今市隆二が語る、心に寄り添う「歌」を
Rolling Stone Japan / 2022年9月1日 20時0分
9月4日に開催される『Rolling Stone Japan LIVE 5th ANNIVERSARY SPECIAL』のヘッドライナーを飾る今市隆二。三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのフロントマンである彼が、11月2日にニューアルバム『GOOD OLD FUTURE』をリリースする。デジタルシングル『RILYS NIGHT -百合演夜-』の3曲も同作には収録。シティ・ポップのエッセンスを今市流に昇華した「辛」のキャッチーさ、ファンクな「華金」のセクシーさ、そしてファンに捧げた「星屑のメモリーズ」のノスタルジー。「Rolling Stone Japan vol.19」に掲載されたインタビューをここではお届けする。
【撮り下ろし写真を見る】今市隆二
ー『RILYS NIGHT -百合演夜-』は今市さんが変化していくことを楽しんでいるのが伝わってくる作品だなと思いました。ご自身的にはどうですか?
今市 リリック、曲名、わかりやすく変わったというか、今までやってこなかったような楽曲になっていると思います。イメージを一新したいというほどではないのですが、楽曲制作をする上で、より多くの方に届いてほしいという想いで作りました。前作『CHAOS CITY』のときは音楽ジャンルをガラッと変えた感覚がありましたが、今回の「辛」に関しては、80sリバイバルのシティ・ポップ的な雰囲気もあって、『CHAOS CITY』の路線を引き継ぎつつ、リリックにすごくこだわりました。
ー「辛」と「華金」は、字面のインパクトも言葉の響きとしてのインパクトもありますよね。歌詞のイメージは、どこから出てきたんですか?
今市 Chaki ZuluさんとJAYEDさんと密にやり取りしながら楽曲を作っていて、日頃からChakiさんのスタジオで音楽の話をしているなかで感じたこと、ここ数年で音楽シーンがすごく変わったことを再確認して。例えばBTSがアジア人アーティストとして世界の扉を開いてくれた。そして自分は三代目もソロも含め、世界に挑戦したいという気持ちを持っている。そこで今あらためて日本人のアーティストが世界で勝つことを考えたら、日本語でやるべきだなと思ったんです。英語の曲も歌ってきましたが、前までだったら日本語はダサいみたいなこともあったと思うんですが、それが変わってきてる。「辛」で言うと、人が持つ悲しみや喪失感ってところをテーマに曲を作っていたんです。80年代の昭和の曲は、歌詞やタイトルのインパクトが強いじゃないですか。今回はそういう良さを自分の作品にも落としこんだ感じです。日常会話をリリックの中に入れるってことは今までやってこなかったんですけど、今回初めてトライしました。
音楽を届けるための「日本語詞」
ー特に新しい扉が開いたなと思う表現はなんですか?
今市 まず「辛」というタイトルもそうですし、”マジで”や”鬼電”などの歌詞もそうですね。でも日常ではけっこう使っている言葉でもある。そういうところをChakiさんとかJAYEDさんと話して、結果こうなった感じですね。
ー”一筆書きのあいあい傘”とか、冷静に見たらちょっと恥ずかしくなってしまう表現も使ってますよね。
今市 こういうリリックは書いたことがなかったので、最初は戸惑いはあったのですが、本気で音楽を届けたいというところで話していく上で、こういう結果になりました。
ーChakiさんやJAYEDさんとは、歌詞に関して深くやり取りしたんですか?
今市 そうですね。Chakiさんのアイデアが入っています。さっきも言ったように、この曲は悲しみや喪失感がテーマなので、そのことについて3人で話し合って進めていった感じです。特に今回の曲に関しては、Chakiさんの存在は大きいかもしれないです。
ー「辛」ってネガティブな印象がある言葉だけど、歌詞の内容はラブソングという感じだから、そんなに重たくないですよね。でも背景には深い意味があるというか。
今市 一見ラブソングに聞こえると思うんですけども、実際にはそういう気持ちで作ったものではないので。もちろん分かりやすいメロディや歌詞ですし、楽しく聴ける曲ではあります。でも現状悲しみを抱えている人たちに対して、背中を押すというよりも、寄り添えればなって気持ちで作った楽曲なんです。少しでも癒やしになれば、すごくうれしいなって思います。
ーChakiさんからのアドバイスは何かありましたか?
今市 たくさんありました。Chakiさんの専門はヒップホップですが、そもそも僕がこういう歌詞の曲をやるのがすごく面白いとChakiさんは言ってくれて。Chakiさんと僕でリファレンスとなる曲を出し合って、相談しながら決めていきました。
ー具体的にはどういうやり取りを?
今市 自分がやりたい楽曲のイメージがあって、今回はそれに合わせてコードにこだわって作りました。ループさせたものにメロディをつけることがここ数年多かったのですが、今回はいわゆるJ-POP的というか、コードの動きが激しかったりするので、そこをChakiさんも時間をかけて組み立ててくれた。それを元にJAYEDさんと一緒に作っていった感じです。そういう点では、従来の作り方とは違うかもしれないです。共通意識としては、前回の『CHAOS CITY』で実践した80sリバイバルを、日本のポップスに落とし込んだ感じです。
ー前回のインタビューでも話してくれましたが、今市さんのソロ活動のなかでChakiさんとは付き合いが長いですよね。そういう意味では、これまで一緒にやってきたことの積み重ねが、こうして一つまた新しい作品を生んだとも言えますね。
今市 そうですね。4年くらい前、自分のソロが始まるタイミングにDJ DARUMAさんの紹介で出会って、今では楽曲を作る時は僕、Chakiさん、JAYEDさんという、基本この3人という形があります。三代目で12年やってきて、ソロとしても4年が経った。最初は自分の好きな音楽をやってきたのですが、それだけじゃ一歩先へ行けないということにも気づけたのは、お二人がいてくれたからだと思います。僕に対していろんな提案をしてくれますし、しっかりコミュニケーションを取りながら一緒に曲を作れるので、今ではかけがえのない存在だなと思います。
ー歌詞以外ではどうですか?
今市 一番はやっぱり歌詞だと思うのですが、サウンド的にも「辛」に関しては音数も少ないですし、「RILY」とかと違ってボーカルもコーラスをあまり重ねてないので、かなり素に近いというか。ただ、レコーディングはいつも以上に時間をかけたような気がします。
ーそこに難しさは感じなかったですか?
今市 歌を録ることに関しては変わらない部分ではあります。それより歌ってみてどう聞こえるかとか、テーマのなかでどう歌うかっていう方が大きいです。
ー「辛」では生演奏の5弦ベースが効いてますよね。曲の余白を引き立たせてくれるなと感じました。
今市 メロディと歌詞が完成した状態でベースを録ったのですが、生で弾いてもらうと印象が全然変わりますよね。Chakiさんとこれまで曲を作ってきて、生の音を自分が好きなことはChakiさんも知ってくれているので、自然とこうなりました。
ー「華金」のサビには外国人女性ボーカリストが参加。こちらも曲を盛り上げてくれますね。
今市 フックを担当してくれた女性コーラスの方が3人いるんですけど、クワイア的な響きを入れて歌ってもらったり。コーラスを受けて自分が歌うってことが、これまでなかったので新鮮でした。
Photo by Maciej Kucia
創作の現場「RILY STUDIO」
ー「星屑のメモリーズ」は、ファンに向けた曲とのことで、他の2曲とは作る目的も背景も全然違うと思うんですけど、どういうところから作っていったんですか?
今市 この楽曲は6月からのツアーに向けて作り始めました。コロナ禍になってライブができなくなりましたが、いま少しずつライブができるようになってきた。なので自分から出向いて皆さんのところに行こうっていうのが、今回の「RILYS NIGHT」というツアーのコンセプトなんです。そのステージに立った時のことをイメージして書いた曲です。あと、これは前から言っていることなのですが、ステージの上から見えるファンの方たちの笑顔って凄いんですよ。あの景色はステージ上からしか見れないし、皆さんにも見せたいです、とファンの方にも言いたくなる。そういう感動をこの曲には込めさせてもらっています。この曲は今年に入って作ったんですけど、自分がセッションしたり曲を作ったりする「RILY STUDIO」という部屋で初めてできた曲なんです。UFC(UNITED FUTURE CREATORS)のT-SKさん、HIROMIさん、BIG-Fさんがいるチームと昼ぐらいから次の日の朝方までずっとスタジオで作っていました。メロディにもすごくこだわって、サビのフレーズはカラオケでも歌いやすいのかなと思いますし、親しみを持ってもらえそうな曲になりました。自分でもすごく満足してます。
ーファンに向けた感謝の曲っていうとドラマチックになりがちですけど、ポップで一緒に歌える感じがいいですよね。
今市 はい。意外とこういうメジャーコード感のある、明るい曲でファンの方に届ける曲というのはなかったと思うので。
ー今市さんがソングライティングやレコーディングといったクリエイティブの現場にいる時って、どんな感じなんですか? 妥協を許さない、頑固なタイプだったり?
今市 昔の方が相当頑固でしたね。それで言うと、三代目のメンバーはみんな頑固だったんじゃないですか(笑)。それがみんな大人になったというか、考え方に柔軟性が出てきて、頑固なだけじゃダメなんだということをリアルにいま感じてますし、いろんな人のアイデアをどんどん吸収していきたいです。だけど譲れるところと譲れないところがあるので、そこをどうやって作品づくりに落としていくかってところだと思います。
ーアーティストとして、ここは譲れるけどここは譲れないってラインは、キャリアを重ねるごとに自分の中ではっきり見えてきてる感じがあるんですか?
今市 今になって、矢沢永吉さんや松田聖子さんなど、長くやられてるアーティストの方って本当に凄いなと思うんです。長くスタイルを変えずにやっていける人もいれば、そうじゃない人も絶対いますし、正解はないじゃないですか。
自分の場合、今まで自分が積み上げてきたキャリアやブランディングは変わらない。でも、その中で「遊び」を持たせた方がいいのかなって思います。この12年間、ソロでの4年間も含めて、自分たちにはファンの方がいてくれる。そこに対してちゃんと向き合えれば、僕はもっと遊んでもいいのかなと。あとは当人はすごく気にするけど、周りからしたらそんなに問題じゃないこととかあったりするので、そういうのは周りのスタッフやマネージャーと話し合って答えを出していくって感じですかね。もちろん一人で頑固にやっていくカッコよさも間違いなくあるとは分かっているんですけど。
ー今度のツアータイトルは「RILYS NIGHT」で、さっき話してくれたプライベートスタジオの名前も「RILY STUDIO」、YouTubeで配信している動画は「RILY ROOM」と、「RILY」をキーワードにこれからいろいろ広がっていきそうですね。
今市 元々はアパレルからスタートした名前だったのですが、「RILY」=自分でもあるので、今回の「RILYS NIGHT」もそうですし、自分にとっては大切な名前です。
ーどんなツアーにしたいですか?
今市 自分にとって原点に立ち返った、音楽中心、パフォーマンス中心のライブにできたらいいなって思います。
【関連記事】Rolling Stone Japan 5周年記念ライブ、チケット一般発売開始
【関連記事】今市隆二が語る、混沌から生まれたR&Bの可能性、託されたEXILEのDNA
<INFORMATION>
『GOOD OLD FUTURE』
今市隆二
エイベックス
11月2日発売
6月にリリースされたデジタルシングル『RILYS NIGHT -百合演夜-』に収録された「華金」「辛」「星屑のメモリーズ」はもちろん、ほか新録曲を含む全7曲収録予定のCDに加え、DVD / Blu-ray DiscにはMusic Video,・Behind The Scenesにプラス、現在開催中の『RYUJI IMAICHI CONCEPT LIVE 2022 "RILYS NIGHT”』のLIVE映像の一部を超先行収録。
LIVE映像はEXILE TRIBE FAMILY OFFICIAL CD・DVD SHOP/ LDH official mobile CD/DVD SHOP 限定商品(RZZ1-77592/B, RZZ1-77593/B)と、全国共通盤(RZCD-77589/B, RZCD-77590/B)とでは一部異なるので要注目です。
今作のパッケージは、DVD付・Blu-ray Disc付・CDのみをベースに、EXILE TRIBE FAMILY/ LDH official mobile会員の方だけが購入いただける「フォトブック + 直筆(印刷)歌詞ブック」「封入特典”Letter Set”」「RYUJI IMAICHI CONCEPT LIVE 2022 "RILYS NIGHT” ペンライトスタンド」がセットされたスペシャル仕様の限定商品(2種)をラインナップ。
作品詳細:
https://avex.jp/ryuji_imaichi/news/article/?id=1101508
RYUJI IMAICHI CONCEPT LIVE 2022 ”RILYS NIGHT”
9月7日(水)岩手・岩手県民会館
開場 17:45 / 開演 18:30
9月12日(月)・13日(火)東京・東京ガーデンシアター
開場 17:30 / 開演 18:30
9月17日(土)静岡・静岡市民文化会館 大ホール
開場 17:15 / 開演 18:00
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
今市隆二とØMIが語る、三代目 J SOUL BROTHERS『ECHOES of DUALITY』全曲解説
Rolling Stone Japan / 2024年11月25日 17時0分
-
Billyrrom、「風」の時代に台風の目となる6人が語る自信と挑戦
Rolling Stone Japan / 2024年11月22日 18時30分
-
iScreamが語る、一人ひとりの「歌姫」がグループとして放つ輝き
Rolling Stone Japan / 2024年11月19日 17時30分
-
MIKOLASとSKY-HIが語る、豪華セッションの制作舞台裏
Rolling Stone Japan / 2024年11月11日 12時0分
-
f5veが語る、東京発の異次元サウンドを支える姿勢「ありのままでいることの素晴らしさ」
Rolling Stone Japan / 2024年10月30日 18時15分
ランキング
-
1今さらどのツラ下げて? 東山紀之に芸能界復帰説…性加害補償が一段落、スマイルアップ社は解散か?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月28日 16時3分
-
2「こんな顔だっけ」西野カナ、復活ライブでギャル路線から“演歌歌手風”への激変にネット困惑
週刊女性PRIME / 2024年11月28日 17時30分
-
3演出家・谷賢一氏 セクハラ告発女優との和解を報告 告発から2年「地道に努力し、信頼回復に努める」
スポニチアネックス / 2024年11月28日 16時41分
-
4戸田恵梨香が“細木数子物語”で女優復帰! Netflixが昭和ドラマ戦略で描く勝ちパターン
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月27日 16時3分
-
5篠田麻里子 所属事務所「サムデイ」破産に声明「直前に知らされたため…」ファンらへ「申し訳ありません」
スポニチアネックス / 2024年11月28日 14時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください