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チャンネル登録者数1億人、世界一稼ぐYouTuber「MrBeast」の正体

Rolling Stone Japan / 2022年10月6日 18時45分

MrBeastことジミー・ドナルドソン(Photo by Matthias Clamer for Rolling Stone)

米国南東部ノースカロライナ州の某所。MrBeast(ミスタービースト)の名前で知られるYouTuberのジミー・ドナルドソンは、100万ドル(約1億4000万円)の現金を筆者である私に見せようとしている。

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ドナルドソンは、米国でもっとも有名なユーチューバー。この記事が公開される頃には、世界一の座に君臨しているかもしれない。身長は190センチ弱で、すらりとした体型だ。私が取材で彼のもとを訪れると、スポーツブランドのグレーのスウェット姿で自ら立ち上げたMrBeast YouTube LLCの自社倉庫を案内してくれた。そこここにMrBeast名義で制作したさまざまな動画の小道具が転がっている。やってみた系やドッキリ系、大金を贈るものなど、ドナルドソンは多種多様な動画を制作してきた。一角には、ゲームソフト小売り大手のゲームストップの商品がうず高く積まれている。これらはすべて、「三角形の中に収めることができた商品を全部買ってあげる」という動画の撮影で使われたものだ(「挑戦者から商品の代わりに現金が欲しいと言われた」とドナルドソンは話す)。別の一角には、「100人が恐竜の着ぐるみを着て店に入ったらどうなる?」という動画の撮影で使用した着ぐるみでいっぱいの木箱が置かれている。木箱のうしろには、無数のカラフルなジェルボール。これらはすべて、2018年の撮影で親友の家の裏庭一面を埋め尽くすのに使われた。

そうこうしているうちに、現金100万ドルの保管場所に到着。「現金はここにある。盗みに入りたい人は、覚えておくといいよ」とドナルドソンは言った。

100万ドルの番人を務めるのは、トレイシー・パリシャーという優しい顔をした男性だ。目の色は鮮やかなブルーで、南部訛りで話す。もともとは理学療法士として働いていたが、現在はMrBeast YouTube LLCのオペレーション・マネージャーを務める。パリシャーさんは、ドナルドソンの母親の再婚相手でもある。スチール製の書類整理棚の中に無数の札束がきれいに並ぶ。普段はきっかり100万ドルあるのだが、この日は10万ドル(約1400万円)足りない。フロリダ州で行われる撮影で使われるのだ。ドナルドソンと撮影クルーは、フロリダ州で「どっちがマシ?」動画を撮影する。特定の金額の対価として、サメと一緒に泳ぐのとワニを橋代わりにして水上を歩くのとではどっちがマシか? のようなことを検証するのだ。100ドル札の中には、くしゃくしゃに丸められてドナルドソンの足元に転がっているものもある。「存在感があるし、画的にも見栄えがいいから」とドナルドソンは話す。

これほどの大金を目の当たりにすると、思いもよらないことが起きるものだ。パリッとした新札特有のにおいが私の鼻孔をくすぐる。枯れ葉の山、あるいは壊れたコピー機のようなにおいだ。これだけあれば、私の人生や周りの人の人生を大きく変えられるかもしれない、と考えはじめる。医療費や学費、子育て費用はもとより、寄付型クラウドファンディングや慈善活動にも役立つだろう。そう考えるうちに、目まいがしてきた。ボクサーでYouTuberのジェイク・ポールの右フックを顔面にくらったような気分だ(YouTubeチャンネル「MrBeast」で先日公開された「ジェイク・ポールのパンチをくらう」という動画には、2万ドルの賞金がかけられていた)。

パリシャーさんとドナルドソンが私の様子に気づいた。

「ここにいる社員の大半は、もう慣れてしまったよ」とトレイシーさんは言う。

「そのとおり。僕らは、もう何も感じないんだ」とドナルドソンがうなずいた。

「社員はここに腰掛けて、私の代わりに現金を数えてくれる。でも、最近は大金を目の当たりにしてもまったく動じないね」とトレイシーさんは話す。

「これだけあれば、どれだけの多くの人の人生を変えられるか考えたことはありますか?」と私は尋ねた。

ドナルドソンは、何をいまさらとでも言うような顔で私を見た。「もちろん、考えるよ」と言う。「そのために持っているんだ」


MrBeast、2022年3月10日、ノースカロライナ州グリーンヴィルにて撮影。
PHOTOGRAPH BY MATTHIAS CLAMER FOR ROLLING STONE. FASHION DIRECTION BY ALEX BADIA. STYLING BY STEPHANIE TRICOLA. GROOMING BY AMANDA WILSON. PROP STYLING BY DOMINIQUE BARNES. T-SHIRT BY RAG & BONE. JEANS BY LEVIS.



「思いもよらない方法で誰かの人生を変えてしまう」

YouTubeチャンネル「MrBeast」の主人公はドナルドソン本人だ。登録者数が1億人を超えているこのチャンネルでは、高額な費用をかけて制作された動画とカラフルなサムネイルが目を引く。一つひとつのサムネイルの制作にも1万ドルが注がれており、「賞金100万ドルをかけたエクストリームな隠れんぼ」や「世界一危険な脱出ゲーム」のように、YouTubeのアルゴリズムを理解した最適なタイトルが付けられている。こうした動画の多くは、感覚としてはビデオゲームに近い。実際、脱出ゲームは10室を舞台に行われており、それぞれの部屋はキューブリック監督のホテルを想起させるものから本物のヤギがいる田園エリア、さらにはスパイク付きの動く壁が挑戦者に迫ってくるインディ・ジョーンズ風の部屋のように、テーマごとに制作されている。イタリアの高級車ランボルギーニ3台を使ったレース動画では、お題が書かれた封筒を求めて挑戦者たちが街中を疾走した。





こうした動画の多くは、クリックを誘うためにあえて過激なタイトルをつけているとも見られかねない。「世界一大きなスライスピザを食べる」という動画では、重さ4キロ、全長180センチほどのスライスピザの完食に挑んだ。その一方、「24時間ぶっ通しで水中にいる」という動画では、裏庭のプールの中に酸素いっぱいの大きなクリアケースを設置し、そこに頭を入れてチャレンジに挑んだ。タイムは12時間強で、結果的には失敗に終わった。このほかにも、1950年代のテレビ番組『Queen for a Day』のように善行を目的としたものもある。こうした動画では、ホームレスの人に家をプレゼントしたり、無作為に選ばれた動画配信プラットフォームユーザーに10万ドルを寄付したりしている。2020年末には、「MrBeast Philanthropy」という新チャンネルを開設。収益は、ノースカロライナ州東部で移動式のフードバンクを運営している卸売業者に全額寄付された。このフードバンクは、2021年末までに100万563食を提供したそうだ。





さらにドナルドソンは、くじ引きや競争といった参加型の動画を通じて、視聴者が大金を手に入れるチャンスを提供している。カナダ出身のアレックス・マローニーさん(20)は、MrBeastのアプリケーションボタンから2日以上指を離さないというチャレンジに成功して賞金10万ドルを獲得した。その間、マローニーさんはフードデリバリーとエナジードリンクで生活していたそうだ。マローニーさんは無職で、大学に進学しようかどうか迷っていた。10万ドルを手に入れたことで、安心感を得ることができたと話す。「信じられませんでした。賞金を獲得したおかげで、生活が安定したと思えるようになったんです」。そう言うと、「(ドナルドソンは)思いもよらない方法で誰かの人生を変えてしまう」と語った。

ドナルドソンの動画には、20代前半の白人青年たちが頻繁に登場する。彼らの多くは、ドナルドソンのように人生に行き詰まり、各々がYouTubeに活躍の場を見出した若者たちだ。華奢でイケメンのクリス・タイソンは、初期の動画にも出演している古株。大きな目がキュートなチャンドラー・ハロウは、ドナルドソンの幼馴染で野球仲間だ。クセ毛が特徴的なカール・ジェイコブスは、アップステート・ニューヨーク出身の元編集者。編集の仕事を辞めてドナルドソンの一味に加入したジェイコブスは、いまでは固定メンバーのような存在だ。

彼らを引き連れて、ドナルドソンは一大マルチメディア帝国を築き上げた。メインチャンネルの昨年の年収は5400万ドル(約77億円)とも言われている。YouTube活動のほかにもMrBeast Burgerというデリバリー専門のレストランを全米でフランチャイズ展開していて、その店舗数は1600にのぼる。1月には、Feastablesというチョコレートバーブランドをローンチ。『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカを想起させる「MrBeastのチョコレート工場チャレンジ」といったキャンペーンを展開している。こうした事業に加えて、毎月のグッズ収入は約50万ドル(約7000万円)と推測される。


アメリカンドリームを体現する23歳

寝室でビデオゲームのコメント動画を制作していたドナルドソンは、10年もたたないうちに60人のフルタイム社員(フリーランスを除く)を抱える実業家へと成長した。2000万ドル(約28億円)の寄付金を集めて2000万本の植樹を目指す#TeamTreesや海から約1万3600トン分のゴミを集める#TeamSeasといったさまざまな慈善活動にも取り組んでいる。言っておくが、ドナルドソンはまだ23歳だ。「5年前は、(授業中に)トイレに行きたい時は、先生の許可が必要だった」と話す。「でも、こうした活動はほんの一部なんだ。20年後に僕らがどれほどの成果をあげられるか、楽しみにしていてほしい」

MrBeast YouTube LLCは、ドナルドソンの故郷ノースカロライナ州グリーンヴィルに3つの巨大なコンテンツおよびプロダクション拠点を建設しようとしている。グリーンヴィルは、郊外に散らばったショッピングモールやオフィスパーク、イースト・キャロライナ大学のキャンパスを除いては、取り立てて見どころのない小さな町だ。ドナルドソンは、そんなグリーンヴィルをデジタルメディア業界で活躍するコンテンツクリエイターが集まる場所にしたいと期待を膨らませている。「(ドナルドソンを)誰かに例えるなら、アトランタにスタジオを構えた映画プロデューサーのタイラー・ペリーがいちばん近いかもしれません」と話すのは、同社の代表取締役を務めるマーク・ハストヴェットさん。彼自身もグリーンヴィルとロサンゼルスを行き来している。「ジミー(・ドナルドソン)は、ここに自分のスタジオをつくろうとしているんです」

ともすれば、ドナルドソンは年間数千万ドルを稼ぐメディア帝国のフロントマンらしからぬ人物かもしれない。内向的であることを自ら認めている彼は、気軽な会話が苦手だと頻繁に漏らす。私が初めて会った時は、約5600メートルの広さを誇るスタジオのドライブウェイをのんびり歩いてきたかと思うと、自己紹介もせずに「さて、いまから話せばいいかな?」と藪から棒に尋ねられた。

ドナルドソンのことをよく知る人物でさえ、彼がカメラの前に立つ人生を選んだことに驚きを隠さない。「誰かに(有名になる)前のジミーのことを尋ねると、『あのジミーが有名人? マジか』って言われると思う」と、ドナルドソンの長年の親友であるクリス・タイソンは言った。「ジミーは、いつも物静かな奴だった。誰かと話したくないとか、そういうわけじゃない。ジミーは、自分が好きなこと——主にゲームやYouTubeなんだけど——について話すのが好きなんだ。それ以外の話題については話したがらない」

本当のことを言えば、「MrBeast」チャンネルの主人公はMrBeast本人ではない。現金こそがの真の主役なのだ。ドナルドソンのほぼすべての動画では、現金にスポットライトが当てられている。それと同時に、世界中の問題を解決してくれる万能薬として、単発の仕事を請け負うギグワーカーや働き者のシングルマザーといった出演者に差し出されているのだ。ある動画では、グラス2杯の水を持ってきたホットドッグ店の店員に1万ドルのチップが支払われた。別の動画では、パンデミックで仕事を失った人々がプレゼントとして10万ドル以上の現金を受け取った。MrBeastが人々を魅了するのは、米作家ホレイショ・アルジャーの成長物語に通じるものがあるからかもしれない。少しでも運が良ければ、通りで出くわしたMrBeastから大金をプレゼントされることも夢ではないのだ。

当然ながら、こうした行為は脳腫瘍に絆創膏を貼るようなものだ。世間から注目されるかもしれないが、根強い格差や貧困の連鎖の解決策にはならない。ドナルドソンとカール・ジェイコブス、タレク・サラーマ(もともとはコメディアン志望だが、いまはカメラマン兼キャストとしてドナルドソンと仕事をしている)と一緒にメキシコ料理店でランチをしながら、私は次のように動画の感想を述べた。彼らの動画を見ていると、高額の小切手や拳いっぱいの現金は、あらゆる”病”を治すことができるように思えてくると。

「ある意味、そのとおりかもしれない」とサラーマは言った。

ドナルドソンもうなずく。「1兆ドルを持っていれば、悩みなんてないようなものだ」


シングルマザーの母

ドナルドソンは、スティーブ・ジョブスやイーロン・マスクといった実業家に憧れている。取り立てて特徴のない事務所と自宅のリビングルームの壁には、彼がヒーローと崇める人物たちの写真が並ぶ(その中には、アマゾンで購入したナポレオン1世に扮するマスクの写真もある)。「彼の行為や人との接し方を何から何まで支持しているわけではない」と、ドナルドソンはマスクについて話す。テスラとスペースXの創業者であるマスクがこの取材の1週間前にヒトラーに関するミームをTwitterに投稿し、削除したことが念頭にあるのだろう。「それでも、石油依存からの脱却を図ったり、宇宙探検云々で人々のイマジネーションにふたたび火を点けたりしているところには、感銘を受けるんだ」


母親のスーさんと1歳頃のドナルドソン。子供の頃はかなりの負けず嫌いだったとスーさんは話す。「わざと負けてゲームを放棄するなんてもってのほか。最後までプレイしないと解放してくれないんです」COURTESY OF MRBEAST

ドナルドソンは、11歳より前の記憶はどれも曖昧なものばかりだと言い張る一方で、それが実業家としての重要な資質であると前向きに解釈する。「僕は、徹底して先進的な考え方の持ち主なんだ」と話す。「過去なんてクソくらえ。過去は過去。だから僕は、未来を支配しようとしている」。確かに、ドナルドソンはノスタルジーとは無縁のようだ。それでも、ドナルドソンの母親は巨大な倉庫に息子の昔の動画の思い出の品々をすべて保管している。当の本人は、倉庫に足を踏み入れたことはないのだが。

過去を懐かしむ感覚が欠けていることは、自己防衛という点でも役に立つ。ドナルドソンの幼少期は、安定とは程遠いものだったのだ。ドナルドソンは、米国のほぼ真ん中に位置するカンザス州で3人兄弟の中間子として生まれた。両親は軍人で、母親のスーさんは、同州のレブンワース砦で働く前はドイツのマンハイムで刑務所長を務めていた。「息子は、私が刑務所長だったことをすごくかっこいいと思っているようです」とスーさんは話す。ふんわりとした赤毛と穏やかな口調が特徴的な女性だ。現在は、息子の会社の最高コンプライアンス責任者(CCO)として会社の支出や契約を統括するかたわら、息子の銀行取引といった個人的なことを管理している(息子の住む場所を選んだのも彼女だ)。

軍にいた頃、スーさんは1日12時間働いていた。そのため、子育てのほとんどはベビーシッターの留学生に任せっきりだった。息子の内向的な性格の主な原因は、引っ越しが多かったせいではないかと分析する。「ジミーが7歳になるまで、南部の3カ所を転々としました」とスーさんは言う。「いとこ、おば、おじといった親戚もいません。息子と夫と私だけでした」。結婚生活はいばらの道で、2007年にスーさんは離婚。当時、ドナルドソンは8歳だった。それ以来、ドナルドソンは父とまったく連絡を取っていない。理由は語りたくないと言う。「できる限りのことをして、とにかく前に進み続ける努力をしました」とスーさんは離婚について話す。「ジミーと私は、精一杯がんばることでこの困難を乗り越えたのです」

その後、ドナルドソンはグリーンヴィル・クリスチャン・アカデミーという小規模な私立校に転入した。そこは、長髪の男子生徒に罰点をつけ、罰として聖書の節を丸写しさせるような学校だった。ドナルドソンは、校則をしっかり守ったと言う。「毎日、聖書の言葉を頭に叩き込まれた」と話す。それでも、同性愛などに対する教会の見解には長年疑問を抱いてきた。現在は不可知論者を自称する。「この地域の人たちにとって(同性愛などは)かなりセンシティブな話題だ」と語る。「僕は神の存在を信じているけど、世の中にはいろんな宗教がありすぎるし、熱狂的な信者もたくさんいる。どの宗教が正しいかを見極めるのは困難だ」

ドナルドソンは、友達の多い子供ではなかった。週末にほかの子たちと一緒に出かけることも稀だった。スーさんは、幼い頃から息子の負けん気の強さに気づいていた。「わざと負けてゲームを放棄するなんてもってのほか。最後までプレイしないと解放してくれないんです」と話す。「『モノポリー』をしていると、ジミーが『最高額物件をわざと僕に譲って負けようとしないで』とあまりにしつこいので、しばらくプレイしてからもう嫌になってしまったくらいです」


型破りな博愛行為

関係者は、ドナルドソンのことを「こだわりの強い人」だと口を揃えて言う。その他すべてを犠牲にして、ひとつのことに執着するきらいがあるのだ。ドナルドソン曰く、YouTubeに打ち込みすぎたせいでクラスメートから自閉症なのでは? と疑われたことがあるそうだ。「5年間、体に悪いんじゃないかってくらい徹底してバイラル化やYouTubeのアルゴリズムを研究していた時期があった」と言う。「朝起きて、フードデリバリーで食事を済ませる。それからパソコンの前に座って、(ほかのYouTuberたちと)一緒に延々とくだらないことを研究するんだ」(『カタンの開拓者たち』というボードゲームにハマった時は、いつも新品でプレイしたいと言うドナルドソンの希望を叶えるため、アシスタントはこのボードゲームを毎月最低5点は購入していた。ドナルドソンは、このボードゲームの特徴である戦略や陰謀、ポーカーフェイスといった要素が大好きで、「嘘をつくのは大得意だ」と豪語する)。

ドナルドソンは、仕事に打ち込みすぎる性格のせいで人間関係を維持するのが苦手だと明かした。「友人関係を維持するのがあまり得意じゃない」と話す。「僕の友達は、全部仕事の関係者なんだ」。家族で一緒に過ごす時間も多くはない。近所で暮らすYouTuberの兄とも疎遠だ。ドナルドソンは、兄は自分に似ていると言いつつも、「自分よりは成功していない」と言う(ドナルドソンの兄は「MrBro」というチャンネルで活動しているのだが、あまり効果はないらしい。ドナルドソン曰く、兄は「MrBro」と命名したことをいまは後悔している)。

野球少年だったドナルドソンは、その後クローン病を患っていると医師から診断された。クローン病とは、小腸や大腸などの消化管に炎症が起こる自己免疫性の病気だ。そのため、高校2年生以降はスポーツを諦めざるを得なかった(現在は腹痛や下痢といった症状を和らげる「レミケード」という医薬品の服用に加えて、お抱えのシェフが用意した食事を取っている。それでも、辛い症状に悩まされることは多々あるそうだ)。クローン病を患っていることのストレスのせいで、ドナルドソンはより多くの時間を家の中で過ごすようになったのではないかとスーさんは話す。こうしてドナルドソンは、自然とYouTubeに惹かれていった。

実際、ドナルドソンは11歳からはやくもYouTuberとして頭角を現していた。『マインクラフト』や『コール オブ デューティ』などのビデオゲーム実況動画をYouTubeに投稿していたのだ。13歳で「MrBeast6000」というチャンネルを開設(「MrBeast」というチャンネル名は既に使用されていた)。当時のドナルドソンは、自分らしさを模索していたように見える。YouTubeのさまざまなトレンドに便乗しては、何が自分にいちばんハマるかを検証した。人気YouTuberのPewDiePieのようなビデオゲーム実況動画に挑戦し、その後YouTuberたちがどれだけ稼いでいるかを見積もる動画を制作した。

それから徐々に登録者が増えはじめ、どうにかして収益を生み出せるようになった。考えられる理由のひとつは、過激なバラエティ系動画を次々と投稿したことだ。ある動画でドナルドソンは、タイソンの手でトイレットペーパーと食品用ラップにぐるぐる巻きにされる。別の動画では、座ってひたすら10万まで数えている。この動画は、TVアニメ『NARUTO -ナルト-』を一気見する様子を収益化できないか?という思いつきからヒントを得たそうだ。2015年に投稿した動画では、未来の自分に向けて「最低10万人は登録者がいるといいね」とメッセージを送った。2017年5月、チャンネルの登録者数は100万に達した。

スーさんは、息子が動画制作に勤しんでいることをまったく知らなかった。だから、イヤーブック(訳注:1年間の学校生活をまとめたアルバム)を眺めていた時にYouTube動画に関する息子の書き込みを見た時は、心底驚いた。「私は、ごく普通の母親です」と彼女は話す。「息子がしていることがとても不安でした」。YouTubeで稼いでいることを息子から明かされると、その不安は少し和らいだ。それでも、進学して大学を卒業することにこだわった。落とし所として、ドナルドソンはコミュニティ・カレッジに入った。ところが、授業には一度も顔を出さず、1学期の途中でドロップアウトした。

するとスーさんは息子を家から追い出し、タイソンとメゾネットで同棲することを勧めた。タイミングとしては完璧だった。チャンネルの登録者は75万人に達したばかりで、初のブランド契約を取り付けていた。ドナルドソンは稼ぎを使うのではなく、ホームレスの人に1万ドルの小切手をプレゼントする動画をつくった。

ドナルドソンが動画の中で誰かに現金を配るのは、これが初めてではない。それでも、ドナルドソンはこうした型破りな博愛行為が人々の共感を誘うことに気づいた。それからは、「飲食店の接客係に本物の金の延べ棒でチップを支払う」(5300万回再生)のような”お金贈り”動画を中心につくるようになった。気づく頃には、YouTubeで毎月10万ドルを稼いでいた。「ある日、小切手を持った息子から『見てよママ! 僕はこれだけ稼いだんだ』と言われました」とスーさんは振り返る。「その額は、私の年収と同じだったのです」。その後スーさんは退職し、息子の会社に入社した。


クローン病と診断されたドナルドソン(写真左)は、大好きなスポーツを諦めなければならなかった。けれども、それを機にYouTubeにのめり込んでいく。COURTESY OF MRBEAST

「カネなんてどうでもいい」とドナルドソンは言う。死ぬ前には、全財産を誰かに譲るつもりでいる。「次から次へとピカピカの高級品を追いかけるような人生はまっぴらだ」と、テスラのモデルXを運転しながら話す。「そんな人生は悲しいし、惨めすぎるよ」。ドナルドソンのアシスタントを務めるモデル級イケメンのスティールさん(ユタ州からの移住者)の話によると、アシスタントとして雇われる前、ドナルドソンはリビングルームにアウトドア用の折りたたみ椅子を置き、床にマットレスを広げて暮らしていた。「見た目なんてどうでもいい」とドナルドソンは話す。「大事なのは機能性だ」。それでも、一つひとつのピカピカの所有品の値段に無頓着ではないようだ。たとえば、観音開きタイプのオーダーメイドの冷蔵庫——仕事の邪魔にならないよう、お抱えのシェフが外から食事を運べるように設計されている——の設置には、なんと50万ドルかかったと言う。


金銭は、ひとつの目標を達成するための手段

世界一稼ぐYouTuberとして知られるドナルドソンには、安全面の懸念もつきまとう。3〜4年前、撮影中に強盗に押し入られたことがあるのだ。それを機にセキュリティゲートに囲まれたコミュニティに引っ越した。窓には防弾ガラスを張り、三重扉をスチールでさらに補強した。市内で人前に出る時は、必ずボディガードが同行する。こうした懸念は、まったく根拠がないわけではない。私たちがメキシコ料理店でランチをしていると、店の外の駐車場でふたりのティーンエイジャーがずっと待ち伏せをしていた。私たちが店を出ると、ドナルドソンを尾行しはじめた。

ドナルドソンは、こうした問題が身から出た錆だということをわかっている。「僕は、好きな世界を創ることも好きなコンテンツをつくることもできる。これが僕の選んだ道なんだ」と言う。「結局のところ、僕は影響力を持っている。望みさえすれば、死ぬほどカネを稼ぐことだってできる。やれやれ。でも、世間は僕に期待してくれている。だから、僕は死なない」

金銭は、ひとつの目標を達成するための手段。これがドナルドソンの基本的な考えのようだ。その目標とは、YouTubeを支配すること。金の延べ棒やランボルギーニ、札束の山といったものは「どうでもいい」と語る。「でも、ほかの人たちにとってはそうじゃない。再生回数が伸びるのもそれが理由だ。だからこそ、僕らはどんどん稼いで大きなことに取り組めるんだ」

チャンネルの登録者数が伸びるにつれて、動画の制作費も膨れ上がった。現在、ほとんどの動画の1本ごとの制作費は約100万ドルにのぼる。利益はゼロに近い。メインチャンネルの主な収入源は、タイソンらが登場するゲーム実況やリアクション動画だ。こうした動画は、制作費のわりに利益をあげることができるので効率が良い。「つくろうと思えば、もっと制作費のかからない動画をつくることもできるけど」とドナルドソンは話す。「でも、それは嫌なんだ。もっとデカいことがしたい。限界に挑みたいんだ」

2021年末、YouTubeを乗っ取ることに長けたドナルドソンの能力が世界中のメディアに注目された。ドナルドソンは、約400万ドル(5億7000万円)投じてNetflixの人気ドラマ『イカゲーム』を再現したのだ。動画の内容は、45万6000ドル(約6500万円)の賞金をかけた激しい椅子取りゲーム。原作と違って過激な暴力はない。動画は大成功を収め、2億2500万もの再生回数を記録した。



その一方で、この動画は多くの人のひんしゅくを買った。原作が浮き彫りにした、賞金目当てのゲームによって中産階級が支払う残酷な対価を見過ごしていると批判されたのだ。それでもドナルドソンはこうした批判をはねつけて、「ドラマの監督は、『こうした再現動画は好きだ』と言った」と指摘する(『イカゲーム』のファン・ドンヒョク監督は、YouTuberたちがドラマを再現することには賛成しているが、MrBeastの動画に限定してコメントしていたわけではない)。


物議を醸した過去のツイートと動画

ドナルドソンの行動は、過去にも物議を醸した。2018年、アトランティック誌はドナルドソンが10代だった頃に反同性愛発言をツイートし、複数の動画の中でジョークのオチに同性愛を利用したと報じた。それに対し、当時のドナルドソンは謝罪しなかった。その代わり、同誌に「僕の行為は、攻撃性とは一切無縁だ。相手にするつもりもない。実際、世間的にはどうでもいいことだと思っている」とコメントした。現在は、こうした対応を悔いている。

「ここは、事実上バイブル・ベルト(キリスト教篤信地帯)の中心なんだ」と、グリーンヴィルをドライブしながらドナルドソンは言う。「10代の頃は、『世界を滅ぼすために神が降臨するのは、同性愛という罪を罰するため』的なことを毎日聞かされていた」。その結果、当時はこうした反同性愛的な考えが普通だと信じるようになった。「大人になるにつれて『この考えは普通じゃない。僕が育った場所がおかしいんだ』ってことに気づいた。だから、戻れることなら過去に戻って『いい加減にしろ』って自分に言ってやりたいよ」

ドナルドソンの仲間の中には、SNS上の発言を事細かに詮索されたものもいる。そのひとりがタイソンだ。2021年4月、タイソンはTwitterに反同性愛的で同性愛嫌悪的なミームを投稿したとして批判を浴びた。その後タイソンはツイートを削除し、謝罪した。その時の経験は「学び、成長するチャンスを与えてくれた」と語る。そう言いながら、当時のツイートは自身のセクシュアリティに関する悩みに端を発するものだと明かした。2020年秋、タイソンはバイセクシュアルであることをカミングアウトした。

ドナルドソンは、昨年再浮上した2016年の動画にはあまり触れたがらない。動画の中でドナルドソンは、性別で言うなら自分は攻撃用ヘリコプターと戦車だと言ってトランスジェンダーの概念を痛烈に皮肉り、ネット掲示板が元ネタのミームを再生している。現在は削除されているこの動画について、ドナルドソンは次のようにコメントした。「ただ座ってジェンダーのことを考えるだけでカネを稼ぐ人がいるなんて、どうかしてるよ」。問題のミームは、同性愛嫌悪的なものとして当時はかなり広まっていたが、出所は知らないとドナルドソンは言う。「冗談のつもりで、みんなと同じようにミームで遊んでいただけだ」

ドナルドソンは、政治には断固として無関心な姿勢——少なくとも公の場では——を貫くことで多少なりとも世間の批判をかわせるようになった。「共和党支持者や民主党支持者のどちらかを無視するつもりはない」と語る。「いろんな人が僕の慈善活動をサポートできる、という考えが気に入っているから。僕の目標は、何億人もの人たちに食事を提供すること。だから、アメリカ人の半分を無視するのはバカげてる」(先日、ドナルドソンはコメディアンで格闘技コメンテーターのジョー・ローガンがホストを務めるポッドキャスト番組に出演。同番組は、コロナ否定論やワクチンに関する誤った情報を発信したことで批判されたが、ドナルドソンが出演したエピソードでは、こうした話題は取り上げられなかった)。

2021年、ドナルドソンの会社は史上最大とも言うべきピンチに直面した。ニューヨーク・タイムズ紙が、ドナルドソンが有害な職場環境を醸成し、従業員に怒鳴り散らし、残業を強要し、罵り言葉を浴びせかけたという複数の元従業員の発言を記事にしたのだ。ドナルドソンを非難した人々の中には、動画編集に携わっていた元従業員のネイト・アンダーソンさんとマット・ターナーさんもいた。さらにふたりは、職場での経験を語った動画を投稿したことでMrBeastファンから嫌がらせを受けた結果、動画を削除した。

ドナルドソンは、ニューヨーク・タイムズ紙の報道を否定した。「僕はいままで千人以上と仕事をしてきた。その中のふたりが僕のことを要求度の高い奴だと思っただけだ。それはそれでまったく構わない」と言う。「この会社は、従業員に対して求めるもののレベルが高い。だからと言って、有害な環境ではない」。ドナルドソンの話によると、彼はターナーさんに1万ドルを贈り、契約終了後はゲーム会社に推薦状まで書いた(ターナーさんは、給料として受け取った実際の金額はそれより少ないと主張する)。


誰かを助けるのは楽しいし、素晴らしいこと

タイソンは、職場でのこうしたトラブルは、ドナルドソンのコミュニケーション力不足によるものだと考える。「ジミーは、自分が何を求めているかはっきりわかっている。でも、コミュニケーションはあまり得意じゃないと思う」と話す。「これについては、話し合ったこともある。自分が求めているものや必要なものを誰かに伝えるのが苦手なんだ」。その一方で、ターナーさんはドナルドソンが与えた嫌な印象を忘れることができないと言う。「動画の中のジミーはすごくクールだ。でも、実際会ってみると『動画のクールなジミーが本当の姿だったらいいのに』とがっかりした」


ノースカロライナ州のMrBeast YouTube LLCでは、現金がすべてを支配している。
PHOTOGRAPH BY MATTHIAS CLAMER FOR ROLLING STONE. TOP AND SHORTS BY BUCK MASON

新興慈善家としての活動は、非の打ちどころがない人物としてのドナルドソンのイメージづくりに一役買っている。ここ数年のうちに、ドナルドソンはクリックを誘うバラエティ系動画から慈善活動寄りの動画へとシフトした。MrBeast Philanthropyという会社を立ち上げるかたわら、植樹を専門とする非営利団体のアーバーデイ財団とタッグを組んだ#TeamTreesや#TeamSeasといったプロジェクトも話題を呼んでいる。MrBeast Philanthropyの最高経営責任者(CEO)を務めるダーレン・マーゴリアスさんは、週に一度のフードドライブやYouTubeグッズから調達した衣類などの配給を行なっている。

2000万本の木を植えることで地球温暖化を食い止めることができるのか?という議論はさておき、懐疑派はこうした活動が一種の「グリーンウォッシュ」として法人の寄付者に悪用されることを懸念する。それに対してアーバーデイ財団のダン・ランベCEOは、#TeamTreesが発信しているメッセージの重要性を強調した。「たしかに、木を2000万本植えることで地球温暖化問題が解決できるわけではありません」と認める。「それでも、植樹の重要性とメリットを人々に発信することはきわめて重要です」。ランベCEOは、#TeamTreesのおかげで、現在までに1400万本の植樹が完了していると語る。年末までには目標の2000万本も達成できそうだ。

ドナルドソンは、慈善活動に積極的に参加する子供ではなかった。ボランティア活動や教会のコミュニティサービスに加わったこともないとスーさんは話す。本人も、こうした博愛主義に対して強い思い入れがあるわけではないと主張する。それでも、MrBeast PhilanthropyのCEOであるマーゴリアスさんは、最初のブランド契約の収入をホームレスの人に贈った経験が「彼の心に火を灯し」、財力と影響力を活かして世界を変えたいという想いにつながったと話す。ドナルドソンは、多彩な慈善活動を行うことで次の世代の子供たちに見返りを求めず与えることの素晴らしさを知ってほしいと願っている、とマーゴリアスさんは言う(ドナルドソン曰く、12歳未満の視聴者はYouTubeアナリティクスの対象外だと言われているが、彼の動画の視聴者はかなり若い年齢層で構成されている)。「私たちの多くは、見返りを求めずに金銭を寄付することは負担ないし犠牲だと感じています」とマーゴリアスさんは言う。マーゴリアスさんは、50代前半のがっちりした体格の誠実な紳士。「でも、誰かを助けるのは楽しいし素晴らしいことだと気づいてもらうことで、与えることのイメージを変えられるのです」

マーゴリアスさんは、カメラが回っていない場所でドナルドソンが気前の良さを発揮することを知っている。大枚を叩いてハリケーンで家族を失った子供たちのためにクリスマスプレゼントを買ったり、パンデミックで仕事を失った9人家族のために家を借りて家具を揃えたりと、例をあげるときりがない。「初めてジミーに会った夜、彼は私に『僕の目的は世界をよくすること』だと言いました。ジミーは心からそう思っていると私は信じています」とマーゴリアスさんは話す。「『再生回数を伸ばすためにやっている』という人のために言っておきますが、私たちは人知れず、驚くほど寛大なことをしているんです。それも100%ジミーのポケットマネーで」


「大事なのは、根気強くこつこつ努力して、やめないこと」

慈善活動の動機について尋ねると、ドナルドソンは神経質な反応を見せた。「僕は自分が何者かわかっているし、それを誰かに証明する必要がないこともわかっている。いままでの行為が僕という人間について語っていると思う」と話す。「目玉が飛び出るほどの額を注いで立ち上げた非営利チャンネルは、今後収益をあげることはないだろう。(中略)僕は、毎月万単位のカネと何十もの時間をロスってるんだ。でも、これらは何万ドルもの収益をあげるプロジェクトにつながる可能性をはらんでいる。だから、僕は気にしない。公の場ではこういうことは言わないんだ。それが動機じゃないからね」

ドナルドソンのもとには、動画を観た子供たちがビーチでゴミ拾いをしたり、炊き出しに参加したりするようになったという親たちからの感謝の言葉が絶えない。私が取材したMrBeastファンの親たちの多くは、子供に促されて#TeamSeasや#TeamTreesに寄付したと話す。それでも、MrBeastの動画は慈善の皮肉な側面を提示するのでは?という私の質問は、彼の痛いところを突いたようだ。「あなたの言うことは、懸念でさえない」とドナルドソンは言う。「多くの子供たちがいいことをして動画をつくっているわけじゃない。単純に、多くの子供たちがいいことをしているだけなんだから」

実業家の多くがそうであるように、ドナルドソンにはプライベートというものがほとんどない。少なくとも、プライベートな側面を見せることにはまったく興味がないようだ。ドナルドソンは先日、ライフスタイルインフルエンサーのマディ・スピデルと別れた。スピデルは、ドナルドソンのいくつかの動画にも出演している。スピデルはドナルドソンにいい影響を与えたと彼の周りの人々は言う。スピデルのおかげで、ワークライフバランスをもっと大切にするようになったと。ドナルドソンは、スピデルのプライバシーに配慮して別れの理由を語らない。だがタイソンは、仕事一筋の生活が大きな原因ではないかと考える。「次は、ジミーと同じくらいビジネスやカネといったものに執着する相手を探すだろうね」

当の本人は、デートよりもMrBeastを成長させることに興味があるようだ。チャンネル登録者数1億人突破、MrBeast Burgerの新店オープン、YouTube史上もっとも成功したYouTuberになることなど、夢は尽きない。メインストリームのエンターテインメント会社に認められることを渇望する多くのクリエイターと違い、ドナルドソンはNetflixとの契約を取り付けたり、高額のレコード契約を結んだりすることには無関心だ。自分を有名にしてくれたYouTubeでの影響力を高めること、彼の関心はこれに尽きる。

「YouTube史上もっとも有名なYouTuberになりたい」とドナルドソンは話す。「自尊心を満足させるためじゃない。理由はわからないけど、とにかくなりたい。そう思うことでがんばれるんだ。毎朝ベッドから出て、こつこつ努力するモチベーションになる。でもこれは、単なる虚栄心の問題かもしれない」

異常なほどYouTubeにこだわる人物としては意外なことに、YouTubeで動画はあまり観なくなったとドナルドソンは話す。動画を観る代わりに、いまは”自己最適化”なるものに夢中だ。モチベーションを上げるためのツールとして、キッチンの真ん中にジムを設置した。お菓子に手を出すのではなく、ワークアウトできるように。成功者の伝記も毎日読む。ちょうどマイケル・ジョーダンの伝記を読み終えたばかりだ。ドナルドソンのライフコーチは、成功者は40歳でピークを迎えると言う。

「それを聞いた時は、『そんなわけねーだろ』って思った」とドナルドソンは言う。「でも、いまはそうだと思う。健康な体をキープして、皺だらけにならなければ。あとは、カネとかそういうものを持っていれば」。ライフコーチの言うことが本当なら、ドナルドソンのピークはまだ10年先。それに向かって邁進することだろう。自社スタジオが完成したあかつきには、事務所にシャワールームを設置すると言う。そうすれば、自宅に帰らなくてもいい。「大事なのは、根気強くこつこつ努力して、やめないこと」と話す。「飛躍的な成長の真っただ中で停滞するのは嫌だ」

ドナルドソンがYouTubeで5番目に人気のユーチューバーになることができたのは、仕事に対するこうした態度のおかげだ。それでも、ドナルドソンは満足していない。ねらうのは1位だ。広々とした新しいスタジオ、ぶっ飛んだ舞台装置、考え抜かれたバラエティ動画、本物のサメ、ライムグリーン色のランボルギーニ、100万ドルの現ナマ、銀行に蓄えられているその何倍もの額……すべてはそのためにあるのだから。ドナルドソンには、それでもまだ足りないかもしれない。「YouTubeが僕のすべてなんだ」と、モデルXの座席に座りながら言う。「僕はパーティーもしないし、友達もほとんどいない。それにリスクだってある。50歳になって人生を振り返った時に『しまった! YouTube以外のことは何もしてこなかった』って後悔しないとも限らないから」

from Rolling Stone US

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