スタークローラーが語るバンドの新時代「ロックはクールな音楽と見られるようになった」
Rolling Stone Japan / 2022年9月30日 17時0分
2018年にラフトレードから『Starcrawler』でデビュー、ロスアンジェルス発のティーン・バンドとして注目を浴びたスタークローラー。ライアン・アダムスのプロデュースで、彼が所有するヴィンテージ機材もたっぷり使って録音した同作は、ステージでの爆発力をそのまま封じ込めたような生々しい仕上がりになっていた。同年夏のフジロックでボーカルのアロウ・デ・ワイルドが血糊まみれになって激演、日本でも一躍人気バンドの仲間入りを果たしている。
2019年の2ndアルバム『Devour You』では、パブリック・イメージ・リミテッドやキリング・ジョーク、ニック・ケイヴなどを手がけてきたベテランのプロデューサー、ニック・ローネイを起用。前作の延長線上にありながら、曲調のバリエーションは格段に増え、グラム・ロック、グランジ、カントリーの風味まで屈託なく取り入れていた。同作リリース後のジャパン・ツアーも盛況、安泰に見えたバンドに、やがて大きな変化が訪れる。
2020年にジャック・ホワイトのサード・マンからシングル「Lizzy」をリリースする直前、アロウと共にこのバンドを始めた張本人であるドラマーのオースティン・スミスが脱退を発表。バンドにはギタリストのヘンリー・キャッシュの実弟であるビル・キャッシュ(それまでギターテックとしてツアーに同行していたそう)が2人目のギター担当として加わっていたが、そこに新ドラマーのセス・キャロライナを迎えて5人編成に拡大。メジャー流通を持つナッシュヴィルのレーベル、ビッグ・マシーンと新たに契約を交わして、3rdアルバム『She Said』を完成させた。
デビュー時のインパクトが強烈だったバンドほど、2作目、3作目のアルバム作りは当然難しくなる。楽曲のクォリティが上がり始めた頃に、ファンが離れてしまうのもよくある話。しかしソングライティングに時間をかけ、じっくり制作に臨んだことが吉と出て、『She Said』は過去最高に佳曲揃いのアルバムとなった。勢い任せな面もあったアレンジが整理され、メロディの魅力が際立つ一方、ミッドテンポの曲では前作から萌芽していたルーツ志向も大きな武器のひとつに。以前は”成熟したスタークローラー”なんてなかなか想像できなかったが、それを見事にやってのけているのだ。
結成から7年目となるスタークローラーだが、メンバーは未だ20代前半の若いバンド。苦難の時期を乗り越えて完成した自信作について、アロウとヘンリーにたっぷり語ってもらった。
─まず、メンバーチェンジに驚きました。ドラマーのオースティンが脱退して今のメンバーに落ち着くまでは、どんな流れでしたか?
アロウ:ずっと前から、ビルにはバンドに入って欲しいと皆思っていたの。彼には既に練習に参加してもらっていたし、パンデミックが終わったあとくらいで、フルサウンドにしたくて。そしてその後、オースティンがバンドを抜けて、セスが入った。セスは、私たちがずっと前から知っている友人で、ドラマーだったから、彼がバンドに入るのはすごく自然なことだったんだよね。既に私たちのファミリーみたいな存在だったから。
─最近バンドがボートの上で演奏している映像を見たんですけど、新しく加入したビルは、ペダル・スティールもすごく上手なんですね。彼について教えてください。
ヘンリー:ビルは僕の弟で、14歳からギターテックとして僕らに同行してたんだよ。ビルは音楽の天才なんだよね。だから、彼をバンドに入れたいと思ったんだ。僕より既に上手かったし(笑)。
─ビルはそれまでどんな音楽を聴いてたんでしょう?
ヘンリー:多分、僕らが聴いていた音楽とほぼ同じだと思うな。彼もロックンロールが好きなんだ。ブラック・サバスとか、ラモーンズとか。結構幅広いよ。バック・オウエンス(カントリー・ミュージックのレジェンド)も好きだし。
─セスについても教えて下さい。
アロウ:彼は私のボーイフレンド(ギルバート・トレホ、俳優ダニー・トレホの息子)の親友で、バンドのみんなが初めて彼に会ったのは、ギルバートが監督した「Chicken Woman」のビデオのセットだった。最初は、砂漠の現場まで送ってもらったり、ただアシスタントとして参加してもらうつもりだったんだけどね。でも、拷問される役が必要になって、彼に出演してもらうことになった。檻の中で、裸で震えてるキャラクターがいたの覚えてるかな? あれがセス(笑)。まあそんな感じで、セスとは友達だったの。その時はドラマーは必要なかったけど、探さなきゃいけなくなって、セス以外は考えられなかったんだよね。家族みたいな存在だったから。
─5人編成になってからのバンドは、それまでとどんなところが変わりました?
アロウ:今でも変わらないとは思う。でもサウンドは確実にフルになったし、バンドとして新しい時代に突入したんじゃないかな。
─サウンドやバンドのあり方などに変化はありましたか?
ヘンリー:前回のアルバムの時点で、既に1曲の中により多くのパートが入ってきてたんだけど、それを全部自分一人で演奏してた。ギターのパートが3つあっても、ギタリストは一人しかいなかったからね。でもその時からずっと、その音をライブでフルに演奏したいと思ってたんだ。ツアーでベックやスプーン、ケイジ・ジ・エレファントと一緒になって、複数のギタリストがいる彼らのパフォーマンスを見ていると、一人よりもトーンの幅がかなり広がるなと思った。だから、僕らもそのレベルに自分たちのライブショーを進化させたくなったんだ。パンデミックが終わったら、自分たちにとってベストなショーをやりたいと思っていたし、そのために、フルサウンドでパフォーマンスをする準備がしたかった。で、セスと一緒にセッションを初めてみたら、これまで足を踏み入れたことがなかったサウンドに足を踏み入れた気がしたんだよね。だから、そこから毎日皆で演奏しまくった。今はスタジオもあるから、そこに入って毎日みっちり練習したんだ。
─これまで2枚アルバム作りを経験して、何が今後の課題だと思っていました?
アロウ:特にこれという特別なものはなかったけど、前回のアルバムに比べて自然に進化したアルバムを作りたいという気持ちはあった。もうワンステップ上にあがるというか。
ヘンリー:今まで、アルバム作りにここまで時間をかけることができなかったからね。でも今回は、自分たちがそのサウンドを好きか嫌いかをじっくりと考える時間があった。前作はツアーの合間に作ったから、音のことをじっくり考えるというよりも、期限までに作らなきゃって気持ちの方が強かったんだ。しかも、でき上がった音源をプロデューサーのニック・ローネイと電話しながら、バンの車内でミックスしていたんだよ。それって理想的なミックスの仕方とはかけ離れているよね(笑)。でも今回は時間があったから、最初の数カ月は、とにかく演奏をした。そしてその中で、ここはこうプレイした方がいいんじゃないかとか、サウンドについて色々と話し合うことができた。ミックスをする前に、そのサウンドをどうやってプレイするかをしっかりと把握することができたんだ。できたものを、振り返る時間があった。例えば「Broken Angels」は最初のデモがあったけど、レコーディングしてみたら、それがデモと同じヴァイブを持ってなくてさ。だから、デモと同じエナジーを作り出すためにはどうしたらいいのかを色々と考えて、レコーディングしなおしたんだ。
─ニュー・アルバムを聞いてみると、楽曲はさらに無駄がなくシンプルかつキャッチーに、しかしサウンドのデザインやアレンジはこれまでに以上に練られている気がしました。
アロウ:そうかもしれない。私たちのアルバムは、今回に限らず、どれも結構シンプルだとも思うけど、『Devour You』なんかは、もっとレイヤーがある曲もあるしね。でも、私たちはずっとシンプルでキャッチーな曲を書いてきたと思う。あと、今回アルバムをプロデュースしてくれたタイラー・ベイツは、映画やテレビ番組、ビデオゲームなんかのサウンドトラックを手がけているから、このアルバムは映画的なサウンドに仕上がっているとも思うな。
ヘンリー:タイラーは、ギタリストとしても素晴らしいんだ。彼は音色や曲が持つムードのことまで常に考えている。タイラーも僕も、機材オタクなんだよね。50種類くらいのアンプを試して、曲の雰囲気に合った完璧なサウンドを探した。一曲一曲、それぞれに異なる世界を持たせることも意識したんだ。
─特に何か一つの要素が飛び出すのではなく、バンドが一丸となってグルーヴを作るのがうまくなりましたね。ライブを重ねてきた影響もあるのかな?
アロウ:そうだね。あると思う。
ヘンリー:あとは、セスの影響もあるんじゃないかな。セスのグルーヴってすごくハードだから。セスは、根っからのジャズ・ドラマー。だから、彼はよくスイングするんだ。
歌詞の変化、ロックの現状について思うこと
─歌詞にも変化を感じました。閉塞感を打ち破ろう、ポジティブに行こう、とリスナーの気持ちを励ますような歌詞が多いように感じたのですが。コロナ禍の影響が出たところはある? それとも他の要因が?
アロウ:その意見はすごく面白い。なぜなら、私はその逆に感じるから。サウンドは明るいけど、私にとって今回の歌詞は憂鬱に感じるの。でも、リスナーのみんなには自分が思うように感じて欲しいし、その解釈を変えたくはない。気持ちを励ますような部分があるとすれば、それは確かにコロナ禍が関係しているのかも。人々をちょっとクールなやり方で元気づけたいって気持ちがあったのかもね。
─なるほど、確かに歌詞のモードはブルー寄りかも。中でも「She Said」の歌詞が印象に残りました。これはどのように生まれたの?
アロウ:その曲は、私とヘンリーがこのアルバムのために最初に書いた曲の一つ。ずっと会えなかったけど、ついに外で会えて、二人で一緒に小庭に座って、その歌詞を書いた。確か、その日中にでき上がったんじゃないかな。作っていて一番楽しかった曲の一つ。すごく自然にでき上がった。やっとお互いの顔を見ることができて、それが嬉しくて、その勢いで書いた感じかな。
ヘンリー:今回のレコード製作は、結構落ち込んだ状況からスタートしたんだよね(笑)。
アロウ:そうそう。このアルバムの悲しい曲は、全部最初に書いたものなの(笑)。
ヘンリー:ここ5年で初めてみんなに会えない状況だったからね。それまでは、僕たちは毎日一緒だった。2週間以上の休みをとったことはなかったし、数カ月も顔が見られないなんてことは初めてだったんだ。ショーもできず、コロナ禍は僕らにとってかなりダークな時期だった。だから、全員で同じ部屋に集まって作業ができた時は、すごく嬉しかったし、かつては当たり前だったはずの状況に感謝したね。皆がまた集まった瞬間、電気が走った感じだった。
─「Midnight」の歌詞も強く印象に残りました。このストーリーはどんな風にできたもの?
アロウ:その曲も、すごく早くでき上がったの。もともとアルバム用ではなくて他の目的で書いていたトラックだったんだけど、その場でみんなが楽器のパートをいろいろと考えて、それに合わせてフレーズをたくさん書いていって、後からパズルみたいに組み立ててストーリーを作った。でも、結果的に全員この曲をすごく気に入ったから、アルバムに収録することにしたの。この曲は、アルバムの中でも特に気に入っている曲の一つなんだ。
─全体的に変化や、変化を望むことがテーマになっているように思います。あなたたちには、このアルバムが出るまでの間、どんな変化があった?
アロウ:このバンドを始めた時、私とヘンリーは16、17歳だった。だから、アルバムを出す度にバンドは自然に進化していると思う。ファンやリスナーのみんなも、その成長を一緒に見ながら私たちについてきてくれていると思うんだよね。でも、こんな風に変わりたいとか、自分たちで意識したことはない。常に意識しているのは、自分たちがやりたいと思うことをやるということで、進化と成長は、それをやっている中で自然と起こってきたことなの。
ヘンリー:変化を生み出すのは、それを作っている時のムードや時期。自分たちがその時に好んで聴いている音楽なんかもそうだし、生活している中で起こる出来事だってそう。失恋とか、新しい友人と遊ぶようになったりとかさ。僕らは7年も一緒で、バンドを始めた時は高校生で、今は成人してる。だから、自分たちを取り巻く環境も大きく変わったんだ。それが作品に反映されているんだと思うよ。
─好んで聴くレコードの傾向に変化はあった?
アロウ:私はあんまり変わってない(笑)。
ヘンリー:僕はすごくインディロックにハマってる。前は、理由もなくアンチ・インディロックだったんだけどね(笑)。アロウと初めて会った頃は、たぶんエリオット・スミスは聴いていなかったと思うんだけど、今は聴いてる。
アロウ:私、実は今回のアルバムのリリースで忙しくて、全然音楽を聴いてないの(笑)。飛行機の中でさえ、音楽を聴かずに寝ちゃう。自分で話していても変に感じるけど、最近音楽を聴くと、何故かすごく不安になっちゃって。このアルバムを出すことで頭がいっぱいになっちゃってるのかも。
ヘンリー:僕は逆に、そういうのから逃避するために音楽を聴くけどね(笑)。
Photo by Cameron McCool
─シーンが移り変わってきて、近い音楽性のギターバンドが少なくなってきた分、スタークローラーの個性がますます際立ってきていると思うのですが。あなたたちが仲間だと思っているバンド、共感するバンドは、たとえば誰なのでしょう?
ヘンリー:アルバムのリリースパーティーでオープニングをつとめてくれた、Rocketっていうバンドがいるんだけど、彼らは新しいバンドで、ロックミュージックを作ってる。すごくクールだよ。ギターもラウドだし、グランジっぽいんだ。最近は、自分たちのショーに来てくれる若いファンの人たちも、ロックバンドをやってる子達が多い。より多くの若い世代の人たちがロックにハマってくれているのを見るのは嬉しいし、クールだと思う。自分の親が聴く音楽という捉え方じゃなくて、クールな音楽として自分たちで好んでロックを聴いている若い人たちが増えているのは感じるね。彼らがその聖火を絶やすことなく繋いでいって、これからもっとロックバンドが増えていくことを願ってる。
アロウ:確かに、ロックはこれまでよりもクールな音楽として見られるようになってきているよね。それってすごく良いことだと思う。
ヘンリー:この間イギリスでショーをやった時に、何人かのティーンの子達が僕らに近づいてきて、彼らはバンドをやっている子達だったんだけど、自分たちが「Roadkill」をカバーしている様子を見せてくれたんだ。それがすっごいパンクで、むちゃくちゃカッコよくてさ。僕とアロウは美術の学校に通ってたけど、その頃は周りでロックを聴いている同級生はほとんどいなかった。でも、今そんなふうに世界の若い人たちがロックを聴いて、演奏している姿を見ると、すごく嬉しくなるね。
─「Roadkill」はMVもすごく面白かったです。あれを撮影するのは大変だったんじゃないですか?
アロウ:すごく大変だった(笑)。
─あの調子で、一日中走り回ってたんですか?
アロウ:そう(笑)。
ヘンリー:いつもよりも頑張って走ってたよね(笑)。
─今回のビデオはどれもすごく面白かったです。最近はどんな映画を好んで見てますか?
アロウ:今回のアルバムのビデオは、私のボーイフレンドのギルバートが監督を務めていて、私と彼でアイディアを考えた。他のミュージックビデオや映画を見ながら、インスピレーションをもらって、それをもとにストーリーを考えたの。「Roadkill」のビデオに関しては、アクション映画をいっぱい見た。動きを研究するために、バスター・キートンの映画もたくさん見たし、あとは、アニメーション映画の『鉄コン筋クリート』も見た。あの作品はインスレピーションの一つ。走っているシーンのためには、映画のオープニングのタイトルバックもいろいろ見たの。そこからインスパイアされて本当にやりたいと思ったことは、予算が足りなくて実現できなかったけど(笑)。
ヘンリー:あのビデオで、ティム(・フランコ、ベーシスト)は本当に車に轢かれようとしていたんだ。その方がリアルな映像が撮れるって。これからツアーもあるんだし、それは無理だと皆で止めた(笑)。
アロウ:あとは『ジャッカス』! 「Roadkill」のビデオの最後で、車から出てくる人の役を探していたんだけど、誰にしようか考えて、『ジャッカス』のスティーヴォだったら最高だねって話になったの。それでマネージメントを通してダメ元で連絡したら、なんとOKが出て、出演してくれた。あれはすっごく楽しかったな!
優れたロックバンドの条件、日本での想い出
─そもそも、「優れたロックバンドの条件」とは、何だと思いますか?
アロウ:誠実であることかな。作品が、リアルな場所から出てきたものである必要があると思う。ロックとつながりを感じられない人たちが数多くいる理由は、例えばコスチュームだったり、どこかフェイクな部分を感じるからだと思う。でも、”自分にもいつかこれができるはず!”ってその人に思わせることができるロックバンドもいるんだよね。それができるのは、自分たちが本当にやりたいことをやって、真の自分を見せているバンドだと思う。俺はロックスターだ!みたいなアティチュードは、もう機能しないんじゃないかな。それは、普通の人たちとはかけ離れすぎてしまっているから。やっぱり、誠実であることが大事だと思う。
ヘンリー:ちゃんと人のことを気にかけること、かな。ロックバンドの中には、”周りのことなんて気にするな!””何も考えず今を楽しめ!”なんて言うバンドもいるけど、 ”Fuck you!”のアティチュードだけでは人々はついてこないと思うんだ。周りの人々のことも気にかけて、自分が信じている何かを曲にして表現しているバンドが、優れたロックバンドだと思う。
─最近はジェンダーや人種の問題に踏み込んで歌う若いバンドも増えてきました。そういう思想的なテーマは、どの程度バンドに持ち込んでいますか?
アロウ:私の場合は、自分のパーソナルな経験だけを歌詞にしてる。
ヘンリー:そうだね。だから、今はそういう問題には触れていないけど、これから人生が変化していく中で、何年後かに社会的問題が自分たちの一部になって、それについて書くこともあるかもしれない。僕たちの場合、さあ何かについて書こう!と、一つのテーマを定めることはないんだよね。ペンと紙を手にとって、自然に出てくるものを歌詞にしていく感じなんだ。どんなアイディアが出てくるかは、その時の状況やインスピレーションによって変わる。でも、社会問題について歌っている人たちはクールだと思うよ。僕自身が直接それを経験していなくても、彼らがそれをどう感じているかを理解することができるし、そこに共感できるから。全く同じ経験をしていなくても、その気持ちを理解し合うことが大切だと思う。
アロウ:私たちが音楽を通してやりたいのもそれと同じ。もし、私たちの歌詞の内容が、その人が経験したことそのままではないとしても、自分の経験とつなぎ合わせて、自由に解釈して、何かを感じて欲しい。それが私たちの願いなの。
─以前ツアー中に、アロウが他のバンドから悪質な性的嫌がらせを受けた体験を、SNSに投稿したことがありましたよね。それを読んだ時に、とても勇敢な行為だと思ったんです。泣き寝入りせず、世の中に広く知らせることで、ああいう行為が問題視されて改善されていくと思うので。
アロウ:ありがとう。
─とても勇気のいる決断だったと思いますが、ああいうアクションをしたことで、共感してくれた女性も多かったんじゃないですか?
アロウ:そうだね。家の近くにブリトーのお店があって、そこでブリトーを買おうと並んでいる時に、ある男の人が私に話しかけてきたことがあった。彼には娘がいて、私の発言を読んで、彼の娘さんがどれだけ助けられたかを話してくれたの。ああいう内容を投稿したことで不安にもなったし、ストレスも抱えていたんだけど、彼の言葉を聞いて救われた。あれはすごく嬉しかったな。
Photo by Cameron McCool
─スタークローラーは衝撃的なライブを通じて、日本でも愛されるバンドになったと思います。最後の来日からかなり時間が空きましたが、特に印象深い日本でのライブや、今でも記憶に残っているエピソードは?
アロウ:日本のことは全部覚えてる(笑)。毎回すっごく楽しいから。
ヘンリー:すぐにでも戻りたいんだ。来週(10月1日)韓国に行くから、どうにかそこに日本を組み込めないか全力を尽くしたんだけど、行けないことになってさ……。でも、できるだけ早く日本に行けるよう心から願ってる。
アロウ:日本での想い出はたくさんありすぎて、とても選べないな。でも、フジロックはやっぱり大きかった。ステージに立つまで、いったい何人くらい人が集まってくれているのかわからなかったんだけど、いざステージに立ったら目の前に大勢の人がいて、みんな腕や体を動かしてくれていた。大きなステージであんなに人が盛り上がってくれたのは初めてだったの。まるで、自分たちがフー・ファイターズになった気分だった(笑)。それくらい、夢みたいな経験だったんだよね。空港でファンのみんなが待っていてくれたのも、本当に嬉しかった。日本では、いつも素晴らしい経験をさせてもらってるの。
ヘンリー:高校に通っていた時、学校の中で、僕は”ロック音楽にハマってる変人”だった。でも日本でタワーレコードに行って、すごく感動したんだよね。子供の頃は、家の近くにCD屋もあったし、バンドのポスターが貼ってあったり、フィギュアが置いてあったりもした。今はもう、そんなお店はアメリカにはまったくないんだ。でも日本にはまだそれが存在していて、作品を評価し、興奮してくれる人たちがたくさんいる。その作品の世界を探求して、CDのボーナストラックまで楽しんでいるよね。それはすごくユニークだと思ったし、だからこそ日本盤のためだけに、いくつかアコースティックバージョンを収録したいと思ったんだ。
─最近のライブはどんな感じでしょう? アロウは相変わらず血を吐いてますか?
アロウ:血を吐くのは今はやめちゃったの。バンドの新しい時代に入りたいとも思ったし、コロナが始まる前くらいから、同じことを繰り返してるなって感覚が既にあって。もちろん、ファンのみんなが気に入ってくれているのは嬉しいし、がっかりはさせたくないけど、今は何か新しいことに挑戦する時かなって感じているの。クレイジーなことはしてるんだけど、動きがずっと同じな気がして。だから、バンドの新しい時代に合わせて、ちょっとそれを一新できたらなって思ってる。
─新しいアルバムは、アロウのお父さん(リリーズ、ビーチウッド・スパークスなどで活躍してきたアーロン・スパースケ)にも聴かせました?
アロウ:うん。でも、もうだいぶ前だけどね。アドバイスとかは特になくて、アルバムを気に入ってくれてた。作品を批評することはなくて、このアルバムができ上がったことに興奮してくれてたみたい。
─今日はたっぷり話を聞かせてくれてありがとうございました。また日本に来てくれる日を楽しみにしています。
アロウ:すぐに行くからね! こちらこそありがとう。
スタークローラー
『She Said』
発売中
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