マネスキン サマソニ現地取材「優れたロックバンドの条件」と「ヒップホップからの影響」
Rolling Stone Japan / 2022年9月1日 18時0分
サマーソニック東京公演の出番前に、幕張メッセでマネスキンの現地取材を実施。日本中に一躍その名を知らしめたイタリアの4人組が、来日中のエピソード、ポスト・マローンへの共感とヒップホップからの影響、ロックバンドとしてのあり方について語ってくれた。
【写真を見る 全17点】マネスキン、幕張メッセでの撮り下ろしフォト(記事未掲載カット多数)
豊洲PITでの単独公演とサマーソニック出演によって大旋風を巻き起こしたマネスキン。その詳細はライブレポートに譲るとして、自分はバンドが放つ出音の凄まじさに度肝を抜かれてしまった。
弦のベースとは思えぬほどの重低音がファンキーに鳴り、ドラムのキックは鉄球のごとくズシンと響く。野外スタジアムでの演奏にもかかわらず、奏でられる一音一音が太くて輪郭も明瞭。そこにワイルドかつキャッチーな「口ずさめる」ギターリフと、ダミアーノの扇情的なボーカルが合わさり、「ロックの持つダンス・ミュージックとしての快楽性や旨味を追求し、そのハイライトだけを詰め込んでしまったかのような」楽曲とアンサンブルが繰り出されたら、踊らずにいるほうが無理というもの。ここまで強靭なグルーヴは体感したことがなかったし、MARINE STAGEのアリーナ席は荒波のように揺れていたが、あんな光景を目撃したのも初めてだった。
早くも伝説と化したパフォーマンスを通じて、現代的なサウンドデザインにも改めて唸らされた。「ロックンロールの救世主」と謳われてきた彼らだが、上述したような音像やリズム感覚、ループを基調とした演奏、ダミアーノの歌い回しにはヒップホップの影響を感じずにはいられない。きっと4人がメインストリームを席巻し、国やジャンルや世代の壁を越えてセンセーションを巻き起こした要因のひとつでもあるはずで、機会があれば本人たちに訊いてみたかった。
さらにマネスキンは、今回の初来日で広く知れ渡ったように、狭量なロック観に縛られず、新しい世代ならではのアティチュードを体現し、よりよい社会を形作るためのメッセージを発信してきたバンドでもある。そんな4人だからこそ、今の時代らしいロックバンドのあり方についても尋ねてみることに。
以下のインタビューは、ライブ開始の2時間ほど前に収録したもの。リラックスした雰囲気で応じてくれた4人との対話を、クールな撮り下ろし写真とともにお楽しみください。
左からイーサン・トルキオ(Dr)、ヴィクトリア・デ・アンジェリス(Ba)、ダミアーノ・デイヴィッド(Vo)、トーマス・ラッジ(Gt)
Photo by Masato Yokoyama
–単独公演の途中で、ダミアーノが「進撃の巨人」の曲(「心臓を捧げよ!」)を歌ってましたが、もともとあの漫画が大好きらしいですね。どんなところが気に入ってるんですか?
ダミアーノ:どのキャラクターが善人で悪役なのか、よく見てないとわからないところがいい(笑)。
ーあそこで歌おうと思った理由は?
ダミアーノ:あの曲が心に刺さって忘れられなかったから。(歌うとしたら)あれか、『NANA』のサウンドトラックだった。
Photo by Masato Yokoyama
ー実際に日本に来てみて、日本のファンの前でライブをしてみて、いかがでしたか。
ダミアーノ:びっくりするほど素晴らしかった。
ヴィクトリア:ヤバかったよね。周りのみんなが口を揃えて「日本のオーディエンスは静かで大人しい」と言ってたから、そういうノリを想定していたんだけど……全然エネルギッシュだった。むしろクレイジーなくらい(笑)。
ーダミアーノもMCでそう言ってましたね。
ダミアーノ:うん、だってメチャクチャ熱狂的だったから。コロナ禍で混乱したルールがたくさんあるなか、観客はみんなエネルギーに満ち溢れていて、どこまでも行けそうだという気分にさせてくれた。
ーイーサンは拍手で煽ってました。
イーサン:そうだね、そりゃそうさ。実際、盛り上がる客席を見ながら感激したからね。僕らにとって初めての来日公演なのに、3000人ものクラウドが一体となってフロアで踊ったり跳ねたり、手を掲げたりしていたんだから。あまりにも強烈だった。
トーマス:あんな経験をしたのは初めてだ(笑)。
ダミアーノ:またここに来る日が待ち遠しいよ。次はコロナ(の制限)を抜きにして、みんなで楽しみたいね。
ポスト・マローンへの共感、ヒップホップからの影響
ー来日中はカラオケも堪能したみたいですね。どんな曲を歌っていたんですか?
ダミアーノ:自分たちの曲が入っていたのは驚いたな。歌ったのはアリアナ・グランデに……。
ヴィクトリア:アデル、ブルーノ・マーズ。どれも名曲ばかり。
ーロックソングを歌うわけではないんですね。
ダミアーノ:そう、僕らはいつもステージ上でロックを演奏しているから、カラオケではスーパーポップな曲を歌うんだ!
Photo by Masato Yokoyama
ー今年のサマソニでは、ポスト・マローンがヘッドライナーを務めました。彼みたいなラッパーにも興味はありますか?
トーマス:もちろん!
ダミアーノ:彼のやってることは好きだね。彼はラッパーだけど、いろんな音楽の要素を持ち合わせている。それにルックスや振る舞い方も、ステレオタイプなラッパーとは一線を画した存在だ。そういうところが非常にクールだと思う。
Photo by Masato Yokoyama
ーマネスキンの音楽はヒップホップからも影響を受けていると思いますか?
ダミアーノ:もちろん。ヒップホップは僕らの世代にとって最も影響力のある音楽だし、そこから影響を受けずにいるなんて不可能じゃないかな。今は違うジャンルの音楽をやっているけど、どちらにせよ自分たちもR&Bやヒップホップを聴きながら育ってきたわけで、そこから無意識のうちに影響を受けていると思う。
ー実際、どのあたりに反映されていると思います?
イーサン:イタリア語の曲で、「La Paura Del Buio」(イタリア人ラッパー、カパレッツァのカバー曲)のヴァースはヒップホップ色が強いよ。あとドラムのビートの取り方の部分でも影響を受けている。
ヴィクトリア:(自分たちのレパートリーで)イタリア語で歌っている曲では、ラップ風な歌い方をしているのが多い。
ダミアーノ:言葉のアクセントが曲調に合ってるからね。
トーマス:あと、ヒップホップに影響を受けたハードコア・バンド、例えばレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな音楽からの影響も大きい。
優れたロックバンドの条件
ー日本でも多くの音楽ファンが、マネスキンの登場によってロックの魅力を再認識しています。そこでお聞きしたいのが、「優れたロックバンドの条件」とは何だと思いますか?
ダミアーノ:まずは、当然楽曲がメチャクチャ優れてないと駄目だよね。それからロックバンドには、何か目を引くものがなきゃ駄目だと思う。それはいわゆる古い固定概念にのっとった美しさとかじゃなくて、独自の美しさだったり、面白さを感じさせるものがあるかどうか。それは着る衣装でも、ステージ上でのパフォーマンスでも、歌声でも何でもいい。魔法を起こす何かを持ってないといけないと思う。
ーいわゆるカリスマ性というものですか。
ダミアーノ:そう、カリスマ性。それとアティチュード。
イーサン:ペーソスも。
Photo by Masato Yokoyama
トーマス:曲作りにおける自由な発想。いいロックバンドに言えることは、曲作りにおいて、完全に自由な発想でやっていること。あらゆるジャンルを取り入れながら、自分達独自の音を作っている。そこかな。
Photo by Masato Yokoyama
ヴィクトリア:オリジナリティがあること。それは誰もやったことのないことをやらなきゃいけないわけじゃなくて、自分なりのサウンドを見つければいい。既にあるものをただコピーしたり真似したりするのではなく、そこにどうやって自分らしさを折り込むか。自分たちにしか出せない「味」が大事だと思う。
Photo by Masato Yokoyama
イーサン:自分にとってパーフェクトな例を挙げるとしたら、クイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジだね。かっこいいロックロールバンドには、オリジナリティとロック的アティチュードのパワーがある。そのアティチュードというのは、その人の生き様もそうだし、音楽にも表れてる。
Photo by Masato Yokoyama
「ミュージシャンはアスリートによく似ている」
ーみなさんは以前、ローリング・ストーンズのオープニングアクトを務めてましたよね。ロックの世界では長らく、カート・コバーンに象徴される「Live Fast, Die Young」な生き様が神格化されてきましたが、ストーンズみたいに長く続けることにも価値があると思います。自分たちはどちらを目指したいですか?
ヴィクトリア:(質問を遮るように即答)ローリング・ストーンズ!
一同:アッハハハ!
ダミアーノ:ちょっとゾッとするけどね(笑)。ニルヴァーナもベストなお手本とは言い難い。
ヴィクトリア:人生の模範例としてはね。
ダミアーノ:そうそう。
Photo by Masato Yokoyama
ーバンドとして、「ヘルシーであること」は重要視しているポイントですか?
ヴィクトリア:うん。
ダミアーノ:ソーシャルメディアがなくて、まだTVも普及してなかった時代は、ステージ上でやらかしても人々に気づかれなかったかもしれない。でも、今は誰もがソーシャルメディアを使っているわけで、くだらないことをしでかしたら瞬時にバレてしまう。
そういう意味で、ミュージシャンというのはアスリートによく似ていると思う。パフォーマンスで自分の100%を出し切るには、クリーンであり続け、健康を保ち、心が清らかでないと難しい。お客さんはお金を払って観に来るわけだから、僕らには100%の力を発揮する責任があると思う。そのためにも、いつも健康には注意を払っているよ。
Photo by Masato Yokoyama
ー自分たちでフェスを主催するとしたら、どんなものにしたいですか。
ダミアーノ:それぞれ全然違うフェスになりそうだな(笑)。
トーマス:レッツ・トライ。
ヴィクトリア:ローマで開催したいな。
トーマス:ローマでやるの?
ヴィクトリア:そう。一人一組アーティストを選ぶの、どう?
トーマス:それ、いいね!
Photo by Masato Yokoyama
ダミアーノ:じゃあ、まず会場はコロッセオだね。で、誰を呼ぼう?
ヴィクトリア:私はアイドルズかな。
イーサン:いいね、僕は誰にしよう……(考え込む)。
ダミアーノ:トーマスが先に言ったら?
トーマス:どうしようか……毛色の違うアーティストを揃えたいからなぁ……難しい……。レッド・ホット・チリ・ペッパーズかな。
ダミアーノ:僕はロザリアにしよう。幅を持たせる、という意味でね。一番お気に入りのアーティストだ。
イーサン:じゃあ、僕はクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジ。
ダミアーノ:いいラインナップだね!
【写真を見る 全17点】マネスキン、幕張メッセでの撮り下ろしフォト(記事未掲載カット多数)
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