『NOPE/ ノープ』のインスピレーション源となった「Exuma」の伝説
Rolling Stone Japan / 2022年9月24日 19時30分
ジョーダン・ピール監督の壮大なSFホラー映画『NOPE/ノープ』のインスピレーションとなったものの一つが、2000年代中期に友人がくれた手焼きのCDだ。走り書きで「Exuma」とだけ書かれたそのCDには、カルト的人気を誇ったバハマのパフォーマー、トニー・マッケイの1970年のデビュー作が収められていた。これが核となり、歴史に埋もれた黒人たちを描いたストーリーがのちに生まれた。
【写真を見る】『ゲット・アウト』の監督が教える「悪夢」のつくりかた
「耳から離れない原始的な彼の音楽に、すぐさま反応した」と、ピール監督はExumaことトニー・マッケイについてローリングストーン誌に語った。彼の作品は、基本的には音で表現した映画のようなもの。ゾンビや神や奴隷が立ち上がり、抑圧者を懲らしめ、最後はパレードを少々、といった具合だ。「はっと悟ったのを覚えている。これほど影響力のある偉大なミュージシャンなのに、自分は今まで名前も聞いたことがなかった。マッケイは素晴らしいアーティストなのに、しかるべき敬意を払われてこなかったんだ」
トニー・マッケイはバハマの島しょ区にちなんでExumaと名乗り、1961年に米ニューヨークへ移住。グリニッチの音楽シーンで、現代ロックと故郷の伝統音楽を融合した。彼の作品の主人公は、故郷の伝説に登場する魔術師「Obeah Man」だ。「彼は色鮮やかなローブをまとい、神羅万象や月の満ち欠け、雲、地球の鼓動を操る」と、インタビューでマッケイは語っている。デビューの際にはいくらか業界からの後押しもあったものの(ニーナ・シモンは彼の曲を数曲カバーした)彼の音楽は……あまりにも突き抜けていて、移り変わりの激しいエンターテインメント業界ではウケなかった。とはいえニューオリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバルには毎年のように出演し、1997年に他界するまで音楽や戯曲、アート作品を制作した。また一風変わった逸品を好むレコード収集家や音楽ファン(ピール監督もその1人)の間では知る人ぞ知る存在となった。
『ゲット・アウト』の監督いわく、『NOPE/ノープ』の事実上の主題歌となった「Exuma, the Obeah Man」は、脚本を書き始めた時から脳裏に浮かんでいたという。雷とともにExumaが地球に下りたち、人間の苦悩を魔法で解決するという荒唐無稽な内容の曲だ。「(Obeahと)一緒に過ごした私の祖父、父、母、伯父たちがいろいろ教えてくれた」と、1970年のインタビューでマッケイは語っている。「誰しもなんらかの信仰を抱いて成長するが、これが信仰として私の骨身にしみ込んでいた……神はモーゼに善と悪の秘密を明かし、モーゼはイスラエルの民を救うことができた。それと同じような絶対的存在――Obeah Manは宙を舞う精霊なのだ」
Exumaの音楽、西部時代の黒人、ヘイウッド家のレガシー
この曲は映画の重要な場面で登場する。「脚本の初期の段階から、『The Obeah Man』は最終カットとまったく同じ場面に盛り込まれていた」とピール監督。「父親のオフィスにいるエメラルドが、人生で失った人、死に際にきちんと別れを告げられなかった人に思いをはせるシーンでこの曲が出てくる。歌詞で歌われている偉大な魔術師が、亡くなった父親を様々な形で体現しているんだ」
ピール監督いわく、この曲は一家にとってある種の「アンセム」だという。「この映画の奥底には、歴史上から消された人物、あるいはあまり評価されなかった人物とつながることがテーマになっている――Exumaや彼のレガシーと直接つながっているんだ」。物語の冒頭でエメラルドも説明しているように、一家の事業を起こしたのはバハマで騎手をしていた先祖のアラスデア・E・ヘイウッド。連続写真のパイオニア、エドワード・マイブリッジの初期の映像に映っている無名の黒人がベースになっている。「Exumaの音楽と西部時代の黒人、それにヘイウッド家のレガシーを直接結びつけようとした」とピール監督。
「あまり評価されなかったアーティストを人生の後半に発見すると、特別な感情が生まれるものだ。私もアウトサイダーだった彼の気持ちにピンとくるものを感じ、共感した」と監督は付け加えた。
【関連記事】ジョーダン・ピールが語る、リメイク版『ブレイド』の監督になりたくない理由
from Rolling Stone US
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
デヴ・パテルが壮絶な復讐劇を繰り広げる!『モンキーマン』予告映像&ポスター
cinemacafe.net / 2024年7月4日 16時0分
-
1人の男の壮絶な復讐劇が幕を開ける――『モンキーマン』8.23日本公開 迫力の予告映像公開
クランクイン! / 2024年7月3日 20時0分
-
「神が殺らねば俺が殺る」「ジョン・ウィック」製作チームの”本気アクション”「モンキーマン」 予告&ポスター公開
映画.com / 2024年7月3日 20時0分
-
黒人初! トニー賞3年連続ノミネートの俳優カラ・ヤング「自分だけの評価ではない」
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月28日 14時28分
-
ジョーダン・ピール監督の新作、2026年10月に全米公開
映画.com / 2024年6月22日 12時0分
ランキング
-
1ひろゆき氏「芸人でつまんないヤツは誰?」カジサック「最悪や…」実名をポロリ
スポニチアネックス / 2024年7月18日 22時21分
-
2妊活で体調不良続く妻の看病に「僕の気が滅入る」ブログで愚痴る夫に「もう時間の問題」厳しい声
週刊女性PRIME / 2024年7月18日 18時0分
-
3毎日放送が17日の「ゼニガメ」内で事実と異なる内容を放送「経緯については調査中」
スポーツ報知 / 2024年7月18日 21時29分
-
4本田翼〝CM露出減〟の謎 ランキング常連、ドラマでは変わらぬ活躍ぶりも「契約本数が減った要因」と気になる動き
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月18日 6時30分
-
5Koki,出演映画がアメリカで大苦戦も、旧ジャニ俳優との共演オフショットで“身長疑惑”は払拭か
週刊女性PRIME / 2024年7月17日 18時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)