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Girlpoolが赤裸々に語る過去との闘い、「赦し」という言葉の持つ意味

Rolling Stone Japan / 2022年5月2日 18時30分

ガールプール(Photo by Julian Klincewicz)

LAのインディーロック・デュオ、ガールプール(Girlpool)が通算4作目のニューアルバム『Forgiveness』をANTI-からリリース。エイヴリー・タッカー(Avery Tucker)とハーモニー・ティヴィダード(Harmony Tividad)が語る、挑発的で野心に満ちたニューアルバムとそのインスピレーション。


新曲「Love333」を初めてレコーディングしようとした時、ハーモニー・ティヴィダードは戦慄を覚えた。

「自分史上最低のデモだった」。そう話すティヴィダードは、高音のキーキー声でその耳障りなサウンドを再現した。「ふざけてるわけじゃないの。チープなアニメの曲がゴミ箱から流れてきたみたいだった」



ガールプールのもう一人のメンバー、エイヴリー・タッカーとプロデューサーのYves Rothmanは、ティヴィダードがAbletonで作ったサウンドを大幅に編集して作ったそのデモに興味を持った。彼女がその曲をアコースティックギターで弾き始めると、2人はその曲が2015年発表のバンドのデビュー曲「Chinatown」のようなデュエットを必要としていることを確信した。

ティヴィダードとタッカーがヴァースを交わし、サビではハモりながら”愛に似た何かを見つめてた”と歌う「Love333」は、ロサンゼルスを拠点とするガールプールの4作目『Forgiveness』の最終曲となった。だが「Chinatown」に通じる同曲は今作においてはむしろ異質であり、アルバムはバンド史上最も挑戦的で野心に満ちた驚くべき内容となっている。

グリッチーな打ち込みのドラムがインパクト大な冒頭の「Nothing Gives Me Pleasure」(冒頭のライン:”あなた本当に私が欲しいの? わざわざ訊かなきゃいけないなんて/そっと打ち明けて 私のお尻を撫でながら”)から、尖ったインダストリアルなサウンドが炸裂する「Lie Love Lullaby」まで、『Forgiveness』は質感たっぷりのエレクトロニカと詩心のあるフォークポップを見事なバランスで融合させている。

タッカーはそのバランス感(敢えて言うならば、新たなガールプールと過去のガールプールの比重)について、レコーディングの過程でティヴィダードと「毎日のように議論した。おそらく全曲に言えること」だと語っている。

「避けては通れない課題だった」と彼は話す。「フィーリングという名の錘(おもり)を両側の皿に乗せながら、天秤の平衡を保とうとするような感じだった」



複数のアルバムをリリースしているアーティストが、イメージを確立した初期のサウンドや方向性を望む声に抗うことは珍しくないが、ガールプールが感じていたプレッシャーは並大抵ではなかったはずだ。ティヴィダードが20歳、タッカーが19歳の時にデビューアルバム『Before the World Was Big』をリリースした2人は、フォークパンクのブームの再来を牽引する存在として称賛された。それからの7年間、2人は同作で確立したイメージを刷新しようと努めてきたが、その試みが常に実を結んだわけではなかった。またその間、2人はプライベート面でも大きな変化を経験した。

ティヴィダードとタッカーは『Before the World Was Big』を作った頃の自分とのギャップを感じており、それは2人のコラボレーションの原動力になった。少し前、タッカーはApple Musicでアー写が最新のものにアップデートされているかどうかを確認した際に、古い曲をいくつか再生した。そのとき彼は、まるで童謡を聴いているかのような気分になったという。新曲「See Me Now」で、彼は恋人の目に「バンドの過去の姿が映っている」のではないかという不安を吐露している。

「それが自分たちのディスコグラフィの一部だってことを、どうしても認めたくないんだ」。2017年作『Powerplant』のリリース後に転機を迎えたというタッカーはそう話す。「古い曲を全部下げようと思ったことはあるかって、よく聞かれるよ。以前のイメージを払拭するためにね。過去の自分とバンドを否定したり恥じたりするんじゃなく、ありのまま受け入れることができたらどんなにいいだろうって思う」

「『Before The World Was Big』のストリーミング回数が新譜と同じくらいだったり上回ったりするのを見ると、すごく苛立つんだ」とタッカーは話す。「自分が今も過去に囚われてしまってると感じることもある。でも、そこから学ぶべきことがあるはずだって信じようとしてる。過去の曲なしに今のガールプールはないけど、それを少し恥じているのは事実なんだ。聴いてると気恥ずかしくなるし、すごくフェミニンだと感じる。でもその一方で、若さゆえの純朴さやお互いに対する誠実さ、切実さや危うさをすごく愛おしく思う気持ちもあるんだよ。惨めな自分を曝け出すことで道を切り拓いたってこと自体は、ものすごくクールなんだから」



バンドの2ndアルバム『Powerplant』(2017年)は、溢れ出る創造力に身を任せることでデビュー作を自然な形でアップデートさせた、2作目のジンクスとは無縁のレコードだった。「ごく自然に出てきたんだ」とタッカーは話す。「一貫していて即効性もあって、すごく理に適ってた。僕らの間に摩擦もなかったし、自然と形になったんだ」

よりストレートなインディーロックのレコードとなった3作目『What Chaos Is Imaginary』(2019年)の制作も、同じようにスムーズに進むはずだった。しかしリリースから数年経った今、2人は同作にはより多くの時間と注意が必要だったと感じている。

「人生で何かしらの転機を迎える時がそうであるように、あのレコード制作のプロセスはどこか不自然だった」とタッカーは話す。「向こう側の着地点が見えないまま飛ぼうとしてる、そんな感じだった」

『Forgiveness』というタイトルの意味

タッカーとティヴィダードは、サンフラワー・ビーンやイヴ・トゥモアとの仕事で知られるオルタナポップのプロデューサー、Yves Rothmanとのコラボレーションにより、その着地点をようやく見出した。作曲にこれまでよりも多くの時間を費やし、次の一手について慎重にプランを練った。

「初めて(アルバムとしての)全体像にフォーカスできたと思う」とティヴィダードは話す。「以前は行き当たりばったりで、曲のポテンシャルを引き出すための余白を持たせることができていなかった」




タッカーの飼い犬がスタジオのハードドライブを倒してしまい、制作途中だった3曲のデータを消失するなど、いくつか予想外のアクシデントにも見舞われたものの、今作『Forgiveness』はガールプールのキャリアの集大成というべき内容となっている。ダークなゴスポップの「Country Star」(「カウボーイと恋に落ちるっていう妄想についての曲」とタッカーは話す)から、ゴージャスで胸を引き裂くようなバラード「Butterfly Bulletholes」、そしてティヴィダードが深刻なほどの二日酔いを経験した朝に30分で書き上げたというリードシングル「Faultlines」まで、『Forgiveness』のトーンとスケール感は極めてダイナミックだ。

「自分っていう存在が脅かされているみたいだった」と彼女は話す。「体と心をまるで大切にできていなくて、私はボロボロになってしまってた。生きていることの喜びを取り戻すには、自分の一番深い部分と向き合うしかないと思った」


Photo by Alexis Gross

『Forgiveness』は欲望と肉体、赦免と罪に根ざした物質的なレコードだ。アルバム中4曲で「sin」という言葉が使われており、アルバムのタイトルを『Sin Boy』とすることも考えたという。

それでも2人が『Forgiveness』という言葉を選んだ理由について、ティヴィダードは「私たちが生み出していた広大な心象風景を表現していたから」だと語っている。

タッカーもまた、赦しという概念に強く惹かれている。「そのコントロールや変化に対応できない場合に、苦しみや怒りが生まれる。そこから逃れるには、赦しによって自分を解放するしかない」と彼は話す。

「それが唯一の退路であって、抵抗の対極にあるものなの」とティヴィダードは話す。

タッカーは最後にこう付け加えた。「同時に、前に進むための唯一の手段でもある」

From Rolling Stone US.



ガールプール
『Forgiveness』
発売中(2022年4月29日リリース)
視聴・購入:https://silentlink.co.jp/forgiveness09

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