ZAZEN BOYSとCHAIが一緒にダンス、相乗効果で「アクション」を生んだ夢の共演
Rolling Stone Japan / 2022年4月22日 18時25分
2022年4月17日に東京都・豊洲PITにてZAZEN BOYSとCHAIによる2マンライブ『うるさがた Vol.2』が開催された。
【写真を見る】ZAZEN BOYSとCHAI、夢の共演(全26点:記事未掲載カットあり)
昨年12月に突如として発表された「ACTION (with ZAZEN BOYS)」で出会った2組。CHAIの3rdフルアルバム『WINK』収録曲「ACTION」をZAZEN BOYS色に染めたこのコラボレーションで大きな注目を集めたばかりとあり、2月14日にライブ告知がされるとチケットは争奪戦になった。
ZAZEN BOYSとCHAI、ともに世代を代表する日本のオルタナティブアクトというのは言うまでもないだろう。貴重な2マンライブを見ることができたのは1300人ほど。ご時世の影響もあり座席ありのライブとなったが、ライブ中は座りっぱなしでなく立ってライブを見ることもでき、2組が出会うミラクルな瞬間を楽しめた一夜であった。
Photo by Yoshio Nakaiso
まず1番手を務めたのはCHAI。「C・H・A・I CHAI. We are Musicians. From Japan. Enjoy!」という機械音声によるアナウンスメントが流れるなかで登場した4人。
1曲目は「NO MORE CAKE」。ユナはドラム台に座るが、マナ・カナ・ユウキの3人はそれぞれの楽器の前に向かうのではなく、ステージの前方に横並びになってダンスを披露する。彼女らにはスポットライトは当たらず、その周りを青緑色や翡翠色の照明がゆったりと流れるように照らし出す。2曲目に「ACTION」を披露するときにはユナもダンスに加わり、アレンジされた衣装を着飾る4人がフォーメーションダンスを踊りながらしっかりと歌ってみせた。
2曲ともにBPMの遅いダンスポップナンバーということも相まって、バンドセットがあればバンド演奏をやるであろう……という当たり前の予想を裏切るような出だしに、この日彼女らを初めてみた方は虚を突かれたかもしれない。
「今日は来てくれてありがとう! 待ちに待ったZAZEN BOYSとのライブです! 楽しんでいってください!」と元気よくMCし、マントを一旦脱ぐと、まるで妖精のような衣装を見せてくれた。
Photo by Yoshio Nakaiso
そこから「IN PINK (feat.Mndsgn)」「Nobody Knows We Are Fun」「チョコチップかもね (feat. Ric Wilson)」と披露していく4人。シンセサイザー2台を生かしたエレクトロポップが続いた。緩やかでメロウなサウンドとマナ・カナ2人のボーカルにはうまくエフェクトがかかって会場に響き、観客を魅了していく。ここまで3rdアルバム『WINK』でのモードで盛り立てていった内容ともいえよう。
ユナがサンプラーを叩いて「C・H・A・I」と4文字で8ビートを叩いていくと、徐々にヒップホップライクなビートへと変わっていく。そこからメンバー4人がラップで自己紹介、「クールクールビジョン」「END」をたたきつけていく。「PING PONG!(feat.YMCK)」を披露した後、「みんな楽しんでる? 次の曲はね、ライブで初披露!」と語って演奏したのは「まるごと」だ。
Photo by Yoshio Nakaiso
Photo by Yoshio Nakaiso
ブギー&ディスコチックな1曲であり、『WINK』で得たフィーリングをより深めたような1曲で、ここではシンセサイザーは登場せず、ギター・ベース・ドラムで演奏され、マナ・カナがメインボーカルを務めていた。
マナとカナの2人はライブ直前の4月15日に誕生日を迎えたばかり、MCでは「今日は久しぶりに日本でのライブなの! それがZAZEN BOYSとのライブなんで物凄いスペシャル!」と話したように、この日のライブには色々な意味で気合が入ったであろう。
Photo by Yoshio Nakaiso
Photo by Yoshio Nakaiso
ラスト2曲に披露したのは「Donuts Mind If I Do」「N.E.O.」の2曲。3rdアルバム『WINK』でのシンセポップを生かしたメロウさ、1stアルバム『PINK』が滾らせていた爆発力、それぞれを代表する2曲でライブをしっかりと締めた。
Photo by Yoshio Nakaiso
シンセポップ、ヒップホップ、ロックと横断しながら、「歌って、踊って、演奏する」というパフォーマンスで、コロコロとサウンドも演奏形態を変えていってもいっさいダレることがなかった。間口の広い音楽性、彼女ら4人のオープンかつ明るいムード、それらを突き詰めるパフォーマンス力、それらが世代随一のオリジナリティとオルタナティヴな表現を得た理由なのだと改めて突きつけるライブだった。
対するZAZEN BOYS。登場SEもないままにフラっとメンバーが登場、ステージ上部のライトは通常灯として点いているのみ。ステージのセンターに4人が固まるような立ち位置と、なにからなにまでCHAIと異なって見える。
「MATSURI STUDIOからやってまいりました。ZAZEN BOYSです」と一言、いつもの前口上から「Honnoji」で火ぶたを切って落とした。
バンドアンサンブルに何よりも重きを置き、向井秀徳が編み出した原曲を基にして即興でセッションするかのよう。阿吽の呼吸でギター・ベース・ドラムスが音を重ねていくライブスタイルは、2003年に結成以降も不変のスタイルで貫かれ、現在に至るまで異形のスタイルとして地位を築いてきた。
向井のボーカル、ドラミングのパターン、ちょっとした目配せや体の動き、そこからバチっとハメこまれていく精密なアンサンブル&グルーヴがこの夜も組みあがっていく。
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
「Weekend」「Cold Beat」と立て続けに披露されると、どこかセクシャル、どこかスピリチュアルな導きのような歌詞とともに、妖しいムードが会場に沁みていく。CHAIとZAZEN BOYSの共通点はそのパフォーマンスの異端さだけではなく、ちょっとだけセクシャルなムードを想起させる歌詞にも見えてくる。
この他にも2組には共通点がある。CHAIの4人と向井秀徳、どちらもお客さんの前ではどこかおどけてみたり、茶目っ気を出したりするなどチャーミングな一面を見せてくれるところだ。「暗黒屋台の親父のうた」とMCして始まった「暗黒屋」、「東京杉並区の浜田山から来られた方はいますか? 荻窪からきた方は?」と切り出して披露するのは「杉並の少年」。そこから続くように「This is NORANEKO」「ポテトサラダ」と奏でていく。
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
キレッキレなバンドアンサンブルと大仰な向井節、ピンと張り詰めた演奏に一切の緩みなど感じることない。ベース&ドラムのボトム隊の太いグルーヴと、独特なコード感とフレージングを重ねていく向井と吉兼のギターワーク。殺気だった妖しい空気が会場を包んでいく。
と思いきや、急に向井と吉兼がステージ前に数歩出て、CHAIのようにサイドステップを軽く踏んでみせ、ワっと盛り上がる一幕も。この茶目っ気は、近年のZAZEN BOYSや向井秀徳が見せてきた振る舞いであるが、この日の共演相手を考えればよりキラっと光る一面であったろう。
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
彼らは最後に、ロングトーンを生かしたメロウなギターフレーズと、細かい手数による野太いリズム&グルーヴで組み立てられた「Asobi」を披露する。
「まだまだ遊び足りない 別れの言葉はなかった ぜんぜん聞いてなかったが」と歌われるこの曲。女性と突然出会って一夜限りの情事を共にし、それでもなお満たされない衝動について歌っている。だがここでは、「まだまだ遊び足りない」という言葉がもともとの意味合いとは別に、まるで今宵のライブを名残惜しむかのような意味となって広がっていった。
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
そしてお待ちかね、アンコールではZAZEN BOYSとCHAIの8人がステージに登場。ZAZEN BOYSはステージの真ん中に、CHAIは横一列いっぱいに並び、コラボ曲「ACTION (with ZAZEN BOYS)」を披露した。
あのZAZEN BOYSメンバーがディスコライクな演奏している姿もかなり驚きだが、そんなバンド隊の周りを輪になって踊っていくCHAIのパフォーマンスも無邪気な姿に映る。
その4人の輪に向井も混ざって踊りだすと、この日一番の拍手で沸いたのは言うまでもない。ステージ上で見せたこの構図は、まさに2組がこれまでにアクションしつづけてきたオルタナティブなスタイルを表現しているかのよう。まさに奇跡の組み合わせがみせた充実の一夜だった。
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
Photo by 菊池茂夫(DYNASTY)
〈セットリスト〉
CHAI
1. NO MORE CAKE
2. ACTION
3. IN PINK(feat. Mndsgn)
4. Nobody Knows We Are Fun
5. チョコチップかもね (feat. Ric Wilson)
6. 自己紹介
7. クールクールビジョン
8. END
9. PING PONG! (feat.YMCK)
10. まるごと
11. Donuts Mind If I Do
12. N.E.O
ZAZEN BOYS
1 Honnoji
2 Weekend
3 Cold Beat
4 暗黒屋
5 杉並の少年
6 This Is NORANEKO
7 ポテトサラダ
8 はあとぶれいく
9 Asobi
アンコール
CHAI「ACTION (with ZAZEN BOYS)」
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