未解決事件の謎を解くダイバー集団、YouTubeで人気 米
Rolling Stone Japan / 2022年5月12日 6時45分
YouTuberのジェレミー・サイズさんとアダム・ブラウンさんのトレードマークはダイビング用のスーツ。彼らは、行方不明者のものと思われる水中に沈んだ車(ときには行方不明者も)の捜索を専門とする、最近人気のYouTubeコミュニティのメンバーである。ハイテク機器を駆使して謎の解明に全力を注ぐ彼らの活動は、多くの人の関心を集めている。Carley ProjectやNamUsといったデータベースには数千人の行方不明者が登録されているだけでなく、こうした捜索を見たがるオーディエンスがいるのだ。
【動画を見る】21年前に失踪の車、川の中で発見する瞬間
2021年末、サイズさんは米テネシー州ホワイト郡スパータ付近の水域を捜索中、一台の車を発見。21年前に失踪したエリン・フォスターさん(当時18)とジェレミー・ベクテルさん(同17)の車だった。車は同州を流れる川に沈んでいた。
42歳のサイズさんは金属探知機を携えてYouTubeを始めた。ジョージア州アクワースの自宅付近で公園や南北戦争時代の建物を散策しながら、古い硬貨や道具やガラス瓶などのお宝を探していた。ダイビングのライセンスを取得してからは水中へ活動の場を移し、19世紀の入れ歯から年代ものの爆弾、骨壺まで、あらゆるものを回収するようになった。「骨壺は大変です」と彼は言う。「一度、底に穴の開いた骨壺がありました。何なのかよくわからないまま持ち上げたら、遺灰を全部まき散らしてしまって、『こりゃ大変だ』という感じでした」
サイズさんはさらに続け、2021年1月に初めて行方不明者の捜索を行った時のことを語った。オレゴン州ベンドを拠点とするYouTubeチャンネルAdventures With Purpose(以下AWP)のダイバー仲間が一緒だった。そのころすでに、AWPはかなり実績を挙げていた。2020年5月、当時は環境清掃のチャンネルという触れ込みだったが、メンバーが思いがけずティモシー・ロビンソンさんの遺体を発見したのだ。ライブストリーム中にウィラメット川からマツダが引き揚げられるまで、56歳のロビンソンさんは2008年からずっと消息不明だった。「車を引き揚げるまで、中に遺体があることは知りませんでした」と言うのは、AWPのチーフドライバーのダグ・ビショップさんだ。彼らはストリーミングを中断し、編集した動画を後日アップロードした。「ご遺族は彼がヨーロッパに出かけたものだと思っていました。ご兄弟も彼の消息が分からずにいました。その間ずっと彼はポートランド郊外の水中にいたんです」
警察との関係はおおむね「良好」
2021年1月、AWPは他のダイバーを誘って、ナッシュビルでビル・シモンズさんの捜索を行った。57歳のシモンズさんは6カ月間行方が分からなくなっていた。この時、サイズさんは車の引き揚げ方を学んだ。その日はシモンズさんの発見に至らなかったが、チームは後日発見した。以来、サイズさんは失踪者の捜索に夢中になった。「自分のしていることに娯楽以上の価値や理由を持たせたい、という気持ちでした」とサイズさん。「人助けにもなるんだ、と思ったんです」
そうした思いはユーザーの心にも響いている。ロビンソンさんの発見以来、AWPも変わった。「ユーザーから、車ごと行方不明になった友人や家族の未解決事件が送られてくるようになりました」とビショップさん。2020年以降、AWPは20人の行方不明者の遺体を発見しているそうだ。
サイズさんがお宝発掘から失踪者捜索にシフトすると、閲覧回数も急増した。2021年中盤、彼は出張タイヤ修理の仕事を辞めてYouTubeを本職とし、物販の売り上げや寄付、有料購読で広告収入を補った。2021年末にフォスターさんとベクテルさんを発見した時には、フォロワー数が3倍に増えた(現在のフォロワー数は約36万人)。オーディエンスにも変化が起きている。かつてはダイバー仲間やお宝発掘仲間だったのが、今では捜査の状況や進展を見に来る人がほとんどだ。「こうした動画を見に来る失踪者コミュニティはものすごく協力的ですよ」と彼は言う。
サイズさんをはじめとするダイバーは、素人探偵としての役割を真剣に受け止めている。サイズさんは行方不明者の車を見つけたら、牽引車ではなく警察に連絡する。いったん警察が到着したら、邪魔はしない。「警察が後を引き継ぎ、我々は観客側に回ります」とサイズさん。ここまでのところ、警察との関係はおおむね良好だというが、ローリングストーン誌が取材した別のダイバーによればギクシャクすることもあるという。例えば2020年、AWPは失踪した17歳のニコラス・アレンさんの遺族とともに、警察がやって来て車を引き揚げるのを待っていた。AWPが撮影した動画には、警察が遺族に無碍な態度をとり、「車内に息子さんの遺体があるとは保証できない」と言うのが聞こえる。「ええ、でも少なくとも私の車です、だからお願いしたんじゃないですか――せめて確認だけでもしてくださいって」と母親。アレンさんの遺体は回収され、のちに保安官事務所は遺族に不謹慎な態度を取ったことを謝罪した。
ダイバー探偵は貴重な存在
警官を退職後、現在は未解決事件の解決を支援するNPO団体Season of Justiceのエグゼクティヴディレクターを務めるスティーヴ・デュボワさんは、YouTubeで活動するダイバー探偵は失踪者捜索に貴重な存在だと考えている。「警官仲間には違う意見の者もいるかもしれませんが、発見後は(警察に知らせるよう)配慮し、私有地に入る許可を取っている限り、マイナスな点はないと思います」。ダイバーが失踪事件を解決してくれるなら、警察の捜査部署をひとつ減らして経費削減できる、というのがデュボアさんの見方だ。
Quality Towing社のシニアスタッフ、ダスティン・マイルズさんは、これまでにサイズさんと4台の車を引き揚げた。ダイバーと同じくらい、彼も回収作業に入れ込んでいる。「いったんハマると、手ぶらで帰るのは胸が痛みます」と彼は言う。「水面が湧きたち、成功したとわかった瞬間は鳥肌ものです」
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