BLACKPINK・ROSÉが語る、傷つきやすさが持つ力とBLACKPINKが家族である理由
Rolling Stone Japan / 2022年6月26日 18時15分
「(ROSÉという)強いペルソナが姿を現す時、普段の自分とはまったく違うキャラクターを出すことができるのは楽しいです」と、ROSÉは語る。
生まれてからいままで、ROSÉは異なるペルソナを使い分けてきた。ニュージーランドで韓国人の家庭に生まれたロザンヌ・チェヨン・パクは、幼少期の大半をオーストラリアで過ごした。彼女は、自身の幼少期を普通のティーンエイジャーとアイドルというふたつの顔を持つハンナ・モンタナ(訳注:マイリー・サイラス主演のドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』のヒロイン)になぞらえる。毎週日曜は、ほかの移民たちと一緒に韓国人の”チェヨン”として教会に通った。平日は、オーストラリア人の”ロザンヌ”として学校に行った。BLACKPINKというペルソナの裏側にいる女性について、ROSÉは次のように話す。「実際は、あまり活動的ではありません。とても静かな生活を送っています。母が家に来る……それぐらいですね」
ROSÉはいま、ごく一部の人しか知らない現実的な姿と世間のイメージを結びつけようとしている。そんなROSÉは、ギターも弾きこなし、ファンの間で「ゴールデンボイス」と絶賛される声を持つ高音が得意なシンガーであり、2021年にリリースされた「On The Ground」(ソロデビュー・シングルアルバム「R」からの先行リリース)によってK-POPソロアーティストとして初めて米ビルボードのGlobal 200とGlobal 200 Excl. U.S.の両チャートの1位を獲得した。「両方の世界を真ん中で結びつけようとしています」と、韓国の大手芸能事務所・YGエンターテインメントの本社にあるフォー専門のレストランでベトナム風チャーハンをおいしそうに頬ばりながら彼女は語る。「(ROSÉという)強いペルソナが姿を現す時——普段の自分とはまったく違うキャラクターを出すことができるのは楽しいです」
※先月、米ローリングストーン誌6月号の表紙をBLACKPINKが飾ったことを記念して、各メンバーをフィーチャーしたデジタルカバーストーリーを数日にわたって掲載した。日本版も米独占インタビューの完全翻訳版を収録した「Rolling Stone Japan vol.19」の発売を記念し、このデジタル版のインタビューを完全翻訳し紹介していく。
ーーパンデミックによって何もかもがストップしてしまった時は、どんな気分でしたか?
もう最悪でした。いままでの人生で、あんなに休んだことはありません。最悪の時期でした。一時は、体調を崩しました。ストレスが身体に影響を与えることってありますよね。帯状疱疹にかかってしまったんです。仕事もなく、何を目標に生きればいいかわからなくなっていた時期に帯状疱疹になってしまいました。ご覧の通り、私は仕事中毒ですから。この先2〜3カ月間のスケジュールが突然真っ白になってしまった事実を受け止めることができなかったんです。「パンデミックが収束する頃には、世間がBLACKPINKや私に興味を持たなくなっていたらどうしよう? そうなったら、私はどうやって残りの人生を生きればいいの?」と考えはじめました。どうしてあんなふうに思ったかはわかりません。思い返してみると、当時の私は物事を大げさに考えていた気がします。私って、どうしてこんなにドラマチックなのでしょう?
ーー空白の時間をどのように過ごしていたのですか?
空いた時間を使って、自分のことをもっとよく知ろうとしました。どうやったら自分と折り合いをつけることができるか? とか、静かな部屋でどうやって自分と向き合うか? とかです。これは、多くの人にも共感できることだと思います。当時の私は、外向的思考がかなり強かったので、自分の内面と向き合い、内向的な思考を身につけるには良いタイミングでした。内向的なペルソナは、自分でつくり上げたようなものです。人がたくさんいる広い部屋にいて、生まれて初めて家に帰りたいと思った時のことを覚えています。「ワオ、内向的な人ってこんな感じ?」と思いました。
米ローリングストーン誌の表紙を飾るBLACKPINKのROSÉ(2022年4月9日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Peter Ash Lee for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Produced by Katt Kim at MOTHER. Set design by Minkyu Jeon. Styling by Minhee Park. Hair by Lee Seon Yeong. Makeup by Myungsun Lee. Nails by Eunkyoung Park. Jumpsuit by Mugler
ーー子どもの頃は、意識せずに音楽に惹かれていったのでしょうか?
そうだと思います。家には、親戚から譲り受けたものすごく古いピアノがありました。10年くらい使っていたものだそうです。色褪せた茶色で、見た目もすごく地味でしたが、ちゃんと音は出ました。いつもリビングルームに置いてありました。子どもの頃は、ピアノの練習をさせられましたが、大嫌いでしたね。ピアノの先生はすごく怖い人だったので、レッスンを嫌がって泣いたそうです。
ーーオーストラリアでも、韓国人の家庭では、子どもたちは無理やりピアノの練習をさせられるんですね!
ええ、もちろんです! 私は、ごくごく普通の韓国人として暮らしていました。ある日、母に「もうレッスンを受けたくない」と言ったのを覚えています。母は納得してくれました。驚きましたね。基本的な和音の弾き方は習得していたので、歌の伴奏には十分でした。あの頃はインターネットの速度が遅くて、朝起きて映画が観たい時は、”ダウンロード”をクリックして2日くらい待たなければいけませんでした。でも、ピアノは充電する必要もありません。弾きたい時に、いつでも弾くことができました。
両親はいつも仕事で家にはいませんでした。いま考えると意外ですが、当時の私は、あまり友達と一緒に出歩いたりしませんでした。みんな家からかなり遠い場所に住んでいたのです。姉は勉強していたので、私だけやることがなくて。3時間テレビを観つづけて、テレビにも飽きるとピアノを弾きはじめました。両親から「もう寝る時間よ! 静かにしてくれない?」と言われるまで弾きつづけていました。
ーー「ロザンヌ! 歌はもういいから、はやく寝なさい!」とご両親に怒られた時のことについて、詳しく聞かせてください。
実際には、「ねえロザンヌ、そろそろ寝ない?」と両親に言われたのを覚えています。でも、あとになって姉から聞いた話によると、2階の両親の部屋で集まって「次は誰がやめさせに行く?」と相談していたそうです。「いったいあの子は、いつになったらやめるんだろう?」と、みんな呆れていたみたいです。そんなこと、全然知りませんでした! 私には言わなかったんです。考えてみると、優しいですよね。スーパースターになる夢を壊さないでくれて感謝しています(笑)。
ーー幼少期を過ごした家について、記憶に残っていることはありますか?
2階建ての普通の一軒家でした。裏庭があって、犬を飼っていました。近所には、年配の人が多かったです。子どもが多い地域ではありませんでした。とても静かで、みんなフレンドリーで、世間的には、私たちは穏やかなアジア系移民の一家でした。トカゲがたくさんいました。朝起きて外で靴をはくと、靴の中に小さなトカゲがいっぱいいるんです。小さなトカゲとか大きなゴキブリとかは、いまもすごく苦手です。
BLACKPINKのROSÉ(2022年4月9日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Peter Ash Lee for Rolling Stone. Top, pants and belt: Saint Laurent by Anthony Vaccarello
ーー音楽について話しましょう。あなたは、音楽と真剣に向き合っています。写真撮影やインタビューや華やかなイベントといった音楽以外の仕事もありますが、あなたにとってもっとも重要なのは音楽なんですね?
月並みな表現かもしれませんが、本当におっしゃる通りです。すべては、音楽に対する愛を起点としています。音楽があるから、幸せでいられるんです。何というか……癒しのようなものですね。音楽は、私の心を落ち着かせて、あれこれ考えることをやめさせてくれます。それと同時に、こうした楽しい仕事ができるのも音楽のおかげです。写真撮影とか、テレビ(カメラ)の前に立つこととか、どれも本当に楽しいですし、こうした状況に感謝しています。でも、そうしていると音楽のことを忘れてしまうんです。ギターを抱えて座り、歌うことを忘れてしまうんですよね。
オフの間に、自分がどれだけ歌うことが好きかということに気づきはじめました。最近は、またギターを弾きはじめました。ここ2〜3カ月はこうしたことをまったくしていませんでした——日常生活に追われていて。でも、何もすることがない日が数日できたので、何も予定を入れませんでした。家にいて、何が起きるか見守ることにしたんです。
ーー誰もいない部屋にひとりで?
そうです。母にさえ、数日間はひとりにしてほしいと言いました。母は、私の言う通りにしてくれました。ギターを引っ張りだして、好きな曲をいくつか歌いました。「あの曲を歌ったらどんな感じになるかな? あの曲はどうやって歌おう?」と考えていました。そうするうちに、のめり込んでいくのが楽しかったんです。iPadの電源を入れて、オーストラリアにいた時のように、自分の演奏を録画しました。当時はiPadが発売されたばかりで、父に買ってもらったiPadで、同じように録画していたことを思い出しました。楽しかったです。感傷的に聞こえるかもしれませんが、音楽は大好きです。
ーーあなたは自分自身に高い基準を設けていて、時折自分に対して厳しすぎることもあります。もっと上達したいという想いは、時には重荷になりませんか?
もちろんなります。時折、自信に満ちあふれている人を見てうらやましくなることがあります。あんなふうになれたらいいな、と。その点では、私はとても不安な人間なんです。でもそれは、強いこだわりがあるからです。私は自信というもの尊重しています。たしかに、時には重荷になりますが、乗り越えるために精一杯努力しています。自信は、私が毎日取り組んでいる課題なんです。
ーー不安はネガティブなものではありません。優れた芸術を生み出すもっとも強力な原動力でもありますから。音楽の面でも、あえて傷つきやすい側面をさらけ出している理由は?
それは、私がただ傷つきやすい人間だからだと思います。最近は、緊張感なしに生きることがどれだけ悲しいかということに気づきはじめました。昔は、緊張するとそれが負担になっていると感じました。だって、誰だってリラックスしたいじゃないですか? でも、何かに対して不安を抱くこと、何かにこだわることで、人生は興味深くて楽しいものになるんです。
ーーこうした考えにたどり着くまでの経緯は?
あれ? なんで泣いてるんだろう? ほんと理解できません。すみません。こんな自分が大嫌いです。ほんと、笑えますね。もう意味不明。こうした考えにたどり着くまでの経緯ですよね? BLACKPINK結成からもう何年でしたっけ? 6年? そろそろ、いくつかの場面に慣れはじめる時期です。慣れからくる心地よさも傷つきやすさも、適量であれば必要だと思います。それに加えて、脆いという感覚と何かを強く求める気持ちを楽しんでいます。こうした感情を心から味わっているんです。そんな感情を失わずに、ずっと持ちつづけたいですね。
ーー昨今のアーティストで、うらやましいと思う人はいますか?
先日、デュア・リパのコンサートに行って、生歌を聴くことができました。彼女の声は、ただただ最高でした。本当に上手で、圧倒されました。いろんなことをメモしました。ひとりのファンとして大興奮しました。
ーー2021年にソロシングル「On The Ground」と「Gone」をリリースし、大成功を収めました。グループではなく、ひとりでステージに立った時の印象は?
大きなチャレンジでした——それによって、より脆弱な状況に立たされました。私たちは、4人でひとつなんです。私たちは互いを支え合っていて、その日、誰かが最高のコンディションでパフォーマンスができないとなると、私たち全員でカバーするんです。ひとりでステージに立つのは怖かったですね。いままでBLACKPINKがどれだけ大きな支えになってきたかを実感しました。どうしていいかわからなくなると、メンバーに連絡して感想や意見を求めました。ですから、ソロ活動中もメンバーはいつも私のそばにいてくれました。
ーー”私に必要なものは全部地上にある”という歌詞について教えてください。
この歌詞は、もともとはこの曲のプロデューサーたちが書いたものです。プロデューサー(BLACKPINKのプロデューサーのテディ・パク氏)と私は、この歌詞に一番惹かれました。この歌詞があったから、私たちはこの曲に引き寄せられたんです。
BLACKPINKのROSÉ(2022年4月9日、韓国・ソウルにて撮影)
Peter Ash Lee for Rolling Stone. Top: Saint Laurent by Anthony Vaccarello
ーーあなたにとって”地上”とは?
普通の人として、ということです。1年半、あるいは2年前のことですが、私たち4人とテディ(・パク)で食事に行った時のことを覚えています。私たちは、ただお腹を空かせた普通の人でした。レストランに入って、お腹もペコペコで、料理もすごくおいしかった。大好きな人たちと食卓を囲む——こうしたことのおかげで、自分は普通の人間だと実感できるんです。自分たちは家族だと思えることで幸せな気分になれます。誰だって最後は、腰を下ろして大切なもの——ごく普通のことや大切な人と一緒に過ごし、大好きなことをすること——が何かを思い出さなければいけません。
音楽は大きな存在です。それが音楽のワクワクするところでもあります。私たちが音楽を愛しているのは、ムーブメントを生み出したり、人々を結びつけたりする力があるからです。音楽があるから、私たちは一緒に人生を称えることができます。でも「どうやってここまでたどり着いたの? ROSÉ、あなたにとって音楽って何?」と考えると、必要なものは全部地上にあるんです。そこが私のスタート地点ですから。
ーーBLACKPINK解散後の人生について考えますか?
考えます。でも、すべてが終わることはないと思います。BLACKPINKは永遠に家族です。私は、彼女たちと一緒に成長しました。彼女たちは、私の一部です。終わることなんてないと思います。そんなことで不安になるのは、馬鹿げていると思います。でも、すべてが最高で、それを心から愛している時は、そういった側面も常に考えています。だって、失いたくないですから。
From Rolling Stone US.
>>関連記事:BLACKPINKのROSÉ、ソロシングルで語られた成功までの道のり
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