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almost mondayが語るビーチとブリットポップへの共感、3人の人生に音楽が与えたもの

Rolling Stone Japan / 2022年10月19日 18時40分

オールモスト・マンデー(Photo by Cole Ferguson)

メンバー全員がサーフィンをこよなく愛し、故郷サンディエゴのレイドバックなライフスタイルに愛着を抱いているが、鳴らすのは単なるサーフ・ミュージックどころか、様々な時代の音楽に影響を受けた、一筋縄ではいかないオルタナ・ポップ。オールモスト・マンデー(almost monday)はそういうユニークな存在だ。

2015年頃にドーソン・ドハティー(Vo)、ルーク・ファブリー(Ba)、コール・クリスビー(Gt)によって結成されて以来、マイペースに歩みながらファンを増やし、『dont say youre ordinary』(2020年)と『til the end of time』(2021年)の2枚のEPを発表。その間デヴィッド・ボウイやプリンス、或いはザ・ストロークスやコールドプレイなどからインスピレーションを得て音楽性を深化させてきた彼らは、Z世代の雑食性をほかにない形で発露させたバンドと言えなくもない。今年10月初めに独自企画の日本デビューEP『cough drops (japan special edition)』を送り出し、初来日を果たした3人に、そんな独自性の裏側にある活動スタンスや、音楽への思いを訊いた。


2022年10月13日、東京・代官山SPACE ODDにて(Photo by Yuki Kikuchi)

―振り返ってみると、2019年にシングル「broken people」をリリースして以来どんどん勢いをつけていたあなたたちにとって、2020年は勝負の年になるはずでした。なのに、パンデミックに出鼻を挫かれたようなところがありましたよね。

コール:そうだね。でもパンデミックはプラスになった面もあるんだ。じっくり時間をかけて自分たちの音楽と向き合えたし、アーティストとして成長し、進化できたと思う。もちろんライブができなくなったことで落胆は大きかったけど、逆にあの時期を経ているからこそ、今こうして世界を旅してステージに立てることのありがたみを痛感しているよ。

―そして今年は精力的にツアーを行なっていますが、ツアーが長引くと、サンディエゴの何が恋しくなりますか?

ルーク:大好きなピザ屋が恋しくなる(笑)。夜8時を過ぎると値引きするシステムでね。あとはやっぱりビーチだな。帰って来た時にすごくリラックスできて、疲れを癒せるんだよ。

ドーソン:うん。サンディエゴがある南カリフォルニアのカルチャーはすごくリラックスしているし、ビーチ・カルチャーの町とも言える。人々ものんびりしていて、ああいう場所で育つことができて、恵まれていたと思うよ。



―そのサンディエゴでバンドが結成されたのは7年前に遡ります。どこかのタイミングで、バンドとしてステップアップするきっかけになった出来事はありましたか?

ルーク:みんなで大学を中退する決意をした時が、それに該当するのかな。音楽活動に専念しようと決めて、「ここから先は真剣勝負だぞ」と気持ちが引き締まったよ(笑)。

ドーソン:かなりビビってもいたけど(笑)。

ルーク:さすがに重い決断だからね。と言いつつも、地元のサーフ・ショップでライブをやって、知り合いに片っ端からメールして集まってもらう……という地道な体験を積み重ねて、徐々にバンドが大きくなっていったから、あの時点では自然な決断でもあったんだ。

―コールは子供の頃から、音楽業界の内側を覗ける機会を得ていたそうですね。

コール:親友の父親がブリンク182のマネージャーで、よくライブに連れて行ってくれたから、バンド活動の舞台裏を覗く貴重な体験をさせてもらったよ。あと、僕の両親はフー・ファイターズのクリス・シフレットと知り合いで、彼らのライブも何度か観ていて、インスパイアされずにいられなかった。それがギターを弾き始めたきっかけでもあるし、音楽で生きていきたいという気持ちが芽生えたんだよ。

―他方でドーソンとルークは幼馴染みなんだそうで、きっと色んなことを一緒に体験したんでしょうね。

ドーソン:そうだね。例えば、ふたりとも同時期に初めて楽器に触れているんだ。僕はギターでルークはピアノだったんだけど、ずっと兄弟みたいな存在であり続けてきたし、ほかにも色んなことを同時期に体験している。サーフィンも音楽作りも一緒に始めたし、そういう友人がいるのは素晴らしいことだと思う。その後コールと出会ったわけだけど、彼は凄腕のギタリストであるだけでなくサーフィンも得意で、共通項があったからこそバンドとして存続しているんだよ。

ルーク:あとは、『マリオパーティ』でも全員で盛り上がる(笑)。なんだかんだ言って、一緒に何かを楽しめるという点が、人間関係を維持する上で重要なんだ。ツアーをしていると疲れもするし、気楽に接することができる相手じゃないと続かないよ。

ドーソン:僕らは、仲のいい友達とバンドをやることを”仕事”と呼べる自分たちがいかに恵まれているか、ちゃんと認識している。まさに夢が現実になったわけだからね。こうして日本でインタビューを受けていることにしても夢みたいな話で(笑)、それを現実にしてくれたのが音楽なんだ。そういう気持ちも全員で共有しているよ。

ブリットポップへの共感、曲作りのプロセス

―コールがバンドに加わった時には、どんな音楽を作りたいのか見えていたんですか?

ルーク:いいや。僕らは出発点から大きく成長を遂げたと思う。というのも、結成した当初はサーフロック系の曲をかなりプレイしていたけど、やがてそのスタイルが窮屈になって、様々な変化を経て、最近は自分たちのルーツみたいなところに還ってきた気がするんだ。そうやって常に何かを学んで成長できることが、アーティスト活動をしていて楽しい部分なんだよね。自分探しの旅を続けているというか。なぜって音楽には本来、それを鳴らしている人物が何らかの形で反映されているはずだからね。でなければ聴き手の共感を得られないし、大切なのはオーセンティシティなんだよ。

―確かに初期の曲と最近の曲を比較すると間違いなく進化していて、特に今年に入って発表した「sunburn」以降のシングルはブラーやスーパーグラス、もしくはアークティック・モンキーズなどなど英国のバンドの影響が色濃く表れているように感じます。

ドーソン:うんうん、まさしくそういうバンドは僕らにとって重要な影響源なんだよ。



―サンディエゴで2010年代に育ったあなたたちがブリットポップを聴いていたとは意外です。

ドーソン:僕らの両親がその手の音楽を聴いていたんだよね。その影響は大いにある。

コール:あの時代に生まれた音楽こそ、ベスト・ミュージックのひとつだと思うよ。それに僕らがコラボしているプロデューサーのサイモン・オスクロフトも、ブリットポップが大好きなんだ。色んなアーティストを教えてくれて、それで思い入れが深まったところもあるね。

ドーソン:サイモンは、秘密の4人目のメンバーみたいな存在なんだよ。オールモスト・マンデーの曲は全て彼と作っているし、コールが言う通り、僕らに与えた影響は計り知れないよ。


オールモスト・マンデーが影響を受けた楽曲をまとめたプレイリスト

―曲ごとにコラボレーターを変えるアーティストが多い中、一貫してサイモン(ワン・リパブリック、ポルトガル・ザ・マン)、そしてマーク・ニーダム(ザ・キラーズ、モービー)と組んできたことも興味深いですね。

ルーク:成り行きではあるんだけど、どんな人間関係にも言えることで、長い時間を一緒に過ごせば信頼が醸成され、独特のシナジーが生まれる。お互いに理解が深まるほどに物事はより円滑に進むし、自然に今のパートナーシップが構築されたんだよ。サイモンは今や音楽的コラボレーターというだけに留まらない友人になったと思う。

コール:うん。彼からたくさんのことを学んだよ。音楽にまつわることはもちろん、人生全般のアドバイスもしてくれる。僕らにとっては兄貴分みたいな感じだね。

―そんなサイモン&マークと共に、ほぼ全曲に3人がソングライターとしてクレジットされています。実際の曲作りはどんな風に行なっているんですか?

ドーソン:毎回少し違っていて、僕らが重視しているのは、色んなアイデアを受け入れられるように常に心をオープンな状態にしていることなんだよ。各人がインスパイアされるアーティストたちの音楽を参考にして、そこから色んな要素をピックアップし、自分たちらしい表現に変換しながら、いつもフレッシュな音を鳴らそうと心掛けている。だからたいてい全員が何らかの形で曲作りに関わっているんだけど、すごく不思議な作業で、どうやって生まれたのか自分たちにも分からなくて、気付いたら曲が完成していたというケースも多々あるよ(笑)。

―例えば最新シングルの「cough drops」も面白い曲で、”cough drops(のど飴)”という言葉がポップソングの歌詞に使われることはまずないと思うんですよね。

ドーソン:だよね(笑)。僕の場合、今ひとつ意味を成さない歌詞というか、どこからともなく降ってきたような歌詞に惹かれるんだ。「cough drops」のサビもそうだった。いつも曲を聴きながら、適当に言葉を並べてメロディを作っていくんだけど、「cough drops」の時もランダムな言葉を並べているうちに、たまたま”cough drops”と口にしていた。それがそのまま残ったんだよ。でもマジな話、完全には理解し切れない歌詞が好きで、聴き手の解釈に委ねることをポジティヴに捉えているんだ。細かく描写し過ぎると、想像力の入り込む余地がなくなるからね。



3人の人生に音楽が与えたもの

―ちなみに、フル・アルバムを作る予定はあるんですか?

ドーソン:アルバムについては特にまだ何も決めていない。いつか作りたいとは思っているけど、最近の音楽の聴き方を考えると、みんなどんどん新しい曲を求めているよね。プレイリストを流して、「この曲とこの曲は好きかも」みたいな軽いノリで音楽と接している。だからこそ、アルバムという大がかりなプロジェクトに期待してくれるような、自分たちのファンベースをしっかり築き上げておくことが重要だと思うんだ。今のところはそういう土台作りに専念していて、そのために出来るだけたくさんのシングルをリリースし、ツアーに力を入れているんだよ。とにかくファンに喜んでもらえることを、どんどん実践していきたい。ファンこそが僕らのエンジンであり、ファンがいないと走り続けることができないわけだから(笑)。


Photo by Cole Ferguson

―では、若手バンドが音楽業界をナビゲートする上で、一番の課題はどこにあると思いますか?

コール:今の時代特有の問題を挙げるなら、SNSに過剰にこだわったり、気にし過ぎることじゃないかな。そのせいで、いい音楽を作るという地道な作業がおろそかになってしまう。その点僕らは音楽作りに本当に時間をかけていて、たくさんの曲を書き、そこからじっくり絞り込んで、本当に納得できた曲だけを発表している。書いた曲の数で言えば、とっくにアルバムを何枚か作れていると思うよ。

―それにあなたたちの曲は、スタイルはもちろんのこと歌詞の題材も様々で、軽い内容の曲もあれば、”カッコ良さ”がいかに薄っぺらいことなのか指摘している『cool enough』を始め、聴き手を考えさせる曲も少なくないですよね。

ルーク:そうだね。特にバリエーションを意識しているわけではなくて、最終的にどんなことを歌うのか、曲が完成するまで自分たちには分からないことが往々にしてあるんだ。書いているうちに、曲が僕らを導いてくれるようなところがあるから、曲がどこに向かっているのかちゃんと見極めるっていうことも重要なんだよ。



―なるほどね。そういう音楽制作の作業からあなたたちはどんなことを得ているんでしょう?

コール:僕の場合はとにかく、スタジオで色んな作業をするのが楽しくてしょうがないんだ。最終的にはリリースされなくても、作るプロセスがものすごく楽しかったという曲もあって、みんなでひとつの可能性を探ることができたわけだから、充分に意味があったと思える。そもそも僕らが音楽を作り始めた理由もそこにあって、楽しいから続けているんだよね。

ルーク:僕にとっても音楽は自分の人生で最も揺るぎない、心の拠り所なんだ。それを作ることに関われるんだから、心から喜びを感じるよ。

ドーソン:うん、音楽は常に喜びを与えてくれた。例えばライブひとつとっても、初対面の人たちが大勢集まってセレブレーションの場を持つという、これ以上なくスペシャルな体験だよね。で、何をセレブレートしているのかと言えば、自分たちが生きているんだっていう事実そのものなんだと思う(笑)。だからどんな曲であれ音楽は喜びを与えてくれるし、それをほかの人たちに体験してもらう仲介役を果たせることがうれしくてたまらない。人生って時にして本当に辛いものだから(笑)、ライブに来てもらって、90分間の喜びとセレブレーションを提供できることにこそ、僕らが音楽活動を続ける意義がある。そういうゴールに向かって曲を書いているんだという意識をいつも抱いているよ。



オールモスト・マンデー
日本デビューEP『cough drops (japan special edition)』
発売中
再生・購入:https://umj.lnk.to/almostmonday_JapanEP

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