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ジョイス・ライス充実の初来日、R&B黄金時代を想起させるシンガーの「躍動感」

Rolling Stone Japan / 2022年10月10日 17時0分

ジョイス・ライス(Photo by Masanori Naruse)

ジョイス・ライス(Joyce Wrice)の初来日がついに実現。さる10月8日(土)、Billboard Live TOKYOで開催された単独公演の1stステージを、文筆家/ライターのつやちゃんがレポート。ジョイスはこのあと、10月11日(火)にBillboard Live YOKOHAMAでライブを行うのでお見逃しなく。

ジョイス・ライスのライブを、キーボード&ドラムのセットにダンサーも引き連れた上で、しかもBillboard Live TOKYOで観られるなんて! 海外のR&Bアーティストの単独来日公演がなかなか貴重な機会になっている昨今、会場には幅広い年代のR&B~ソウル好きリスナーが集まり、新世代シンガーの国内初ワンマンライブを歓迎した。日本人の母親を持ち、作品にも日本文化への視点を少なからず投影してきたジョイス・ライスだけに、意気込みも相当なものだろう。早速「Losing」から口火を切ったステージは、そこから80分間、躍動感と甘酸っぱさにあふれつつもR&Bの本格的な魅力が感じられる素敵な体験を提供してくれた。


Photo by Masanori Naruse

躍動感とは、まずもってダンスの素晴らしさに他ならない。両サイドに2名のダンサーを従えて終始踊り続けるが、これが想像以上にハードなのだ。歌の巧みさは音源で聴いていた通りで、もちろんそれだけでも十分感動するのだが、ここまできびきびとしたダンスを見られるとは思っていなかった。元々彼女に対しては、LAビートシーンの鋭い音をベースに、最近ではより一層本格的なR&Bを歌う存在へと変化を見せている人、という認識だった。しかし、今回の公演でイメージが刷新されたのだ。ジョイス・ライスは、踊れるR&Bシンガーである。中でも特に息をのんだのは、椅子に座り歌いながらも徐々に立ち上がり踊りはじめ、終盤マイクを置いてダンスに専念した「Addicted」。激しいダンスにイヤリングが落ち、ユニゾンを決める3人の身体表現に会場が沸いた。ニーヨやシアラといった、歌って踊れるシンガーを思い出すそのステージは、まさに過去のR&Bが持っていたパワーそのもの。フランク・オーシャン以降支配的だった内省的でアンビエントな空気が確実に一周し、このような躍動感あるR&Bも純粋に楽しめる時代になってきたことを実感する。

それはただ激しいだけではない、甘酸っぱく懐かしいフィーリングが詰まったライブだったとも言えるだろう。何と言っても、まずジョイス・ライスのスタイリングはベアトップにオーバーサイズのボトムス、フープイヤリングに……1990年代半ば~2000年代半ばの「あの頃」を思い出させる完璧なルックで、もちろん音楽性もブランディやタミアといった往年のスターの作品にあった要素がたっぷり。特に「Falling In Love」や「On One」といった人気曲では、ファンキーなパーカッション、フューチャリスティックなエレクトロ感、そしてTimbalandビートの奇天烈なせわしなさを思い出させるポイントがふんだんに強調され、会場は大盛り上がりだった。それらを実現させていたのは、ジョンテ・ロバーツの安定したキーボードに、ブランデン・アキニエルの凄みのあるドラミング。特に、近年はカリ・ウチスのライブにも同行し鍛えられたというブランデンのプレイは、各種シンバルを豊富に織り交ぜる手数の多いパフォーマンスで圧倒的だ。このドラミングを観るだけでも十分すぎるくらい価値がある、素晴らしい表現だった。


Photo by Masanori Naruse

途中、なんとティードラ・モーゼスの「Be Your Gairl」のカバーも披露。これまでもティードラへの愛を様々なところで語ってきた彼女だが、この日も2000年代R&Bを代表する名曲を丁寧に歌いあげていた。このあたりのまっすぐなオマージュ感覚が、ジョイス・ライスが愛されるゆえんの一つでもあるだろう。

そして、来日公演直前にリリースされたEP『Motive』からも新曲を披露! 日本の観客が初めて聴くことになった「Bittersweet Goodbyes」は、デビュー当時のより先鋭的なビートを彷彿とさせるトーンで会場を引き込む。大興奮の流れの中、最後はヒット曲「ICED TEA」で本編をしめるという最高のエンディングでショウの盛り上がりはクライマックスに。

近年注目を集めている、Y2Kの空気感をオリジナルの手法でたっぷり詰め込んだ新しく懐かしいモダンR&Bの潮流。ティヤーナ・テイラー『The Album』やケラーニ『It Was Good Until It Wasnt』、キアナ・レデ『KIKI』等によって見事な形で実現されているその流れの中に、ジョイス・ライスの諸作品も位置付けられるだろう。そして、そこでのジョイスの独自性とは、より真っ直ぐなR&B史への愛と躍動するダンスである。発見に満ちた、充実の単独公演だった。

【関連記事】ジョイス・ライスが語る90年代R&Bへの愛、日本のルーツ、シンガーになるまでの物語


ジョイス・ライス来日公演
10月11日(火)Billboard Live YOKOHAMA
1st Stage 開場:17:00 / 開演:18:00
2nd Stage 開場:20:00 / 開演:21:00
料金:Service Area:7,400円 / Casual Area:6,900円
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