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JP THE WAVYが語る、不変のヘッズ魂と「聴き心地」にこだわる理由

Rolling Stone Japan / 2022年9月7日 19時30分

JP THE WAVY

先日開催された『Rolling Stone Japan LIVE 5th ANNIVERSARY SPECIAL』でも存在感を見せつけたラッパーのJP THE WAVY。日本国内・海外のヒップホップのシーンを軽やかに渡り歩くWAVYの最新作は、米LAを拠点とするプロデューサー・トリオ、Bankroll Got ItとのコラボEP『BANKROLL WAVY』。Awich&ナスティー・C、O.T.ジェナシス&LEX、DADA、ANARCHY、リル・キードなど、グローバルなゲストが熱すぎる全6曲。我が道を進むWAVYにインタビューを実施した。

【ライブ写真を見る】さいたまスーパーアリーナのステージに立つJP THE WAVY

ー今年のフジロック・フェスティバル初日のAwichのステージにゲストで出演してましたよね。苗場は初ですか?

はい。フジロックは行ったことがなくて、行ってみたいなって気持ちもあったんで、ふらっと(笑)。楽しかったですね。他のステージにはあまり行けなかったんですけど、普段自分が出てるようなイベントとは客層が違うから、それがすごく新鮮で。会場を歩いていても、声をかけられることも少なく、屋台に並んで食べたり(笑)、SYDのライブを観たり、めちゃめちゃフジロックをエンジョイしてました。

ーJP THE WAVYとしては大阪のサマーソニックに出演。日本のヒップホップ勢がラインナップの中心となった茨城のラッキーフェス(LuckyFM Green Festival)のステージにも立ちましたけど、夏フェスはどうですか。

やっぱフェスは楽しいですね。だし、年を重ねるごとにヒップホップが盛り上がってるなってすごい感じる。こういうフェスに呼ばれることだったり、ヒップホップのフェスが開催されるようになったことだったり。どんどん楽しくなってきてますね。あとはコロナさえなくなれば。まだ歓声がダメなとこはダメだったり、細かいルールがまだあるとは思うんですけど、そういうのが全部なくなったらもっと楽しいのにって思います。

ーサマソニはポスト・マローンと同じ日でしたよね? ポスト・マローンは観ました?

観ました。最高でした。(客席の)一番前に行きたかった。

ー前から好きだった?

前からですね。「White Iverson」って曲が出た時だから、2015年くらいから。

ー今ではヒップホップの人というよりポップスターの雰囲気をまとってますよね。

そうですね。ライブもめちゃめちゃよかったし、客席の前の方にいた白髪のおばあちゃんもノリノリで楽しんでて。そういう曲がいっぱいあるって、すごいなって思いました。サマソニやフジロックの一番デカいステージで日本のヒップホップ・アーティストが立てるのが当たり前になってほしいですね。

ー2022年の夏はWAVYさん的にはどうですか。

海とか行けてないですけどね。アーティストとしては充実した夏かもしれないです。


『BANKROLL WAVY』制作のきっかけ

ーではEP『BANKROLL WAVY』の話を聞かせてください。「WAVEBODY」を手掛けたプロデューサーのBankroll Got Itとの共作になりましたが、実現した経緯と制作のプロセスはどんな感じでしたか?

Bankroll側から提案してもらったので断る理由がないし、やるかやらないかだったら、やるしかないっしょって感じで。40曲以上ビートが送られてきて、そこから5~6曲を選んだ流れです。自分と仲間でスタジオで聴いて、そこから作りました。自分のヴァースは、もう去年には録り終わってたんですよね。そこからは客演を入れてく作業で、誰がいいって決めて、その人にデータを送って、ヴァースを待って……というやり取りを経て完成しました。自分の作業的には今年はほぼやってないです。もう次のEPのネタ出しをやってて。

ーWAVYさんが感じるBankrollのサウンドメイキングの主な特徴とは?

特徴的なのは、曲が始まる時に聞こえるビートタグと、キックとベースがめちゃめちゃデカいこと。今回はクラブバンガーっぽい曲をセレクトして送ってくれたんですけど、最近出してるBankrollがプロデュースしてる他の曲を聴くと、全然そうじゃないビートもあって。(Bankrollは)3人組なので、ビートの幅が広いですね。

ー今作でのBankrollのビートとWAVYさんのラップとのミックス具合っていうのも最高なんですけど、楽曲をプロデュースしていく際、大事にしていることは何かあります?

うーん、大事にしてること……。自分と自分の周りにいる仲間が納得するものを出すってことですかね。というか、今日のインタビュー、けっこう不安だったんですよね。何も言うことないけどどうしようって(笑)。この曲にはどういう意図がありますか?と聞かれても、ただビートに合わせてその場でのインスピレーションで作っただけです。

ーでもそれがWAVYさんのスタイルですからね。リリックに関しても、同じような内容を言ってるだけって前から話してますし。

はい。今回の「Okanemochi」って曲も、どういう気持ちで書いたんですかとか言われても、金持ちになりたいからからってことだし(笑)。この曲、スタジオでビートを爆音で流してみんなで聴いて、最初は「Okachimachi(御徒町)」だったんですよ。でも「Okanemochi(お金持ち)」の方がキャッチーかもしれないってなって、「Okanemochi」になった。御徒町に金(ゴールド)を買いに行く、ダイヤを買いに行くって、お金持ちになりたいってことと内容的には同じだから、じゃあ「Okanemochi」にしようって。





ジュース・ワールドの言葉

ーリリックのテーマが閃いてから完成させるまでは早いですか?

モノによりますけど、この曲で言うとアイデアが出たその日のうちにはもうできてました。基本的には全部そうです。

ーO.T.ジェナシスとLEXがゲストで参加してます。

他の曲もそうなんですけど、曲が一旦完成してから考え始めたんです。国内のアーティストだったら、「Okanemochi」はLEXが入ったらめっちゃ面白いアプローチしてくれるだろうなって思って、他の曲のAwichやANARCHYさんも含めて自分から連絡しました。ナスティー・Cは自分から声かけたんですけど、それ以外のO.T. だったりリル・キードだったり海外のアーティストは、Bankrollから「以前一緒に仕事したことあるアーティストだったら声かけられるよ」って提案してもらって、リストを送ってもらったんです。それで、この曲はO.T. がやったら面白いなとか、この曲はキードにやってもらいたいなって声かけてもらった感じですね。







ーリル・キードは今年の5月に24歳という若さで亡くなりました。

そうなんですよ。これからもっと一緒に曲を作りたかったし、本当にびっくりしました。1回だけ会ったことがあって。その時は彼がスタジオのソファで爆睡してたので、直接話せなかったんです。今回参加してもらって次はちゃんと会えるなと思ってたら……悲しかったです。

ーそういえばジュース・ワールド(2019年に死去)とも対談してるんですよね。

友達じゃないですけど、ジュース・ワールドとは対談させてもらって。その時、「Cho Wavy De Gomenne」を出してから悩んでた俺に、次のステップに行くための言葉をもらったんです。それで俺は前に進めたんですけど、そこからすぐに亡くなってしまって。

ーどんな言葉をかけてもらったんですか?

俺が「Cho Wavy De Gomenne」でヒットして、いきなり世界も環境も変わって、周りからの期待値も上がって、どうしていいかわかんなくて悩んで、新しい曲が全然出せないって話をしたんです。対談とは別にタバコ吸ってる時に相談したら、「作った曲はガンガン出せ」って言われて。「出し惜しみしないで、いっぱい作って、いっぱい出した方がいいよ」みたいなことを言ってもらって、そこからすぐ「Neo Gal Wop」とかの楽曲を出したんです。

ーサブスクだったら、すぐにリリースできますしね。

そうですね。できたのに出さないのは、ラーメン屋だったらありえないですよね(笑)。

ーあと別のインタビューで、(リリックで)ネガティブなことは絶対に言わないと決めてるって話してましたよね。無理やりサグな感じを出したりしないようにって。

世の中で暗い話題が多いのに、俺が暗い曲を作ってファンのみんなに暗くなって欲しくないし、HIP HOP特有のハードな生い立ちを歌詞にしたりとかっていうのも自分にはそういう経験もないし、そもそもサグじゃないですからね。無理して俺は悪いんだぞって言うこともないというか、悪くないし。ただのHIP HOP好きな隠キャです。

ー米ローリングストーンでエモラップのムーブメントにフォーカスした記事があったんですけど、コロナの影響も含めて「この先の未来はどうなるんだろう?」っていう不安感や孤独感をストリーミングで共有できるものとして、エモラップというものがあると。WAVYさんの曲はそういうのとはベクトルが全然違いますよね。

多分、俺はそういう役割じゃないと思ってるので。そういうアーティストがいてもいいと思うし、俺みたいなアーティストがいてもいいと思いますね。

ー今回のEPもそうですけど、WAVYさんは海外・国内問わずシーンのなかでいろんなタイプのアーティストとコラボしていて、その自由さが魅力の一つでもあると思うんですが、そういう風にいられる理由って何だと思いますか?

俺がヘッズだからじゃないですか? ANARCHYさんも元々めちゃめちゃ好きだったし、自分がヘッズだった頃の夢を叶えてるところもある。みんなかっこいいじゃないですか。AwichもANARCHYさんもLEXもDADAも。そういうヘッズ的な心で、このビートにあのラップが乗っかったら絶対かっこいいよなって考えるのが楽しいです。

ーそのヘッズのマインドは昔から変わってないんですね。

多分そうだと思います。今もヘッズですね。YouTubeでもあるじゃないですか。ケンドリック・ラマーのこの曲に、誰々ととエイサップ・ロッキーがもし入ったら、みたいな曲とか。ああいう気持ちですよね。どうなるんだろう?って。


「ノることしか考えてない」

ーANARCHYさんの世代、その上の世代、WAVYさんと同じくらいの世代、また下の世代、シーンの層も厚くなってますね。

そうですね。マジで楽しみですね。下の世代、みんなラップうまいですからね。俺が日本語ラップを始めた時とか、「Cho Wavy De Gomenne」を出した時とは比べ物にならないんじゃないですかね。平均値が爆上がりしてる気がします。

ーどのへんにうまさを感じますか?

リリックの語呂だったり発声の仕方だったり、ビートに対するアプローチだったり。やっぱレベルは高く感じるな。音楽を聴いていて、そこまでリリックにフォーカスすることはないんですけど、聴き心地が格段によくなってるなって思います。

ー聴き心地のよさっていうのは、なんとなく分かります。フロウもそうですけど、いろんな要素が重なり合って、心地よさになってるのかなと。

俺、小さい頃から洋楽をずっと聴いてきたので、今でも和訳を見ない限り(歌詞の)意味なんてちゃんと分かってないんですよ。簡単な言葉だったら別ですけど。聴き心地だけでここまで来たので(笑)。リリックもほんとに好きな曲だったら自分で調べて「こういうこと言ってるんだ、すげえ」ってなるんですけど、最初に重視するのは聴き心地ですね。

ーキックとベースがデカい『BANKROLL WAVY』も、聴き心地がいいです。

クラブで音楽が流れてきた時、リリックに注意して聴くことってあまりないじゃないですか。ノることしか考えてないっていうか、とにかくノってたいし、ノれる音楽しか作りたくない。だからこのEPは、鳴りがどれぐらいなのか実際にクラブで聴いてみたいですね。

ーこないだのフジロックで約3年ぶりに野外フェスを体感したんですけど、JPEGMAFIAを観た時に、低音の効きとか音圧とか、とにかく凄かったです。スマホで聴くのとは全然違う。

あんな静かなSYDの曲でさえ、下がめちゃめちゃ出てて、超最高だったっすね。内臓震えるみたいな。腹にくる。

ーWAVYさんって、昔から変わらないアイドル的存在っているんですか? ヒップホップの世界で。

アイドルはファレル(・ウィリアムズ)ですね。あとテリヤキ(TERIYAKI BOYZ®)。昨日もテリヤキのライブ観て、1人でブチ上がってました。

ー最近注目してる海外のアーティストはいます?

誰だろう……。年を重ねるごとに、ディグることが減ってきてますね。昔は服でも音楽でも一生ディグってたのに、最近そこまで追えてないかな。アップカミングのアーティストを拾えてるかって言われたら、最近はそうでもなくて。メインストリームの人ばっか聴いてますね。最近だったら、DJキャレド、ドレイク、ウェイン(リル・ウェイン)とか。結局、超メインストリームで、絶対これヒットするでしょ、みたいな曲が多いですね。あとゲームがこの間出したアルバム(『DRILLMATIC Heart vs. Mind』)はめちゃめちゃかっこよかったです。



ーUSのメインストリームのトレンドって部分で言うと、どうですか?

ハウスがじわじわきてるなと思ってて。この間JOMMYさんと、トロピカルなハウス調の曲を出したんですけど(「Hot Girl feat. JP THE WAVY」/JOMMY)、それを出すちょっと前にドレイクがハウスをやってて(『Honestly, Nevermind』)、やばいハウスくるの?って思ったら、ビヨンセも出して(『RENAISSANCE』)、めちゃめちゃ最高じゃんと思って。ああいう音楽をもっと作りたいなって思ってますね。トラップ離れとまで言わないけど、トラップ以外のことに挑戦してるアーティストがアメリカでは今目立つかなって。トラップはトラップとして真ん中にあるけど、それ以外のハウスだったり、2000年の感じの曲だったりが最近いろいろ出てきて面白いですね。もうそろそろ流れが変わりそう。





次なる展開

ーさっき次のEPのネタ出しをしてるって言ってましたけど、次作もまたガラッと変わりそうですね。

そうですね。次のやつも、ずっと前から並行して作ってたので。俺、歌ものとかもやるんですけど、今回のBankrollとのEPではやらなかったので、次のEPではそのへんも入ってくるかなと。

ーマイペースにリリースができる環境だと。

スタジオは最低週1回は入って、そこでいつも曲を作っているから、ストックはあるんです。あとはタイミング。ほんとはもう出したい曲もたくさんあるんですよね。BankrollとのEPを出して、次のEPを出してってなると、その先になる曲もいっぱいあるので。去年はフィーチャリングでたくさん曲を出したんですけど、今年は自分名義でたくさん曲を出したいです。今年も来年も再来年も、とりあえず曲をたくさん出し続けて、頑張ります(笑)。

<INFORMATION>


『BANKROLL WAVY』
Bankroll Got It & JP THE WAVY
JP THE WAVY / bpm tokyo
配信中
https://lnk.to/WAVY_BANKROLL

1. Intro
2. Biggest Drippa feat. Awich & Nasty C
3. Okanemochi feat. O.T. Genasis & LEX
4. Streaming Killa feat. DADA
5. iina feat. ANARCHY
6. I m on it feat. Lil Keed
 
JP THE WAVY - BANKROLL WAVY TOUR
10月21日(金)名古屋・ReNY limited
10月23日(日)大阪・ umeda TRAD
10月28日(金)福岡・DRUM LOGOS
11月12日(土)札幌・Sound lab mole
11月18日(金)神奈川・KT Zepp Yokohama
チケット:https://eplus.jp/sorrywavy/

https://sorrywavy.jp/

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