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アット・ザ・ゲイツが語る、メロディック・デスメタルの名盤制作秘話

Rolling Stone Japan / 2022年8月10日 12時0分

アット・ザ・ゲイツのトーマス・リンドバーグ(Photo by Olly Curtis/Total Guitar Magazine/Future via Getty Images)

2022年8月14日、幕張メッセで開催される「DOWNLOAD JAPAN 2022」に出演するアット・ザ・ゲイツ。2020年のDOWNLOAD JAPANに出演が決まっていたものの、コロナ禍の影響でイベントが中止となったため、今回が念願の来日となる。

スウェーデンのイェーテボリで結成、北欧メロディック・デスメタルの重鎮として君臨する彼らはDOWNLOAD JAPANで1995年の名盤アルバム『Slaughter Of The Soul』完全再現ライブを行なうことを宣言。現代のメタル・シーンにおける最重要作品のひとつが再現される機会は世界でも稀であり、日本でも1回のみ。”必見”という表現が控えめ過ぎるライブである。

ここでは2020年に取材したバンドのヴォーカリスト、トーマス・リンドバーグのインタビューを再構築してお届けする。

【動画を見る】アット・ザ・ゲイツのライブ映像

ーアット・ザ・ゲイツが『Slaughter Of The Soul』を完全再現する。ファンには最高のニュースです。

ありがとう。『Slaughter Of The Soul』完全再現はまだ1度しかやっていないんだ(※2020年時点)。フロリダ沖の「70,000トンズ・オブ・メタル」クルーズがワールド・プレミアだった。みっちりリハーサルしたし、すごい盛り上がりになったよ。さらに日本でのショー、それから夏のヨーロッパでのフェスに向けてさらにリハーサルを積むし、エキサイティングなショーになる。ダウンロード・ジャパンでの持ち時間はまだ聞いていないけど、アルバムを全曲プレイして、残りの時間は他のアルバムからの曲をやる。



ー「70,000トンズ・オブ・メタル」で『Slaughter Of The Soul』ライブをやった感想を教えて下さい。

まさに”嵐のライブ”だったな(苦笑)。「70,000トンズ・オブ・メタル」では2回ライブをやったんだ。1回目はインドアのステージで、いろいろなアルバムからプレイした。2回目は甲板(デッキ)のステージで『Slaughter Of The Soul』再現ライブをやったけど、すごい強風でね、ステージの屋根を撤去してプレイすることになって、開演が数時間遅れたんだ。それで準備が出来たとき、船内放送で「アット・ザ・ゲイツのショー、これから始まります」って流したんだよ。非常警報みたいにね。相変わらず風は強かったけど、無事プレイ出来た。緊張感があって、良いショーになったよ。


トーマス・リンドバーグ



「再現ライブはひとつの国で1回ずつしかやらない」

ー1995年のアルバム発表以来ライブでやっていない曲もプレイしましたが、それはどんな経験でしたか?

かなり久しぶりの曲もあったし、スリルを感じた。インストゥルメンタル「THE FLAMES OF THE END」はアルバム発売当時のライブでもプレイしなかったんだ。初めてステージで演奏したのはオランダのロードバーン・フェスティバルだったと思う(2019年)。あのショーでは普段やらないスペシャル・セットをやったんだ。フィリップ・グラスの『コヤニスカッツィ』とかね。それに、2017年に参加したヨナス・ストルハマー(Gt)を加えたラインアップでプレイするのが初めての曲が5曲ぐらいあった。『Slaughter Of The Soul』は顔面にパンチをブチ込むアグレッシヴなアルバムだし、30分ちょっとで嵐のように駆け抜けていく。去年からサウンドチェックでやっていたし(※2020年時点)、最高のノリになるよ。基本的にアルバム再現ライブはひとつの国で1回ずつしかやらないんだ。スペシャルなものにしたいんだよ。スウェーデンでは7月のゲフリ・メタル・フェスティバル、ドイツでは8月のヴァッケン・オープン・エアーのみだ。日本では世界のほとんどのオーディエンスより前、3月に『Slaughter Of The Soul』ライブを観ることが出来るんだ。


ヨナス・ストルハマー

ー『Slaughter Of The Soul』をライブ再現して、新たな発見はありますか?

うん、演奏するたびに、それまで気付かなかった発見がある。「アントゥ・アザーズ」で複雑なギターのパートがあって、「こんなアレンジだったのか!」と驚いたりしたよ。

ーアルバムをレコーディングしているとき、自分たちが”伝説”を作っている意識はありましたか?

まさか(笑)。とにかく自分たちが作り得る最高の、誇りに出来るアルバムを作ろうとしただけだよ。理想を高く持って、ハードに働けば、きっと悪くないアルバムになると信じていた。正直、周りのことは考えていなかったな。もちろん良いアルバムだと確信していたけど、徐々にいろんなバンドが「影響を受けた」と話すようになって、いかにスペシャルな作品だったか気付いた。でも気付いた頃にはアット・ザ・ゲイツは解散していたんだ。

ー『Slaughter Of The Soul』を作ったとき、「最もクリエイティヴな環境だった」とインタビューで回想していましたが、それはどんな環境だったのでしょうか?

『Slaughter Of The Soul』はバンド全員が集中して作ったアルバムだった。それまでのアルバムが100%だったとしたら、150%を注入した感じかな。スタジオにマジックな空気が流れているのが判ったよ。ただ、再結成して作った『AT WAR WITH REALITY』(2014年)、『To Drink from the Night Itself』(2018年)も同じ集中度で作ったアルバムだし、やはり誇りにしているよ。


「俺たちが聴いて育ったすべてのヘヴィ・メタルを、デス・メタルのアプローチで解釈した」

ー『Slaughter Of The Soul』はいわゆるイェーテボリ・メタル・サウンドを確立させた作品と評価されていますが、どのようにして独自のスタイルを築き上げたのですか?

俺たちは必ずしも斬新な音楽を生み出したわけではない。デス・メタルにクラシック・ヘヴィメタルのメロディを加えて、全力でアウトプットしたんだ。ジューダス・プリーストからシン・リジィ、エクソダス、ダーク・エンジェル、メタリカ……俺たちが聴いて育ったすべてのヘヴィメタルを、デスメタルのアプローチで解釈したんだよ。それが特別なケミストリーを生み出したんだ。

ープロデューサーのフレドリック・ノルドストロームに「インダストリアルなサウンドが欲しい」とリクエストしたそうですが、具体的にはどんなサウンドを求めていたのですか?

当時俺たちはゴッドフレッシュやスワンズをすごく気に入っていたんだ。シャープでハーシュ、情け容赦ないサウンドを求めて、フレドリックに”インダストリアル”な音をリクエストしたんだと思う。『Slaughter Of The Soul』がインダストリアル・アルバムだとは誰も思わないだろうけど、同じ苛酷さと緊迫感が漲っているよ。

ー日本公演は『Slaughter Of The Soul』完全再現ライブということで、アルバム通り「ブラインデッド・バイ・フィアー」から始まることになりますか?

うん、そうなるだろうね。

ー「ブラインデッド・バイ・フィアー」は世界中のメタル・ファンから名曲扱いされていますが、あなた自身はあまり気に入っていないのだとか?

まあ、悪い曲じゃないけどね。「アンダー・ア・サーペント・サン」のような曲の方が労力をかけて書いたし、思い入れがあるのかも知れない。「ブラインデッド・バイ・フィアー」はレコーディング・セッションの最後にパッと書いた曲だった。もちろんヘヴィな音楽を好きな人間だったら、嫌いな人はいないと思う。メタリカの「バッテリー」やスレイヤーの「エンジェル・オブ・デス」みたく、すごく直接的にアグレッシヴな曲だし、首を振るにはベストな曲だ。



ーブラック・サバスの「パラノイド」もアルバムのレコーディング・セッションの最後に付け足しのような感じで書かれて、バンドの予想外に神格化されるようになったそうですね。

彼らにどれだけ思い入れがあるか判らないけど、俺自身も「パラノイド」は大好きな曲だし、メタル史上に残るクラシック・ナンバーだと思う。「ブラインデッド・バイ・フィアー」は俺のフェイヴァリット・ソングではないけど、この曲を愛してくれるファンには感謝しているし、バンドにとってスペシャルな曲だ。だから普段のアット・ザ・ゲイツのショーでは最後にプレイしているし、今回は1曲目にプレイするんだ。最初からアグレッションを全開にするから、強力なショーになるよ。


ドラム・トラックに一部サンプリングを使用

ー『Slaughter Of The Soul』のドラム・トラックの80%がライヴで、バスドラムの20%がパンテラ『ファー・ビヨンド・ドリヴン』、スネア・ドラムの20%がスレイヤー『レイン・イン・ブラッド』のサンプリングだというのは本当ですか?

本当だよ。別に隠すことじゃない(笑)。アルバムのドラム・サウンドにちょっとしたエッジを加えたかったんだ。提案したのはプロデューサーのフレドリック・ノルドストロームだった。当時はサンプリングという概念が面白くて「ぜひやってみよう!」とみんな乗り気だったのを覚えている。元々フリー素材として提供されたサンプルだったし、パンテラやスレイヤーに金を払う必要はなかったんだ。エイドリアン・アーランドソンのドラムスがメインだけど、要所でサンプリングを使うのは効果的だったよ。


エイドリアン・アーランドソン

ー「THE FLAMES OF THE END」は元々ホラー映画『Day Of Blood』のために書かれたそうですが、その映画について教えて下さい。

その話はアンダース・ビョーラー(脱退済/ギター)に訊いた方がいいね。『Day Of Blood』は彼が作っていた自主映画なんだ。森の中で殺人事件が起きて……という内容で、5分ぐらいの短編映画だった。そのテーマ曲のデモを俺たちが聴いて、面白いと思ったんで、アット・ザ・ゲイツ・ヴァージョンにアレンジしてアルバムに入れたんだよ。あの映画は今でもアンダースがVHSのビデオテープを持っている筈だよ。仲間内のアマチュア映画だし、今のところ公にリリースする予定はないけどね(笑)!

ー『Slaughter Of The Soul』発表後にバンドが最初の解散をしたのは、アンダースの脱退が大きな原因のひとつと言われていますが、彼が2017年に2度目の脱退をしてもバンドが活動を続けているのは、どこが異なるのでしょうか?

アット・ザ・ゲイツが最初に解散したとき、俺たちはこのバンドが自分たちにとっていかに重要であるかを再認識したんだ。アンダースは再び脱退することになったけど、残った俺たちはアット・ザ・ゲイツの音楽を愛しているし、新しい音楽を生み続ける渇望がある。そして世界中のファンのために続けていく義務があると考えたんだ。もちろんアンダースとは今でも友達だよ。実はこのインタビュー(電話)は、彼と一緒の飲み会をちょっと抜け出してやっているんだ。これから戻ってまた飲み直すところだよ(笑)。

ー『Slaughter Of The Soul』はイギリスのイヤーエイク・レコーズから発売されましたが、彼らとの関係は今も良好ですか? ナパーム・デスやピッチシフターなど、レーベルを離れた後に批判の声を上げるバンドもいますが……。

アット・ザ・ゲイツはイヤーエイクを離れたけど、レーベル・マネージャーのダン・トービンとは今でも連絡を取り合っているよ。創始者のディグビー・ピアスンとも面識があるけど、いつも話すのはダンの方だ。ナパーム・デスやピッチシフターの話は聞いているけど、俺たちとイヤーエイクとの関係はずっと昔から良かった。単にラッキーだったのかも知れないね(苦笑)。

<INFORMATION>

「DOWNLOAD JAPAN 2022」



2022年8月14日(日)千葉・幕張メッセ
時間:OPEN 9:30 / START 10:30
料金
VIP:35000円(入場チケット+VIP特典)
スタンディング:18000円(別途1ドリンク代)
【タイムテーブル】
OPEN 9:30
9:45-10:15:BAND-MAID(Opening Act)
10:30-11:20:The Halo Effect
11:50-12:40 :Code Orange
13:10-14:00:At The Gates
14:30-15:20:Soulfly
15:50-16:40 :Steel Panther
17:10-18:00:Mastodon
18:30-19:30 :Bullet For My Valentine
20:00-21:50:Dream Theater

オフィシャルサイト








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