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レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン11年ぶり復活ライブ 混迷の時代に4人が帰ってきた

Rolling Stone Japan / 2022年7月11日 6時45分

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Photo by Getty)

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが7月9日、実に11年ぶりとなるライブを開催。ウィスコンシン州で行われた「Public Service Announcement」ツアーのキックオフ公演で、現在のアメリカを語るうえで新曲は必要ないことを証明した。米ローリングストーン誌のライブ評をお届けする。

【動画を見る】レイジ復活ライブの動画+セットリスト

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの11年ぶりとなるコンサートの終盤、ザック・デ・ラ・ロッチャはステージの先端まで歩いていき、目を細め、「Killing In The Name」のクライマックスで”fuck you, I wont do as you tell me”と声を上げると、およそ3万人のファンも一緒になって叫ぶ。まだ20歳そこそこなのに、彼の足元でクラウド・サーフィングするファンの姿も見えた。



それは、バンドが2019年にツアーを発表し、パンデミックのために何度か延期して以来、レイジのファンが待ち望んでいたカタルシスの瞬間であった。当初の予定ではテキサス州エルパソの国境近くにある小さなアリーナからスタートすることになっていたが、結果としてウィスコンシン州イースト・トロイのアルパイン・ヴァレー・ミュージック・シアターでキックオフを迎えた。会場キャパの37000人に限りなく近い観客が訪れていたようだ。

最後のアルバムを発表してから20年以上が経過し、再結成までにかなりの時間を要したバンドが、円形劇場やアリーナで再び公演を行っても注目を集めることはほとんどないだろう。

だが、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは非常に稀有なケースで、このツアーは全米でソールドアウトしている。彼らはラップとロックを完璧に融合させた、ロック史上最もスリリングなライブアクトであるだけでなく、その政治色の強い音楽は時代を何十年も先取りしており、まさしく”いま”のためにカスタムメイドされたようにも感じられる。

オープニングアクトのラン・ザ・ジュエルズがエネルギッシュな演奏を披露したあと、レイジは1992年に発表したセルフタイトルのデビューアルバムから「Bombtrack」を爆発的に鳴らしてライブをスタートさせた。ザックは過去10年間、ほとんど公の場に姿を現すことはなかったが、このツアーに向けて明らかに準備をしてきたようで、ほぼ完璧なボーカルと底なしのエネルギーは、52歳という実年齢より少なくとも10歳は若々しく見えた。彼らは「People of the Sun」、「Bulls on Parade」と続けて、観客を熱狂させる。

そこから90分以上にわたって13曲(全16曲)を披露。時折ステージから離れると、炎上しているエルパソのパトカー、ボートで避難している人たちの上にヘリコプターが降りてくる様子、ドローンとシェパードのそばに立つ厳しい顔つきの国境警備隊員といった映像がスクリーンに映し出された。2000年を最後に演奏してこなかったブルース・スプリングスティーン「The Ghost of Tom Joad」のカバー、熱狂的な「Guerrilla Radio」、ワイルドな「War Within a Breath」などがハイライトに挙げられる。

ギタリストのトム・モレロ、ドラマーのブラッド・ウィルク、ベーシストのティム・コマーフォードは、クリス・コーネル(オーディオスレイヴ)、チャックDやB・リアル(プロフェッツ・オブ・ザ・レイジ)ともこれらの曲を数多く演奏してきたが、ザックのように表現できる者は他にいない。ジミー・ペイジがデイヴィッド・カヴァデールと廻ったツェッペリン色の強いツアーや、カーズがリック・オケイセックの代わりにトッド・ラングレンを迎えたニュー・カーズなどと比較するのはアンフェアかもしれないが、つまりはそういうことである。

この時代に「復活」することの意義

この日のライブでは、メンバーの誰一人として観客に話しかけたり、自分たちの長い不在に言及したりすることはなかった。しかし、サイレンからターンテーブルまでギターの音を自在に操るトム・モレロは、最後の数曲で「I Love CRT」と書かれたシャツを着用し、スクリーンには「Abort the Supreme Court」と表示された。ポール・ライアン前下院議長のような右派のファンもいるのだろうが、彼らのためのライブではない(私の近くにいた「I Love Guns, Titties, and Beer」(銃とおっぱいとビールを愛している)シャツを着た男も盛大に楽しんでいたが)。

この日のライブでは、メンバーの誰一人として観客に話しかけたり、自分たちの長い不在に言及したりすることはなかった。ただ、サイレンからターンテーブルまでギターの音を自在に操るトム・モレロは、最後の数曲で「I Love CRT」(Critical Race Theory=批判的人種理論)と書かれたシャツを着用し、スクリーンには「Abort the Supreme Court」(最高裁を廃止せよ、中絶権違憲判断への批判)と表示された。ポール・ライアン前下院議長のような右派のファンもいるのだろうが、彼らのためのライブではないことは明白だ(私の近くにいた「I Love Guns, Titties, and Beer」シャツを着た男も盛大に楽しんでいたが……)。



レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンには、アメリカ人がその革命的なメッセージに対して最もオープンでない時にだけ活動するという奇妙な癖があった。1991年〜2000年までの最初の活動は、ビル・クリントンが大統領を務め、経済は好調で、国の右傾化がほとんどのアメリカ人には見えてなかった、冷戦後〜9.11以前の時期とほぼ完全に一致している。その後、オバマの時代の幕開けに、束の間の楽観主義のなかで戻ってきた彼らは、トランプがエスカレーターを降りてきて大統領選に出馬するまでの4年間に演奏し続けてきた。

言い換えれば、彼らは本当に、本当に長いあいだ、人々が怒り狂う(rage against)瞬間を見逃してきたわけだ。今回はようやくタイミングが合ったので、この再結成ツアーより長く続くことを祈ろう。これからの数年間は、おそらく本当にひどいことになる。それを乗り切るためにも彼らが必要なのだ。

From Rolling Stone US.





1. Bombtrack
2. People of the Sun
3. Bulls on Parade
4. Bullet in the Head
5. Testify (with "Revolver" intro)
6. Tire Me
7. Wake Up
8. Guerrilla Radio
9. Without a Face
10. Know Your Enemy
11. Calm Like a Bomb
12. Sleep Now in the Fire
13. War Within a Breath
14. The Ghost of Tom Joad (Bruce Springsteen cover)
15. Freedom (with "Township Rebellion" outro)
16. Killing in the Name


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