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鈴木慶一自薦22曲で語るmoonriders、澤部渡や佐藤優介とともに46年の歴史を辿る

Rolling Stone Japan / 2022年6月22日 7時0分

moonriders

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年5月の特集は「moonriders」。パート3からパート5に渡ってゲストに鈴木慶一を迎え11年振り新アルバム『Its the moooonriders』を契機に鈴木慶一がmoonridersの楽曲を22曲自薦し、その歴史を紐解いていく。パート5は鈴木慶一に加え、パート1、パート2で登場した佐藤優介、澤部渡も再びゲストとしてトークに加わった。

田家秀樹:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れているのはmoonridersの「monorail」。4月20日に発売になった新作アルバム『Its the moooonriders』の1曲目、今週も前テーマはこの曲です。何が始まったんだろうと思わせてくれる1曲。moonridersならではの始まりですが、はっぴいえんどをお好きな方は「風をあつめて」と「monorail」を聴き比べていただけると、両者のバンドの違いがよく分かると思います。

関連記事:moonridersの多面体と多様性、鈴木慶一の自薦曲で1984年から1996年を辿る



今月2022年5月の特集はmoonriders。前半2週間は11年振り新作の全曲紹介。そして、後半の3週間は鈴木慶一さん選曲の22曲を使ったアーカイブ。今週はその最終週ですが、1週目と2週目で登場していただいた佐藤優介さんと澤部渡さん、1989年生まれ、1987年生まれも再び参加してお送りしようと思います。

鈴木慶一:私、最近のことは覚えてないので、お2人に来てもらいました(笑)。

田家:先週はファンハウスの最後のアルバム『Bizarre Music For You』で終わりました。今週は90年代後半です。またレコード会社が変わりました。キューンソニーです。このへんの時代はお若い2人も生まれていることにはなりますね。

澤部渡:そうですね。僕はまだmoonridersは聴いてないです。

佐藤優介:僕が初めて聴いたアルバムが『月面讃歌』でした。

鈴木:おお! そうか。

田家:そのときはどんなふうに思われたんですか?

佐藤:僕がライダーズを聴きたいと思ったきっかけが、慶一さんが音楽を担当された「MOTHER」というゲームで。最初は慶一さんの曲目当てみたいなところがあったんですけど、このアルバムの1曲目「Sweet Bitter Candy」、良明さんの曲ですけどめっちゃポップで、最初から大好きな曲でした。岡田さんの「幸せの場所」とかもすごくいい曲ですし、って思ったら博文さんの曲だと「ぼくは幸せだった」とか、すごい死の匂いがする。

鈴木:〈ぼくは幸せだった〉だからね(笑)。

佐藤:過去形ですからね(笑)。

田家:そういうアルバムから慶一さんが選ばれたのはこの曲です。アルバムのタイトル曲「月面讃歌」。



月面讃歌 / moonriders

田家:1998年のアルバムのタイトル曲で、アルバムの中で唯一の歌詞なし。

鈴木:歌詞も作ろうとしたんですよ。ただ、作っても意味ないんじゃないかなって、ラウンジミュージック的なサウンドに歌詞は乗せないでインストゥルメンタルの方がいい、コーラスだけの方がいい。コーラスを録音するときにもっと人数がほしい。これをトッド・ラングレン手法と言いますけどね、ライブハウスでマイクを立てて、お客さんに歌ってもらうんですよ。テンポはスタジオで録ったテンポで歌ってもらったのを録音し、「もう1回歌って下さい」って3回くらいダビングしたのをはめ込むと。高砂族のみなさんのコーラスを、台湾で録音したのと同じ方法です。ギターを小さく弾いてピッチを取ってもらう。

田家:このアルバムは唯一いろいろな人たちにアレンジを丸投げしている。

鈴木:丸投げというのは本当に画期的でもあり、さすがにメンバーから苦情満載でしたよ。

澤部:えー!

鈴木:レコード会社のディレクター、ハリー吉田さんと私と2人で会談しているときに、こういうアイデアはどうだろうっていうのが出たんです。だから、他のメンバーは知らない。それでこの人に頼もう、あの人に頼もう、しかもマルチテープを渡してボーカルのトラックだけは活かしてください。1番2番3番の順番は変えないで、あとは何してもいいですと。だから、メジャーの曲がマイナーになったりしました。

田家:えー! それはメンバーびっくりするでしょうね。

鈴木:うん、せっかく録音したのにね(笑)。

一同:(笑)。

田家:佐藤さんが初めてお聴きになったアルバムは、そういうアルバムです。

佐藤:特殊な入り方をしたんですけど、6人全員が曲を作っていて、それぞれすごい個性があって。プロデューサーに任せてはいるんですけど、さっきも言ったようなライダーズでしか言えない複数の世界があって。子どもの頃に他のもいろいろ聴いてみたいって思うようなアルバムでしたね。

鈴木:最初にリミックス作っちゃったってことなんですよ。

田家:そういう意味ではこのアルバム「月面讃歌」はある意味でのmoonriders讃歌だなとも思ったりしました。

鈴木:その後、オリジナルの我々だけで録ったdis-coveredを出しますけどね。そしたらみなさん納得してくれました(笑)。

田家:で、キューンソニーはこれ1枚で、1991年ワーナーに移籍するわけですね。17曲目、2001年12月発売のアルバム『Dire Morons TRIBUNE』から「Morons Land」。



Morons Land / moonriders

鈴木:詞曲はかしぶちくんですね。このアルバムもハリー吉田さんがレーベルを作って移籍したので、そこで出そうということです。作っている最中に9.11があり、私がちょっと恋愛的にひどいことになり、途中ですごく路線変更するんです。本来はトルビューンというか、新聞のような感じではなかったのですが、これは新聞がいいんじゃないかなと作り込みましたね。

田家:時事的なアルバムになった。

澤部:僕もわりとmoonridersの序盤に聴いたんですけど、このアルバムはすごいですよ! もっと今後未来に向けて聴かれていくアルバムなんじゃないかなって。

鈴木:ジャケットも石器時代の絵のようだったりして、裏のジャケットにみんなで書いたサインがあったりするんです。

田家:澤部さんがおっしゃるすごいっていうのはどういう?

澤部:まずは音響的にとんでもないというか。とにかく全てが極端なぐらい音響的に設計、デザインがとち狂っている。何回聴いてもどうしてこういうふうにしたんだろうというのが、聴けば聴くほど分からなくなっていく。

佐藤:すごいカオスですよね。音楽もそうですけど、ブックレットもすごい凝ってますよね。

澤部:そうそう、本当に新聞みたいになっているんですよね。

鈴木:ブックレットもほとんど私がやったんですけれども。

澤部:えー!

鈴木:もとの新聞記事はあって、それを書き換えてしまって、別のものにしちゃうと。

佐藤:歌詞以外の文字がたくさんあるんですよね。

鈴木:だからジャケットの中のインナースリーブも見ていただけると楽しめますってことなんですよ。

佐藤:当時僕は中学生でしたけど、このアルバムを聴いて、歌詞カードを読みながら聴いたりして、アルバムってこんなにすごい表現ができるんだって初めて思いました。

田家:ゲーム音楽で接した慶一さんの音楽と、こういったジャーナルなものってまた別なものでしょ?

佐藤:そうですよね。本当に肌で感じたというか、アルバムとしての音楽芸術でした。

田家:慶一さん詞曲の「Lovers Chronicles」の中には第三次世界大戦が出てきたりしている。

鈴木:そうですね。そんな話もしたりした。それは9.11があって、その後ですから。1962年のキューバ危機が頭をよぎりましたよ。

田家:2001年はバンドの25周年なわけでしょ?

鈴木:そうですね。25周年にこういう時事放談みたいなのができてしまうという、やはり社会の動きとどうしてもリンクする。リンクするというか、刺激と言ったら語弊があるかもしれないけど起きたことに対して何をしようかということですね。

田家:『ムーンライダーズの夜』もそうですけども、この『Dire Morons TRIBUNE』は本当に時代と一体になっている感じがありますね。で、ここまでが第二期ということなんでしょうかね。

鈴木:そうですね。ここまではレコード会社に所属していました。この後、MOONRIDERS Recordsというのを作ります。自分らのレーベルですね。

田家:そこで出たアルバムが次の曲ですね。2005年のアルバム『P.W Babies Paperback』から「ヤッホーヤッホーナンマイダ」。





田家:作詞が坂田明さん。

鈴木:そうです。時々とてつもない歌詞が登場するんですけども、坂田明さんの歌詞。あとは蛭子能収さん。自分らでは書けません。

佐藤:「だるい人」ですね。

鈴木:糸井重里さんの「花咲く乙女よ穴を掘れ」とかね、そういうとんでもない歌詞が出てくる(笑)。

田家:で、『P.W Babies Paperback』というのはPost War Babies、戦後生まれ。

鈴木:そうです。まあ、みんな戦後1桁なんですよ。昭和21年から29年まで。その頃はこのアルバムを作るために戦後まもなくの感じを研究したりしていましたね。

田家:澤部さんも佐藤さんもPOST WARではあるわけですけどね。

澤部:だいぶ意味合いが変わってますね。

田家:戦後生まれみたいなこの世代。moonridersは世代を超えていますけども、こういうアルバムを作っていることに対して、どう思われました?

澤部:このアルバムになると個人個人の作業がより内向きになっていったような気がして、かしぶちさんの打ち込みだとか、岡田さんの打ち込みだとか。いい意味でバンド感と個人の作業のバランスがどんどん混ぜこぜになっていった時期なんだろうなと、勝手に見ていました。

鈴木:うん。打ち込みだけじゃなくて生に差し替えていたりもするんでね。

田家:そういう個人的っていうことで言うと、白井良明さんの「夢ギドラ85」とか、「隅田川」が出てきたり、博文さんの「銅線の男」は鉄屑拾いがあったりですね(笑)

鈴木:子どもの頃は鉄屑っていうか、銅線。銅線拾っちゃ売ってましたからね。

田家:売ってましたね。「スペースエイジのバラッド」にナレーションが入っていて、これどなただろうと思ったら、慶一さんと博文さんのお父様。

鈴木:『ミステリー・ゾーン』というテレビ番組がありましてね。1年目のナレーション、ロッド・サーリング役を私の父親がやっていたんです。

田家:俳優と声優だった。

鈴木:タイトルは『未知の世界』かな。しかも、記録が残ってない。生放送。うちの親父、この頃からちょっと調子悪くなっちゃってたんでね。声を使って、記録に残しておこうかなと。もとのセリフをどこかのネットで見つけまして、それに近いような形で語ってもらう。空をいつミサイルが飛んでもおかしくないという意味も含めて、スペースエイジなんですよ。宇宙旅行というのは裏を返せばミサイルの開発なので。子どものとき、キューバ危機のとき、私の家は飛行場が近かったのでジェット機が飛ぶ間、布団にくるまりました。ミサイルに違いないと思って。

田家:羽田でジェット機が飛んで。

鈴木:それで生き残れるわけはないんだけどね(笑)。

田家:そういうアルバムがさっきおっしゃった自分たちのレーベル、MOONRIDERS RecordSから発売された。

鈴木:非常に自由にやった分、各々の個性を存分に吐き出すと。抑えの効かない感じの(笑)。1個前の『Dire Morons TRIBUNE』のカオスとはまた違う形だと思います。

田家:1989年、1987年生まれのお2人は自分たちのレーベルみたいなものに対して、もうちょっと身近な感じがあるでしょ?

澤部:もちろん、僕らもそれぞれ自分のレーベルを持ってますし。

田家:この頃に自分たちのレーベルを持ったってことに対してどう思われました?

澤部:わりとミュージシャンの方が自分でレーベルを持ち出した時期でしたよね。

鈴木:そうだね。要するにコントロールができるようになったってことです。ディストリビューターがたくさんできてきて、作ったものを頼むと%は取られますが、アルバムを出せる。メジャーとマイナーの違いがぼやけてくる。

田家:制作意欲がより増したんだろうなというのも、1年後に新作が出ました。慶一さんが選ばれた19曲目2006年10月発売のアルバム『MOON OVER the ROSEBUD』から「Cool Dynamo, Right on」。





田家:2年続けての発売になった30周年のアルバム。

鈴木:そうですね。このときは日比谷野音でライブをやったりしました。「Cool Dynamo, Right on」は「ダイナマイトとクールガイ」の続編なんですよ。続編として1つ作ってみようと。あと、サウンド的には今日バーズのTシャツを着てますけど、バーズのサウンドができたかな。「霧の8マイル」とか「So You Want to Be a Rock n Roll Star」とかああいうサウンド。もしくはバッファロー・スプリングフィールド。2本のギターイントロ。これが上手くできたかなといううれしさはありました。

田家:バーズとかはお2人はどんなふうに聴いてらっしゃる?

佐藤:それこそ慶一さんとかから教えてもらいました。いろいろな雑誌のインタビューとかで答えているバンドをチェックして聴いてみるというのが多かったですね。

田家:サイケデリックフォークロックみたいな。

佐藤:イントロ大好きですね。

鈴木:この頃、岡田くんはギターリフまで考えてきましたから、イントロは白井が考えたのか、岡田くんが考えたのかちょっと記憶が定かではない。

田家:この年は30周年ということもあったんでしょうが、ライブもいっぱいやってますね。北海道のライジングサンとか、四国のモンスターバッシュ、野外イベント。その中にご自分たちの野音フェスもあった。周りの評価とか、見られ方が変わってきたなという感じはありましたか。

鈴木:そうですね。要するにメジャーじゃなくてもレコードは出る。そして、宣伝をするときに昔からの付き合いのある方が呼んでくれる。そういったことが多々ありました。ということはレーベルを作って、このままやっていけるなと。売れ行き次第で次のアルバム資金にする(笑)。

田家:かしぶちさんがお書きになった「Serenade and Sarabande」の歌詞の”僕らのことをみんな知っているよね”って感じになっていた。

鈴木:それは宣言でしょうね。

田家:にも関わらずは変かな。やっぱりカルトな要素はちゃんとあるという。

鈴木:ありますねー。本当に。

田家:アルバムの後半2曲の「Vintage wine Spirits, and Roses」、「When This Grateful War is Ended」はそういう曲ですね。

鈴木:うん。このワインの曲はイーグルスの”1969年からスピリットはない”という歌詞にヒントを得ていますけども、イーグルスは私あまり聴かないですけどね(笑)。

田家:カルトって意識はそういう中でまだお持ちになっていたんですか?

鈴木:カルト的バンドとは21世紀に入ってから言われ出しましたね。

田家:お2人はどうですか?

澤部:すごく難しいところでカルトというよりはポップだなと思うんですよね。実は所謂カルトバンドとは思ってなかったです。

田家:それがmoonridersの幅の広さでもあり、メジャー感でもある。でも、当時のシーンではカルトに見えていた。

鈴木:タイトル『MOON OVER the ROSEBUD』っていうのがディッティーボップスっていう女性2人のグループがありまして、MOON OVER THE FREEWAYってタイトルだったんです。それをいただき、ROSEBUDはオーソン・ウェルズの映画からいただいて。市民ケーンですね。

田家:そういうところはやっぱりカルトかもしれないですね(笑)。20曲目です。2009年のアルバム『Tokyo7』から「6つの来し方行く末」。





田家:詞が慶一さんで曲が岡田さん。

鈴木:この曲を聴いたときに遡れば「黒いシェパード」って曲を聴いたときを思い出し、これはなんだか非常に奥深いものを作らないといけないなと思いました。この曲はずっと繰り返しなので、1人ずつ1番ずつ歌って、生まれ月順にいこうと。私が8月生まれで、次がかしぶちくんか。

田家:11月。

鈴木:そして、武川だ。

田家:はい、12月。

鈴木:それで白井良明だ。

田家:2月。

鈴木:そして岡田くんで鈴木博文と。

田家:5月。

鈴木:そういう歌いまわしで、その人をじっくり観察してきてるわけで。この人こういう人だよなあって似合うような歌詞を作ってみましたね。これを森山良子さんが気に入ってカバーしてくれました。

田家:東京をタイトルにしている、東京のバンドなんだよという。

鈴木:東京をテーマにしようというのは、その前に出たミニアルバム。

澤部:『Here we goround HQD』。

鈴木:あのへんで東京をテーマにし出したんですよね。で、一気に行ってしまおうと。いろいろ東京的なバンドとは言われましたが、どちらかと言えばエッジに住んでいたり、東の方に住んでいたりとか。

田家:まだはっぴいえんどが(笑)。

鈴木:それをちょっと1回出しちゃってみようと。

田家:お2人はmoonridersに対して東京のバンドという意識は思われたことありますか?

澤部:僕はあります。はっぴいえんどが山手線の内側だったら、moonridersは外側。

鈴木:おっしゃる通りだ(笑)。

田家:佐藤さんは?

佐藤:僕は生まれがド田舎だったので、東京なんて全然想像もつかない場所で。

鈴木:福島か。

佐藤:はい。でも2007~2008年ぐらいに上京してきて、東京で聴いた初めてのアルバムが『Tokyo7』でしたね。

鈴木:それはよくできた話ですね(笑)。

佐藤:でも、このアルバム結構プログラミングとかエディットがちょっと減って、バンドの生音の割合が増えましたよね。それがすごい、「あ、ここでこういうサウンドが前面に来るんだ」って。

鈴木:時々そういうことがあるんですね。例えば、ファンハウス時代のカバーアルバム『BYG - High School Basement1』とかは生音ばかり使ってます。かしぶちくんと鈴木博文と白井良明はアートポートというユニットをやってまして、その3人でやるとおもしろかったりするんです。生音重視っていうときが10年に一度ぐらい訪れる。

田家:このアルバム『Tokyo7』はとてもポジティブなアルバムだなとも思ったんですよね。誰もが明日を掲げて、僕らは繋いで広がるとか、それぞれの中には叩き割っても愛は壊れないとか。グッドメモリーは結んで開いて手を打とうとかですね。

鈴木:歌詞においてはやはりみなさん経年劣化ではなくて、経年進化みたいなものもあったんじゃないですか。

田家:うん、深くなる深化でもあるでしょうしね。

鈴木:もう50代ですしね。そういったところもあったと思いますよ。歌詞に対してあまり「ここ直した方がいいんじゃない?」っていうのがなくなったんです。「これでいいんじゃない?」っていうことになりました。

田家:そういうことを本当にみなさん自然にお書きになったアルバム。バンドが無期限活動休止を宣言したのがこのアルバムの2年後2011年でした。慶一さんが選ばれた21曲目、2011年12月のアルバム『Ciao!』から「折れた矢」。





澤部:これすごく意外な選曲ですよね。

鈴木:毎回この番組の頭に「monorail」がかかっているので、その感じは既にここにあったかなあ。

田家:このアルバムは1人2曲の12曲入りアルバムで、休止が決まった後にお作りになった?

鈴木:うーん、作る前かな。このアルバムにおいて最大のコンセプトは活動休止なんです。みんなそういう曲を作ってきたということで。

澤部:「ラスト・ファンファーレ」とかね。

鈴木:突然活動休止って言ったわけでもないんですけど、非常に大きな地震があったり。ちょうど『火の玉ボーイ』から35周年なんですよ。再現するライブをやろうとしたら延期になってしまったり。小さな灯の玉フリーギグをやろうと、無料でみんなが集まってくださいとかやって。やっぱりすごく大きなことがあったと思うんです。覚えているのがメンバーから電話がかかってきて、「こんな光景を見たら、音楽ってやる意味があるのかな」そういう意見もあったんです。

田家:休止の発表が2011年11月11日で、そのときアルバムはほとんど出来上がっていたと。

鈴木:はい。もう休止を決めて、発表は11月11日11時11分にしようと。たまたま満月でした(笑)。

田家:そのときのこと覚えてらっしゃいます?

澤部:覚えています。やっぱり「あ、moonridersが止まるんだ!」ってすごいショックでしたよ。

鈴木:その止まるというニュースをいろいろなところへ事前に流したわけです。みんな口が止まりました。「え、ここまでやってきて!?」って。いろいろな方々がいて、疲れたんでしょうねとか。疲れたっていうのもありますけどね。大きな地震があって、音楽の持つ意味というのを自分で問い正した人が何人かいたんです。

田家:お2人は震災のときどう思われました?

澤部:僕らはまだその頃若かったですし、ましてや僕なんかより優介の方がもっぱら。

佐藤:やっぱりすごいショックでした。音楽の力ってなんだろうみたいな。

鈴木:たぶん時間が経ったときに音楽が世の中に漂えば、それは何かになるんでしょうね。そういうことが起きた瞬間というのは、また別のことを考えてしまいますから。

田家:オロオロして涙を流すしかなかったですもんね。

鈴木:そうですね。それといろいろアルバムを作って、アルバムごとにコンセプチュアルなことを考えてきたけど、結構出し切ったかなというのもあります。

澤部:究極ですもんね。活動休止がテーマになるというのは。

鈴木:そう。で、『Ciao!』だから(笑)。

田家:解散ではなくて、無期限休止にしたのは意味がある?

鈴木:このバンドを解散する意識はなかったです。ただ休んだ方がいいなと。体も含めて、考え方も含めて、だいぶバラけました。バラけたところで、一緒にやっていくのにはちょっと休んだ方がいいかなと。

田家:それから11年が経ちました。

鈴木:一緒にやろうってことですよ。

田家:慶一さんが選ばれた22曲目『Its the moooonriders』から「S.A.D」。





田家:この曲を選ばれています。関わったお2人もいらっしゃいます。

鈴木:この曲は武川の曲ですけども、最後に登場ですね。この曲は武川らしさ満載なんです。優介くんも澤部くんも参加していますけども。言ってみれば適当なメロディを固定していくと言うかな。適当ではないと思うんだけど。

佐藤:いや、めっちゃ適当でしたよ(笑)。

鈴木:でも2回同じように歌うんでしょ?

佐藤:そうですね。

鈴木:それがすごいね(笑)。適当なものに対するアレンジ追求の楽しさ。適当だからこそですよ。がっちり構築されたものに対してアレンジするには、なかなか入りにくいところもある。そういう曲も入ってますけど、非常に自由度が高い。武川は鎌倉自遊人なんですね(笑)。

田家:『Its the moooonriders』を聴いた感想の1つに、みんなバンドが楽しいんだろうなと思ったんです。

鈴木:楽しかったです。また生音を使うってことで、ほとんど生ドラムですからね。

田家:そのアルバムにお2人が参加されているんですから。

鈴木:もっと楽しくやろうよって、2人来ていただいているし。

田家:お2人が来られたことでこのアルバムができた、もう1回やろうとなったことは?

鈴木:ありますよ。それはやっぱり長年一緒にやっているメンバーだけだと、ともするとギクシャクする場合もある。若い人、他人が入ってくるとちょっとかっこつけなきゃなって(笑)。

田家:慶一さんが1週目にあと3枚ぐらいアルバムを作りたいとおっしゃられていましたよね。お2人も含めて、今後のmoonridersってことで話を終わりましょうか。

佐藤:早く作りましょう。

澤部:いや、本当に。

鈴木:やりましょうか。

澤部:「マニエラ」と「青空」ぐらいの関係性のものが、今だったら作れそうな気がしますね。

鈴木:気がしますね。じゃあ、来月からやりますか。

澤部:おー楽しみ!

鈴木:まだ言えませんけど、何個かアイデアがあるんです。このメンバーでこれをやったらおもしろいんじゃないかというのがね。

田家:その作品ができたときにまたお話を聞かせてください。

鈴木:ぜひ呼んでいただければ。

田家:これから黄金時代が来ます。

鈴木:夜明けを迎えたばかりだからね。

田家:そう! 老齢ロックの夜明けですからね。

鈴木:そうですよー。

田家:ありがとうございました!


左から田家秀樹、佐藤優介、鈴木慶一、澤部渡



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」4月20日に11年振りのアルバム『Its the moooonriders』を発売したmoonrides。前半2週はアルバムの全曲紹介。そして、後半3週は鈴木慶一さん自薦22曲で辿る46年。今週は1998年から2022年までをお送りしました。流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。



新作アルバムの全曲紹介と慶一さん自薦22曲によりアーカイブヒストリー。最初のアルバム全曲紹介と最後を若い澤部渡さんと佐藤優介さんをお迎えして締められたというのが、時の流れを超えている、世代を超えているバンドの今の形をお見せすることができたかなと思ったりもしています。史上最強趣味的職人バンドと申し上げましたが、オルタナティブジャイアンツ。所謂、流行りものの中では抜け落ちている、誰もが見ようとしなかった、避けてきたようなこと。それがこのバンドの中にはいっぱい詰まっております。そして、6人6通りの選曲やストーリーがある。慶一さんが最初に他のメンバーが選んだら、全然違う曲になる、全然違うストーリーになるとおっしゃっていましたが、そうなると思いますね。こんなに語りがいのあるバンドは他にあるだろうかというのが今月の感想です。

でも、それができるだけの知識というのもまた必要になるわけで、これは一筋縄ではいきません。彼らのアルバムの中にある膨大な情報と愛情の一端が伝わればと思いながらの最終週。そういう意味では1番勉強させていただいた、楽しませていただいたというのが私なのではないかと思います。やっと見えた全貌、見えかけた全貌と言うんでしょうか。日本の音楽史に残る、そして日本が誇るバンド。これがバンドなんだというバンドでもあります。もっと早くにやりたかった特集だったのですが、オリジナルアルバムがなかなか出なかったので、この時期になりました。やっと間に合ったという感じでした。


<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

OFFICIAL WEBSITE : https://cocolo.jp/
OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765
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