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無骨に、真摯に、待ちわびたライブを 『ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL』レビュー

Rolling Stone Japan / 2022年8月31日 12時0分

ザ・クロマニヨンズ Photo by 柴田恵理

ザ・クロマニヨンズが2022年1月からおこなった全国ツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL」の模様を収めたライブDVDが発売された。収録されているのは4月12日の千葉市民会館公演での公演の一部始終。

【写真を見る】ザ・クロマニヨンズのライブ写真

奇怪な動きをしながら舞台上に現れた甲本ヒロトをはじめ、メンバー一堂が舞台に上がると、感染症対策で発声を封じられているオーディエンスは、歓声の代わりに熱い視線で彼らを迎え入れる。

本邦では2020年頭から本格化したコロナ禍も丸2年以上が経過し、歓声はもちろんコールアンドレスポンスもシンガロングもモッシュもダイブもない現場の風景はすっかり馴染みのものになった。ただ、わかりやすく見てとれるリアクションはなくとも、メンバーがステージに上がった瞬間の静かな、でも確かな高揚はオーディエンスの後ろ姿からありありと感じ取れる。

1曲目は「ドライブ GO!」。突っ走れ突っ走れと連呼する、余分な含蓄の余地を拒否したピュアなパワーが迸る曲だ。続く「光の魔人」「千円ボウズ」とMCを挟まずガンガン突っ走る。甲本ヒロトは歌の切れ目でテンポよく、敬礼だったりシェーだったりとおどけたポーズを決めていく。


甲本ヒロト(Vo)Photo by 柴田恵理

一発一発着実に芯を食った音を響かせる桐田勝治には要塞のようなどっしりとした迫力が感じられる。小林勝は左腕の肘が伸びきった低い位置でのピッキング、その影から伸びるカールコードと、パンクロックのコードに則ったオーセンティックなスタイル。


桐田勝治(Dr)Photo by 柴田恵理


小林勝(Ba)Photo by 柴田恵理

真島昌利がかき鳴らすのはあのTVイエローのレスポールジュニア。P-90一発、作れる音・やれることがごく限られた、潔さの具象化のようなギターがこんなに似合うギタリストはいない。いつ見ても新鮮に惚れ惚れする、シンプルイズベストなギタリスト。


真島昌利(Gt)Photo by 柴田恵理

ライブDVDのいいところの1つは、客席からでは覗き込めないギタリストのエフェクターボードが見られることだ。ただマーシーの足元は、視認できる限りMaxon OD808ひとつだけ。多くのギタリストに愛されてきた歴史あるモデルだ。マーシーに憧れて手にとったギタリストも数多くいるだろう。今回は聴く限り踏みっぱなしなので、1つの音色で全曲全フレーズを弾き通すストロングスタイル。情報としては知っていたけど、実際に映像を見ると「本当なんだ」と改めて凄みを感じる。

ヒロトの声は今も今までも、抑揚や倍音に頼らないソリッドな発声で、否応なしに歌詞をまっすぐ聴きとらせる。作詞家としての甲本ヒロトと真島昌利の両人に共通して感じることがあるのは、詩性を削ぎ落としたシンプルな描写の中でふと本質を言い当てる瞬間のきらめきだ。みずみずしい詩性が迸る楽曲も数多くあるいっぽうで、叙情的に振り切れているわけでも、レトリックで唸らせるわけでもなく、ふと素直な言葉を投げかけてくる。スカしもカマしもせず、朗らかに核心を突いていく。





痺れるものを作ってくれる人

筆者が初めてヒロト・マーシーの音楽と出会ったのは幼稚園児の頃、ザ・ハイロウズの「胸がドキドキ」だった。

<百年ぶりの世紀末>というフレーズに衝撃を受けた。1世紀が100年だってことは幼稚園児の自分でも知っていた。歌詞ってこんなに当たり前のことをそのまま言っていいのか、という驚きと、当たり前のことをそのまま言っただけなのにこみ上げてくるこれはなんだ、という昂り。初めて歌詞に、ロックンロールに痺れた瞬間だった。

数々の楽曲を世に送り出してきたコンビは今でも一緒にバンドをやっている。マーシー作詞作曲の「大空がある」もまた<空はでっかいなあ 晴れてても くもってても 昼間でも 夜中でも 見上げれば そこにあるんだ>と、一切の虚飾がないストレートな表現にはっとさせられる。

曲間ヒロトが呟くように言った「よく来てくれた」という言葉はコロナ禍の今重い意味を持つ。様変わりした世の中で、変わらず痺れるものを作ってくれる人がいる幸福を噛みしめる。

曲間、ヒロトがメンバーに1人ずつ耳打ちをする一幕がある。ヒロトの言葉を聴いた小林勝のにやりとした顔越しに「もぐらとボンゴ」のタイトルコール。何を話したんだろうと思いを馳せる。その他にはほとんどメンバー間のやりとりは見られず、ウェットなコミュニケーションなしに通じあい、それぞれのパフォーマンスを発揮する中で自然とアンサンブルが成立していくロックバンドの美しさを見ることができる。



12曲ぶっ続けで最新アルバムからの曲をプレイ、一息ついたMCで「SIX KICKS ROCK&ROLLはここまでです」「他のアルバムもあるから」とヒロトがアナウンスする。「他のアルバム」――つまり時節柄リリースツアーができなかった前作『MUD SHAKES』にもスポットを当てるように、そこからは「空き家」「メタリックサマー」「妖怪山エレキ」「暴動チャイル(BO CHILE)」と、『MUD SHAKES』からの楽曲を続けざまに披露。リリースからこの日まで、音源を聴きながら生で味わえる日を待ち望んでいたリスナーの願いに応えた。



そして終盤、「生きる」「紙飛行機」「タリホー」といったお馴染みのライブアンセムを連打。ここに来てオーディエンスのヴォルテージが最高潮に達したことは、その背中から明らかに伝わってくる。アンコールでも続けて「エイトビート」「ギリギリガガンガン」「ナンバーワン野郎!」とやはりアンセムを畳み掛け、熱狂の余熱を残してライブを締めくくった。


Photo by 柴田恵理


Photo by 柴田恵理

<INFORMATION>

『ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL』
ザ・クロマニヨンズ
アリオラジャパン
発売中
https://va.lnk.to/BzRz4j
ザ・クロマニヨンズ 公式HP:https://www.cro-magnons.net/

【初回生産限定盤】

・2DVD
・特製リストバンド&特製ツアーパス
・SIX KICKS ROCK&ROLLのジャケット写真が6面にデザインされた特製サイコロ付き
・デジパック仕様

▼収録曲
DISC1
ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL
01.ドライブ GO!
02.光の魔人
03.千円ボウズ
04.大空がある
05.もぐらとボンゴ
06.ここにある
07.爆音サイレンサー
08.イエー! ロックンロール!!
09.冬のくわがた
10.ナイフの時代
11.ごくつぶし
12.縄文BABY
13.空き家
14.メタリックサマー
15.妖怪山エレキ
16.暴動チャイル(BO CHILE)
17.エルビス(仮)
18.生きる
19.紙飛行機
20.タリホー
21.エイトビート
22.ギリギリガガンガン
23.ナンバーワン野郎!

DISC2
ザ・クロマニヨンズ SIX KICKS ROCK&ROLL ~Music Video Collection~
01.ドライブ GO!
02.光の魔人
03.大空がある
04.もぐらとボンゴ
05.縄文BABY
06.ごくつぶし


【通常盤】

・2DVD

▼収録曲
DISC1
ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL
01.ドライブ GO!
02.光の魔人
03.千円ボウズ
04.大空がある
05.もぐらとボンゴ
06.ここにある
07.爆音サイレンサー
08.イエー! ロックンロール!!
09.冬のくわがた
10.ナイフの時代
11.ごくつぶし
12.縄文BABY
13.空き家
14.メタリックサマー
15.妖怪山エレキ
16.暴動チャイル(BO CHILE)
17.エルビス(仮)
18.生きる
19.紙飛行機
20.タリホー
21.エイトビート
22.ギリギリガガンガン
23.ナンバーワン野郎!

DISC2
ザ・クロマニヨンズ SIX KICKS ROCK&ROLL ~Music Video Collection~
01.ドライブ GO!
02.光の魔人
03.大空がある
04.もぐらとボンゴ
05.縄文BABY
06.ごくつぶし

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