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小田和正、最新作『early summer 2022』を評論家・小貫信昭と語る

Rolling Stone Japan / 2022年6月24日 11時30分

小田和正

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年6月の特集は「小田和正」。2022年6月15日に発売になる新アルバム『early summer 2022』を中心に、小田和正の歴史を辿る。パート1とパート2は新アルバムの全曲紹介。パート1はゲストに評論家・小貫信昭迎え、小田和正の音楽を紐解いていく。

田家秀樹:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れているのは小田和正さんの「この日のこと」。6月15日に発売になるアルバム『early summer 2022』に入っている中からお聴きいただいております。TBSの音楽番組『クリスマスの約束』のために書き下ろされた楽曲で、初めてCD化されました。今月の前テーマはこの曲です。

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この日のこと / 小田和正

今月2022年6月の特集は「小田和正」。オフ・コースとしてのデビューが1970年。デビューアルバム『僕の贈りもの』が出たのが1973年。ソロデビューしたのが1986年でオフ・コースを1989年に解散して、ソロとして活動しております。不遇の70年代から今日まで、シーンの最前線を牽引してきた日本を代表するシンガーソングライター。1947年生まれ、2000年代以降の活動、アルバムやツアーでは最年長記録が必ずついておりまして、毎回それを更新しております。

6月3日から今回のツアーが始まっているのですが、これも最年長アリーナツアー。新作アルバム『early summer 2022』は8年振りのオリジナルです。今月はこのアルバムを中心に小田さんを語っていこうという1ヶ月です。今週と来週はアルバムの全曲紹介。今週は1週目、小田さんに1番近しい、たくさんインタビューをしてきた評論家・小貫信昭さんの登場です。1957年生まれ、10歳下です。こんばんは、よろしくお願いします。

小貫信昭:お願いします! 歳も言うんですか(笑)。

田家:やっぱり世代を超えているということで。小貫さんは小田さんのファンクラブの会報に毎回長文の文章をお書きになっているので、ファンの方は名前をずっと前から知っている。

小貫:毎回じゃないですよ。年に何回かぐらい。レギュラーで書いているわけではないんですけどね。新しい曲ができたときには、もれなく書いている感じです。

田家:ラジオでこうやって小田さんのことを語る機会は?

小貫:ないです。小田さんを言葉で語るっていうのは初めてじゃないですか。

田家:「この日のこと」は『クリスマスの約束』の書き下ろしテーマとなったわけですが、もちろん『クリスマスの約束』も毎回ご覧になっているわけでしょ?

小貫:そうですね。この曲は番組が始まった最初に作って、番組のゲストとは別にたしか20組ぐらいのアーティストと一緒に録音したんです。でも、番組のテーマなんで、小田さんの作品としては音源化されていなかったのが今回いよいよという感じで。

田家:アルバムについてどう思ったのかということを、今日は7曲しかご紹介できないのですが、いろいろお聞きしていこうと思います。まずこの曲からお聴きいただきます。アルバム8曲目に入っています。「この日のこと」。



この日のこと / 小田和正

田家:せめてこの歌だけは消えていかないようにというのはこの番組のマインドでもあります。

小貫:あの番組の趣旨ともすごく重なるところがあって、1回目というのが……。

田家:誰もゲストが来なくて、お手紙だけ読んだとき。

小貫:悲惨な状況になりました。でも、この歌がやがてあの番組にいろいろなゲストが来てくれるようになって、まるで未来の脚本のような役割を果たしたんだよなってことを、小田さんもおっしゃっていたと思うんですけども。

田家:作ったときはそんなに番組が長く続くと思ってました?

小貫:普通やらないですよね。企画が完全に否定されたようなものじゃないですか。それを来ないんだったら、俺が歌うって言ってやってみたら大好評だったという。

田家:拍手が入っているのは会場でのお客さんの拍手なんでしょ?

小貫:これは番組のライブレコーディング音源も使いつつ、いろいろと。ライブ音源そのままではないみたいなんですけども。





田家:流れているのはアルバム1曲目の「風を待って」です。明治安田生命の企業CMで、テレビ朝日系のドラマ『遺留捜査』の主題歌ですね。まずは新作全体の感想をお聞きしていいですか?

小貫:アルバムを目指してコンセプトを立てて作ったものではないと思うので、アルバムの印象は、入っている9曲それぞれの印象という感じなのと。あと、アルバムタイトルも映画タイトルみたいな感じがあるじゃないですか。情感を込めてつけたというより、笑わせているぐらいのドライな感じみたいですよ。約半分は最近作った曲だと思うんですけど、なかなかコロナで活動ができない中、そのときどきの気持ちを切り取っている部分があるので、スナップ写真に日付が入る機能があるじゃないですか。そんな感じなのかなと。

田家:今回のアルバムは2014年の『小田日和』以来で、8年という時間は小田さんのキャリアの中で1番空いたんじゃないですか。

小貫:4曲入りが出ているじゃないですか。あのときにもう5曲作っていたらアルバムになっていたかもみたいな想像はみんなしますよね。真相は分からないんですけども。

田家:この間、前作のアルバムから今回までの間にツアーが5回あった。『本日、小田日和』のツアーが2014年、2015年。『秘密の町へ』が2016年、『アンコール』2018年、2019年。アンコールのツアーが終わったときにもうアルバムは出ないんじゃないかと思ったことはなかったですか?

小貫:『小田日和』のとき、たしか最後から2番目のアルバムになるかもしれないっておっしゃっていたんですけど、最後から2番目ということで今回が最後かなとも思うのですが、なるかもしれないですね。

田家:それはありますね。そういうアルバムの1曲目がこの曲ですね。小田さんにとって”風”というのはどういうものなんでしょう。

小貫:だいぶ前に聞いたので今は違うかもしれないんですけど、継続していくものの象徴としてという言葉を使っているようなことを。

田家:継続していくものの象徴ね。

小貫:この歌の場合はコロナと言うのもあれですけど、風も萎えてしまった状況からまた動き出すときの意味合いということで、先程の継続とも繋がる感じで使っていると思っているんですけども、たくさん出てきますよね。

田家:多いですよね。そういう意味でコロナの事態が収まって、それを待ってということもあってのアルバムの1曲目なんでしょうね。

小貫:本人は大々的にそういうことをおっしゃらないかもしれないんですけど、我々はそういう想いは感じますよね。





田家:アルバム2曲目「坂道を上って」。映画『坂道のアポロン』主題歌ですね。

小貫:これは小田さん自身が中学高校と通っていた学校が、本当に坂の上というか丘の上にあって、毎日最寄り駅から坂道を上がっていった。自分の体験と、この映画も生徒が坂を上がっているシーンもあるんですけど。そういう意味で自分の中学高校時代と風景が重なり合うということで、感情移入をしやすかったというようなことは言ってらっしゃったと思います。

田家:小貫さんはオフ・コース、小田さんに初めて出会ったのはいつになるんでしたっけ?

小貫:5人の最後の方、本格的には4人になってからじゃないですか。

田家:どんなふうに出会ったという?

小貫:最初はコンサートを観て、「文章を書かないか?」って言われて、それが伝説のオフ・コース10日間コンサートという。

田家:1982年の。

小貫:それを書いたら、その後も依頼が来たという感じなんですけども。

田家:当時からご覧になっていて、小田さんの活動、オフ・コースも含めて坂道がずっとあったのではないかなと思ったりもしますけども。上らなければいけないことがたくさんあった。70年代の坂道とか、80年代の坂道とか、きっと坂が違ったんだろうなと。

小貫:ある種、コンサートツアーとかもまだツアーと言っても点で行っていた時代で。

田家:よく回れない時代ね。

小貫:自分たちの照明を雇って、ツアーの体制を整えた時期とかいろいろありましたよね。わりとポジティブな考え方なんだろうと思うけど、ヘーゲルの弁証法的な感じですよ。

田家:AがあってBがあって。

小貫:その両方を合わせたCがあって、CがまたAになる。頑張っていればだんだん良くなっていくだろうという考え方だから続いているんだろうと思います。何の話をしているのだか分からない(笑)。

田家:何を話しているんだろう僕らは(笑)。思春期のことは映画があったりしないと、なかなか素直に書けないかもしれないですね。何も分かってなかった僕らみたいなことはね。

小貫:映画原作の人が常に小田さんとかオフ・コースの音楽を聴きながら仕事をされている方みたいで、おそらくこの物語にも小田さんの感覚が入っていたのかなと。

田家:なるほどね。「風の坂道」という名曲もありましたもんね。今回のツアーは今までのツアーとは違うハードルがあったりするんだろうと思ったりするんですけど。

小貫:でもやっぱり年齢なりのセットリストとかにしていくんじゃないですかね。





田家:ツアーはたいていの方がこれからご覧になるわけですからね。先日、土曜、日曜と初日が行われました。アルバム3曲目「小さな風景」。この曲もテレビ朝日系の連続ドラマ『遺留捜査』の主題歌でした。

小貫:「小さな風景」ってどういうことなんだろうなと思いながら聴いてました。

田家:どういうことなんだろうと思われたんですか。

小貫:心象風景、なんでそれを小さく感じたんだろうなみたいな。聴き手にいろいろな想像をさせる曲だと思いますけどね。

田家:小貫さんはずっとライブをご覧になっていて、小さいライブはどんなライブがあるんですか? 「クリスマスの約束」はその中で小さい部類に入るのかもしれないですけど

小貫:何年か前、アジアツアーに行く前かな、ライブハウスでの壮行ライブみたいな。そういうのでは観てますけどね、小さいライブって。

田家:そういうところでのライブと東京ドーム、横浜アリーナ、大会場でやるライブと違うところは感じますか?

小貫:小田さんのコンサートスタイルって遠くのお客さんに対応するために、花道はできてきたものだと思うので。

田家:歌う場所が8箇所ぐらいあるという。

小貫:ええ。隅々までみんなが笑顔で楽しく笑っている姿を小田さん自身も近くで確認したいというのもあるんじゃないですかね。広いところでやったからと言って、かつて狭いところでやっていた気持ちを決して忘れたわけではないんだと、体を張ってちゃんと証明しているということなんじゃないんですかね。

田家:曲を聴きながらファンクラブの会報誌をずっとご覧になっていましたが。

小貫:ええ、自分が書いたところを。小田さんはこの「小さな風景」をリリースした頃にできるだけ言葉数を少なくと始めから考えて、短く印象的な歌にしたかったと。小田さんはレトリックで詞をあまり書かないので、まるで何々の5月の空のようにとか書かないから、言葉数は本当に少なくて無駄のない詞が多いですよね。

田家:どんどんそうなっている感じがありますね。

小貫:そうですね。さすが「言葉にできない」の作者だなって感じがします(笑)。





田家:流れているのは4曲目「この道」をです。

小貫:もっとフローなバージョンも試したけど、この感じになったって書いてますね(笑)。でもバラードって難しいじゃないですか。歌詞はすごくエッジの効いた言葉を混ぜて書いている気がしますけど。

田家:流れている「この道を」の中で〈誇りと正義のために戦う自分がいるはず〉って、これが小田さんの一面だなと思ったりもしたんです。

小貫:そうですね。会報に書いてあるところによるとですね(笑)。

田家:はいはい、ご自分でお書きになった文(笑)。

小貫:さすがに普段から、俺は誇りと正義のために日々戦っているんだと言うと、言葉が強すぎるので。この言葉が出てきたのは『ブラックペアン』というドラマが大学病院の不正と戦う主人公というストーリーなので、このへんはドラマに寄せた結果、こういう強い言葉になっているんじゃないかと、会報に私が書いております(笑)。

田家:TBS系日曜劇場のドラマ『ブラックペアン』の主題歌ですね。なかなかそういう言葉は歌いにくいけれども、そういう気持ちで生きてきた人なんだろうなと思ったりもしますね。それが小田和正なんだって思い始めたのはどのへんからでした? 最初からそういう人だと思っていました?

小貫:それはオフ・コースのときからそうだったと思いますけど、オフ・コースバンドなので他のメンバーもいらっしゃいますし、バンドの一員として喋っていたのが、ソロになってからは自分のことですからね。

田家:気恥ずかしくなるようなことを聞いてしまうんですけど、求道者という言葉は小田さんに当てはまると思います?

小貫:ストイックな感じとは違うんじゃないですかね。求道者って周りを放っておけないという感じよりも自分が率先して、ときには手本を示したりする人だと思うんです。でも「この道を」ってすごい好きですね。歌詞細かいところ、晴れ渡るからカメラがパンするみたいにわーっと。

田家:一言で景色が変わるみたいなね。

小貫:あの瞬間の心地よさ、ゾワゾワする感じとか。

田家:小貫さんの中での好きな小田さんという感じなんですかね。





田家:アルバム5曲目です。「so far so good」。NHKのドラマ10『正直不動産』の主題歌ですね。小貫さんが書いた小田さん関連の本は3冊あるんでしょ? 『YES-NO小田和正ヒストリー』、『小田和正ドキュメント1998-2011』、『小田和正インタビュー たしかなこと』。それぞれの本でいろいろな発見があったり、あらためて思ったことがあったり、この本を書いてよかったなと思ったりというのはどんなことですか?

小貫:究極のインタビュー集みたいな感じで、全共闘世代としてとか、オフ・コースとか、自分の声についてとか、テーマもいろいろカラフルに触れられたので。あのインタビュー集はなかなかよくできたのではないかなと。ドキュメンタリーは活動なので、偏った見方にならないようにということで、スタッフの方々にも協力してもらって、もちろんご本人のお話も交えて書いた感じですね。

田家:『小田和正ドキュメント1998-2011』を拝見して、あまりメディアでは流れなかった交通事故のことがあったでしょ。あれをかなり詳しくお書きになっていたので。

小貫:そうですね。ご本人も時間が経ったからなのか、振り返ってくださってましたけども。

田家:やっぱりあの事故で活動とか、いろいろな考え方とか以前と以後ぐらいに変わったと思われます?

小貫:そうだと思うんですけど、ガラッと変わったということではないんじゃないんですかね。当然、作品を作るにしても、より1作1作みたいな気持ちはあったんだろうなとは思うんですけど。よく言う神様からもらった2番目の命なんだどうのこうのって言い方があるじゃない? そういう感じじゃないと思うんですよね(笑)。

田家:この「so far so good」は、まさに『early summer 2022』の歌という感じで。この曲はどういうふうに思われたんですか?

小貫:「ラブ・ストーリーは突然に」にちょっと似てるなと。小田さんがアッパーでポップな曲を意識して書いたものじゃないですかね。

田家:ちゃんとライブを想定しながら。

小貫:ドラマ情報とか、原作コミックも読んで書いているみたいですけど、コメディなんだということが小田さんの頭の中にあったみたいで。そのへんがこういうポップな感じのものに辿りつく上で影響を与えたのかなと思います。





田家:アルバムの6曲目ですね「ナカマ」。テレビ東京系の『ガイアの夜明け』主題歌で、これは6月3日から放送されているということで、ホヤホヤの新曲です。

小貫:番組がプロジェクトを組んで、新たなことに挑戦していく人のドキュメンタリー的なものなので、小田さんがこの曲に関してコメントを出してらっしゃったのは、団体戦でやることの大切さとか、自分自身もコンサートをやるときに多くのスタッフとの団体戦なんでというようなことをコメントされています。だから、番組にはシンパシーを感じて書いた曲なんじゃないんですかね。

田家:団体戦ということで言うと、映画監督というのもまさに団体戦のリーダーなわけでしょ。

小貫:そうでしょうね。

田家:映画を作っているときに現場に行かれたりもしたんですか?

小貫:1回ちらっと覗きましたけど、映画の世界は何をどうやっているんだか分からないなと。

田家:やっぱりね。そういう世界に入っているわけですから、当然音楽のときとは違うハードルがあったりしたんでしょうからね。

小貫:そうですね。例えば、「通行人の役がどういう時計をはめているんですか? というところまで小道具の人が監督に確認しに来るから大変なんだよ」って言っていたのを思い出しました。監督っていうのはどういうものなのか、やってみると分かる。

田家:リーダーシップがとてもある人なんだと。

小貫:人に命令するのではなくて、率先して自分が手本を示すリーダー像なんじゃないかなと思うんですけどね。

田家:日本のそういう音楽シーンの中の1つの手本になってやろうみたいな気はあるから、『クリスマスの約束』みたいな番組も続くんでしょうしね。

小貫:やっぱり音楽を丁寧に作ると時間がかかるし、それをテレビ番組でやるのは、ほぼ不可能だと思うんですけど、あの番組は有名アーティストがものすごい時間のリハーサルをやっているから、全体が素晴らしい表現になるわけです。曲調は全然違うんですけど、「フラッグ」って曲があるじゃないですか。「フラッグパート2」的な歌詞の内容はそんな感じがするんです。

田家:アルバムは全9曲入りで、今日は7曲お聴きいただいたわけで、7曲目の「こんど、君と」と9曲目の「会いに行く」は来週になるのですが、この2曲についてはどんなふうに?

小貫:ツアータイトルとも関わっている、やっとみんなと会えるというか、いつかではなくて今度になっているところがすごく重要だと思います。

田家:「こんど、君と」と「会いに行く」は両方ともツアーに関わっていると。あらためてこのアルバムの小田さん。冒頭で最後のアルバムになるかもしれない考え方もあるというふうに言われていました。

小貫:まあ、アルバムにこだわらないということだと思うんですけどね。かつての12曲入りアルバムを作るってことだけが作品集じゃないという、もっと柔らかい考え方に。曲はこれからもずっと作り続けていかれると思うんですけど。思うというか、そうだと思うんです。それがどのようにまとまってみんなのもとに届くかというのは、そのときのタイミングとか、様々あると思います。

田家:今回のツアーについてはどんなツアーになればいいなと、どんなふうに期待しています?

小貫:ツアーは最後まで完走することが大事だと思うので、マラソンと一緒なんじゃないですか。

田家:ツアーの完走を祈りながら終わりましょうか。ありがとうございました。

小貫:ありがとうございました!


アルバム『early summer 2022』ジャケット写真



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」6月15日に8年振りのアルバム『early summer 2022』を発売する小田和正さんの特集。今週はパート1。小田さんのことをたくさん何度もインタビューしている。そして、小田さんについての本を3冊書いている。1番親しい評論家と言っていいでしょうね。小貫信昭をゲストにお送りしました。アルバムは全9曲入りで、今日ご紹介できたのが7曲。残りの2曲は来週ということになります。流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさん「静かな伝説」です。



アルバムを聴いた第一印象、感想が「あーしみじみしていているなあ」ということと、「もう全く無駄がないな」という2点でしたね。言葉の間とか、演奏の空気、タイミング、いろいろなこともあって全体のそういう感じが出てくるんでしょうけども、どこまで意図して作ったのかは分からないのですが、本当にゆったりしていて、しみじみしていて、気持ちよくなれてじっくりじんわりするアルバムだなと思ったんです。

いきものがかりの水野良樹さんは、『クリスマスの約束』のレギュラーメンバーですけども、水野さんと小田さんが「HIROBA」というプロジェクトを組んだことがあって、曲のプロデュースを小田さんにお願いした。そのときの話を水野さんがしているのをファンクラブの会報で読んだのかな。一緒にやったときに小田さんの作り方の丁寧さに衝撃を受けたという話をしていました。一行とか一言が歌い方、そのニュアンスでこんなに曲が変わるのかというのはあらためて教えられて、自分の作り方はなんだったんだろうと思わされたというエピソードがありました。今回のアルバムも計算の末の産物ではないでしょうか。

つまり、さっき小貫さんが言っていた”青空”という言葉をどのくらいの間でどのくらいの強弱で、どの音の間にそれを乗せればいいのか、全部計算して作っているんだと思うのですが、それを語りませんね。特に今回のアルバムは語らないアルバムにはなっているわけですけれども、そういう到達点をあらためて感じられるアルバムなのではないかと思います。ツアー中に75歳になるんですよ。ステージを走ったりすることがイメージになっていますが、それがどのくらいハードなことかは同世代としてよく分かります。これが最後のアルバムになることはないんでしょうが、最後のツアーになることがあったりするかなと思いながら今月をお送りしようと思います。小貫さんは一番近しい評論家でもあるわけですが、来週は1番古い制作者、フジパシフィックミュージックの代表取締役会長朝妻一郎さんをゲストにお送りしようと思います。


<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

OFFICIAL WEBSITE : https://cocolo.jp/
OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765
OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO
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