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ZZトップ永遠の名曲10選

Rolling Stone Japan / 2022年7月23日 9時30分

ZZトップ(Photo by Aaron Rapoport/Corbis/Getty Images)

ZZトップのダスティ・ヒルが亡くなってからもうすぐ1年。彼の演奏も収められた最新ライブアルバム『RAW』のリリースを記念して、テキサスが生んだヒットメーカートリオの代表曲を振り返る。

ZZトップは、シンセサイザーをフィーチャーした楽曲がMTVでヒットする前から、そんじょそこらのブルースロックバンドとは一線を画していた。クリームやジミ・ヘンドリックスがサイケデリックカルチャーに染み込ませたエレクトリックブルースを、テキサスの埃っぽい大地へと引き戻したのがZZトップだった。ただし、元どおりの正統派という訳でもない。異世界を思わせる楽曲「Jesus Just Left Chicago」に代表されるように、フランク・ベアード(Dr)とダスティ・ヒル(Ba,Vo)のリズムセクションがミステリアスでハードなグルーヴ感を出し、ビリー・ギボンズのリードギターが次元を超えたスコールを降らせる。バンド初期のリハーサル時に「俺たちは、お互いにテレパシーのようなもので通じ合うようになった」と、かつてギボンズは語った。80年代にバンドが変身した時も驚いたが、バンドの淫らな歌詞も常に衝撃的だ。ただ、80年代初頭のアルバム『Eliminator』からエレクトロニクスを導入したことは、バンドの持つ独特なエッセンスをより引き出す結果となった。




今年7月22日にリリースされた最新ライブアルバム『RAW』は、ヒューストンのバーで演奏していた10代のブルース・バンドが、国際的なスーパースターに昇り詰めるまでのキャリアを掘り下げ、グラミー賞ベスト・ミュージック・フィルム部門にノミネートされるなど高く評価されたサム・ダン監督による2019年公開のNetflixドキュメンタリー映画「That Little Ol Band From Texas」のサウンドトラック。

同映画ではZZトップのクラシック・ラインナップが、テキサス最古のダンスホール「Gruene Hall」に集い、親密なセッションを行っているインタールード映像が使用されていた。『RAW』はこの時の演奏がベースとなっており、ほぼ1日で録り終えたこともあって、タイトル通りの非常に生々しい演奏が収められている。プロデューサーをビリー・ギボンズが務めた同作は、昨年7月28日に帰らぬ人となったダスティ・ヒルに捧げられ、バンドの絆の強さを見せつけるような作品となった。

米ローリングストーン誌がセレクトした以下の10曲のうち、5曲が『RAW』でも演奏されている(★印)。さっそくZZトップの代表曲を聴いていこう。

Text by DAVID BROWNE, KORY GROW, BRIAN HIATT, JOSEPH HUDAK, ANGIE MARTOCCIO, SIMON VOZICK-LEVINSON


「La Grange」(1973年)★

ジョン・リー・フッカー風の軽快なリズムギターに乗った、ビリー・ギボンズ曰く「2分間の奇跡」。テキサス州ラ・グランジェに実在した老舗の売春宿「チキン・ランチ」に捧げた曲。チキン・ランチは、映画『テキサス1の赤いバラ』のモデルにもなった。「初めて訪れたのは13歳の時だった」と1986年に、ダスティ・ヒルがスピン誌に語っている。彼は、ZZトップの曲がリリースされるわずか数カ月前にチキン・ランチが閉鎖されたことに憤慨していた。「売春宿とはいえ100年も続いたのには、それなりの理由があったはずだ」—B.H.



「Waitin for the Bus」(1973年)

貧乏なZZトップが故郷を目指す。彼らの代表作の1枚である『Tres Hombres』のオープニングを飾るホメロス風の楽曲は、薄っぺらなサウンドで正確に刻まれるブルージーなギターリックと、手数は少ないがタイトなドラムラインで始まる。バンドのエレクトロブルース時代を予感させる曲で、ライブではギボンズとヒルが「どうかお慈悲を!(Have mercy!)」と懇願する。続いてギボンズが、ビールと残り物でしのぎながら一日中バスを待ち続けている理由を説明する。やがてバスが到着するものの、なんと「満員でぎゅうぎゅう詰め」だった。名手ジェームズ・ハーマンによるブルースハープのソロをフィーチャーした曲の終わり間際に、ZZトップのメンバーたちは、いつかキャデラックに乗ってやると誓う(彼らはアルバム『Eliminator』の大ヒットを予見していた)。「バスの車内やバスステーションでは、いろいろな人間と出会える」とヒルはスピン誌に語った(1985年)。「俺の趣味は人間ウォッチングだ。だからバスステーションや電車の駅が大好きさ。バスでは誰の隣に座るかが重要で、そいつが美味いワインを持っていたらもう最高だ」と彼は言う。『Tres Hombres』では、何事もなかったかのように切れ目なく次のバーロッカー曲「Jesus Just Left Chicago」へと続く。結果、ロードロック史上最高のワンツーパンチとなった。—K.G.



「Tush」(1975年)★

軽快で泥臭い12小節のブルースで、「多くは望まないぜ」とダスティ・ヒルが悲痛な叫びを上げる。歌詞は、アラバマ州フローレンスのロデオ競技場でのコンサート前に、サウンドチェックをしながらヒルがものの10分で書き上げた。「お願いだから俺をダウンタウンへ連れて行ってくれ。俺は”Tush”なものを求めているんだ」と歌う。ヒルは”Tush”という言葉について、「(”Thats a tush car”の歌詞に見られるような)とても豪華でぜいたくなもの」や「ニューヨークで意味する何か」としか、インタビューで説明していない。ヒルの言葉を無視すれば、正直であることと、そして崇拝と冒とくを混ぜ合わせる昔からのやり方へ新たにひとひねり加えたスタイリッシュさがポイントになる。数年後にZZトップが思いがけずMTVのスターとなった時、ローリングストーン誌のカート・ローダーが「Tush」についてさらに考察している。ローダーは「曲の意味など考える必要があるだろうか? ギターのボリュームさえ上げればいいのだ」という結論に達した。「Tush」がZZトップ初のビッグヒットとなった1975年当時は、いい時代だった。—S.V.L.



「Im Bad, Im Nationwide」(1979年)★

大ヒットを夢見たZZトップが1979年に自信を持って送り出したブルース曲だったが、4年後に『Eliminator』が出るまで、彼らの夢はお預けだった。それでもビリー・ギボンズ、ダスティ・ヒル、フランク・ベアードは、短いドレスを着た女たちをはべらせて「ラッキーストライクを吸い」、キャデラックで街を流しながら、自分たちほどクールな奴らはいないだろう、と胸を張る。ギボンズはギターワールド誌のインタビュー(2009年)で、「Im Bad, Im Nationwide」がテキサスのギタリスト、ジョーイ・ロングに捧げた曲だと語っている。ロングから借りた、ブリキでできたマンドリン風の楽器にインスパイアされて書いたという。アウトロではクラビネットの音も聴こえるが、「Im Bad, 〜」をきっかけにベーシストのヒルは、ピアノやキーボードをよく弾くようになった。「ダスティ(・ヒル)はキーボードのユニークなサウンドが気に入ったから、鍵盤の技術を身に付けたいと考えたのさ」とギボンズは証言している。—J.H.



「Cheap Sunglasses」(1979年)

時には、過酷なコンサートツアーからインスピレーションを得ることもある。「Im Bad, Im Nationwide」と並び、1979年のアルバム『Degüello』(邦題:皆殺しの挽歌)に収録されたハイライト曲のひとつ。メンバーがツアー中に見かけたチープなサングラスをテーマにした曲だ。バンドはツアーで長距離を移動するため、何度も途中で休憩しなければならない。「どこのガソリンスタンドでも、ボール紙で作ったディスプレイに安くて酷いデザインのサングラスを並べて売っていた」とヒルはスピン誌に語った。ゴツゴツしたギターリフとヒルのステディなベースラインで始まる「Cheap Sunglasses」のテーマになっているサングラスは、二日酔いの朝に使える道具というだけではない。MTV時代の到来を前に、ロードハウスブルースのギターリフを心地よくモダンに聴かせるバンドの技量を証明した、初期の作品だ。—D.B.



「Gimme All Your Lovin」(1983年)★

「俺たちがシンセサイザーをちょっと試してみたら、メーカーからあらゆる種類が出てきた。リスク覚悟で思い切ってやってみたのさ。バンドが新たな展開を見せ出した頃の曲だ」とビリー・ギボンズは、ローリングストーン誌のインタビューで語っている。『Eliminator』からの1stシングルとなった本曲を皮切りに、80年代の先端技術を使ったZZトップのイメージチェンジが本格化した。80年代のシンセサイザーと燃えたぎるギターリフが、ピュアなアドレナリンを4分間にわたり激しく放出し続ける。同曲はラジオにおけるクラシックロックの定番になると同時に、アルバムジャケットにも使われた1930年製フォード・クーペが登場するティム・ニューマン監督(ランディ・ニューマンのいとこ)によるミュージックビデオもまた、車とギターと女性という、ZZトップのお決まりのイメージを作り上げた。—A.M.



「Sharp Dressed Man」(1983年)

1983年の大ヒットアルバム『Eliminator』で、ZZトップとプロデューサーのビル・ハムは、伝統的なテキサスの音とシンセサイザーとを巧みに調和させた。「Sharp Dressed Man」で聴かれるビリー・ギボンズのギターは相変わらずファジーで荒々しいが、シンセサイザーを重ねることでダスティ・ヒルのベースが強化され(人によってはベーストラックを置き換えたとも表現している)、着飾った賛歌に躍動するリズムを吹き込んでいる。メンバーはブレザーやスカーフでなくダスターコートにフェドーラ帽という出立ちを選んだものの、おしゃれなミュージックビデオと共に、楽曲もまた80年代を代表する作品となった。「似合うかどうかは、着こなす人間次第だ」とヒルは、スピン誌に語っている(1986年)。「バイクに乗る時はスマートなレザーがよく似合う。パンクロッカーにはパンクロッカーに合うスタイルがある。どんなファッションでも、おしゃれにもなればダサくもなる。要は自分がどう思うかだ。自分でおしゃれだと思えば、おしゃれになれるだろう」—J.H.



「Got Me Under Pressure」(1983年)

ビリー・ギボンズは、『Eliminator』からのヒット曲「Got Me Under Pressure」に登場する、高慢な麻薬中毒の女帝とどのように仲良くなったのか、決して説明しない。なぜなら、彼女からの強いプレッシャーがあったからだ。彼にできるのは、彼女の好みに合わせてフランス料理や美術館に付き合い、ロンドンフォグのレインコートを着て車の中でセックスすること。曲のブリッジ部分で彼は彼女との別れを決心するものの、告白すれば彼女に殴られて道端の溝に捨てられるだろう、と想像する。しかし全ては、ZZトップが1983年に作り上げた妄想に過ぎない。「誰もが、『Got Me Under Pressure』は俺のガールフレンドについて書いた曲かと尋ねる」とギボンズはスピン誌に語った(1985年)。「ガールフレンドでなければ、いったい誰だと聞かれる。幸い俺たちには、歌に出てくるようなプレッシャーはない。たぶん俺たちは、いいタイミングで街を出たからだろう」とギボンズは言う。最初のレコーディングはギボンズと共作者のリンデン・ハドソンで進められ、ハドソンがベースとシンセサイザー(それからドラムマシン)を担当した。ライブではギボンズとヒルが交互にヴォーカルを取り、フロイトをも困惑させるような三つ巴のねじれた関係を表現している。—K.G.



「Legs」(1983年)★

『Eliminator』からの3rdシングルで、煌めくシンセサイザーとラジオ受けするサビを徹底的に盛り込んでいる。ゴリゴリで力強い「Sharp Dressed Man」や「Gimme All Your Lovin」とは一線を画し、むしろヒューイ・ルイスに近い。あくどいほどコマーシャルでキャッチーに徹した「Legs」は、トップ10入りしたZZトップの3作品中の1曲となる。スピン誌のインタビュー(1986年)で曲の成り立ちを振り返った時のビリー・ギボンズは、完全に作家のようだった。「ロサンゼルスを車で走っている時に、ひどい土砂降りに遭った。すると道路の脇に、リアルに可愛い女の子が立っていた。通り過ぎた後で”停まった方がいいかな”と考えた。Uターンして乗らないかと誘おうとしたが、引き返す前に彼女の姿はなかった。”彼女には脚があり、使い方を心得ていた”ということさ」とギボンズは語った。印象的なシーンだ。—S.V.L.



「Rough Boy」(1985年)

アルバム『Greatest Hits』のライナーノーツによると、バンドはプロト・インダストリアルのパワーバラード「Rough Boy」を、「ある冬の寒い日にテキサス西部の荒野で書いた」としている。ギボンズがハスキーな声で後悔の念を優しく歌い、自分の誤った振る舞いを理解しようとする。そして泣きのギターに乗せて、「俺はラフな男だ」と反省する。ZZトップの三人は、テキサスブルースとニューウェーブの融合を実現し、ダスティ・ヒルによる心揺さぶる幽玄なキーボードが、ギボンズのエモーショナルな最高のギターソロを引き出した。ギボンズはスピン誌のインタビュー(1985年)で、ZZトップがバラード曲を書くにあたって”ラフ・ボーイ”はどうしても必要な存在だった、と述べている。「”ZZトップのファンに、どうしたら美しく豊かなサウンドを受け入れてもらえるか”ということから、彼が登場した。俺たちが素敵な音楽を奏でるには、ラフな男が必要だったのだ。そこで”彼”が誕生したのさ」—K.G.



From Rolling Stone US.



ZZトップ
『RAW』
発売中
詳細:https://wmg.jp/zztop/

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