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edhiii boiが語る、ラップとの出会い、SKY-HIの導き、音楽への愛情

Rolling Stone Japan / 2022年4月23日 12時0分

edhiii boi(©BMSG)

SKY-HIが主宰する「BMSG」より今年1月にデビューしたラッパー/アーティスト、edhiii boi。1月以降、新曲を毎月配信リリースし、4月20日には「NO – remix- feat. TAIKI」を発表した。

【写真を見る】edhiii boiとTAIKI

edhiii boiは、BE:FIRSTを生んだオーディション「THE FIRST」に参加し3次審査まで進んだ後、SKY-HIに送ったオリジナル曲のデモテープがきっかけで、アーティストデビューの切符を掴んだ人物。現在15歳の彼は、SKY-HIはじめBMSG所属のラッパーたちが驚くラップスキルとクリエイション力をすでに備えており、音を全身で表現するパフォーマンスもかっこいい。「ヒップホップ」や「ラップ」と呼ばれるジャンルの中のあらゆる要素や手法、またはヒップホップから派生したジャンルの要素などもインプットし、自由な発想でアウトプットしている柔軟さが伺える。そのフレッシュなマインドから、グローバルなヒップホップカルチャーの最前線に連なる新しいものを、ここ日本から生み出す可能性を感じさせる。曲ごとに声の表情が違うのも彼の魅力であり、日記のような等身大のリリックも幅広いリスナーに愛される所以だろう。

SKY-HIらを魅了するedhiii boiのスキルや発想、そして音楽への愛情は、どのように育まれたものなのか――それらを探るべく、インタビューを敢行した。



―今回が、初インタビューですか?

edhiii boi:そうですね、edhiii boiとして人生初ですね。

―やっぱりまず聞きたいのは、その技術をどうやって身につけてきたんですか、というところで。

edhiii boi:小学校高学年くらいのときから、地元のラッパーのスタジオに出入りすることが多くなって、大人の人たちが曲を作っているのを見るのが学校帰りのちょっとした楽しみになっていました。ずっといたら「入ってみる?」って教えてもらうことがあったりして。「じゃあ曲を作ってみる?」って言ってもらったことがきっかけで――まあ、そのときはほぼほぼ書いてもらったんですけど――録ったときに「すっごく楽しいな」と思って。普通に歌っただけだったんですけど、オートチューン(音声・音程を変えるエフェクト)がかかったものを聴いたときに「自分の声が面白くなってる!」ということが第一に思ったことでした。そこからさらに通うようになったんですけど、5年生の夏休みの自由研究で「曲を作ったら面白いんじゃない?」って言ってくれて、夏休みの曲を作ったんです。「夏暑いよね」「夏祭り行くよね」みたいなラップの歌詞で(笑)。それを一枚のCDに焼いてもらって学校に提出したのがきっかけで、ラップにのめり込んでいっちゃいました。

―そもそも、小学生でラッパーのスタジオに出入りするようになったということが稀な人生経験だと思うのですが、それはどういうきっかけだったんですか?

edhiii boi:BIGBANGがきっかけでK-POPが大好きになって、小学校1、2年生の頃にダンススタジオへ行き始めたんです。そこの先生が自分のことをすごく可愛がってくれて、「歌ってみたら?」って言ってくれたのがきっかけでマイクを持つようになって。それも楽しくなっていたら、「近くにいるラッパーを知ってるし、スタジオがあるから遊びに行きなよ」って。しかもたまたま住んでるマンションが一緒だったんですよね。それで行くようになったのが始まりです。その周りの人たちも、今表に出てきている人がいっぱいいますね。

―edhiii boiさんは音を身体で表現するのがすごく上手いと思っていたので、ダンスから始められたというのは納得です。でも、そのスタジオに小学生の頃から通っていたというのはすごい経験ですね。

edhiii boi:すごく楽しかったですね。でも、中学に上がるタイミングで離れた場所へ引っ越すことになって。引っ越した先は知らない人しかいなくて、「音楽できないかな」と思っていたら、お母さんがパソコンを買ってくれて。パソコンにLogic Proを入れて、自分でいじってると、歌う楽しさより作る楽しさが勝ってしまったんです。ボーカルのミックスやマスタリングの作業がすごく楽しいと思うようになってから、YouTubeで、海外のエンジニアが24時間作業を流している動画を何本も見たり、日本人だったら和田貴史さんの動画を全部見たりして、自分でも作れるようになったのかなというふうに思っています。


「自分のことを前に出す感じは、自分のスタイルに似合わない」

―ミックスやマスタリングにまで探究心が向いていくというのがユニークですよね。edhiii boiさんのラップって、ヒップホップやラップの中でもいろんな要素や手法とか、ヒップホップから派生したジャンルとか、あらゆるものをすごく柔軟にインプットして自由にアウトプットしているという印象があるんですね。

edhiii boi:そうですね、いろんな人の影響がありますね。誰かにハマったら、その人のドキュメンタリーとかを見て歩き方から仕草から全部真似したくなっちゃうんです。だから多分、たくさんの人のものが混ざった人間です(笑)。

―具体的に、これまでどういったラップやヒップホップを聴いてきました?

edhiii boi:中1まではずっとK-POPを聴いてました。その後に習ったダンスの先生がアメリカのヒップホップとかをやる人で。その先生にすっごく影響されちゃいましたね。1時間、振り付けとかもなく、ずっと音に合わせて先生のノリを真似するだけの授業とかがあったんですよ。その先生になりたいと思って、レッスンで先生がかけているヒップホップを家に帰ってからも聴くようになったし、服とかも真似してました。

―その先生が流すのは、USのヒップホップが多かったですか?

edhiii boi:そうですね。トラヴィス・スコット、イアン・ディオール、ジュース・ワールド、XXXテンタシオンとか。

—日本語ラップ、ネットラップとかはあんまり通ってないですか?

edhiii boi:あんまりですかね。好きな人を見つけたらすっごい沼にハマって全部のスタイルを真似したくなっちゃうタイプなので、日本人だと、好きになったらその人になりそうで怖くて。それこそSKY-HIさんの曲とか聴きすぎて、たまに真似しちゃうというか(笑)。入り込んで影響されやすいんですよね。

―今よく聴いているアーティストって、誰かいます?

edhiii boi:いますね。aoさん、死ぬほど好きで(笑)。こんなにハマったことはないっていうくらい、毎日聴いてますね。聴いた曲の再生ランキングで2年連続1位です。本当にリスペクトしています。自分ではこんな歌詞書けないなというか。聴く人によって捉え方が違う歌詞を書いていて、それで自分も意識するようになりました。歌い方も、若い頃の宇多田ヒカルさんみたいだなと思っていて。一回音楽の話をしてみたいし、どういうマインドで作っているのかを質問してみたいですね。一緒に曲を作りたいなってすごく思います。

—edhiiiさんの歌詞に関しては、夏休みの自由研究で作った曲の延長じゃないけど、今も日記を書くようなものが多いという印象があります。実際はどういうことを意識していますか?

edhiii boi:「これだけお金を持ってて、ネックレスをつけてて、こんなにいいものを持ってるぞ」みたいな、自分のことを前に出す感じは、自分のスタイルに似合わないなと思っていて。

―それは、なぜ?

edhiii boi:服とか聴く音楽もそうなんですけど、人とかぶることとか、「これが流行ってるからこうした方がいいよ」みたいなことがすごく嫌で。型にとらわれず、閃いたときにポチッと押して録るのが自分に合ってるし、日常のことを日記のような感覚で書こうって。これからもそのスタイルでいきたいなと思っています。


「THE FIRST」のオーディションについて

―「THE FIRST」のオーディションは、どういうモチベーションで、なぜ受けようと思ったんですか?

edhiii boi:「世に出たい」というのが一番強くて。与えられたチャンスは「やらないなんてない」という気持ちがあったので受けました。

—3次審査の2日間は、今振り返るとどうでした?

edhiii boi:えー、あのときですか?(笑) もともとは、自分の曲を歌おうと思っていたんですけど、急遽曲を変えて。そのときに「自分のスタイルで歌えるだろうか」とはすごく思って、しかもSKY-HIさんの曲だったので、「うわー……!」みたいな。

―ハードルが何段階も上がりますよね(註:3次審査の歌唱審査で歌詞が飛んでしまった)。

edhiii boi:(オーディションに向かう)新幹線の中でめちゃくちゃ練習したのを覚えています。トイレの前の廊下で、イヤホンつけて、口パクで、ずっと練習してました。

—3次審査で落ちた後、どういう気持ちで日高さん(SKY-HI)にデモテープを送ったんですか?

edhiii boi:連絡をもらって、「あ、声かけてくれた」「とりあえず送っちゃおう」みたいな感じで送りました。そのときの心境としては、「オーディションが悔しかったから作る」というよりかは、ただ単に音楽を作るのが好きだし、いつも通り作っていたというか。

―じゃあ、その連絡がきて、曲を作ったということでもなく。

edhiii boi:ないです。YouTubeに非公開で自分の曲を上げていて、そのURLを、2、3回にわけて何十曲も送りました。それで最後に送った「Forever Friend」を社長(SKY-HI)が気に入ってくださったことがきっかけです。「Forever Friend」を送った次の日くらいに社長が大阪でライブがあって、直接会わせてもらったときに、アーティストとしての契約書を渡していただいて。



―へえー! さすが日高さん、ドラマチックなことしますね。

edhiii boi:「Forever Friend」を送ってよかったな、作っててよかったな、と思いました。もう、この人についていくしかないなあって(笑)。

—「Forever Friend」は、どういうときに書いた曲でした?

edhiii boi:インフルエンザでぶっ倒れて、学校を1週間休んでるときに書いた曲です。1週間も学校を休んだら「さすがにそろそろ行きたいな」と思ってきて、友達と遊んだこととか泊まりに来てたこととか、そういう日常的なことを書きました。しかもそのとき喉がガラガラで、ちょうどその時期に聴いていたのがガラガラの声の人の曲で。それまではメロディがあるような曲を作って優しい声で歌っていたんですけど、そのときに初めてにガッて歌う歌い方をしたんです。できあがったときから自分でも気に入っていたんですけど、社長も「この声どうしたの、面白い」みたいに言ってくれて、「こういう声で歌うのってやっぱりいいんだ」って気づいたというか。それは今の歌い方にも影響されていますね。その評価がなかったらもっと歌い方が変わっていたかもしれないです。

―最初にオートチューンを面白いと思った、という話をしてくれましたけど、自分の声のバリエーションを探ることにも強い興味を持たれていますか? 曲ごとに声が違うのもedhiii boiさんの特徴のひとつかなと思っていて。

edhiii boi:あ、それは意識してますね。「このあいだはこういう感じの曲だったから、似たようなものは出したくないな」「この歌い方は前と似てるからやめよう」ということはすごく大事にしてます。真面目にやりすぎないところがあっていいかなというふうに思って、オートチューンは結構使いますね。


©BMSG


ソングライティングの醍醐味

―曲を作るとき、どこまで自分で組み立てているんですか?

edhiii boi:ベースとなるトラックはサブスクで拾ったもので、それを自分で加工というか、ドラムがもうちょっと欲しいと思ったら上から重ねたり、リフが欲しいと思ったら入れたり、みたいな感じでやって。その後に、フリースタイルでサビを何回も録って、一番気に入ったテイクに歌詞を入れて、そこからバースを書き始める、みたいな感じですね。

—その作業を進めるスピードがめちゃくちゃ速い?

edhiii boi:1曲15分くらいです。このあいだ、1日で12曲くらい作りました。

―え?

edhiii boi:でも、まったく浮かばない日も全然あるんですよ。ただただソファでパソコンをひざに置いて終わる日もあれば、バンバン作れる日もあるという感じですね。

―曲を作ることの何が特に楽しいと感じますか?

edhiii boi:ミックスをしてるときが一番楽しいですね。自分で録ったものに、足したいところは足したり、面白いエフェクトをかけたり、ということが「今やってるー!」って感じがします。その作業をしてるときが、やってて一番気持ちいいです。

—お話を聞いていると生粋のクリエイター気質であるなと感じます。「NO」に関しては、そもそもこれをデビュー曲にしようと思ったのはなぜでした?

edhiii boi:一般的に言えば、エモーショナルな歌を最初に出すと響くだろうし、オーディションから間も空いているので成長した姿を見せるのがいいんだろうけど、自分のスタイル的にそういうタイプではないから。もう、変わらず、日記のような歌詞でやりたいっていうのがありました。「ここの歌詞、修正したら?」って言われても「いや、変えたくないです」って言って、そのまま突き通しましたね。「NO」と同じような曲はもう作れないなって自分でも思ってるし、「NO」をデビュー曲にしてよかったなと思います。

—今回TAIKIさんを招いて「NO」のリミックスを出そうってなったのは、どういう理由だったんですか?

edhiii boi:TAIKIがこの曲を気に入ってずっと聴いてくれていて。「だったらもうここに入っちゃえよ」みたいな感じで、TAIKIバージョンのインストを作って「とりあえず歌詞書いて」って送って、勝手にレコーディングして、という流れでした。「また『NO』かよ」みたいに思われるのは嫌だなとかも正直あったんですけど、このリミックスがすごく気に入っちゃったので、このまま出したいなと思って。「Forever Friend」のMVの最後に、ちょっとだけ引っかかるようなポイントを作ったんですよ。最後にサラっとTAIKIだけ残してMVが終わるっていう。



―そこで匂わせがあったんですね(笑)。同じように「THE FIRST」のオーディションを受けて、今BMSGに所属して(TAIKIはトレーニー)、年齢も1つ違いであるTAIKIさんは、edhiii boiさんにとってどういう存在だと言えますか?

edhiii boi:いい意味で、敵ですね。別にライバル視するようなことはまったくないですけど、変に助けを求めることもしないし。音楽と触れてないときは普通に友達ですけど、音楽をしてるときはちゃんと別々というか、それぞれのスタイルとスタンスがあるのが大事かなと思います。デビューが決まったときにLINEでちゃんと言いました。「敵だね」「もう負けないよ」って(笑)。


「(自分と)近い歳の子に聴いていただけたら嬉しい」

―今出ている曲の中だと、自分で一番「やってやったぜ」と思える曲はどれですか?

edhiii boi:「118」です。



―ああ、やっぱりそうなんですね。「118(edhiii boi, SOTA, Novel Core)」のedhiii boiさんのパートは圧倒的なかっこよさがあるなと思います。

edhiii boi:最初はすごく色々不安で。(Novel)Coreくんもすっごいモテてるし、SOTAくんだってBE:FIRSTだし、「自分が入っていいんだろうか」って。Coreくんに相談したらアドバイスを送るよって言ってくれて、それで「15歳をなめんなよ」「甘く見んじゃねぇぞ」「子どもじゃねぇんだ」みたいな歌詞がウワーってきて(笑)。普段現実とか今のことを書いてるのにこんな歌詞を書いていいんだろうかとも思ったんですけど、初めて挑発的なラップを書きました。今聴いてもいい曲を書けたのかなと思いますし、自分でも相当気に入ってます。

―「118」のリリックもそうだけど、edhiiii boiさんの考え方って、どういう人、もしくはどういう出来事に影響を受けて、自分のマインドが形成されていったと思いますか。

edhiii boi:うーん……。

―すごく成熟しているなと思うところがたくさんあるし。

edhiii boi:なんていうか……音楽を作ってるときや歌ってるときは、本名の自分ではなくて、もう一人の誰かじゃないけど、ちゃんと「edhiii boi」になってるのかな。そこはちゃんと分けたいというか。でもこの「edhiii boi」という名前がつくまでは、それがわからなかったので自分でもすごく苦しかったし、やっぱり理解されづらかったし。

—理解されづらい、というのは?

edhiii boi:たとえば友達と遊んでるときに、いきなり「曲を書きたい」と思ったら公園で遊んでいても、すぐにイヤホンしてパソコンを開いて曲を作っちゃうんですよ。みんなでご飯を食べに行ってても、「ちょっと帰るわ」みたいな感じで曲を作ったり。絶対今じゃないだろうっていうタイミングで、いきなり携帯を出して思いついたメロディをボイスメモに入れちゃうとか。空気読めない子って思われてて。何かしら音楽のことをずっと考えて生きているし、何をするにもずっと音楽なので。そこで理解がされづらいときはありましたね。

―本当に、音楽を作るべくして作ってる人なんだなと、今日のお話のいろんな点から思います。edhiii boiさんの曲を、どういう人に聴いてもらえたら嬉しいなと思いますか?

edhiii boi:近い歳の子に聴いていただけたら嬉しいなって、最近になってもっと強く思うようになりました。自分の書いてることは「今」なので、歳が近い子が聴くと、同じようなことを思ったり、「そうだよね」っていうものがあると思うので。このあいだ、同じ年齢の子が「僕はサッカーをしてます」ってメッセージをくれて。ラッパーとサッカーで、ゴールは全然違うけど、追いかけているものがあるんだったらお互い頑張っていきたいよね、ということを思って。そういうのは大事にしていかないとなってすごく思いました。

—edhiiii boiさんの音楽って、親が自分のティーンの子どもに聴かせたいヒップポップでもあるなと思います。前向きで、自分と向き合って誠実に進み続けることをポジティブに歌ってて。

edhiii boi:”Smokeや酒はNO”って(笑)。

―そうそう(笑)。でもたとえば20〜30代の人らとも同じ土俵に立てるのは、やっぱりラッパーとしてのスキルとかっこよさがすでにしっかり確立しているからで。特殊なポジションにいるなと思います。4月からは高校生になられたわけですけど、リリックの内容はこれからどうなっていきそうだなと思っていますか?

edhiii boi:上京してきたので、自分の変わった環境を書きたいなと最近は思っています。たとえばエスカレーターって、関西だと右側に寄るけど、東京って左側じゃないですか。面白いなって(笑)。そんなことでいいと思うんですよ。新しい自転車買ったこととか。そういう日常的なことを書きたいなと思いますね。

—日常を綴り続けることで、年齢も経験も重ねるごとに自然と作品にグラデーションが出てきそうですよね。今後の作品も活動も、すごく楽しみにしています。

edhiii boi:ありがとうございます!

<INFORMATION>


「NO -remix- feat. TAIKI」
edhiii boi
BMSG
配信中
https://bmsgv.lnk.to/NO_remix

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