドガーやチェチェのほかに、大多数の曲の共作者兼プロデューサーであるリッキー・リードとスコット・ハリス、そしてマイク・サバスの3人が含まれ、いずれもメインストリーム・ポップのど真ん中で活躍するヒットメイカーだ。

彼らのサポートを得た今回の彼女は、主に恋愛を題材にしていた過去2作品とは一線を画して、多様な題材を網羅。敬愛するサルサの女王セリア・クルスへのトリビュート、キューバの政情を憂うプロテスト・ソング、あるいはメンタルヘルスを論じる曲、普遍的なメッセージ・ソング……と、曲ごとに異なるアングルとアプローチで自分の関心事を深く掘り下げている。例えばエド・シーランをゲストに迎えた先行シングルの「バン・バン feat. エド・シーラン」は、カミラ流メッセージ・ソングの好例だ。

「ほかの曲での私は、スタジオ入りした当日に抱いた感情について何でも書いたんだけど、この曲に関しては、人生の英知といった特別なメッセージがある曲を作りたかった。そしてその英知というのが、恋愛がいかに予測不能なものかについてとしたかったの。ある人物が自分の理想の相手だと思っていても、結局そうではなかったりする。あんな人に出会うことはもう二度とないだろうと思う。それでも別の出会いがあって、その人こそが理想的な相手だったりする。何が起こるかなんて分かりっこない。それが人生というもの。そういったことについて笑い飛ばしているところがあるわ」。



エド・シーランとカミラ・カベロ

また、フィフス・ハーモニーを脱退してから男性アーティストとの共演が続いていたカミラだが、本作では、ふたりのタイプの異なる女性たちとのコラボが実現。全編スペイン語の「アスタ・ロス・ディエンテス feat. マリア・ベセラ」で歌声を聴かせるのは、アルゼンチン人シンガーのマリア・ベセラだ。”情熱的”という言葉には収まり切らない、激しい独占欲や嫉妬を燃やす女性の心境に迫るこの曲には、スペイン語がよく似合う。

「マリアの曲は過去に聴いたことがあって、その中でお気に入りの曲は、私の友達であるJ・バルヴィンとのコラボ曲(先日のグラミー賞受賞式でもふたりで披露した「Qué Más Pues?」)が大好きなんだけど、ソングライティングやメロディといった点で、私たちはスタイルが似ていると感じた。だから、彼女とならきっとうまくいくと思ったわ」。



そしてもうひとりの女性ゲストは、「サイコフリーク feat. ウィロー」に参加したウィロー。に参加したウィロー。ポスト・ジャンル志向で我が道を行く彼女は、レゲトンを進化させたこの曲で、不安に苛まれて外の世界をシャットアウトしてしまうカミラに寄り添っている。

「私がとても不安な気持ちで、居ても立っても居られないと感じていた日に、ふたりのコラボレーターと一緒にメイン・メロディを書いたの。で、この曲を誰と一緒に歌いたいかと考えていた時に、 ウィローはThe Anxiety(=不安)という名前のバンドを率いていたので完璧だと思った。彼女もとても脆い部分があって、似たような感じだから」。



ウィローとカミラ・カベロ

このように、共作者、プロデューサー、ゲスト・シンガー/MC、そしてプレイヤーたち、大勢のミュージシャンを集めて音楽を作り上げるという本作での彼女のアプローチは、スペイン語で”家族”を意味するアルバム・タイトルにも直結している。

「私たちは、”誰の手も借りずに自分独りでやってきた”などとよく話すけど、それはあまりにも美化し過ぎていると思うの。このアルバムで私は、相互依存を称賛したかった。感情的に、精神的に、そしてスピリチュアルな面でより成功するのは、素晴らしい仲間がいてくれて、結束の固いコミュニティ、熱い友情、人間関係がある時だから。脆さをさらけ出し、人に対して正直であること、そして透明性のある本物の人間関係に焦点を置くということが、この時期を通して私の人生が変わった点ね」。



カミラ・カベロ
『ファミリア』   
発売中
視聴・購入:https://lnk.to/CamilaCabelloFamiliaRS

完全生産限定盤:2,970円(税込) 
特典①オリジナル・ポストカード(8枚セット)②オリジナル両面ポスター ③オリジナル・フォト 
通常盤:2,640円(税込) 

【収録曲】
1.ファミリア
2.セリア
3.サイコフリーク feat. ウィロー
4.バン・バン feat. エド・シーラン
5.ラ・ブエナ・ビダ
6.クワイエット
7.ボーイズ・ドント・クライ
8.アスタ・ロス・ディエンテス feat. マリア・ベセラ
9.ノー・ダウト
10・ ドント・ゴー・イェット
11.ローラ feat. ジョトゥエル
12.エヴリワン・アット・ディス・パーティー


完全生産限定盤 特典絵柄

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