ヤングスキニーが語る、“嘘だらけで、矛盾だらけな日常を歌う”理由
Rolling Stone Japan / 2022年8月10日 18時0分
”嘘だらけで、矛盾だらけな日常を歌う”平均年齢20歳の4ピースバンド、ヤングスキニーが2022年8月10日に配信シングル『コインランドリー』をリリースする。都会の深夜を思わせる、たゆたう空気感を纏いながら淡々と歌われるメロディと歌詞。幸せそうな、だけどちょっとした不安も内包しながら進む時間の儚さが感じられてなんだか切ない。
江沼郁弥(ex plenty)をサウンドプロデューサーに迎え、前作『東京』とはまったくテイストの違う楽曲に仕上がった今作。作詞作曲を手掛ける、かやゆー。(Gt.Vo)、バンド初期からのメンバーで楽曲アレンジの中心人物、ゴンザレス(Gt)の2人に話を聞いた。
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―まず、自主企画ツーマンライブ「ヤングスキニーpresents.”老いてもヤングスキニーツアーvol.1” ここからはじまる編」を振り返ってもらえますか。
かやゆー。(Gt.Vo):初めての自主企画ということで僕たちを観に来てくれるお客さんが多いので、期待に応えなきゃなというプレッシャーもあったんですけど、自分たちが今できる最大限のライブをお客さんに届けられたと思っています。楽しかったです。
ゴンザレス(Gt):自分たちの企画にたくさんのお客さんが来てくれて、多くの人たちが僕らの音楽を聴いてくれるということに感謝しかないです。
―バンドは結成して2年ということで、まさにコロナ禍で活動を始めたということですよね。最初のライブはお客さんがいたんですか?
かやゆー。:最初は無観客配信でした。2回目のライブは有観客だったんですけど、今回はそこよりも大きなライブハウスでやることができました。2年という短い期間ですけど、今回のツーマンライブでは、自分たちのやってきたこと、良いこともつらいことも思い出してとても感慨深くなりましたね。
ゴンザレス:最初の頃のライブも、ありがたいことにまったくお客さんがいないということもなくて、SNSを通じて観に来てくれる人も多かったんです。ライブを重ねていくにつれて、キャパが大きくなって、それに伴ってお客さんも入ってくれるようになって。そういう意味では、2年前と比べると自分たちの成長を感じることができました。
―かやゆー。さん、ゴンザレスさんって普通に呼んでますけど、アーティスト名が変わってますよね。
かやゆー。:本名から来てるんですけど、小学校の頃から友だちから呼ばれてるあだ名です。それをSNSのアカウント名にしてそこに音楽動画を載せていたんですけど、それがそのまま活動名になっていった感じです。
ゴンザレス:ヤングスキニーはSNSで集まったバンドなんですけど、かやゆー。に声をかけたときにたまたま使っていたSNSのアカウントがゴンザレスだったんです。深い意味はまったくないです(笑)。
―8月10日に配信シングル「コインランドリー」がリリースされます。約3ヶ月ぶりの新曲発表ということですが、どんなときにできた曲ですか。
かやゆー。:できた瞬間のことは覚えていないんですけど、元カノと付き合っていたときに布団とかを家で洗濯するのが大変なので、近くにあったコインランドリーに一緒に行ってたことをふと思い出しながら書いた曲です。今までは結構激しいロックとか、めっちゃバラードな曲をバンドでやっていたんですけど、今回は夜のエモい感じの曲にしようと思って作りました。
―既に発表していた曲なのでしょうか。
かやゆー。:「Eggs」に弾き語りを載せていたんです。いつかバンドでやろうと思っていたんですけど、ちょっと今までと違う路線だから、みんなで編曲するのにも苦労していて、なかなか手に付かなくて。やっと1年越しでリリースできることになった感じです。
―今回、江沼郁弥さん(ex.plenty)がプロデューサーとして参加していますね。アレンジも江沼さんとバンドの名義になっていますが、どうやって制作したんですか。
ゴンザレス:かやゆー。が言ったように、新しい楽曲になっていて、曲調的にキーボードを入れたいと思っていたんです。当初送ってきたかやゆー。のコードに対して、僕が知り合いのバンドマンに相談して出来上がったコードにキーボードを当てたものを江沼さんに送って、それが返ってきて、というやり取りをしながら完成させました。基本的には、もともとあったものを江沼さんから「こういうアプローチもあるよ」って返してもらって、それに対して「ここはこれの方がいいですか?」ってキャッチボールをしながら制作しました。
―江沼さんは楽器演奏、打ち込み、エンジニアまで全部できる方だと思うのですが、バンドにとってどんなものを与えてくれましたか?
かやゆー。:誰かと一緒に1つの音楽を作るということを初めてやらせてもらったんです。僕自身、そんなに音楽知識がある方ではないので、「こういう音の使い方もあるんだ」って、新しい発見ばかりで、今までで一番曲作りが楽しかったですね。
―全体的に鍵盤が前に出ていて、ギターは綺麗な音でバッキングに徹している印象です。
ゴンザレス:鍵盤とかやゆー。のメロ、ベースの3つが前に出て、僕は普段のベース的な立ち位置で、バッキングで軽く薄く聴こえる程度のギターを弾くことを意識しました。
―後半でベースがすごく歌っている部分がありますが、どんなイメージで出てきたアレンジなんでしょうか。
ゴンザレス:ベースのアレンジに関しては、ベースのりょうとが作っているんですけど、ドラムのしおんも含めて全体で話し合う中で、最初はギターソロでもいいんじゃないかって話も出ていて。でも曲調的に低い音でゆったりしたようなリズム、音を展開した方がいいんじゃないかということでベースソロになったんです。
―深夜の空気感を表現した演奏がすごく良いですよね。かやゆー。さんのボーカルもその空気感に馴染んで聴こえます。歌い方など、こだわったところを教えてください。
かやゆー。:いつもレコーディングのとき、歌録りは数回録って終わる感じで、そんなに苦労したことがないんですけど、今回は自分の理想通りに歌えなくて、何度も録り直しました。今までの曲だったら、力強くそんなに深く考えずに歌って録っていたんですけど、今回は音に馴染ませるように、どういう風に優しくエモく歌えばいいかを考えました。力強く歌うと馴染まないので、本当に”優しくエモく”を心がけて歌いました。
―前作「東京」とはだいぶ違いますが、そこは意識していましたか。
かやゆー。:「東京」とは真逆の曲なんじゃないかなと思っています。「東京」は、自分の感情が100%曲に出ちゃうぐらいの気持ちで力強く歌っていたので。ただ、「コインランドリー」の方がデモは先に出来ていたので、意識して変えようとしたわけではないです。ちょうど、「東京」をリリースするタイミングで「コインランドリー」も制作が進んでいたんですけど、「東京」は自分の中ですごく良い曲だなと思っていて。これをどう越えて行こうかっていうのはハードルが高かったんですけど、あえて真逆の路線に行くことで、越えられたんじゃないかなって、思っています。
―多くのバンドが「東京」というタイトルで曲を歌っていますが、かやゆー。さんにとっての「東京」ってどんなものですか。
かやゆー。:僕は地元が山梨県で、高校卒業と共に上京して1人暮らしを始めたんです。それまで田舎で遊ぶところがなかったのに、上京して急に色んな遊ぶ場所が増えたりする中で、色々変わってしまった曲です。でも、東京をテーマにした曲を頑張って書こうと思ったわけじゃないんです。いつも、作ろうと思って曲を作るタイプじゃないので、今回もたまたま浮かんだ曲が「東京」や「コインランドリー」だったという感じです。
―東京ご出身のゴンザレスさんは、「東京」をどう受け止めていますか。
ゴンザレス:確かに地方から上京する人にとって、東京のインパクトは強いと思いますし、そういう面ではこの楽曲を聴いて共感してくれる人は多いんじゃないかと思います。僕は共感というよりは、楽曲を客観的に見たり聴いたりして「すごいな」という部分が大きいです。
かやゆー。:たぶん彼は僕の曲で共感する曲が一つもないと思います(笑)。
―どうしてですか(笑)。
ゴンザレス:恋愛経験がほぼないので(笑)。このバンドは恋愛の曲が多いんですよ。だから歌詞にはあんまり共感できないけど、楽曲に対してのアプローチは全面的に協力していこうという気持ちでやってます。
―なるほど。それで言うと〈とりあえず今日は君が出してよ 明日もよろしくね〉と言う歌詞はヒモっぽさがあって共感されるかされないか気になります。
かやゆー。:そうですね(笑)。普通に聴いていると、なんかすごく幸せそうなカップルが夜にコインランドリーでデートしてるみたいな曲なんですけど、僕も曲を作って後々ちゃんと歌詞を読んでみたら、「これただのヒモ男じゃねえかよ」って気が付きました(笑)。自分も元カノのヒモだったこともあるんですよ。ただ、その代わりに「ずっとこれからも一緒にいてね」という意味も込めて、〈明日もよろしくね〉って書きました。
―7月23日に渋谷WWW Xで開催した「”老いてもヤングスキニーツアーvol.1”ここからはじまる編」でこの曲の前に、「ヒモと愛」という新曲をやっていますが、連作なんですか?
かやゆー。:いや、そういうわけではないです。「コインランドリー」はちょっとヒモっぽいなという曲なんですけど、「ヒモと愛」は元カノのヒモになっていた自分がいて。今まで「東京」とか「憂鬱とバイト」みたいな曲は自分の体験を元に書いていたんですけど、恋愛ソングは想像だったりドラマを見たり本を読んだりして書いていた部分があるんです。「ヒモと愛」は、自分のことを曲にしたいなと思って書いた新曲です。いつかリリースしてみんなに届けられたらと思います。
―「憂鬱とバイト」で〈この世の中は 生きづらいな生きづらいな〉とわりと軽快な感じで歌っていますよね。正直、20歳の人が「生きづらい」って歌ってるのが結構ショックだったんですけど、それは本音なんでしょうか?
かやゆー。:曲にもある通り、学校も辞めちゃって、もちろん親からの仕送りもなくなって。それで自分で稼いで生活しなくちゃならなくて。「生きるって大変だな」という意味の「生きづらい」という感じですね。
―ゴンザレスさんはこういう個人的な内省的な感情を歌った曲についてはどう感じていますか。
ゴンザレス:「憂鬱とバイト」に関しては、ヤングスキニーの曲の中でも共感できる曲です。僕も、「生きるのは大変だな」っていうことは感じるので。この曲は初めて聴いたときから自分の中に刺さったというか、今もなおライブで演奏しながらも、歌詞を聴きながら深入りしてしまって、自分で聴き入ってしまいますね。
―かやゆー。さんの曲の印象は、初めて聴いたときと変わらないですか?
ゴンザレス:一番最初に「世界が僕を嫌いになっても」を聴いて、一緒にバンドをやりたいと思って声を掛けたんですけど、最初からすごい才能があるなって思っていたんです。「これは声を掛けないで有名になって行っちゃったら絶対後悔するな」と思って、楽器経験がほとんどなかったんですけど、SNSでのバンド募集に声をかけて結成したんです。本当に、かやゆー。が書く曲は捨て曲がないなと思っていますし、そういう部分は変わらないですね。テイストは違えどすべて名曲というか、僕自身は全部好きですね。
―絶賛されてますね!?
かやゆー。:(笑)。
ゴンザレス:たぶん、それはメンバー全員そう思っているはずです。
―かやゆー。さんから見たゴンザレスさんはどんな存在でしょうか。
かやゆー。:彼だけ、唯一結成当初からバンドにいるんです。メンバー全員、バンドメンバーというくくりじゃなくて、普通に友だちとしてやれてるかなと思いますね。知り合いのバンドマンは「グループLINEなんて業務連絡しかしないよ」って言うんですけど、僕たちは日頃あった面白いことをLINEで言ったりとか、「このYouTubeくだらないから見てよ」とか、そういう会話をずっとしているので、本当に友だちみたいな関係です。
―そういう4人でやっているヤングスキニーの、バンドとしての目標や夢ってありますか。
かやゆー。:一番は、メジャーデビューして、もっと地方とか行ったことがないところに足を運んで、ヤングスキニーをまだ見たことがない人に音楽を届けられたらなと思っています。
ゴンザレス:メジャーデビューをすることで、メディアに露出したり、タイアップとかもできれば、音楽だけで生活できる未来が見えるかなと思います。その辺を目標にしています。
―10月にバンド初となる東名阪ワンマンツアー「保証はないけどあなたを幸せにできる気がするワンマンツアー」が開催されます。どんなツアーにしたいですか?
かやゆー。:ツアータイトルは僕が付けました。東京でのワンマンライブは2月にやらせていただいたんですけど、今回は東名阪ワンマンツアーということで、全部ソールドアウトさせて、僕たちだけを観てくれるお客さんの中で、今まで以上の、一番の仕上がりにできるようにしたいです。今から猛練習して曲作りに励んで、来てくれるみんなを幸せにできるようなツアーにしたいですね。
ゴンザレス:ワンマン、ツーマンとライブをやってきて、その中で新曲を公開するごとにSNSで反響をもらうことが多くて。僕的にはそれが嬉しいので、東名阪ワンマンツアーでも新曲を届けられたらなと思ってます。既存曲も当然ですけど、新曲に関しても力を入れて発表出来ればなと思います。
―ツアーが終わると今年も後半ですが、リリースやライブの発表もありそうですか?
かやゆー。:そうですね。2023年になってからも、曲のリリースやライブの告知とか、大きな発表ができればいいなと思っています。
<リリース情報>
ヤングスキニー
Digital Single「コインランドリー」
2022年8月10日(水)リリース
https://yangskinny.lnk.to/CoinLaundry
<ツアー情報>
『保証はないけどあなたを幸せにできる気がするワンマンツアー』
2022年10月8日(土)愛知 CLUB UPSET
開場17:30/開演18:00
2022年10月14日(金)東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO
開場18:15/開演19:00
2022年10月30日(日)大阪 umeda TRAD
開場17:15/開演18:00
https://www.yangskinny.com/
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