moonridersが持つ徹底的な民主主義性、鈴木慶一らと新アルバムを全曲語る
Rolling Stone Japan / 2022年6月19日 10時0分
音楽評論家、田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年5月の特集は「moonriders」。パート1に引き続きパート2はゲストに鈴木慶一、佐藤優介、澤部渡を迎え、11年振り新アルバム『Its the moooonriders』の後半全曲を語る。
田家秀樹:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れているのはmoonridersの「親より偉い子供はいない」。4月20日に発売になった11年振りの新作アルバム『Its the moooonriders』の6曲目、今日の前テーマはこの曲です。
関連記事:moonriders、11年振りアルバムを鈴木慶一、佐藤優介、澤部渡とともに語る
今月2022年5月の特集はmoonriders。新作アルバムを入口に彼らの歩みを辿ってみようという1ヶ月。今週はパート2。11年振りのアルバム『Its the moooonriders』の全曲紹介、今週は後編。ゲストは5週間に渡って登場していただく鈴木慶一さん。そして、曲作りにも加わったミュージシャン佐藤優介さんと澤部渡さんということで今週もよろしくお願いします。この曲のタイトルすごいですね(笑)。
鈴木慶一:これはSNSで白井良明が書いてたんだよね。私が引っ越しまして、倉庫からローランドのヴォコーダーのキーボードケースが出てきたんですよ。それにmoonridersというロゴが書いてあって、そのロゴは良明のお父さん、白井源三さんが作って、”o”が重なっている。久しぶりに見たなっていうようなことを書いていたんです。で、「親より偉い子供なんていません」とか、そういうふうに書いていたのかな。これ曲になるんじゃない? 歌詞になるんじゃない? っていうことで博文、良明のやり取りが始まった。
田家:作詞が鈴木博文さんと白井良明さんで、曲が白井良明さん。”よしあき”さんという。
鈴木:”よしあき”って呼ばれたことないと思うの。常に”りょうめい”って言われて。”よしあき”を使ってみたいというのは、鈴木博文の案で、「おい、よしあき」っていうふうに書きたかったらしい。
田家:ボーカルは慶一さんと良明さんと博文さんと夏秋さん。
鈴木:コーラス部分の〈親より〉をみんな一緒にやってるからね。
田家:で、ボイスが春風亭昇太さん。なんで昇太さんだったんですか?
鈴木:誰にしようかってなって、〈おーいよしあきー〉ってまるで「帰って来たヨッパライ」みたいだろって(笑)。デモでは本人がやっていたんです。それも変だろうという流れで、違う人がいいかなって。江戸の感じがほしいなって思いましてね。良明のお父さんは蒔絵師と言いまして、浮絵を描く人だったんです。白井良明も蒔絵師になろうとしてた。だから習字を習わされたりいろいろしていて。高校生ぐらいのある日、「お前蒔絵師になるな、やめろ」って。「なんで?」って言ったら、「金にならねえ」って(笑)。
田家:なるほどね(笑)。
鈴木:いい父上ですよねー。だから、こういう歌詞になったんです。
田家:そうか、良明さんにとっての親はこういう存在なんだ(笑)。moonridersには「DONT TRUST OVER THIRTY」というアルバムもあるわけですし、年齢とか上の世代に対してはこだわり方があったんでしょ?
鈴木:ありましたね。特に20歳ぐらいなんて。2人ともそうなんじゃないの?
澤部渡:でも、僕らだとその頃にはmoonridersとかスパークスとか好きだったから、むしろ逆でずっとリスペクトです。
鈴木:私ぐらいだとちょっと年上がほとんどGSの方々で、だからもう30歳過ぎは信用するなというのがあるわけです。でも、自分が30過ぎてしまうと非常に矛盾を抱えながら生きていくことになる。だから澤部くんや優介くんみたいに最初から年上の方の音楽を聴いているのは想像がつかない。ビートルズでさえ10歳上ぐらいだから。お二人にとって、我々は10歳上どころじゃないけども(笑)。
田家:もうちょっと大人になると、こういう心境になるという歌でもあります。「親より偉い子供はいない」。
田家:みんなで合唱したくなるような曲ですね。昇太さんのところを澤部さんがおやりになるとしたらどうですか?
澤部:ははははは! 僕これできないっすよ。さっき言ってましたけど、江戸の感じというか、下町じゃないと出せないなって思います。僕は東京なんですけど、板橋区なんですよ。
田家:良明さんは墨田区でしたね。
鈴木:私もできないねー。私は大田区で偽下町だから(笑)。
田家:クレイジーキャッツみたいだなと思ったりもしたんです。
澤部:ピアノが遊んでいて、そういう感じしますよね。
田家:ピアノは優介さん?
佐藤:そうですね。良明さんからはニッキー・ホプキンス系でという。
田家:陽気な感じになるように。
鈴木:もしくはローリング・ストーンズのイアン・スチュワートみたいな感じ。第6のメンバーと言われるような。
田家:8曲目「再開発がやってくる、いやいや」。これも詞曲が白井良明さん。
鈴木:実際の話らしいですよ。白井が住んでいる周りが再開発に遭いそうなんだって。白井の歌詞は身の回りのちょっとしたことがちょいちょい出てくる。
田家:トーキングブルースか、トーキングラップと言うんでしょうか。これは?
鈴木:最初の良明のデモのラップはきっちりしたラガマフィンスタイルと言うかな、所謂レゲエな感じであった。それをちょっと崩したいと。今ラップは様々ありますから、フローするのもあるし、メロディがあるのもあるし。そのへんを今やるんだったらラガマフィンスタイルだと古いなということで。ビートを白井がディラビートと言っているんですけど、ドランクビートとも言います。酔っぱらいのビート。J Dillaというビートメイカーが由来です。
佐藤:ズレたような。
鈴木:ズレてる。ドラムズを叩くのが大変です。あとはゲストのDAOKOさん。彼女が出てくると、なんかハッと救われた感じになりますね。再開発はたぶんないよって言ってくれているのかもしれないし。
田家:そういう東京の歌がまだこの後も出てくるわけですね。やっぱり東京のバンドなんだなと、あらためて思ったりしている、そんな1曲でもあります。良明さんとDAOKOさんはどういうお付き合いなんですか?
鈴木:良明が女性ボーカルを入れたいということだったんですよ。スタッフも含めてみなさんで考えて、DAOKOさんをマネージャーの野田さんが推薦して、みんなで聴いてみて「いいねー」ってなって来ていただいた。
田家:ボーカルは?
鈴木:これはボーカルというよりトーキングブルースですね。1番が白井、2番が私、3番が鈴木博文、4番が武川くじら。
佐藤:みんな違うフローですよね。びっくりしたのがmoonridersのグループメールがあるじゃないですか。ラップの参考にしようって慶一さんが書いていたのがフランク・ザッパとジュース・ワールドでしたよね。
鈴木:そう(笑)。
佐藤:すごい振り幅だなと思って。
鈴木:俺よくそんなのセレクトしたな。
佐藤:すごいセレクトだなと思いました。
田家:そこまで気がつく人がどれくらいいらっしゃるんだろうという曲でも、アルバムでもありますね。
佐藤:メロディが混じったフローの感じは最近っぽいなというのもあるし。
鈴木:どこに行くかっていうのがね。だからこれは相当マシーン使ってます。録音しながらボーカル用のマシーンいじくり回していますから。
佐藤:あ、リアルタイムなんですか?
鈴木:そうです。リアルタイムでテイク1だね。
田家:たしかに何回もやれるようなことではない。
田家:アルバムの9曲目です。「世間にやな音がしないか」。いろいろなことが隠されているようなタイトルでもありますが……。
鈴木:いろいろなタイトルがあるなー本当に。
田家:詞が慶一さんで曲が夏秋さんです。
鈴木:夏秋くんから歌詞を書いてと最初に頼まれまして、私は人に書くとき結構無責任で過激なことを書くんです。
佐藤:このアルバムで1番やばい歌詞だなと思いました。
鈴木:嫌な音ってたくさんあると思うんです。勝手に入ってくるニュースとか、SNSとか。そこからさらに掘っていくと、違うものにぶつかってしまう。そういったことを含めてですね。もちろん耳鳴りも。
田家:0点の答案用紙と札束という、社会的な批評性ですね。
鈴木:まあ、それが政治だと言い切っちゃおうと。
佐藤:いやーかっこいいです。慶一さんってずっと政治的なワードを使わずに政治を歌ってきたじゃないですか。ここで自分の中のルールを1個破ったのかなと思って。
鈴木:その通り。「政治」と歌っている歌詞は生まれてはじめてですね。
佐藤:そこに感動しちゃって。
鈴木:この曲調で最後終わって転調するとビートが4拍子になるところ、何か決めるにはこれかなと思ったんですよね。
田家:それをもう使っちゃえと。
鈴木:そう、使っちゃえって。それ以外言いようがない。歌詞を作っている途中で結論これ! って。
田家:これはかしぶちさんのドラムが使われている?
鈴木:3拍子のワルツから4拍子になるところでかしぶちくんのドラムの音を、夏秋くんが持っていて編集しています。
田家:クレジット見ていて、かしぶちズドラムループスって書いてあったので、これを見て武川さんのトランペットがちょっと違って聴こえました。
鈴木:あ、そうですか! あれはサンプリングなんですよ。2011年に『Ciao!』というアルバムがありまして、それにかしぶちが書いた「ラスト・ファンファーレ」。そのファンファーレのライブバージョン部分を抜いて貼り付けたんです。タイミングはいろいろ考えて、テンポも違うので。だから、かしぶちに対するトリビュートというか、オマージュがドラムズと一緒にファンファーレとして出てくればいいかなと。遡りますけども、「岸辺のダンス」の中にも武川が急に過去のかしぶちくんのフレーズを引き出したんですね。
佐藤:あー、モロンズランドの。
田家:おーさすが!
鈴木:その通り。
佐藤:思い出しますよね。あのフレーズ。曲調もですけど。
鈴木:「あれ? これ入れちゃっていいのかな」と思ったけど、入れた方がオマージュとしていいなって。
田家:あのアルバムのあの曲のあのフレーズって言われて、優介さんたちはすぐにパッと浮かぶんですね。
佐藤:染み付いているので、もう。
鈴木:そのへんも脅かしてやろうと思ってはめたりして、気づくかなあって。
田家:そうやって考えると、この曲はお2人にとっても特別な意味を持った曲になったんじゃないですか?
澤部:ましてや夏秋さんの曲ですからね。
鈴木:夏秋くんの曲がmoonridersのアルバムに入るのは初めてですからね。あとはコーラスがちょっと若々しく聴こえるんです。
田家:こんなに明るいんだっていうのはそれかもしれませんね。
鈴木:それがすごく大きなこのアルバムの特徴です。moonridersの持っているコーラスワークはユニゾンで歌ったりするような、そしてビブラートがかかる感じ、今回はそうじゃないんです。
田家:この曲もタイトルに意味がありそうです。10曲目「彷徨う場所がないバス停」。
鈴木:1つ事件がありまして、東京の笹塚とか幡ヶ谷あたりでバス停のベンチで暮らしていた女性がいたんです。わりとお歳をめした。その方が殺害された。それがショックで、こういうことが起きてはいけないことで、この曲の歌詞を作ってしまった。滅多にないことですね。
田家:なるほど、ジャーナルな歌なんですね。
鈴木:殺害した方も自殺してしまったんです。なんともやるせないというか、言いようのない事件です。そういうこともあって、家のない方、虐げられている方とか、そういう人をいじめるとかディスるとか、そういったことに対する私の反応ですね。
田家:東京はこうなっているんだという歌でもありますね。東京だけじゃないな、大阪もこうなっていますね。
佐藤:世界中がそうなんじゃないですか。
田家:これはみなさんで歌ってらっしゃると、曲の感じが全然変わりますね。
鈴木:いろいろな方向からコーラスが聴こえてくる。
佐藤:違う歌詞が被さってきますよね。
鈴木:言いたいことがいっぱいあるので、同じ行に違う歌詞をプラスして置いた。
佐藤:1つのメロディに違う歌詞でユニゾンしていますもんね。
鈴木:そうです。場所を動かすと聴こえてくる。リードボーカルの私がどんどん動いていって、コーラスが聴こえるようにして。
田家:その演劇感みたいなものがすごいですね。
鈴木:ミニオペラみたいなね(笑)。
田家:それはそういうイメージで?
鈴木:そういうのを作ってみたいなと前々から思っていて、実験してみました。エンディングの方にはビーチ・ボーイズ的なコーラスが入ってきますけど、あれはシンセサイザーでのボイスと混ざってます。デュッデュデューって言っているのはシンセです。
澤部:そうなんだ!
田家:11曲目の「Smile」です。詞曲が博文さんでとてもシンプルです。
鈴木:うん、3拍子のね。これはGHQがって話をしましたよね。ハイクオリティな方々が最初に選んだ曲のうちの1つですね。この「Smile」と「S.A.D.」が選ばれた。この2曲選ぶっていうのでみんな結構びっくりした。
田家:1番意外な曲っていう感じがありますもんね。
鈴木:白井は「これは選ばれると思ってたなぁ」なんて言ってましたけども。イントロダクションはなくて、曲から始まっていたんです。イントロダクションは後でつけようというアイデアがありまして、そこに怪しげなものが入っていて。私事で申し訳ないのですが、コンピューターが壊れてしまいまして、テストランニングでこのMIDIデータで、鳴らしたい音源は音を出すかって、適当にプーってひいたやつ。いいからこのまま使っちゃおうという、偶然は本当に勝利する(笑)。
田家:でも、とても肯定的で爽やかな曲のようにも聴けるんですけども、そうじゃないところがいっぱいある要素の1つですね。
鈴木:本当にそうなんです。〈やりきれない 気持ちは 墓場まで持ってゆこう〉とかね。
田家:そう。諦めきれないこともやりきれない気持ちもあるわけですからね。
鈴木:最初、私も騙されましたもん。〈smile smile smile〉って、今ニコニコしていていいのかなと思って。で、〈dream dream dream〉。夢を語るやつは私信用しませんから(笑)。
田家:それぞれの方がご自分の意思、イメージで曲をお書きになってきてる。慶一さんの方でこんな曲を書いてほしいという要望はないんですね。
鈴木:ないです。自由にみんな書いてきたので選ぶのが大変だから、今回はGHQのお二人に選んでもらいましたけど。デモテープは壊すためにあるんです。それをそのままやるんだったら、所謂民主主義ではないので、専制君主主義だからね。この通り弾いてっていうのはないんですよ。
田家:徹底した民主主義バンド。そういうバンドの在り方はずっと変わらないってことですね。
鈴木:昔からそうですね。今度はさらにそれが進んで、デモテープをぶち壊していく。それをどうするかだよね。いいねってすぐ思えるかどうか。否定されているのかなって思うことはまずない。
佐藤:現場で出てくるアイデアが重要ですよね。
鈴木:です。ライブのリハーサルも2人とも体験しているでしょうけど、どんどん変わっていく。
澤部:どんどんアイデアが出るし、すごいですよ。
田家:徹底した民主主義と徹底したクリエイティビティってことですね。
鈴木:スクラップ・アンド・ビルド。
田家:お2人にとって歳をとるってどういうふうに感じているんですか?
澤部:昔よくザ・バンドを聴いて、慶一さんが「早く老人になりたい」とおっしゃっていたのは自分の中で年齢みたいなものを考えるとき、1つの指針になる言葉ではあるんですよね。歳をとって自分がどんな音楽を作るのか楽しみになりました。
田家:moonridersは老いることを楽しんでいるバンドになるんですかね。
鈴木:楽しんでますけど、彼ら2人を見ていて怖いときありますよ(笑)。なぜかと言うと、彼らが60歳になったとき、我々はいないんだ。「Smile」って、笑いながらの即身仏みたいな感じでしょ。
澤部:すごいこと言いますねー。
鈴木:諦めと生きようとすること、死ぬことが全て同居しているのを今、感じました。というようにこのアルバムは何度も聴くと、いろいろなことが見えてくる。音的にもいろいろな音が出たり入ったりしている。ヘッドホンで聴いていると、こんな音してたんだって今思いました。
田家:家で聴いてるのと全然違って聴こえてます(笑)。
鈴木:そうなんだよね。エンジニアの福原さんもいろいろ工夫して、楽器や声が出たり入ったりしてくれっていうことに応じてくれたんです。
田家:さて、そういうアルバムがどんなふうに着地をするんだ! この曲です。12曲目「私は愚民」、詞曲が慶一さんです。
鈴木:これは実は、このアルバムの中では古い曲なんです。すごい昔じゃなくて2020年にデモテープを集めようってなったとき、最初からあって。1分だけで、サビとかはなかった。それにどんどんサビをつけていって、それでも足りなくて最後のインプロビゼーションに突入(笑)。
田家:で、入口というのは「愚民」という言葉だったんですか?
鈴木:うん。奇しくも1曲目は愚か者、あちこちに愚かがたくさんあるような。
田家:下から目線ということなんだろうなと思ったりしましたけどね。
鈴木:下から目線ですよー。下からしか見れませんわ。上から見るというのは滅多にない。だから、仲良くできる。私はこの2人に上から目線で何か言ったことはないです。
澤部:本当にないですね。
佐藤:本当にそうですね。
田家:1951年生まれと1987年生まれと1989年生まれ。
鈴木:みんな一緒! 音楽はいろいろな意見を言えるじゃない? 好きになったり、嫌いになったり、嫌いになったものが好きになったりするんです。そういう話ができるのが同じ平たいところにいる感じでやれる。
田家:この曲は4分以降がセッションになります。
鈴木:ああいう「monorail」のようなもので始まり、インプロで終わるのは偶然なんですもんね。でも、それもよかったな。
田家:今、曲が流れているときに澤部さんが慶一さんにお訊きになっていたことがありましたね。
澤部:この曲メロトロンがあって、すごい好きで。クレジットだとキーボードでまとまっていて、岡田さんが弾いたのか、慶一さんが弾いたのかが分からなくて。
鈴木:私が弾いて、メロトロンのフルートってのは発明された音だよね。所謂疑似フルートではない。
佐藤:メロトロンっていう楽器ですよね。
田家:それは何を求めてそこまでいくっていうことなんでしょうね。
鈴木:「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」のイントロとかああいうのがやりたいのと、どうしてもあの音色の幻惑的なところ、魅惑的なところに相当惹かれるね。人によって好きな音色たぶん違うでしょ。あのフルートの音が好きな人は友達になれる。
佐藤:ミュージシャンは好きだなー。
田家:ここまで自分たちの趣味に徹して、趣味をとことんやろうとしているバンドってないでしょ?
鈴木:いい歳してね(笑)。
田家:史上最強・実力派趣味趣味バンドっていう感じが(笑)。
鈴木:みなさん70歳前後ですけど、あと3~4枚作りたいですね。
田家:いいですねー! お2人にとってはこのアルバムはどういうアルバムになると?
佐藤:今の音楽って社会の話とかそういうところは目をつむって、現実逃避じゃないですけどちょっとロマンチックなことを歌うことが多いじゃないですか。今の時代、それでいいのかなと。
鈴木:「元気を出そうよ、守ってあげるよ」なんてくそくらえだからね(笑)。
田家:っていうアルバムです。でも、愚民は強いぞっていうアルバムにもなります(笑)。来週から、キャリア、ヒストリーを辿り直してみようと思うのですが。
鈴木:分かりました。2人はいなくなっちゃうんですよね。
澤部:スケジュールさえ合えば来ます(笑)。
鈴木:この3人でしゃべってると、居酒屋の奥で音楽の話をしているような感じ。
田家:じゃあ、どうなるかもお楽しみにしていただいて、今週はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました!
鈴木:どうも!
澤部:ありがとうございました!
佐藤:ありがとうございました!
アルバム『Its The moooonriders』ジャケット写真
田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」今月の特集は「moonriders」。今週はパート2。4月20日に発売になった11年振りのアルバム『Its the moooonriders』の全曲紹介、後半をお送りしました。ゲストは鈴木慶一さん、佐藤優介さん、澤部渡さん。流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。
アルバムの資料にこんなコピーがありました。「日本の音楽史に揺るぎない足跡を残し、ロック、パンク、シティポップすべてを凌駕して46年、ここからはじまる老齢ロックの夜明け」。老齢ロックって言葉を初めて見ました。嫌でも人間は歳をとるわけで、どんな若者でもそういう日が来ます。
1986年。彼らは『DONT TRUST OVER THIRTY』というアルバムを作って5年間休止しました。そして、1991年に5年振りに再活動したアルバムが、『最後の晩餐』。再結成のアルバムに『最後の晩餐』というタイトルつけた。このへんのアイロニカルな目も彼ららしいなと思います。その頃から老いとか、年齢を見ていたのではないかなというのも今日の話の中であらためて思ったことです。
ロックバンドが老人文化になるときが来る。ようやく自分たちの時代が来たと思っているのかもしれません。趣味に徹するアーティスト、例えば大滝詠一さんが趣味趣味ミュージックと言っていましたが、その何倍か輪をかけて趣味趣味なバンドがmoonridersじゃないでしょうか。過激老人実力派趣味バンドの道のりを来週から辿ってみようと思います。
<INFORMATION>
田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp
「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
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