リトル・シムズ来日公演、怒涛のラップと荘厳なサウンドで畳み掛ける「粋」な舞台
Rolling Stone Japan / 2022年9月22日 16時15分
UKラップの最高峰、リトル・シムズ(Little Simz)の単独公演が9月21日にKANDA SQUARE HALLで開催された。9月23日(金・祝)にはカマシ・ワシントンとともに「ODD BRICK FESTIVAL 」に出演する彼女のステージを、文筆家・ライターのつやちゃんがレポート。
【画像を見る】リトル・シムズ ライブ写真(記事未掲載カットあり)
満員の神田スクエアホール。2、3年前の『GREY Area』リリース時ならまだしも、2022年の現在、天下のリトル・シムズをこのサイズの箱で観られるなんて途方もない贅沢だ。本来ならばもっと大きい場所で、そうなるとバンドセットで……ともなろうが、今回はクラブライクなシチュエーションにて1MC+1DJのミニマムなステージを披露するという、これはこれでクールな体験。リトル・シムズが信頼を寄せるDJ、OSIRIS THE GOD a.k.a OTGが開演まで素晴らしいプレイでフロアをあたためる。Peggy Gou、Rema、Lojay等のハウス/テクノ~アフロビーツをミックスし、途中アマピアノも織りまぜながらシムズに流れるアフリカの血を讃えることで、ライブへの期待を高めた。
Photo by Tamiym Cader
ついに、イントロが流れ観客がどよめく。もちろんオープニングは”Introvert”! フロア中の観客の胸の高鳴りが、荘厳なサウンドとともに盛りあがり熱くなっていく様子が感じられる。シムズは中央のマイクの前に立ち安定のラップを聴かせるが、簡素なステージからこんなにもゴージャスな音が聴こえてくることが信じられない。続いて、「Lady,Lady,Lady,Lady,Lady……」という掛け声。フロアから悲鳴があがる。”Two Worlds Apart”に突入だ。音源にあったソウル由来のあたたかさを感じさせながらも、加えて熱さも伴う力強いラップで世界観を表現していく。”I Love You,I Hate You”では、リリックで綴られる通りLoveとHateで逡巡する混乱した自身の焦燥感を、畳みかける怒涛の早口ラップで披露。スピーディーだがきちんと旋律も伝えるという、ストイックさと華やかさが同居した素晴らしいラップに唸る。
Photo by Tamiym Cader
続いて”Offence”、”Boss”と『GREY Area』のナンバーへ。最新作『Sometimes I Might Be Introvert』よりもドープでダビーな音が、昨今のUKビートシーンに漂う怪しさを伝える。シムズはここではリリックに合わせストロングなラップをぶつけてきた。中盤の印象的なフレーズを自らキーボードで叩いた”Speed”もスリリングだったが、驚いたのは”one life,might live”。意外にもEP『DROP6』からの選曲である。抑制された音数のトラックの隙間を埋めるような形でシムズは身体を揺らし、端正な所作で会場にすんとした空気を生み出していく。このあたりは、さすが俳優やモデルとしても活躍しているこのラッパーの中に宿る審美性が顔を覗かせ、見惚れるしかない。
格調高いだけではないステージング
ハイライトは”101FM”だった。ステージから降りフロア前方を横断し、会場はこの日一番の熱狂に。”How Did You Get Here”での「熱唱」と形容したくなるような感情の機微を表現した豊かなラップに涙し、「女性同士、あなたが輝くのを見たい」と歌う”Woman”に共感し、最後は”Venom”で怒涛の70分間が閉幕。特にラストの”Venom”では、その凄まじい高速ラップに観客が唖然としたのは言うまでもないだろう。シムズのラップは一言一言がきちんと分離しており、それゆえに非常に律されたきびきびした発音として入ってきた。ラップするパートと感情を乗せて歌うパートをはっきりと分けているため、ラップがエモーションに引っ張られ崩れていくことがない。恐らく、その点もシムズの楽曲に格調高さを加えている。
しかし、格調高いだけではないのだ。コール&レスポンスで観客とコミュニケーションをとり、常に笑顔をこぼしながら優しい表情でショウを進めていた姿からは、絶妙なバランスの取り方を感じた。恐らく、この駆け引きの塩梅と根底に漂う色っぽさは、日本語の概念で言うところの”粋”にも近い。シムズは、”粋”だ。そしてそれは、今のヒップホップになかなか見ることのできない稀有なものだ。私たち日本人が嫉妬してしまうくらいに”粋”な舞台に、終演後深い溜息をつき、忘我するしかなかった。
【画像を見る】リトル・シムズ ライブ写真(記事未掲載カットあり)
【関連記事】リトル・シムズ、年間ベストを席巻した「2021年の最高傑作」を2つの視点から考察
Photo by Tamiym Cader
ODD BRICK FESTIVAL 2022
日時:2022年9月23日(金・祝)
開場:10:00am / 開演11:00am
会場:赤レンガ地区野外特設会場
詳細:https://oddbrickfes.com/
リトル・シムズ
『Sometimes I Might Be Introvert』
発売中
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11836
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
デュア・リパ来日公演レポ 怒濤のダンスパーティーを司るクイーンの貫禄
Rolling Stone Japan / 2024年11月18日 13時15分
-
国内最大級のHIPHOP fes「THE HOPE 2024」総勢59組のライブアーティストと29組のDJが出演し、約4万人のオーディエンスと共に初の2daysが閉幕
PR TIMES / 2024年11月14日 18時45分
-
OZworldの圧倒的世界観 体感型のワンマン・ライブで目撃したもの
Rolling Stone Japan / 2024年11月14日 17時30分
-
「THE HOPE 2024」から見えた傾向と展望 変わらないものと変わりゆくもの
Rolling Stone Japan / 2024年11月13日 17時30分
-
SpecialThanksが千葉LOOKから全国ツアー始動、ほとばしる情熱的なパンクサウンド
Rolling Stone Japan / 2024年11月2日 12時0分
ランキング
-
1辻希美、娘の“顔出し解禁”デビューに予定調和の声も、際立つ「華麗なプロデュース力」
週刊女性PRIME / 2024年11月28日 18時0分
-
2【NewJeans緊急会見要点まとめ】ADORとの契約解除を発表・今後の活動に言及
モデルプレス / 2024年11月28日 21時54分
-
3戸田恵梨香が“細木数子物語”で女優復帰! Netflixが昭和ドラマ戦略で描く勝ちパターン
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月27日 16時3分
-
4芸能事務所「サムデイ」破産手続き…松井咲子もコメント 藤原紀香、篠田麻里子ら所属
スポーツ報知 / 2024年11月28日 22時42分
-
5今さらどのツラ下げて? 東山紀之に芸能界復帰説…性加害補償が一段落、スマイルアップ社は解散か?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月28日 16時3分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください