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コナン・グレイ「まともなデートをしたことがない」Z世代スターが自分を曝け出す理由

Rolling Stone Japan / 2022年7月4日 17時30分

コナン・グレイ(Photo by Justin J Wee for Rolling Stone)

大ヒットしたデビュー作『Kid Krow』から2年、待望の2ndアルバム『Superache』をリリースしたコナン・グレイ。日本人の母親を持ち、7月15日(金)に日本初ショーケース・ライブの開催も決定。米ローリングストーン誌によるインタビューで、ポップスターの素顔に迫る。

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悲惨だった幼少期

コナン・グレイによると、彼は常に物事を側から眺めているようなタイプだったという。周囲の人間に起きた出来事を実体験のように捉える彼は、自分のことを「傍観者」と表現する。「いつも人間観察をしてるんだ」。ロサンゼルスのEagle Rockエリアにあるお気に入りのカフェで低温抽出のコーヒー(ミルクも砂糖もなし)をすすりながら、彼は肩をすくめてそう話す。「僕はただ、誰かの日常を観察するのが好きなんだと思う」

現在23歳の彼が、自分を「傍観者」と表現することはやや不可解に思える。彼はプラチナディスクの記録を持つポップスターであり、コーチェラのメインステージに立ち、デリケートでジェンダーフルイドなファッションセンスが反映されたValentinoの天使を思わせる衣装に身を包んで、メットガラのレッドカーペットを歩いたのだから。

しかし、着古されたベースボールTシャツの上に黒のボンバージャケットを羽織り、カーリーな髪が目にかからないよう黒のサングラスで押しとどめている今日の彼と話していると、コナンが自分をそう形容する理由がわかった気がした。もしかするとそれは、テキサスの田舎町という何をするにおいてもハンデとなりかねない環境で幼少時代を過ごした、テイラー・スウィフトが大好きな日系アメリカ人の彼が患うインポスター症候群と関係しているのかもしれない。あるいは、パンデミックの間に確固たる人気を確立したが(デビューアルバム『Kid Crow』がリリースされたのは2020年3月)、その恩恵に預かることなく「ベッドの上でゴロゴロするだけ」の日々を過ごしたからかもしれない。



だが今年、さらに大きな注目を集めることになるだろう彼が、ベッドの上で無為に時間を過ごすことはないだろう。彼のソングライティングの特徴は、残酷なほどの誠実さと、あらゆることを考え過ぎる若者世代に特有の視点だ。しかし『Kid Crow』は、未熟な愛に翻弄されながらも前に進もうとする、ナイーブな一般的な少年像を描いているに過ぎなかった(数カ月前まで、彼は「まともにデートしたことがなかった」という)。ニューアルバム『Superache』では、彼の内面がより深く掘り下げられている。失恋の経験、悲しみに打ちひしがれたその後の数カ月間、そして幼少期の体験がかつてなくストレートに描かれている。「このアルバムを作っていた時、僕はずっと惨めな気分だった。だからこのアルバムは、僕の人生をものすごくリアルに描写しているんだ」と彼は話す。「わずかに残されていた身の部分を、骨から剥ぎ取ろうとするかのような経験だった」

前作ではシンプルで漠然とした不安が描かれていたのに対し、今作はより踏み込んだ内容となっている。「『Kid Krow』の歌詞はというと『やぁ、僕はコナンっていうんだ、どうぞよろしく。僕が経験したことを聞いてほしい。10代の時に経験した失恋の話だよ』みたいな感じだった」。彼は握手をするふりをしながらそう話す。「でも今回のアルバムは違う。『僕の幼少期は悲惨だった。痛みは今も消えてない』」。低いしゃがれ声でそう言ってから、彼はクスクスと笑った。

実際に、彼の幼少期は不安定だった。彼は南カリフォルニアで生まれたが、母方の祖父が介護を必要としていたため、ほどなくして母親と一緒に日本へ移住した。米軍のキャリア組だった彼の父親は、家族と離れて過ごさなければならないことも多かった。コナンが3歳の時、家族全員で米国に帰国したが、その直後に両親は離婚している。それ以来、彼と姉は父と母の元を行き来するようになった。彼は2016年に公開した動画で「数えきれないほど引っ越した」と語っており、姉と母親の3人で暮らしていた小さなアパートを公開している。当時はクイーンサイズのベッドで、3人全員が身を寄せ合いながら寝ていたという。学校では主に白人のクラスメイトたちから頻繁にいじめられ、混血である彼のバックグラウンドがその引き金になることもあった。



”幼少期のトラウマと世代を超えたトラウマ”、そして苦難続きだった子供時代の経験にインスパイアされた「Family Line」は、『Superache』の核というべき曲だ。「本当の自分像を確立するためには、それを吐き出さなくちゃいけなかった」と彼は話す。「不遇だった子供の頃のことも、友達に話すのは怖くない。アルバムに収録するつもりはなかったんだけど、曲を聴いた友達みんながいちばんのお気に入りだって言ってくれた。自分の人生について率直に表現した曲をいいって言ってくれる、そういう人たちがいなきゃ生まれなかった曲かもしれない」

「Family Line」を公開することには恐怖を覚えるとしながらも、「聴き手の気分を良くするようなものだけが音楽じゃないはず」だとコナンは話す。「だからこそ、僕はあの曲をアルバムに収録することにしたんだと思う。今も昔も、僕が時々孤独を感じるのは事実だから。子供の頃の辛い経験っていう点では、心から共感できる人を見つけるのは難しいと思う。それって口にすべきことだと思ったんだ」(「Family Line」には家庭内暴力の描写が見られるが、それが彼の家庭で起きたことかどうかは定かでない)。

ネットとの距離感、オリヴィア・ロドリゴとの関係

コナンにとって、曲作りは自分と向き合うための手段だ。また、コナンのデビューアルバムや、オリヴィア・ロドリゴの大ヒット作『Sour』をプロデュースしたダン・ニグロという強力なプロデューサーの存在も大きかったに違いない。「彼は僕の師匠であり、父親のような存在でもある」とコナンは話す。

子供時代を過ごしたベッドルーム、そして短期間ながらUCLAの学生寮から動画を配信していたYouTuberだったコナンに、初めて本格的なスタジオでのレコーディングの機会を与えたのがニグロだった。「マイクスタンドを立てて歌ったことがないって言ってたよ」とニグロは話す。「無名のアーティストを発掘したのは初めてだったけど、これまでの人生で最も達成感を覚えたことのひとつだよ。彼が持ってくるアイデアは常にすごくユニークで、それをできるだけ優れた形でアウトプットするのが僕の仕事だと思ってる。彼は稀有な才能の持ち主だから」


コナン・グレイ 2022年5月 ブルックリンにて撮影
Photo by Justin J Wee for Rolling Stone. Shirt and vest by Etro. Pants: Vintage. Jewelry by Presley Oldham.

また最近は、自分の人生を大きく変えたインターネットとの関わり方についてもじっくり考える機会が多いという。高校時代、彼は自身で編集したデジタルアートや近況報告動画、ウクレレ弾いてみた動画等をYouTubeに投稿し続け、熱狂的なフォロワーを獲得した。頭に浮かんだことを片っ端からツイートしていた彼は、深く考えず何もかもをシェアしようとする、典型的なZ世代の若者だった。

高校3年の時、コナンは最初の曲「Idle Town」をリリースした。同時に公開したDIYのノスタルジックなミュージックビデオでは、退屈な故郷での暮らしとそこで出会った親友たち、その町を出ていきたいという切実な思いが描かれていた。UCLAに入学したわずか数カ月後、彼は大学を中退してRepublic Recordsと契約し、1st EP『Sunset Season』を発表する。その後『Kid Crow』がリリースされ、すべてが完璧な女の子への憧れを歌った「Heather」はダブルプラチナを記録し、同世代の若者(とTikTok中毒者)たちのアンセムとなった。



しかし、同曲がシーンを席巻していた2020年の夏、インターネットは突如としてコナンにとって恐ろしいものとなった。彼が過去にブラックフェイスをしていたという事実無根の噂が流れ、13歳の頃に投稿した動画での日焼けしたコナンが「メキシコ人っぽい」と揶揄され、彼の使う絵文字の色が肌の色と一致していないとして批判されたりした。

2020年7月に、コナンはTwitterで自身の見解を述べ、トゥイーン(8~12歳)の頃に配慮に欠ける発言をしたことを認める一方で、中にはまったくの言いがかりもあると主張した。それ以来、コナンはデジタルライフ(少なくともTwitter)から遠ざかるようになった。

「あれはプライバシーの侵害以外の何者でもなかった。ゾッとしたよ。僕はあの経験から、何がOKで何がそうじゃないのかを、ごくわずかなサンプルから判断しなくちゃいけないってことを学んだ。当時の僕は何もかもに振り回されてたから」とコナンは話す。「気が狂いそうだった。どれだけ気分が沈み込んでいても、お構いなしに打ちのめされてた」

その後、インターネットを「本気でリスペクト」し、それが「極めてパワフルなツール」となり得ることを学んだコナンは、TikTokの使用は日に数時間と決めている。「インターネットから適度に距離を置いて、僕のことを無条件で愛してくれる人たちにフォーカスすることにしたんだ」

そのうちの1人が、彼の親友であるオリヴィア・ロドリゴだ。2021年初頭に知り合った2人は、コナンが作詞家としての自分の「育ての親」と崇めるテイラー・スウィフトが大好きであるという共通点を理由に親交を深めていった。ちょうどその頃、スウィフトは再レコーディングした「You Belong With Me」のスニペットを、同曲のビデオのアイコニックなシーンを再現した”2人の若者”に公開させている。

テイラー・スウィフトの新しいバージョンの「You Belong With Me」を聴いたコナンとオリヴィアの反応が可愛すぎる件について pic.twitter.com/JI8ZU9Od9z — コナン・グレイ日本公式 Conan Gray Japan Official (@conangrayjp_) April 9, 2021

それ以来、2人は様々なアワードやメットガラに一緒に出席しており、最近ではオリヴィアの『Sour』ツアーのステージで、ケイティ・ペリーの「The One That Got Away」をデュエットしている。プライベートで2人が会うときは、大抵「食べ物を大量にオーダーして映画を観てる」という。

「僕はあらゆるものにおいて、量より質を重視するんだ」とコナンは話す。「オリヴィアのことは大好きだよ。頼れる友達がいるっていうのはいいものだね。(名声は)人を惑わせるから、互いに共感できたり、一緒にいて落ち着く相手がいることに感謝してる」

恋愛は「執着するタイプ」

アルバムの4曲目「Best Friend」は、長年にわたって友情を育んできた何人かの友達(高校時代の親友Ashleyを含む)に捧げられている。”君は僕と同じくらいイカれてる/頭の中も同じくらい狂ってる/だから僕は聞かれるたびにこう答えてる/あれが僕の親友だって”。ギターがリードするこのスウィートな曲で、コナンはそう歌っている。

「こんなにも友達を頼りにするのって、もしかしたらあまり健康的じゃないのかもね。でもそうしなきゃ、僕はきっといろんなことを乗り越えられなかったと思う」とコナンは話す。「高校時代の友達がいなかったら、僕は生き延びられなかったかもしれない。セラピーにも通っているけど、友達こそが僕のすべてだと思ってる。電話をかけたりメールをしたり会いにいったり、僕は友達のことを本当に頼りにしてるんだ」



失恋の痛みを表現するのが得意な人と一緒にいると、自分の経験を話したくなってしまうものだ。彼のコーチェラでのパフォーマンスと、風にはためくバブルガムピンクの衣装について語りながら、筆者は昔の恋人と一緒に彼のステージ(元恋人から距離を置いて傷を癒やそうとする人物像を描いた「Memories」を初披露した)を観ていたことを告白した。彼にはまるで関係ないというのに。

「何でそんなことをするんだい? 君はどうかしてるよ!」。彼は声を荒げながらそう言った。「君はマゾだ!」



彼の言い分は正しく、筆者は叱られて然るべきだ。だがひとこと言わせてもらえば、彼だって人のことは言えない。『プライドと偏見』を初めて観たあと、映画で描かれるロマンスが事実とはかけ離れていることを知ってボロ泣きした時に書いたという「Footnote」がその証拠だ。「好意を寄せていた人が自分のことを何とも思っていなかった、その事実を受け入れた上で諦めようとする」同曲で、彼はこう歌っている。”君の人生に脚注をつけておこう/僕の体を乗っ取ればいい/すべてのラインを君に捧げていたのに」

「どうしようもなく好きで、心の底から愛していて、大切にしたいと思っている相手が自分のことを何とも思っていないことを知った時は、少し恥ずかしい気持ちになる」と彼は話す。

過去のインタビューで、コナンは交際経験がないと語っていたが、『Kid Krow』のリリース後は恋愛の「経験値が上がった」と打ち明けてくれた。「『Superache』のテーマは、生まれてからずっとシングルのままでいる理由が自分自身にあるのを知ったことなんだ」とコナンは話す。「『こんな曲を延々と歌っているのは、君が狂っていて問題を抱えているからだ。他人を寄せ付けようとせず、真剣に向き合うことを恐れ、臆病で震え上がっている君は、どんな曲を書いたって、そういう気持ちを面と向かって誰かに伝えることなんて絶対にできない』みたいな感じ」

恋愛に関して、コナンは「執着するタイプ」であり、たとえ恋人同士になれる見込みがまるでなくても、なかなか諦めきれないのだという。「実を言うと、まともなデートをしたことがないんだ。いつか自分にぴったりの人に巡り会えると信じてる。まだ知らない誰かと」。コナンはそう話す。「その過程で僕が経験してきたことって、すごく笑えるんだよ。だからこのアルバムにはそういうトピックが多いんだ」


Photo by Justin J Wee for Rolling Stone. Shirt by Etro. Jewelry by Presley Oldham.

前作をリリースした時、世界は隔離の時代を迎えようとしていた。「奇妙だけど、当時のムードにすごくフィットしてたと思う」。コナンは『Kid Krow』についてそう話す。「ベッドでゴロゴロしながら作ったアルバムで、リリースされた時も僕はベッドの中にいた。そしてみんな、ベッドで横になったままあのアルバムを聴いてた。ツアーに出るまで、僕は自分がどれくらい落ち込んでいるのか自覚していなかったんだ。『あれ、僕ってこんなに凹んでたんだ』って感じ。あんなにも長いあいだ独りでいるっていうのは、やっぱり普通じゃなかったんだ」

今作はというと、Twitterでのコメント欄やディスプレイ上ではなく、大勢のファンが目の前で彼の歌詞を合唱するワールドツアーの完走から数週間後にリリースされる。「外に出ていろいろと経験できる、それだけで十分幸せだよ」と彼は話す。「幼い頃、僕は失敗して傷つくことをすごく恐れてた。でも今はこう思える。『傷ついたって構わない。胸が張り裂けるような思いをしたって、その日何かがうまくいかなくたって気にしない』。今はそう思えるし、かかってこいって感じさ。何も感じないよりは、たとえ破裂しそうでも全てを感じていたいから」

彼は自分を「傍観者」と表現したが、コンサートで何千人もの観衆を前にして、Instagramで600万人にフォローされていても、そんな風に感じているのだろうか?「何かに参加するよりも見てる方が好きっていうのは、きっとこれからも変わらないと思う。僕自身、それでいいと思ってるんだ」と彼は話す。「特に変える必要はないと思うから。ただ、観察してる最中に誰かに干渉されても気にならなくなったとは思う」

我々が話している最中に、誰かが恐る恐るといった感じで話しかけてきた。「邪魔してごめんなさい、でもあなたの曲が大好きだってことを伝えたくて」。カフェの前を通りかかった時にコナンに気づいたという、緊張気味の女の子はそう言った。「コーチェラであなたのショーを見たんですが、素晴らしかったです」

コナンにとってこういったことは日常茶飯事のはずだが、彼は条件反射的に猫背気味になり、謙遜した様子でその女の子に礼を言った。

「あんな風に言われると本当に嬉しいよ」。筆者との会話を再開する前に、彼はそう言った。”人生の観察者”は、他人から観察されることにはまだ慣れていないようだ。

From Rolling Stone US.



コナン・グレイ
『Superache』
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視聴・購入:https://umj.lnk.to/ConanGray_Superache

CONAN GRAY JAPAN DEBUT SHOWCASE
日程:2022年7月15日(金)
時間:開場17:30/開演18:30
会場:都内某所 ※当選者にのみお知らせ
内容:トーク&パフォーマンス(予定)
応募方法:https://www.universal-music.co.jp/conan-gray/news/2022-06-24-2/

日本公式HP:https://www.universal-music.co.jp/conan-gray/

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