BLACKPINK・JENNIEが語る、ひとり暮らしの決意とヒップホップの本質
Rolling Stone Japan / 2022年6月29日 18時15分
「私には、まだまだ得意なことがたくさんあるんです。いままでみなさんが見てきたJENNIEは、リハーサルでした」と、JENNIEは語る。
先日行われたローリングストーン誌の写真撮影の合間に、BLACKPINKの所属レーベル兼芸能事務所のYGエンターテインメント(以下、YG)のスタッフたちと仲良く腕を組んで歩くキム・ジェニの姿が数回目撃された。「彼女には、よく悩みを相談します」と、2016年のデビュー以来BLACKPINKのスタイリストを務めるパク・ミンヒ氏は話す。「とても温かい人です」。
BLACKPINKのメインラッパーのJENNIEは、韓国のソウルとニュージーランドのオークランドで幼少期を過ごした。2010年にYGに入所した彼女は、メンバーのなかではもっとも練習生歴が長い。ソロアーティストとして最初にデビューしたのも彼女で、2018年のデビューソロシングル「SOLO」は米ビルボードのWorld Digital Songsチャートの1位に輝いた。この曲のMVは、YouTubeで8億回以上再生されている。
BLACKPINKにリーダーというものは存在しないが、時折、冷静沈着なJENNIEがグループを代表して難しい質問に答える。4月某日の午後、YG本社のがらんとしたダンススタジオの一室で、親しみのこもった気さくなオーラをまとってJENNIEは座っている。メイクは控えめで、髪は染めたばかりのオレンジ色だ。このインタビューが終われば、コーチェラ・フェスティバルに参加するため飛行機に飛び乗る。だが、コーチェラの前にブランドアンバサダーを務めるアイウェアブランド・Gentle Monsterのロサンゼルスの旗艦店に立ち寄らなければならない(JENNIEはシャネルのキャンペーンモデルにも起用されている)。韓国語と英語を交えながら、ストレスマネジメントからBLACKPINKの理系脳としての役割にいたるまで、あらゆる話題について語ってくれた。
※先月、米ローリングストーン誌6月号の表紙をBLACKPINKが飾ったことを記念して、各メンバーをフィーチャーしたデジタルカバーストーリーを数日にわたって掲載した。日本版も米独占インタビューの完全翻訳版を収録した「Rolling Stone Japan vol.19」の発売を記念し、このデジタル版のインタビューを完全翻訳し紹介していく。
ーー世間は、著名人に対して勝手なイメージをすぐに膨らませることがあります。誤解されている、と思ったことはありますか?
子どもの頃は、内気すぎるとよく言われました。明るくて、エネルギッシュな子どもではありませんでした。臆病で、「こんにちは」さえ上手く言えなかったんです。いまは、ちゃんと挨拶しないと誤解されてしまいますから、その点は克服しました。でも、練習生時代は「どうしてJENNIEはいつもイライラしているの?」という声をよく耳にしました。当時は傷つきました。怒っていたわけではありません。他人の前では気後れしてしまうんです。だから、傷つく代わりにその事実を受け止めて、次からはもっと努力するようにしました。
米ローリングストーン誌の表紙を飾るBLACKPINKのJENNIE(2022年4月9日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Peter Ash Lee. Fashion direction by Alex Badia. Produced by Katt Kim at MOTHER. Set design by Minkyu Jeon. Styling by Minhee Park. Hair by Lee Seon Yeong. Makeup by Myungsun Lee. Nails by Eunkyoung Park. Dress by Chloe. Bracelet and shoes by Chanel
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ーー世間では、BLACKPINKはパワフルな女性たちのグループ"クールなバッドガール”というイメージが定着しています。実際は、どんな女性たちなのでしょうか?
同世代の女の子たちとあまり変わらないと思います。もちろん、時にはBLACKPINKの影響力について話すこともあります。次のカムバックでやってみたいことも話します。でも、本当は飼い猫や犬、食べ物、おしゃれな場所について話すのが大好きなんです。何よりもまず、私たちは普通の女の子でありたいと思っています。仕事、クールなもの、音楽——私たちは、みんな同じものを愛しています。こうしたものがヒューマンで女の子らしい側面とともにBLACKPINKの世界観をつくっているのです。
ーー2018年にシングル「SOLO」で最初にソロデビューしました。BLACKPINK以外の活動をひと言で言うと?
まだ自分の”色”を探しつづけています。歌うことも好きですし、ラップもダンスも好きです。私は、これらすべてをひとつの曲に落とし込むことができます。私は、こうした多様性を表現することができるのです。BLACKPINKのメンバーとしてのJENNIEのイメージはある程度決まっていますが、ほかにも好きなことがたくさんあります。私には、まだまだ得意なことがたくさんあるんです。いままで皆さんが見てきたJENNIEはリハーサルでした。
ーー世間がイメージするBLACKPINKのJENNIEはどんな女性ですか?
とてもパワフルで、とても堅実な女性です。良い意味でアグレッシヴでもあります。本当の私は、そうではありません。BLACKPINKのJENNIEは、私にとって一種のペルソナなんです。今後は、ソロ活動を通じて本当の自分を出していくのが楽しみです。ボーカリストとしての力量がどれだけのものかも知りたいです。(練習生時代は)R&Bやもっとソウルミュージック寄りの曲で練習していました。メロウで静かな曲も好きです。いろんなことに挑戦したいですね。
ーー幼い頃は、どんな子どもでしたか? 当時の夢は?
これといった夢はありませんでした。でも、普通の仕事には就かないだろう、と思っていました。物心ついた時から、色彩やドレスアップすることが大好きでした。「スターになりたい! 歌手になりたい!」と思ったことはありませんが、自分がいろんなことに興味を持っていることに小さい頃から気づいていました。早く夢を見つけたいと思っていたんです。ありがたいことに、母はそんな私を一生懸命応援してくれました。
ーーYGに入所する前は、親元を離れてニュージーランドのオークランドに5年間留学していましたね。大変だったのでは?
実際には、誰よりもハッピーでした。新しい環境には1日で慣れて、2日目に「大丈夫? さびしくない?」と母が電話をかけてくれたのですが、「ママ、もう切るね。トランポリンで遊ばないといけないから」と電話を切ってしまったほどです。振り返ってみると、ニュージーランドでの生活のおかげでタフになりました。だからと言って、「ひとりなんだから、我慢しないと」と思いながら生きていたわけではありません。
韓国にいた頃は——10歳までですね——「ハグウォン」(民間の学習塾)に行ったり、家で勉強したり、学校に通ったりしていました。韓国の教育は(ニュージーランドとは)かなり違います。野外活動はほとんどありません。でも、ニュージーランドでは毎日外でかけっこしたり遊んだりしていいと言われました。家族と一緒にいられないのはさびしかったですが、ニュージーランドでは本当に幸せでした。
BLACKPINKのJENNIE(2022年4月9日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Peter Ash Lee for Rolling Stone. Top and cardigan by Chanel. Pants by Calvin Klein
ーー私が抱いていたJENNIEさんのイメージとは全然違いますね。海外でひとり暮らしをする、孤独な子どもを想像していました。
いいえ、むしろ「ママ、ありがとう!」と思っていたくらいです。学校に行くのが大好きでした。授業の内容をノートに写したり、ノートを整理したり、いろんな色のペンでノートをとったりするのがすごく好きでした。内容というよりは、整理していることを楽しんでいました。まずは鉛筆でノートをとって、帰宅してからカラーペンで書き直しました。好きな科目は、理科と数学です。公式を覚えたり、データを頭にインプットしたりするのが好きでした。英語が母国語ではなかったからだと思います。ですから、英語の授業のほうが怖かったですね。数学や理科は、公式さえ覚えれば韓国語でも解けますから。
ーー理路整然とした理系脳は、BLACKPINKでも活躍していますか?
もちろんです。4人だけにされたら、私たちは何ひとつ完成させられないと思います。遊んでしまうでしょうね。部屋に閉じこめられて鍵をかけられても、音楽をかけて踊ってしまいます。でも、私は締め切りやその日のノルマのことをずっと考えてしまうんです。だから、みんなにもリマインドするんです。
ーーBLACKPINKの音楽について話しましょう。プロデューサーのテディ・パク氏は、BLACKPINKの創造的プロセスの中心人物と言っても過言ではありません。プロデューサーとして、パク氏はどんな人物ですか?
オッパ(訳注:韓国語で「お兄さん」を意味する言葉)は、アーティストとして、そして人として必要な思考を私たちに植えこんでくれます。私は、自分なりの独創的な方法でアイデアを表現しようとします。オッパは、突然電話をかけて「なあ、JENNIE、俺たちはステップアップしないといけないんだ」と言ったりするんです。すると、「オッパの言う通りだ」と気づき、その時やっていたことをやめて、(YGの)オフィスに戻ったりダンスの練習をしたりします。電話がくるだけで、背筋が伸びる気がします。BLACKPINKに欠かせない、良い意味での緊張感を与えてくれる存在です。
ーーパク氏は「根っからのヒップホッパー」で、あなたはその精神の継承者だと話していましたね。
ヴァイブとかスワッグ(訳注:「やばい」や「かっこいい」を意味する韓国語の「스웩」に由来する言葉)とか、呼び方は何でもいいのですが、私にとってヒップホップは、カッコいいものを表す精神です。BLACKPINKのヒップホップは、世界にとってまったく新しいものだと思います。いろんなバックグラウンドをもつ20代の女の子4人が韓国語と英語を使ってヒップホップをベースにしたポップ・ミュージックをつくり上げようとしているのです。”本物のヒップホップ”をやっているアメリカのとびきりクールなラッパーたちからすれば、私たちがやっていることは”おままごと”のように見えるかもしれません。でも、私たちのヒップホップは反抗的なものではなく、私たちはあくまですごくカッコいいことをしているんです。それがヒップホップの本質ではないでしょうか? よくわからないけど! ただクールなんです!
ーーお気に入りのヒップホップグループは?
ブロックハンプトンが大好きです。いろんなパートをこなす若い人たちが一緒に音楽をつくっている姿に共感します。
BLACKPINKのJENNIE(2022年4月9日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Peter Ash Lee for Rolling Stone. Top and cardigan by Chanel. Pants by Calvin Klein
ーー最近は、どういった”重大事”について考えますか?
このところ、どうやったら健康を維持できるかについて考えています。前回のワールドツアー(2020年)後に、精神的にも身体的にも調子を崩してしまいました。このことについては、ファンのみんなとあまり詳しく共有したくないんです。心配させたくないから、あまり詳しく訊かないでください。でも、デビューしてからの3年間はずっとノンストップで活動してきました。当時は、みんな20代前半の若者でしたから。でも、みんなの睡眠のサイクルが崩れはじめ、食生活も乱れました。自分自身を労ってあげられませんでした。そんな状態が3〜4年間続いて、そのままツアーに突入したんです。1年半の長いツアーです。その間、私には家と呼べるものがありませんでした。
何かに触れるたび、アレルギー反応が出るようになってしまったんです。免疫機能がまったく働いていないのに、ツアーを続けなければいけませんでした。ツアーが終わると、少しだけ家に帰る時間がありました。あの頃は、セルフケア方法を学ぶ時間がありませんでした。私は、かなりセンシティブな人間なんです。
エクササイズをしていると、ひとつひとつの筋肉が「こうすると痛いのは、どうしてだろう?」と訴えてくるのがわかります。最近は、カムバックと次のツアーに向けて準備しているので、「OK、これからの慌ただしい2年間に向けて、私はどういうふうに準備をすればいい?」と毎日自問しています。
ーー誰かに相談しなかったのですか?
したと思います。でも、それまでは”友人”の意味もわかっていませんでした。誰かの話を聞き、自分から語り、学びました。近くに家族がいてくれたことは、大きいな支えになりました。健康でいることは、とても大切だと思います。自分の弱点やアレルギー、体内に入れてはいけないものを知ることも。こうしたことを大事にして、勉強しています。そのおかげで前よりも丈夫になりました。この業界で働く多くの人とメンタルヘルスについて話し合いました。私の場合、身体の調子がいいとよりハッピーで健康的でいられます。瞑想やヨガ、ピラティスなどもします。信頼できるいい人たちが周りにいてくれます。もちろんペットも。
ーーいまは、ご家族と同居ですか?
はい、でも一時的なものです。余分な情報かもしれませんが、海外でひとり暮らしをしていて、その後は10年間(YGの)宿舎で生活していたので、あまり家族と一緒に暮らしたことがないんです。母とはとても仲良しで、姉妹のような関係です。数年前に、母ともっと一緒にいたいと思いました。(BLACKPINKが)宿舎を出た頃から同居しています。
ーーこれまでの生活からすると、大きな変化ですね。私は家族と同居なんて無理ですから、尊敬します。
でも、もうすぐ引っ越します! 母との生活は、十分満喫しました(笑)。母も「そろそろひとりで暮らしたら?」と言っています(笑)。一緒に過ごす時間が必要だったことは間違いありません。良い判断でした。でも、ひとり暮らしをする覚悟もできています。
ーーBLACKPINKのない未来を想像したことはありますか?
ありきたりな表現になってしまいますが、私の心のなかでBLACKPINKが終わることはないと思います。何をしていても、私は永遠にBLACKPINKです。みんな70歳になって別々の人生を送っていたとしても、BLACKPINKとしての自覚を持ちつづけると思います。私は、BLACKPINKに全力を注いでいます。私にとってBLACKPINKは、音楽活動をしている、していない以上の存在なんです。(メンバーは)家族の一員ですから。家族を否定することなんてできません。楽しい時もあれば、苦しい時もあるでしょう。みんな忙しくしていて、頻繁に顔を合わせることもあれば、そうでない時もあります。それでも、家族であることに変わりはありません。
>>関連記事:BLACKPINK・ROSÉが語る、傷つきやすさが持つ力とBLACKPINKが家族である理由
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