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ビーバドゥービーが語る作曲術、ビートルズ、サマーソニック「日本へ行くのは全人類の夢」

Rolling Stone Japan / 2022年7月15日 12時0分

ビーバドゥービー(Photo by Erika Kamano)

今夏のサマーソニックで初来日を果たすフィリピン生まれロンドン育ち、オルタナ感のあるギターポップを2000年生まれの感性で奏でる「Bea」ことビーバドゥービー(beabadoobee)が、2ndアルバム『Beatopia』をリリースする。今作にはThe 1975のマシュー・ヒーリーとジョージ・ダニエル、プライベートでも交流の深いピンクパンサレス(PinkPantheress)など豪華ゲストも参加。60年代〜90年代まで様々な音楽のエッセンスを融合しながら、エバーグリーンなメロディを作り続ける彼女のクリエイティビティは一体どこから来るのか。新作を紐解きながら、その作曲プロセスにも迫った。


─前作『Fake It Flowers』はバンドアンサンブルを基軸とした作品でしたが、今作『Beatopia』はアコースティック楽器を中心とした曲や打ち込みを導入した曲もあり、よりパーソナルかつバラエティ豊かな内容になりました。こうしたサウンド面での変化はどのように訪れたのでしょうか。

Bea:その変化は、私が成長したことで自然にもたらされたものだと思う。今の私は、前よりも少し大人になって、自分自身でいることにもっと心地よさを感じられるようになった。だから以前よりもくつろいで音楽を作れるようになったし、それがサウンドや自分が何を作るかにも表れているんじゃないかな。

それに、『Fake It Flowers』の時は特定のジャンルにしばられていた。バンドサウンドやロック、ポップスであることなどにこだわりすぎていたというか。でも『Beatopia』を作っている時は、自分のクリエイリティビティに対して不安がなかった。曲によってはドラムマシンを加えてみるなど、思いついた新しいアイデアを全部試してみるだけの心の余裕があったと思う。しかも親友のジェイコブ(・バクデン:プロデューサー/バンドのギター担当)がいてくれたから、「自分がやりたいことは何でもやってみていいんだ」という心地よさがあったんだよね。



─アルバムは、あなたが7歳の頃から抱き続けているファンタスティックでパーソナルな想像の世界を表現していると聞きました。それは具体的にどのようなもの?

Bea:ビートピアという世界には、なにか特定のコンセプトがあるわけではないの。自分自身の内側の世界……自分自身でいることができる、安心できる場所というか。つまりどんな人でも自分の中にそれぞれのビートピアを持っていて、それは真の自分を理解し受け入れることにつながる場所でもある。

ちなみに、私が7歳の時に考えついたビートピアは、クレイジーでオルタナティブな世界だった。いろんな街が存在し、そこに住む人々もみんなタイプも違えば来ている服も様々。人間だけじゃなく、モンスターや妖精、ミステリアスな生き物がたくさんいて。実際の世界には存在しない、自分の頭の中で想像する全てがそこにあるような場所だった。

─そんなあなただけのビートピアを象徴する楽曲を、アルバムの中から選ぶとしたら?

Bea:「See You Soon」ね。あの曲ではビートピアの世界がより濃く表現されていると思う。もちろん、アルバムのどのトラックもビートピアであることに間違いないのだけど。例えば「tinkerbell is overrated」のちょっと変わったサウンドもそう、あの曲の風変わりな歌詞もビートピアっぽい。

─「See You Soon」はどのようにして生まれたんですか?

Bea:あの曲を作った時は、マッシュルームでハイになってたんだ(笑)。よく知られているように、マッシュルームでハイになるといろんなことに気づく。私もその時に、それまで気づいていなかった自分の人生についての色々なことに気づかされたんだよね。それを現実の生活でも活かしたいと思った。「See You Soon」は、「孤独でも大丈夫。それは自分にとって何が心地よいのかを探求するために必要な場所であり、大切な時間」ということを歌った曲なの。



─そんなアルバムのコンセプトにちなんで、あなたがこれまでに思い描いた最もポジティブな想像と、最もネガティブな想像をそれぞれ聞かせてもらえますか?

Bea:これは難しい質問だね(笑)。想像って沢山するものだから……10代の頃は暗い想像が多かったな。ネガティブというか、悲しい想像。でも今回は、ポジティブな想像について話そうと思う。私が思い描いたポジティブな想像は、私が人生で心から望むもの。看護師になった自分や、教師になった自分、そして快適に暮らして愛する人と一緒にいる自分。私の人生のビジョンって、けっこう典型的なんだよね。みんながよく思うようなハッピーライフを私も望んでいる。

─難しい質問に答えてくれてありがとう。ところで、今作にはThe 1975のマシュー・ヒーリーとジョージ・ダニエルが客演としてクレジットされていますよね。レーベルメイトでもある彼らは、あなたにとってどのような存在ですか?

Bea:2人はインスピレーションの源。マッティのアドバイスはいつだって的を射ているし、本当に多くを学んでいるから「メンター」みたいな存在ね。ジョージは、私がこれまでに会ったアーティストの中でも最も才能あるアーティストの1人。彼のことは心から尊敬しているし、何を作り出すのかいつも楽しみなの。もちろん、アーティストとしてだけでなく人間的にも素晴らしい2人だから、本当に大好き。マッティは「Youre Here Thats the Thing」と「Picture of Us」のライティングを手伝ってくれて、「Picture of Us」はもともとマッティの曲だったのだけど、私にくれたんだよね。

─「tinkerbell is overrated」にはピンクパンサレスが参加していますよね。どんな経緯で実現したのでしょうか。

Bea:彼女とは以前一緒にセッションをしたことがあって、その時も1曲出来たんだけど残念ながらリリースされなかったんだよね。でも私たち同世代だし、2人ともロンドンに住んでるし、すぐに意気投合して友達になった。すごく気さくでチルな子だしね。もちろんアーティストとしてもリスペクトしている。彼女が作るメロディは唯一無二だから、聴けばすぐに彼女の曲だってわかるんだ。「tinkerbell is overrated」は、出来上がった時に私もジェイコブも「この曲にぴったりなのは彼女しかいない」とすぐに分かった。それで彼女に参加してくれるよう頼んだの。

ビーバドゥービー流の作曲プロセス

─ちなみに、今作にインスピレーションを与えた作品として真っ先に思い浮かぶのは?

Bea:川村元気の『世界から猫が消えたなら』という小説。人生に感謝することをテーマにしていて、『Beatopia』をレコーディングしている時に読んでいたんだよね。それについての曲を書いたわけではないけど、素晴らしい作品だったから無意識に影響は受けていると思う。それと、マーク・ライデン(「ポップ・シュルレアリスムのゴッドファーザー」と呼ばれるアメリカの画家)の世界観は、今作のアートワークにインスピレーションを与えていると思う。

この投稿をInstagramで見る beabadoobee(@radvxz)がシェアした投稿 ─楽曲のアイデアは、いつもどんな時に思いつくのですか?

Bea:本当にその時次第なんだよね。ただ『Fake It Flowers』を作っていたときは、もっと過去の出来事や、そのトラウマがアイディアの元になっていたと思う。今作では、自分の周りで「今」何が起こっているか、それに対して自分が何を感じているかが重要だった。いろんな経験を通して自己を発見する感じかな。他にも公園を歩いたり、美術館で見た作品だったり、自分以外の人々のストーリーだったり、本当にいろんなことからインスパイアされている。

それと自分が好きだったバンドはみんな、ありのままの歌詞や曲を書いていることに気が付いたんだよね。どのバンドも誰かにどう聴かれるか、人に理解されるかどうかなんて気にしていなくて、彼らにとって大切なのは、彼ら自身にとって意味がある作品かどうかなの。私も今回は、そういう歌詞や曲を書きたいと思った。だから、私自身のために歌詞を書いたともいえるね。

─トラウマといえば、今作では「broken cd」の歌詞が強烈に印象に残りました。乗り越えられない、過去の出来事についてここで歌おうと思ったのはどうして?

Bea:その曲は、『Beatopia』の中で私が唯一過去に浸っている曲。他の曲はそうじゃないのになぜこの曲だけそうなっているかというと、これは私が17歳の時に書いたから。アルバムの中で一番古い曲で、当時の私が感じていたことを歌っているの。すごく悲しい曲だったから、出来てすぐはあまりリリースする気になれなかったけど、今回は心の準備ができていた。それで改めてレコーディングすることにしたの。

─最近、若い世代の間でCDがリバイバルしていますよね。あなたにとってCDはどんな存在なのでしょうか。

Bea:例えば携帯などの端末で音楽を聴くのと違って、CDだと簡単に別の作品やアーティストに飛んだりすることって出来ないじゃない? なので、本当に自分が好きな作品を聴き込むのに向いていると思う。フィジカルは形に残るからコレクションもできるし。実は昨日もCDを買ったんだ。グウェン・ステファニーのアルバム(笑)。あと、ディズニーの曲も全部CDで持ってる。



─曲作りに話を戻しますね。メロディはいつもどうやって作っているのですか?

Bea:コード進行を考えることから始めることが多いかな。私はギターがないと曲が作れないから、いつも手元に置くようにしている。一度ギターでメロディが完成したら、その上に歌詞を乗せるの。普段、私1人で曲を書く時のプロセスはそんな感じ。ただ『Beatopia』ではジェイコブがコード進行をギターで作ってきて、そこに私がメロディや歌詞を乗せたこともあったし、私がコード進行をスタジオに持って行って、そこから2人でメロディや歌詞を考えたこともあった。結構、いろんなやり方がミックスしたアルバムになったの。

─今作がバラエティに富んでいるのは、それが理由の一つかもしれないですね。それにしても、どの曲もコードとメロディの関係がとても印象的です。

Bea:ありがとう。私はベストなギタープレイヤーではないから、そこから生まれるコード進行もかなり独特。かなり勝手なチューニングで(曲が)出来ることもあるから。オープンコードでプレイするときもあるし、一度に指を2本しか使わないし(笑)。ギターが上手くないぶん、出来るだけシンプルな弾き方にしようと思っているのだけど、それが普通のチューニングや弾き方では得られないような、リアルで剥き出しのサウンドにしているのかもしれない。メロディの乗せ方にもルールなんてないから、ものすごく自由でフレキシブル、かつパーフェクトな流れができるの。とにかく、自分の直感に従うことが大事なんだよね。

ビートルズと映画への愛、サマソニと初来日について

─あなたの楽曲は、とりわけビートルズからの影響を強く感じます。

Bea:ビートルズは大好き。私、CDだけじゃなくて、ビートルズのカセットもたくさん持ってるよ。特に魅力を感じるのはポール・マッカートニーのメロディラインだね。彼のソングライティングって本当に素晴らしい。シンプルで使われているコードも少ないのに、全体のスケールがものすごく大きいでしょう? 私が特にリスペクトをしているのはその部分なの。そういう作り方ができたらいいなと思っているんだよね。

─特にお気に入りのビートルズソングというと?

Bea:「Here, There And Everywhere」かな。自分の結婚式で流すことを常に妄想してるから(笑)。それから「Junk」(ポールがビートルズ後期に作曲し、自身のソロ『McCartney』に収録した曲)と、『Abbey Road』の最後に入っている「Her Majesty」も好き。

─どれもポールの曲ですね。

Bea:ただ、ポールは素晴らしいソングライターだけど、私のお気に入りはジョージ・ハリソンなんだ。




─活動初期には、カバー曲として映画『her/世界でひとつの彼女』の挿入曲「Moon Song」を取り上げていましたよね。この曲や、映画『her』への思い入れはどのくらいありますか?

Bea:私、『her』で主演を務めたホアキン・フェニックスがとにかく大好きなのよね。演技も素晴らしいし、彼が出演している映画は全部見てる。『her』という作品自体、美しくて音楽も最高よね。私はヤー・ヤー・ヤーズのファンでもあるから、カレン・Oが作曲した「Moon Song」をカバーせずにはいられなかったの。



─映画からインスパイアされて曲を書くこともある?

Bea:もちろん。私の夢は、いつかサウンドトラックを作ることだから。それくらい映画は大好き。お気に入りは『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』という映画なんだけど、まだ観たことがなかったら絶対に観てほしい。あと、『マリー・アントワネット』も好き。私ってもともと時代劇が好きなんだけど、『マリー・アントワネット』は中世を舞台にしながらサントラではインディ・ミュージックを起用しているのがすごくカッコいいと思う。もし私が作るなら、そういうサントラがいいな。



─さて、今年はサマーソニックで初来日を果たしますよね。日本にはどのような印象がありますか?

Bea:日本を訪れるのは全人類の夢でしょ。もちろん私もバンドメンバーも死ぬほど楽しみにしているし、冗談抜きで空のスーツケースを持って行って洋服でパンパンにして帰ってくるつもり(笑)。家の中に飾るものとかも買いたいな。新しい家を買ったばっかりだから、日本で素敵なものを手にいれてデコレーションしたい。

美味しいものもいっぱい食べたいし、毎日カラオケにも行きたい。あと、ジブリ美術館も! そしてもちろん、日本のみんなに会えるのがすごく嬉しい。アジアでツアーするのって、きっと欧米でのツアーとは気分が違うと思うんだよね。アメリカよりもホームにいる感じがするというか、より強いコネクションを感じるんじゃないかと思う。

─サマソニではあなたと同じ日、同じステージにThe 1975、レーベルメイトのリナ・サワヤマも出演しますね。

Bea:そう、みんなで一緒にサマソニを経験できることも嬉しいんだよね。The 1975とリナ・サワヤマ両方の大ファンだし、友人でもあるから。特にリナのことはベスト・ポップスターだと思ってる。彼女は本当に素晴らしいアーティストなの。

─ここ数年はあなたを始め、ミツキやジェイ・ソム、ササミ、ジャパニーズ・ブレックファストなどアジアの女性アーティストによる活躍が目立っています。こうした状況をどのように感じていますか?

Bea:起こるべくして起こっていると思う。全員が最高のアーティストだし、彼女たちが表舞台に立って人々の前で自分たちの作品を披露し、大きな役割を果たしていることが本当に嬉しく誇りに感じている。私が15歳の頃は、このコミュニティが十分に注目されることはなかった。でもそれが今、やっと報われつつあるのだと思う。すごくハッピーなことだよね。



ビーバドゥービー
『Beatopia』
2022年7月15日リリース
国内盤ボーナストラック、歌詞対訳、ライナーノーツ付
再生・購入:https://smarturl.it/49qpjl

SUMMER SONIC 2022
2022年8月20日(土)〜21日(日)
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※ビーバドゥービーは8月20日(土)東京会場、21日(日)大阪会場に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/

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