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矢沢永吉が12万人のファンを熱狂させた国立競技場2DAYS、MISIAに加えB’zとの共演も

Rolling Stone Japan / 2022年8月29日 0時22分

矢沢永吉(Photo by HIRO KIMURA)

矢沢永吉が、2022年8月27日(土)28日(日)の2日間、東京・国立競技場にて全国スタジアム&ドームツアー『MY WAY』の東京公演を開催した。

初日ゲストにMISIA、2日目にはシークレットゲストとしてBzが登場するなど、2日間で12万人のファンを熱狂させた。2日間の様子をレポートする。

【写真】矢沢永吉の国立競技場2DAYS(全11枚)

初日 8月27日(土)

今回のツアー、特に東京公演は、活動50周年を迎えてメディア出演も積極的に行い精力的に活動する矢沢にとって今年のハイライトとなるもの。快晴でかなりの暑さだったこの日、初の有観客ライブ開催となる新国立競技場には、全国から矢沢ファンが集結。最寄りのJR千駄ヶ谷駅、大江戸線国立競技場駅の周辺から、異様な熱気が溢れていた。また、会場ではデビュー50周年を記念して、矢沢のこれまでの歴史を振り返った”矢沢永吉ミュージアム”が無料で公開され、過去のレアな衣装をはじめ、ライブなどで愛用していたギターも展示されており、コアファンのみならず、初心者にも楽しめるものとなっていた。

スタジアムに入ると、ものすごい数の人が客席を埋めていた。初日だけで6万人を動員しているという。事前に、これまでコロナ禍で禁じられていた「タオル投げ」が解禁されることが発表されており、多くのファンがE・YAZAWAのロゴタオルを肩にかけて、晴天の下で矢沢の登場を今か今かと待ちわびていた。

巨大なステージには左右にスクリーンが設置されており、開演前はレインボーカラーのグラデーションが映し出されていた。また、センターから客席へとせり出したサブステージもあり。午後6時を過ぎると、手拍子の嵐が起こって場内の期待感が最大限に高まった。スクリーンには、ビートに乗って様々なYAZAWAロゴがモノクロで流れだす。ステージ前方から炎が上がり、サングラスをかけた矢沢がステージへと向かう姿が映し出されると、観客の手拍子に一層力が入る。

矢沢がついにステージに姿を現すと、「うぉぉ~!!」と、客席からどよめきが起こった。「オーライ!」と第一声を客席にかけて始まったイントロは、「苦い雨」。ジャケットを脱ぎ捨ててマイクスタンドに向かい、「ロックンロール!」と叫ぶ矢沢。スケールの大きなサウンドがスタジアムにじつにハマっている。規模の大きなライブ会場を知り尽くしている矢沢ならではのオープニング曲のチョイスだ。曲の終盤では、両手を広げると「フォー!!」と雄たけびを上げて、〈prison of pain, prison of pain, trapped by your memory〉と印象的なコーラスパートに自ら加わり、両手で大きく手拍子を煽る。

「みなさん、ようこそいらっしゃい! やっと今日という日が来ました! 昼間暑かったけど、ちょっとずつ良い風が吹いてくると思います。最後まで楽しんで行ってください!」



スクリーンの映像を駆使したりカラフルな照明が飛び交ったりとエンターテイメント色が強いライブが続いているうちに、気が付けばあっという間に日が暮れてきた。

「なんかさ、めちゃ暑いんだけど、気のせいかな? 夏は年寄りにはキツいんだよ(笑)」とぼやいて笑わせる。「やっぱり、シャウト、シャウト、シャウトで歌うと(温度が)グングン上がってくる。でもね、出る前に思ったよ。神様、ありがとうって。こんなオヤジに夏のど真ん中に6万人の野外ライブやらせてくれてありがとうございます!」の言葉に客席は大喝采だ。去年のツアーを31本やったことを振り返ると、「最後の横浜アリーナは、泣きはしないけど、泣く手前かな(笑)? やっぱりウルウルしましたよ。僕だけじゃない、日本の歌手全員が予定が全部飛んだり。ここに来てるみなさんも一緒だったと思います。そして今年、2022年。矢沢50周年です。バチっと記念にしましょうよということで、きっとコロナももう終わってるなと思ったら、全然終わらない。そのぐらいしぶといやつで、みなさん、大変な人いっぱいいると思います。ごめん、今年もう1回、マスクで我慢してくださいということをお願いしないといけない。でもみなさん、必ず勝つから。僕らが必ず勝ちます」と、コロナとの戦いが続く世の中への力強いひと言に、観客はたくさんの拍手で応えた。



そんな言葉の後で歌われたのは、”20代の頃書いたシブい曲”との紹介から、「バーボン人生」。グッと音数を抑えた、ジャジーな演奏に乗せたいぶし銀の歌声と、哀愁漂うサックス、男女のダンサーが登場する演出が矢沢の50年の歩み、華やかさだけではないほろ苦さを表していた。サブステージに足を延ばして歌う矢沢がスポットライトに映し出されると、6万人の視線が注がれて、序盤の名シーンとなった。

メロウな曲とは対照的に、タイトなリズムと鋭いギターに乗せ〈何故に生きているのか?〉と問いかけるように歌うメッセージソング「アリよさらば」、1980年のアルバム『KAVACH』からオールドファンに人気の楽曲「Rolling Night」と、時代ごとのロックチューンが披露されて、50年の楽曲の変遷が随所にわかるセットリストとなっていた。いずれもソリッドなサウンドで、まったく錆び付くことのない矢沢のロックンロールの魅力を伝えてくれる。



途中、ステージ下手のグラウンドに登場したキャデラックに乗り込むと、アリーナ後方をゆっくりと走行しながら客席に手を振る、スタジアムならではの演出によるファンサービスも。会場中がハッピーなムードに包まれると、ライブは後半へ。



「50周年の特別ゲスト呼んでいます。紹介します! 日本の歌姫No1、MISIA!」と呼びこまれたMISIAが大きな拍手に迎えられて真っ白な衣装でステージへ上がる。曲はバラード「HEY YOU…」。矢沢が歌い出してMISIAにつなぎ、サビでハーモニーを聴かせると、2番ではMISIAが歌い出して矢沢の声が重なる。向かい合って歌う2人の見事なハーモニーに6万が酔った。曲中で、「矢沢さん、50周年おめでとうございます!」「MISIAに温かい拍手を!」と称え合う2人。ステージを去るMISIAを見送った矢沢は「歌上手いよね! 最高だよ。感動してます。こうやって、音楽って世代も何もないよね」と噛みしめるように呟いた。



メンバー紹介では、米川英之(Gt)吉田佳史(Dr)らと共に、8年ぶりのバンド参加となるギタリスト、トシ・ヤナギが紹介されてファンから大きな拍手を送られていた。8ビートのリフが始まり、上昇するシンセの音が加わると、ドッと沸いて客席から一斉に手拍子が起こる。最高のライブアンセム「逃亡者」だ。サビの〈噂の街角〉と歌われる場面では、観客の合いの手が入り一体となって盛り上がる。曲のアウトロに差し掛かると、コーラスのリフレインの中、スクリーンにキャロル時代~ソロになってからの様々な矢沢の映像が流れる熱い演出で50年を振り返った。

「矢沢は本当に、50年やれると思わなかったよ。本当にありがとう。最後に1曲行きます」

ピアノの静かな旋律とサックスの音色に導かれて歌い出したのは、名バラード曲「いつの日か」。想いが込められた渾身の歌唱が夜空に響いた。アンコールでは重たくヘヴィなビートで始まり疾走感を増して突っ走るアレンジが光る「恋の列車はリバプール発」。サブステージまで到着すると、列車ポーズ盛り上げる。ラストは「止まらないHa~Ha」。ステージから会場中にライトが飛び交いイントロが始まると、ついにタオル投げが解禁された。曲に合わせて会場中からタオルが頭上に放り投げられて、壮観な景色が広がった。「みなさん、ありがとうー! 帰りに美味いビール飲んでいってね!」と叫んで、初日のステージを終えた。



2日目 8月28日(日)

2日目は初日より気温が低く、開演前からほどよい風が吹いていた。開演前にはスタンドでウェーブが自然発生して、主役の登場前からハイテンションな空気に包まれていた。オープニングで「Are You Ready!?」と映像が煽り、炎が何度も上がる派手な演出で矢沢が登場。衣装のコートを脱ぎサングラスを外すと若々しいTシャツ姿でライブをスタートさせた。

「昨日は暑かった! ステージ上は40℃ぐらいあったんじゃないかな? でも倒れてなるものかって。そしたら今日、10℃も下がって、最高じゃん! 今から2時間、一緒に最後まで、行って行って行って行って、よろしく!」

広いステージを縦横無尽に動き回りシャウトする姿は、長年日本全国を年間100本以上のツアーで回り、可能な限り生の音楽を伝えるという、矢沢のライブへ臨む姿勢が50年経ってもブレていないことを感じさせた。

序盤で数曲を披露した後、ギター1本を抱えてステージに登場した矢沢は、ソロデビュー曲「I LOVE YOU, OK」を弾き語りで披露した。ピンスポットを浴びて歌う矢沢の姿を、背後のスクリーンがモノクロの映像で映し出す。サックスが加わって終わる余韻も素晴らしい名演だった。小気味いいリズムと爽やかなメロディが際立つ「YES MY LOVE」は夏にぴったりな楽曲で、夜が更けて風が吹き抜ける国立競技場に心地よく響いた。緩急織り交ぜたセットリストは、激しい曲もメロウな曲も、矢沢のメロディメーカーとしての才能を改めて知ることができるものだった。「YES MY LOVE」をサブステージで歌い終わるとメインステージへのスロープを戻る途中に、「この坂、結構キツいんだよ(笑)」と呟いて和ませる。言葉とは裏腹な余裕のステージングが続く。



「50年、歌えると思ってなかったね。音楽以外にも、なんか俺に出来ることがあるんじゃないかと思って、いろいろトライしたんですけど、結局ダメだったね。でも、ダメでいいんだよね。なんでもいいから1つもらえたかなと思ったら、こんな感謝はないなと最近はつくづく思います。昨日も同じこと言ったんだけど、コロナには絶対負けねえぞって。新聞を見ても、本当に毎日いろいろあります。でも、ほんのちょっと良いことがあれば、また頑張れるよ。みなさん頑張っていきましょう」と泣かせるひと言も。



ライブ後半になると、代表曲の1つとして欠かせないナンバー「黒く塗りつぶせ」が飛び出した。ギターリフを中心としたバンドの最高のロックサウンドで会場が熱く盛り上がる中、曲が終盤に差し掛かると客席に語り掛ける矢沢。

「昨日MISIAが駆けつけてくれました。初日MISIAで2日目誰もいないのはまずいんじゃないか!? 矢沢の50周年、「矢沢さん、俺たち行きます!」っていうすげえゲストが今日駆けつけてくれています! 紹介します。Bz! 松本、稲葉!」

舞台袖から松本孝弘(Gt)、稲葉浩志(Vo)の2人がステージに上がるのがスクリーンに映し出されると、事態が飲み込めずにざわめいていた観客がドッと湧いた。まさかのシークレットゲストとして、初共演のBz が登場するとは、誰が予想しただろうか。松本、稲葉の順に矢沢と握手してハグを交わすと、矢沢は早くも「最高ー!」と歓喜の表情だ。松本がレスポールで「黒く塗りつぶせ」のコーラスをリフで弾くと、稲葉と矢沢が向かい合ってコーラスで競演。さらに稲葉が「Yeah!」と勢いづけてから〈俺のハートは Get No Satisfied 〉と一番の歌詞を歌い出して、サビで〈みんな 黒く塗りつぶせ〉とシャウトすると、「永ちゃーん!」と、矢沢にボーカルリレー。松本が合間にオブリガードを入れる。とんでもないビッグサプライズに、スタジアムは爆発的な大盛り上がりとなった。


Photo by 達川範一

「たまんないね! もうね、俺幸せ。1回飲み屋か何かで、松本君に会ったんだよね? これだけのメンツが集まったからさ、もう1曲やろうか!」

その言葉に呼応して松本が弾き出したのは、キャロルの大ヒット曲「ファンキー・モンキー・ベイビー」のイントロ。あの有名なフレーズを松本が弾いてるのだから驚きだ。曲が始まると肩を組んで歌う矢沢と稲葉。カリスマボーカリストが並んだ奇跡の光景に興奮が止まらない。歌い終わると「50周年おめでとうございます!」と叫んで矢沢を称える稲葉。松本の肩に手を回した矢沢も「ずっと朝までやろうぜ!」と、興奮冷めやらぬ様子だ。「永ちゃーん!」と再び稲葉が叫ぶと、「Bzでした! 拍手!」と矢沢。2人がステージを下がっても、しばらく会場のどよめきが収まらなかった。



アンコールではおなじみの白スーツでビシッと決めて登場。「止まらないHa~Ha」でスタジアム中を無数のタオルが舞う中、バンドのグルーヴも矢沢の歌もすさまじいテンションで高まっていく。曲が終わり「もうたまんねえよー!」と叫ぶと、そのまま「トラベリン・バス」へ突入。再びタオルが舞い上がる。「Come on! hey h3ey!」カモンヘイヘイ!と煽る矢沢の声に、タオルを投げて応える観客たち。〈たまらないぜあのトラベリン・バスに揺られて行くのは〉と、ロック・ミュージシャンとして生きていくリアルな心情が描かれたこの曲で、ツアー東京公演は締めくくられた。



デビュー50年という歳月を経ても矢沢のボーカル、そしてパフォーマンスはまったく衰えを知らない。それどころか歳を重ねるごとに迫力を増し、艶めいた部分もあってますます魅力が増している。何故50年もの間支持されてきたのか、その答えがこの2日間のライブの中にあった気がする。

そして、2日目のライブ終盤、思わず感極まったのか一瞬歌えなくなるシーンもあった。アーティストとしてはもちろん、人間・矢沢永吉のありのままの姿が垣間見えた瞬間は、観ていてたまらなく胸が熱くなった。ツアーは今後、9月18日(日)に福岡 Yahoo!JAPANドーム、9月25日(日)に京セラドーム大阪で行われる。


<ライブ情報>

EIKICHI YAZAWA 50th ANNIVERSARY TOUR「MY WAY」
東京公演;
2022年8月27日(土)新・国立競技場
開場16:00/開演18:00
ゲスト:MISIA

2022年8月28日(日)新・国立競技場
開場16:00/開演18:00

福岡公演:
2022年9月18日(日)開場15:00/開演17:00
会場:福岡 PayPayドーム

大阪公演:
2022年9月25日(日)開場15:00/開演17:00
会場:京セラドーム大阪

チケット追加販売(8月27日&28日・新国立競技場公演のみ)
チケット価格(税込/指定):S席 9000円 / A席 7000円
※9/18(日)福岡公演・9/25(日)大阪公演の一般販売(先着)スケジュールは近日発表

矢沢永吉 50周年メモリアルツアー特設サイト:https://www.eikichiyazawa.com/feature/50th_myway
MISIAオフィシャルサイト:https://www.misia.jp/

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