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DOPING PANDAが再結成ツアー完走 10年を経て奏でた音「今日の終わりは、始まり」

Rolling Stone Japan / 2022年5月28日 11時35分

4月23日(土)東京都 Zepp Hanedaにて開催された『∞ THE REUNION TOUR』ツアーファイナル公演(Photo by Rui Hashimoto)

DOPING PANDAが、解散から10年後の2022年1月28日に再結成を発表、3月2日にニューアルバム『Doping Panda』をリリースし、東名阪のZeppを回る4本のツアー「DOPING PANDA『∞ THE REUNION TOUR』を行った。以下、その4本のファイナル、5月22日(日)Zepp Hanedaを、兵庫慎司が現場で観て書いたものである。

チケットがソールドアウトしたこの公演は、CSテレ朝チャンネルで生中継された上に、6月19日(日)23:00からも、同チャンネルで、改めて再放送されることが決まっている。

ライブは、本編22曲、アンコール3曲、ダブル・アンコール2曲の、全27曲、計2時間20分強。『Doping Panda』収録の10曲からプレイされたのは「Cant you hear the music?」「Kiss my surrender」「Imagine」「Silhouette」「BS」の5曲で、他の22曲は、最初にインディー・リリースし『Perfomation』(2001年リリース)以外の、全時代の作品から選ばれていた。

ニューアルバムのお披露目というよりも、再結成にあたって解散前と現在をすべて見せておきたい、という意志と、10年を経て集まってくれたドーパメイニアが楽しみにしているであろう曲を少しでも多く聴かせたい、という気持ちから、そのようなセットリストにしたのではないかと思う。

本編の前半は、4曲ごとにMCを入れ、中盤から後半=13曲目の「Go the Distance」から22曲目(本編ラスト)の「Silhouette」までの10曲は、ノンストップ、つまりDOPING PANDA語で言うところの「∞DANCE TIME」状態で披露され、満員のファンを狂喜させる。

ロック・バンドのコンサート的な仕様ではなく、いわゆるデカバコのクラブのそれである、DOPING PANDAならではの──たとえばレーザー状の空間照明が飛び交ったり、ステージの床の各所と天井に仕込まれたミラーボールが回転しまくったり──という手間とアイデアをふんだんにかけた照明演出は、前半から随所で使われていたが、この「∞DANCE TIME」から全開で稼働。Zepp Hanedaのステージの上もステージの下も、非日常のように、異世界のように彩っていく。


Photo by Rui Hashimoto

曲のつなぎに繰り返される「∞DANCE TIME」のボイス・サンプルが、まるでオーディエンスにガソリンを注ぎ込むように響き、次の曲のイントロが始まるとみんなはじけるようにジャンプし、腕を振り上げる。


後半が曲間なしのノンストップな分、前半とアンコールでのMCの時間は、ゆったりめに取られていた。「頭4曲を立て続けにプレイしてから、再結成を発表したら、思った以上に反響が大きくて、みんなの期待に応えられるか、自分たちが間違ったものを見せることにならないかと怖かった」と、Furukawaは語る。
「怖くて、ライブで曲を1曲も思い出せない夢を見た」という話をしてから、「……いや、嘘ついちゃダメだ」と撤回。話を盛りそうになったと申告し、「怖いからMCまで全部決めてやろうかと思ったけど、そんなことをしようとしてるから10年前に行き詰まったんだ、と気づいた」と反省。「俺がダメでもタロティがいる、タロティがダメでもHayatoがいる。もうありのままにやりますよ、せっかくバンドなんだから。今日は世界一幸せな再結成をしているDOPING PANDAを、最後まで楽しんで帰ってください」と挨拶し、拍手を浴びる。

で、そこからまた4曲を経てのMC。「さっき、俺がダメでもタロティがいる、タロティがダメでもHayatoがいる、って言ったけど、ヤバい。今日、3人ともヤバい。3人とも最高なんで、最高のDOPING PANDAを最後まで楽しめますよ」と、手応えを言葉にし、また拍手を浴びた。


Photo by Rui Hashimoto

中盤のMCでは、フルカワから念願のフジロック・フェスティバル22に出演が決まったことを報告。1997年、19歳の時にタロティたちサークル仲間と行った第一回フジロックの衝撃や、2002年にDOPING PANDAで「ROOKIE A GO-GO」に出演した時の思い出にも触れる。

「10年前は、このままやっていて、いつ立ち止まっちゃうんだろうか、どこまで行けるんだろうか、不安でいっぱいだったんだけど、今はどこまででも行けそうな、そんな気がしています」というMCから「Go the Distance」を聴かせ、「YA YA」から「∞DANCE TIME」へ突入。
16曲目の「Hi-Fi」ではFurukawa、ハンドマイクでお立ち台に上がり、「俺たち、もっと行くぜ!」と宣言。19 曲目「transiwent happiness」では、「もっと行けるだろ? もっと行こうぜ!」とオーディエンスをあおった上で、「連れて行ってやるよ!」と叫び、曲の最後に「愛してるぜ、ドーパメイニア」と足した。

>>関連記事:フルカワユタカの挫折と仲間との出会い、ソロ活動7年間を振り返る

解散した後にDOPING PANDAを知って、今日初めてライブを観た、という人は、この人たち、曲に入るとすさまじい音を出すのに、なんでMCになるとこういう感じなんだろう? と、不思議に感じたかもしれない。ただ、デビューから解散までのDOPING PANDAの、そして解散から現在までのソロ・アーティストYutaka Furukawaの、悪戦苦闘の歴史を知っているファンには、今、そんなライブをやっている3人の気持ちが、手に取るようにわかったのではないか。

うまくいったこともあったし、勝ち得たものもあったが、いろんな失敗もしたし、誤った選択もしたし、後で「あれはよくなかった」と気がつくような言動もあった。そんないろいろの末に、バンドが行き詰まって、終わらせざるを得なくなった。Hayato Beatはマネージャー業に転職し、タロティは人前に立つことをやめ、ミュージシャンとしての道を選んだのはFurukawaだけだった、という事実が、「いつかまたやれたら」みたいな解散ではなかったことを示している。


Photo by Rui Hashimoto

そして10年が経ち、さまざまな偶然や幸運が重なって、こうしてリユニオンすることになった。だったら、過去にした失敗や過ちはすべて改善しよう、同じ轍は踏まない、今度こそ最短距離でトップまで駆け上がってやる──というほど、力んだことは考えてないと思う、3人とも。

ただ、一度バンドを失って、さまざまな経験をしながら「バンドのメンバーではない自分」として生きたことによって、いろんなことが見えた。バンドというものの楽しさも、魅力も、大変さも、ままならなさも、いかんともしがたさも、そして、かけがえのなさも、改めてよくわかった。

その上で、どうせもう一度バンドをやるなら、せっかくだから、その「よくわかったこと」を生かしたい。で、バンドというものがいかに大事でかけがえのないものかがわかったんだから、そういう気持ちで取り組みたい。ということなのではないかと思う。


ソロ・アーティスト兼サポート等で活動するギタリストとして、10年現場に立ち続けて来たFurukawa Yutakaが、DOPING PANDAという場を取り戻して、「人間がギターを持って爆発してる」みたいな、ハイパーなステージを見せてくれたのは、まだわかる。

しかし、タロティは、少なくとも我々の目につくようなところでは、ステージに立ってベースを弾く機会はなかったはずだし、マネージャー業に邁進し、その後徳島に移住したHayato Beatは……あ、でも、Hayato Beatは一度だけドラム叩いてるの観たわ、チャットモンチーのマネージャー時代に。何かのイベントに福岡晃子が出た時に、そのサポート・ドラムで、ふたりでライブをやっていた。まあいいか、それは。


Photo by Rui Hashimoto

つまり、ふたりとも、10年間ほぼミュージシャンではなかったはずなのに、10年前よりも良かったのだ、パフォーマンスが。再結成してからまだ5本目のライブなのに。「10年前に止まった時がまた動き出した」みたいなことじゃなくて、10年後の、最新型の自分をそのままステージに上げたら、その10年分、すごくなった、というような。

プレイヤーとしては、現場から遠ざかっていたんだから、技術とか経験とかいうよりも、思考や気持ちの部分で、進化したのだと思う。何を考えて、何を感じながら演奏に向かうか、バンドに取り組むか、ということが、この10年で明確になったから、それがそのままステージングに出ていたのではないか。

再結成時に行ったインタビューでも、この日のMCでも、「この再結成は絶対うまくいくと思った」ということをFurukawaは言っているが、それもつまり、そんなふたりを確認できたからこそだろう。

ダブル・アンコールで「GAME」をやる前に、Furukawaは言った。

「解散ライブは、終わりの終わりだった。今日の終わりは、始まりだから」

で、(声は出さないが)沸き立つオーディエンスを見て、思わず「……すげえな。すげえな、おまえら」と喜びを露わにしてから「GAME」に突入し、続く「Candy House」を終えると、ふたりをステージ前方に呼ぶ。


Photo by Rui Hashimoto

そして、「初めてやってみる」と、3人で手をつないで両腕を高く上げてバンザイし、そのままの形で一礼した。古今東西あらゆる人たちがやって来たこの挨拶を、こんなにぎこちなく、こんなに素敵にやってみせるバンドは、初めて観た気がした。

余談。再結成インタビューで、僕はFurukawaにこんな質問をした。

>>関連記事:DOPING PANDAフルカワユタカが明かす、バンド再結成秘話

──イヤなことを言いますけど、フルカワさんはソロにしても人のサポートにしても、凄腕のミュージシャンたちとやって来たじゃないですか。ドラムなら、fox capture planの井上司とか。ベースなら村田シゲとか、雲丹亀卓人とか。

Furukawa そうですね。

──という経験をしてしまったがために、DOPING PANDAに戻った時に……。

Furukawa いや、それはね、ありますよ。そりゃ、村田シゲとかウニちゃんとタロティは全然違いますよ。Foxのつかっちゃんも、やっぱりすげえし。それは違います。違うんですけど、なんて言うかな、やっぱり、バンドはそれを超えて行きますね。

思わず「うわ、いいこと言いますねえ」と言ってしまった。この質問、自分が、昔も今も、いろんなバンドマンを見てきて、いつも思っていたことだ。でも当然、非常にデリケートなことなので、インタビューで気軽に問える話ではない。今のこのタイミングのFurukawaになら訊けるんじゃないか(自分と彼の関係性も含めて)、と思ってぶつけたのだが、彼のこの返答、「うわ、究極。これ以上のものはないわ」と感嘆させられるものだった。

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