リンダ・リンダズが語る音楽的ルーツと4人の成長、ブルーハーツと日本への想い
Rolling Stone Japan / 2022年4月20日 18時15分
2021年5月4日、アジア系およびラテン系アメリカ人の女性4人からなるパンク・バンド、リンダ・リンダズがロサンゼルスの公共図書館でライブを行った。数週間後、そのライブ動画がSNSで大きな話題となる。
そこで演奏された、ティーンエイジャーの彼女達が人種差別と性差別に「No!」を突き付けた「Racist, Sexist Boy」はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロやザ・ルーツのクエストラヴも大絶賛。一躍「時の人」となった彼女達を音楽業界が放っておくはずもなく、早くも5月末にはパンクの名門、Epitaphとの契約締結が発表されたのだった。
あれから約1年。バンド・メンバーのルシア&ミラ姉妹の父親であるカルロス・デ・ラ・ガルサ(スカ・パンク・バンドとして有名なリール・ビッグ・フィッシュの元メンバーで、グラミー賞受賞経験もある音楽プロデューサー!)がプロデュースした1stアルバム『Growing Up』を4月にリリースし、SUMMER SONIC 2022での来日も決定している彼女達に話を聞いた。
四者四様のルーツ
―私(筆者の岡俊彦)は映画『モキシー ~私たちのムーブメント~』であなた達がビキニ・キルの「Rebel Girl」とマフスの「Big Mouth」を演奏しているのを見て、リンダ・リンダズを知りました。自分は肩にマフスのロゴのタトゥーを入れているほど彼らの大ファンで。
エロイーズ:Wow!!
―マフスのキム・シャタックが亡くなったばかりだったこともあって、「自分と同じものを好きな人達がいる!」「キムのスピリットを受け継いでる人達がいる!」と感じて、とても感動しました。どうしてこの2曲をチョイスしたんですか?
エロイーズ:あの2曲は、既にバンドでコピーしてた曲で、練習も積んでて、上手く弾ける曲だったからだと思う。「Rebel Girl」のほうは、映画の主旨にぴったりだっていうのもあった。もちろんマフスもビキニ・キルもみんな大好きだし。マフスのタトゥーが入っているなんて、めちゃくちゃクール!
【コラム】映画『モキシー』でマフスを奏でた意味
― 『モキシー』で主人公がビキニ・キルの「Rebel Girl」と出会う瞬間のような経験がみなさんもあったのでしょうか?
ルシア:(あの映画の主人公と同じような)出会いの瞬間はなかったけど、子供の頃からパンクも含めていろんな音楽を聴いてきた。両親が好きで聴いていた音楽が、今の私達が好きな音楽でもある。例えば、ヤー・ヤー・ヤーズ、ダム・ダム・ガールズ、ベスト・コーストとか。
ミラ:マフスもね。
ルシア:そうそう。ビキニ・キルも、もちろん昔から大好き。それが今やこうして、彼らと知り合うことができたっていうのは、凄く嬉しいし、不思議な巡り合わせだと感じる。「ビキニ・キルの前座をやったの」とか言えちゃうんだもん。ダム・ダム・ガールズのクリスティン・コントロールを知ってるし、ベスト・コーストのべサニーとボブも知ってる。子供の頃は彼らの曲に合わせて歌うのが大好きだった。巡り巡って、彼らと知り合えた感じ。しかも、まだ15歳だっていうのに!
ベラ:私の両親は別にミュージシャンやアーティストというわけじゃなかったけど、家ではいつも音楽がCDでかかって、そのほとんどがラテン・ロックだった。母はアメリカ出身じゃないから、母国の音楽をしょっちゅう聴いてた。そうやってロックには小さい頃から触れていたけど、みんなみたいにパンクではなかった。
―ビキニ・キルのキャスリーン・ハンナの音楽や考え方は、あなた達にどんな影響を与えたと思いますか?
ルシア:彼女がいなかったら、「自分達も音楽が作れる」という発想には至らなかったと思う。彼女はまさに革命を起こした。多くの女性アーティストの背中を押してくれた存在で、今の私達は彼女のお陰でこうしている。マジで。その影響は計り知れない。まず、ハリウッド・パラディアムでビキニ・キルのライブの前座をやらせてもらったこと。そこにエイミー・ポーラー監督が来てたのがきっかけで『モキシー』の出演が決まったの。そう考えると気が遠くなる。自分達が飛び込んだ音楽シーンの中で、キャス
リーン・ハンナは絶対的なカリスマで、とにかくカッコいい人。自分の信念のために闘っていて、私達もそうありたいと思っている。
ミラ:私達が、こうして音楽をやっていられるのもキャスリーン・ハンナのお陰。少なくとも私は、彼女の音楽を聴いて刺激を受けたし、凄く影響された。彼女は本当に素晴らしいと思う。
Photo by Randy Holmes/ABC via Getty Images
―1stアルバムの『Growing Up』、本当に素晴らしかったです! パンキッシュなバンド・アンサンブルと息の合ったコーラス・ワークが融合し、とてもポップに仕上がっていて、個人的にはザット・ドッグやゴーゴーズを連想しました。また、「Nino」ではXの「Los Angeles」からの、「Why」ではジョーン・ジェットの「I Love Rock n Roll」からの影響も感じました。今回のアルバムを作るにあたって、サウンド面で特に影響を受けたアーティストはいますか?
エロイーズ:ゴーゴーズもザット・ドッグもみんな大好き! 引き合いに出してくれて嬉しい。
ベラ:Xも!
エロイーズ:そうそう、Xも! 「Nino」のハーモニーは、私達も「これって、Xのハーモニーじゃん?」ってなった。
【コラム】LAパンクとリンダ・リンダズの関係
ゴーゴーズのジーナ・ショックをゲストに招き、同バンドの「Tonite」をカバー
ルシア:HBO Maxでやっている『Take Out with Lisa Ling』って番組のテーマ曲を書かせてもらったんだけど、その曲にもXっぽいハーモニーがあったりするの。私が影響を受けたのは、ほとんどがインディ・アーティストで、ザ・ベスとか。実は数週間前に彼女達の前座をやったばかりなんだけど、めちゃくちゃ楽しかった。あとは、ザット・ドッグやスリーター・キニーの影響も少しあったと思う。
ミラ:私にとっては、スリーター・キニーの存在が大きくて。他にはパラモアとヘイリー・ウィリアムスもそう。あとはベスト・コーストとブリーチドあたりが大きいかな。
エロイーズ:昔からLAパンクとか大好きだけど、アルバムで自分が書いた曲は、メロディが立っているアーティスト、例えばレッド・クロスとか、ミラが言ってたベスト・コーストとかブリーチドとかからの影響が大きいと思う。あと、アップセットも! それから、アルバム制作中はブラック・フラッグとかアドレッセンツをよく聴いてた。
ベラ:今回の曲作りをしてた時、ビエラというバンドをけっこう聴いてたのと、セルジオ・メンデスとかボサノヴァもたくさん聴いてた。
アルバムに刻まれた「成長」
―アルバムのテーマについて教えてください。作品全体を通じてどんなことを歌いたい、伝えたいと考えましたか。
ルシア:どの曲も基本はロックダウン中に書いたの。予定していた何本かのライブがコロナのせいでキャンセルになって、凄く悲しかった。でも、お陰で、初めてきちんと曲作りに専念する時間ができたのは不幸中の幸いだった。みんなで「よし、アルバムを頑張って作るぞ」ってなって、家の裏庭とかに集まって、アイデアを出し合ったりしたのは楽しかった。アルバムでは、私達が若いミュージシャンとして学んでることだったり、いきなり自分達に起きた様々なことを自分達なりに噛み締めている思いを歌っていると思う。まだ学校に通いながら、バンドもあって、それ以外にも初めてのことが目まぐるしくあって。やっていて本当に楽しいし、何物にも代えがたい経験をしていると感じるから。
ミラ:このデビュー作には、いくつもの物語が込められていて、一つの大きなメッセージがあるわけじゃない。でも、あるとしたら、それは「若いうちは楽しむこと」だったり、「自分らしくいること」「自分らしさを受け入れること」とかじゃないかな。
ルシア:テーマを決めて曲を書いたわけじゃない。ただ、「今、自分達に起きていることを、どう噛み締めたらいいんだろう」ってみんな思ってて、その中の気持ちを歌にしていった。曲を作る過程で、自分達についての発見もあった。それまできちんと腰を据えて曲を書いたことがなかったから。(リンダ・リンダズとして初めて作曲した)「Claudia Kishi」はあったけど、それくらいだった。今は、もっと自分達自身と向き合いながら、「ここを目指さなきゃ」とか「もっとこう成長したい」という思いが芽生えてきてる。
ミラ:「Claudia Kishi」はドキュメンタリー(Netflix『クラウディア・キシ倶楽部』)用に書いた、登場人物についての歌だったしね。
ルシア:アルバムの曲のほうが、より私達の内面が出てるから、少し怖さもあった。自分達にとって身近な曲をあえて世に放つ、ということが。他にも書いた曲はあったけど、アルバムには、これを世に出したいという思いが強かった曲を選んだ。私が書いたものだと、ハッピーな曲が多いんだけど、それはアルバムにハッピーな曲を入れたいと思ったから。別にハッピーな曲ばかりを書いてるわけじゃなくて、一番誇りに思えた曲を選んで、今回入れたってこと。
―あなた達の初期の動画を見ると、エロイーズさんがドラムを叩いていたりして、インタビューでもメンバー間でよく演奏楽器を交換するとの旨を話されていました。アルバムのクレジットを見ると、現在はミラさんがドラム、エロイーズさんがベース、ルシアさんとベラさんがギターという担当で固定されたようですが、ここに至るまでにバンド内で何か変化があったりしたのでしょうか?
ベラ:みんなでそれぞれ一つの楽器に専念しようってことになったんだと思う。あなたが言ったように、前は楽器を交換したりしてたけど、それを経て、何か一つに専念するタイミングが来た、という感じ。例えば私はギターが好きだし、ルシアもギターが好き。そういう風に、自分が一番好きなものに打ち込んで、その道を極めたいと思ったってこと。
ルシア:私達は、そこまで長く楽器を演奏してきたわけじゃないけど。一番長くやっているのはベラで、ギターを始めて6年になる。他のメンバーは楽器を弾くようになってからせいぜい3年くらい。最初は、とりあえずステージに立って、とにかく自分達が好きな曲をやる!というノリで、歌う人によって楽器を取り替えていた。前までミラは歌いながらドラムを叩けなかったけど、今は歌いながら叩けるようになった。持ち回りで楽器を弾くのは楽しかったし、ドラム、ベース、鍵盤、それぞれの楽器を弾くのがどんな感じかを体験できたのもよかったと思う。でも今は、プレイヤー、そしてソングライターとして各々がもっと成長したいと思っているの。
―アルバム・タイトル曲「Growing Up」のミュージックビデオはネコの視点で作られてますよね。「Nino」もネコについて歌った曲ですが、普段ネコと一緒にいてどんなインスピレーションを受けますか?
ルシア:ネコはパンクな生き物だと思う!
―(笑)
ルシア:最近誰かにそう言われたんだけど、本当にそうだって思うようになった。
エロイーズ:小さい頃からみんなネコが好きだったから……。
ルシア:ビデオは、隠喩でもあるんだけどね。監督のウンベルト・レオンに、「君達のMVを撮ることになったんだけど」って言われて、私達も「やった!」ってなって。で、彼に説明されたんだけど、いまだに一体どうやってああいうビデオに仕上がったのか、さっぱり分からない。彼に「君達がネコになって、ネコが君達で、大人になって、みんなネコになってて、おそろいの服を着てる」って言われて、みんな「はぁ……」ってなった。
エロイーズ:「なるほど。楽しそうね」って……。
ミラ:でも、ネコが登場するんだから、ハズしようがないと思った。
ルシア:で、最高のビデオが出来上がって、今でも信じられない。
ミラ:ネコは鉄板でしょ。
ルシア:最後に私達の小さい頃のビデオが登場するのもよかった。私も見るのが凄く久しぶりだったし。
ミラ:監督から最初にビデオの説明をされた時、実は全然違うものを想像していた。でも、ああいうビデオに仕上がって、本当によかった。最高のビデオだと思う。
―アルバムのサンクス・リストにアリス・バッグの名前がありました。アミル&ザ・スニッファーズのエイミー・テイラーもアリス・バッグが好きとのことで、近年のパンク系ミュージシャンからアリス・バッグが強く支持されているのを感じるんですが、あなた達はどうやってアリス・バッグの音楽と出会ったのですか? 彼女のどういうところが素晴らしいと思いますか?
エロイーズ:あの辺のシーンとは前から凄く繋がりがあって。私の両親は学校の音楽教育を充実させる為の寄付を募るコンサートを主催したりしてたんだけど(「Save Music In Chinatown」)、それに出演してくれてたのが昔のLAパンクのアーティストだったの。アリス・バッグだったり、ディルズやアレイ・キャッツといったバンド。そして、それがリンダ・リンダズの原点になった。初めてライブをやったのも、そこだしね。
1979年に解散したLAの伝説的パンクバンド、ディルズが「Save Music In Chinatown」出演のため2019年に再結成。ライブにはエロイーズも参加。
ルシア:一度、ハイ・ハットで彼女のライブの前座を務めたこともあった。あれは凄く楽しかったよね。彼女に感謝を捧げたのは、その素晴らしい功績だけじゃなくて、彼女が私達を直接後押ししてくれたことが何度もあったから。EPのアナログ盤リリースの際には、私達についてのコメントまで寄せてくれた。
エロイーズ:彼女は、私達のリンダ・リンダズとしての初ライブも観に来てくれてたの。ライブが終わると、アンコールを求める拍手までしてくれて、思わず「!!!」ってなった。信じられなかった。
ルシア:そのアンコールでは、ジョイ・ディヴィジョンの「Love Will Tear Us Apart」をやったね。
エロイーズ:念の為に用意しておいた曲だったんだよね。アリス・バッグの音楽の凄いところって、本当に大事なことを歌にしているから。ビキニ・キルもそう。音楽を通して、変革を起こしている。音楽が実際そういう影響をもたらすものだって教えてくれた。
リンダ・リンダズと日本のつながり
―リンダ・リンダズというバンド名は、エロイーズさんの父親のマーティンさんが買ったDVDで映画『リンダ リンダ リンダ』を観て、ブルーハーツの「リンダリンダ」を知って名付けたとのことですが、そもそもどうやってこの映画に辿り着いたのですか? やっぱり国際的に有名な女優のペ・ドゥナが主要キャストだったからですか?
エロイーズ:ペ・ドゥナはみんな大好きで。たまたま家にあの映画のDVDが転がっていて、みんなでバンド名を考えていた頃に、「こんな映画がある! しかもタイトルが最高にかっこいい! しかもブルーハーツというバンドの曲が由来になっているなんて! なんてクールなの!」ってなったの。全てにおいて、みんなが納得する名前だったわけ。
ルシア:映画のストーリーも凄くよかった。日本語を話さない一人の生徒と、韓国語を話さない女子高生達がいきなりバンドを始めようって。音楽が言葉の壁を超えて人を結びつける、という。何もないところから、「この曲をやってみよう」って彼女達が思い立ってバンドを始めるのを観て、凄く共感できた。状況は全く同じというわけじゃないけど、自分達とも似ているところがあると思った。
―みなさんも「リンダリンダ」をカバーしてますよね。初めてあの曲を聴いた時にどんな感想を抱きました?
エロイーズ:ワオ! これってマジでクールな曲じゃない!?ってなった。
ルシア:歌詞の内容は全然分からなかったけど、とにかく楽しそうだし、エネルギッシュなサウンドに惹かれた。
エロイーズ:で、あとで歌詞を調べてみたら、それもクールだった。
ルシア:ドブネズミについて歌っているんでしょ?
―ドブネズミにも美しさがある、という内容です。
ルシア:最高のメッセージね。
―『リンダ リンダ リンダ』以外に好きなロック映画はありますか?
エロイーズ:『ザ・デクライン』。もちろん、『モキシー』も。あとは『ロックンロール・ハイスクール』とか。
ルシア:『ウィ・アー・ザ・ベスト!』という映画があるんだけど……。
―『ウィ・アー・ザ・ベスト!』、最高のパンク映画ですよね! 私も大好きです!
ルシア:あれは笑えて面白かった。他に何があったかな……。
ベラ:みんなで一緒に観たのあったよね。『すべてをあなたに』だっけ。
エロイーズ:最近、ディズニープラスでやってる『ザ・ビートルズ:Get Back』を観たんだけど、めちゃくちゃ長かった(笑)。でも、曲を作る過程が見れたのは、超クールだった。
ルシア:ゴーゴーズのドキュメンタリー映画(『The Go-Gos』)も凄くよかった。
―私は『The Go-Gos』を観て、ハッピーなヴァイブスに溢れていた彼女達が実はドラッグ漬けだったと知ってショックを受けたんですよ。パンク、ロックンロールは多くの問題を抱えてきた負の歴史もあるわけですが、自分達が愛する音楽のそういった側面についてはどんな風に考えていますか?
エロイーズ:自分達は、そういう道には走らないように気を付けてる。
ルシア:念の為はっきりさせておくけど、私達は一切ドラッグはやっていません!
ベラ:そういう問題は音楽に限らず存在しているわけだし、音楽においても、たまたま本人が吐け口としてそれを選んだ、というだけで。別に音楽に限った話じゃないと思う。
ルシア:ロックンロールはただの音楽(Its just Rock n Roll)。だからロックンロールが悪いわけじゃない。私達は自分達の音楽をやるだけで、そういうことは考えてない。
ベラ:時代も違うしね。
Photo by Zen Sekizawa
―8月にSUMMER SONICでの来日が決まっています。日本でやりたいこと、会いたい人や来日についての思いを聞かせてください。
ベラ:私は日本のものが何でも大好きで、日本のデザイナーの服もよく着るの。高橋盾や山本耀司、あとNIGOとか。だから日本に行ったらショッピングするのが凄く楽しみ。原宿にも絶対行きたいし、いろいろ見てみたい。
エロイーズ:奈良美智に会えたら最高じゃない?
ベラ:あと村上隆も。
エロイーズ:日本のバンドも好きなのがたくさんある。The 5.6.7.8s、ギターウルフ、少年ナイフとか。彼らを輩出した国に行けるってだけでワクワクする。
ルシア:普通に観光もしたいけど、時間がどれだけあるか分からないからな。
ミラ:絶対にやろうと決めてることが一つあるの。美味しいタピオカティーのお店を見つけて行くってこと!
▶︎Column
①映画『モキシー』でマフスを奏でた意味
この投稿をInstagramで見る The Linda Lindas(@the_linda_lindas)がシェアした投稿
2021年に配信が開始されたNetflixオリジナル映画『モキシー ~私たちのムーブメント~』は、高校生のヴィヴィアンが学生生活で感じている不満や想いを綴ったZINE「モキシー」を制作すると、その歯に衣着せぬ内容が話題となり、大きな変化を生み出していくことになる……というフェミニズム青春映画だ。リンダ・リンダズは主人公達の決起集会に出演し、ビキニ・キルのアイコニックな名曲「Rebel Girl」と、マフスのとびきりポップな名曲「Big Mouth」を演奏。「わきまえない女」を描いた本作において、「アンタなんて大嫌い/好きな振りなんてするわけないじゃん」という歌詞から始まる「Big Mouth」は適材適所な選曲。主人公達よりさらに若いリンダ・リンダズは、まさに「これからの未来」を象徴する存在。マフスのリーダーだったキム・シャタックが2019年に逝去した今、そのポップネスはリンダ・リンダズに継承されたといえるだろう。
②LAパンクとリンダ・リンダズの関係
アリス・バッグ(Photo by Ruby Ray/Getty Images)
エロイーズが文中でお気に入りに挙げている映画『ザ・デクライン』(ローリングストーン誌が選ぶ史上最高のパンク・ムービー第1位!)は1980年前後のLAパンク・シーンを記録したドキュメンタリー。そこでシーンの「顔役」として登場するのがXだ。そして、Xとリハーサル・ルームをシェアし、シーンの「光」を体現して自作自演のガールズ・バンドとして初めて(そして現在に至るまで唯一の)全米アルバム・チャート1位を獲得したのがゴーゴーズ。アリス・バッグはLAパンクの伝説的なバンド、バッグスのリーダーで、『ザ・デクライン』にも出演している。LAパンクのアーティストのスタイルは多種多様だが、全体的にアメリカ西海岸のポップ・ミュージックの流れを汲んだ、人懐っこいポップネスがほのかに感じられるところが大まかな特徴として挙げられる。上記のアーティストから強い影響を受けたLA在住のリンダ・リンダズは、そんなシーンの末裔といえる存在だ。
ザ・リンダ・リンダズ
『Growing Up』
配信中
6月3日CD/LP発売
視聴・購入:https://silentlink.co.jp/growingup09
SUMMER SONIC 2022
8月20日(土)、21日(日)
千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪・舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※リンダ・リンダズは20日(東京)、21日(大阪)に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/
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