米俳優レイ・リオッタと『グッド・フェローズ』の記憶、スコセッシ監督が語る

1990年、左からレイ・リオッタとマーティン・スコセッシ（Photo by Ron Galella Collection via Getty）

マーティン・スコセッシ監督が、先月67歳でこの世を去った俳優レイ・リオッタへの追悼記事をガーディアン紙に掲載し、唯一の共同作品『グッド・フェローズ』を振り返り、再びタッグを組まなかったことを悔やんだ。

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1990年公開の映画『グッド・フェローズ』はスコセッシとリオッタが組んだ唯一の映画。監督の話では2人ともコラボレーションの機会を探っていたものの、なかなかタイミングが合わなかったそうだ。2019年にノラ・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』でリオッタが離婚弁護士役を演じるのを見て、再び衝動にかられたという。

「あの役の彼は心底恐ろしく、だからこそとても面白い――今この年齢の彼ともう一度一緒に仕事をしたいと思ったのを覚えている。周りを惹きつける彼の存在感をもっと掘り下げたいと思った。出会った時のピチピチした若手俳優とはまるで別人だった」とスコセッシ監督。

当然ながら追悼記事の大半は『グッド・フェローズ』が中心で、ヘンリー・ヒルというギャングを演じる上で必要な危険と魅力と弱さをリオッタが兼ね備えていたことを監督は振り返った。また最初にリオッタをヒル役に起用したいと思った時のことにも触れている。リオッタの他の出演作を見た時ではなく（もっとも、ジョナサン・デミ監督の『サムシング・ワイルド』の役は気に入っていたようだが）、ヴェネチア映画祭でいかにもハリウッドらしい場面に出くわした際に、若手俳優の立ち居振る舞いを目の当たりにした時だったそうだ。

2人はホテルで顔を合わせたが、リオッタが監督に近づくと警備員に止められたそうだ。「癇癪（かんしゃく）を起してここを通せと要求することもなく、彼は冷静沈着にふるまってルールを守り、ぐっとこらえて場を収めた」とスコセッシ監督は振り返る。「彼は私の方を見て、私も彼を見た。後で話をしようと合図をして、彼は立ち去った。私はそれを間近で見ていた。彼は落ち着き払った態度と上品な身のこなしで対処していた。実際、あの役に必要だったのもそれだった」

『グッド・フェローズ』制作中、リオッタは長年ともに仕事をしてきたキャストやクルーともすぐに打ち解けた。そうした絆の重要性は、リオッタの母がガンと診断されたことが発覚した時に証明された。ちょうど『グッド・フェローズ』でもとくに賑やかなシーンの撮影が予定されていた時期だった。エールフランスで一山当てた後、ヒルが仲間のトニー（ジョー・ペシ）とジミー（ロバート・デ・ニーロ）とボスのポーリー（ポール・ソルヴィーノ）に賛辞を贈るシーンだ。スコセッシ監督は母親の元へ戻るよう言ったが、リオッタは先に撮影を済ませると言って譲らなかった。

「初めて大仕事を終えた登場人物が上機嫌になるという場面で、誰もがレイと心をひとつに通わせていた。笑って、バカ騒ぎしながら、同時に彼とともに胸を痛めていた」とスコセッシ監督。「笑っては涙を流し、涙を流しては笑う……全員がひとつになっていた。レイはあのシーンを見事にこなした後、愛する母親の元へ向かった。貴重な経験だった」

追悼記事で、スコセッシ監督はリオッタについてこう締めくくった。「最後にもう一度、彼に一目会うチャンスがあったなら――あの時一緒に仕事をしたことが、私にどれだけ大きな意味があったか伝えられたのに。だがおそらく彼も気づいていただろう。そうであってほしい」

from Rolling Stone US