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Haruy、清らかなサウンドスケープに映し出した想い

Rolling Stone Japan / 2022年10月20日 18時0分

Haruy(Photo by Tatsuki Nakata)

10月15日、東京・渋谷WWWにて、HaruyによるデビューEP『MAO』のリリースを記念したライブイベント『"MAO" Release Party 〜Murmurs vo.00〜』が開催された。

【写真を見る】ライブ写真

まずは、Takeru Shibuya(ODDJOB)としてPUNPEE「タイムマシーンにのって」のミュージックビデオやTAIKINGの1stアルバム『TOWNCRAFT』のジャケットなどを手掛ける、ラッパー・Oleが登場。続いて4人組バンド・Tō Yōが、オリエンタルなテイストを溶け込ませたサイケデリックロックでオーディエンスをトリップさせる。異なるジャンルの2組をつなげることができたのは、Haruyだからこそ。大学で映画を学び、自身の作品のジャケットを自ら描くこともあるHaruyには、”俺は二刀流 遊ぶだけで武器が増えてく”とラップするOleにシンパシーを抱くところがあるのだろうし、深みのある独特なベースラインをリフレインさせて4人で音の渦を生んでいくTō Yōに、バンド時代にベースを担当していたHaruyは心躍らせているのだろう。


Ole Photo by Tatsuki Nakata


Tō Yō Photo by Tatsuki Nakata

Haruyは、バンドメンバーにTAIHEI(Key/Suchmos、賽)、市川仁也(Ba/D.A.N.)、澤村一平(Dr/SANABAGUN.)を迎えて、全7曲を披露。Haruyにとってこれが2回目のライブで(1回目は『ONE PARK FESTIVAL 2022』)、『MAO』でHaruyに魅了されたファンにとっては待望のライブだった。

満員のオーディエンスが待ち構えるなか、ステージに登場したHaruyは「こんばんは」と挨拶をし、『MAO』のオープニングを飾る「Snake」からライブをスタート。Haruyが歌い出すと声で景色が浮かび上がり、まるで水の中に潜っていくかのよう。そこから「Lovely」に続くと、吐息多めの声でメロディを駆け上がり、海の中から雲の上の空へと昇天するかのようにサウンドスケープが変化していく。





3台のキーボード/シンセサイザーを巧みに操りながらシグネチャーサウンドが滲み出るTAIHEIの演奏とコーラス、市川の温かみの中に強い芯があるベース、そして澤村のシンバルもパッドも一つひとつ丁寧に鳴らし絡み合せたリズムは、極上。しかもライブアレンジが施された演奏は、曲を追うごとにどんどんリッチになっていく。


Photo by Tatsuki Nakata

「Dont catch the now」でミステリアスと艶っぽさやが相まった雰囲気を醸し出たあと、「豪華なバンドメンバーのみなさんと一緒に、そして今日来てくれたみなさんと一緒に、この場を共有できることがすごく嬉しいです」と言葉を挟んで、『MAO』に未収録の新曲を披露。リバーブのかかったHaruyの声がフロアを包み込む。白い光が射す風景が浮かんでくるところから、リズムが一変し異なる世界へと連れていく、まさに1曲の中で旅するような感覚のある楽曲。Haruyにインタビューした際、『MAO』のプロデュースを手掛けたHayata KosugiはHaruyに「ジ・インターネットのシドみたいだね」と伝えていたことを話してくれたが、まさにシドやアーロ・パークスなどに通ずるものがHaruyの音楽・声にはあるように思う。



そして、Hayataがこの世を去った後にHaruyが歌詞を書き上げたという”Ryan”と、2人が初めて出会うときにHayataがデモを作っていたというHaruy誕生の曲「Swimmer」を演奏。3人のグルーヴとHaruyのファルセットが絡み合ったサウンドスケープに身を委ねる時間はあまりに心地よく、「この音が鳴り止まないでほしい」と思っていたのは私だけでなくきっとあの会場にいることができた人全員で、もちろんアンコールが湧き起こる。


Photo by Tatsuki Nakata



拍手に呼ばれたステージには、HaruyとTAIHEIの二人だけが登場。Haruyは、TAIHEIと作った新曲を最後に歌うことを伝えて、少し呼吸を整えてから、この日の気持ちを素直に話し始めた。「今日ライブができたのはこのEPを作れたおかげです。SuchmosのHSUさんと一緒に作ったEPで」と言葉にし、溢れ出てしまう涙ともに、「今日こうしてみなさんとお会いできたのもHayataさんのおかげで、すごく感謝してます。Hayataさんもきっと、今日こうしてライブができて喜んでくれているのかなと思います」と。そして「これからも『MAO』をたくさん愛して聴いていただけたらなと思います」と言うと、会場からは愛のこもった温かい拍手が溢れる。

そして、HaruyとTAIHEIによる新曲を演奏。温かな愛と祈りが込められたピアノの旋律に、Haruyが丁寧に言葉を紡いでいく。歌詞を全部聴き取れたわけではないが、Haruyの気持ちがまっすぐ誠実に歌われていることは確かだった。HaruyはTAIHEIと向かい合うような形で歌い、そんな彼女のことを時に優しく頷きながら見守るTAIHEI。この曲が演奏されているあいだ、私は涙が止まらなかった。二人に共通するHayataへの想いが、この音楽の中に大切に封じ込められていた。最後の新曲に限らず全7曲のあいだずっと、TAIHEIの姿はとても頼もしく逞しかった。Haruyを大切に想う気持ちをHSUはTAIHEIに手渡して、TAIHEIはそれをしっかりと笑顔で引き継いでいるように目に映ったのだ。


Photo by Tatsuki Nakata


Photo by Tatsuki Nakata

Haruyは、日本の音楽シーンにおいて非常に稀有な声を持っているシンガーだ。神聖かつ神秘的な声音で、その声を用いて清らかなサウンドスケープを描くことができる。そして、その声はとても優しく、予期しないことが起こり続ける不安定な世の中を生きる私たちに癒しと救いを与えてくれる。とても繊細な表情を持つ声だが、芯にはとても強いものがあるという彼女自身の佇まいも、ライブで見出すことができた。『MAO』が完成した際のインタビューでHaruyは、Hayataから音楽の中では嘘をつかずにありのままを残すことの大切さを教えてもらったと語っていたが、そうして作られた彼女の新曲たちがリリースされる日が待ち遠しい。

<SETLIST>
1. Snake
2. Lovely
3. Dont catch the now
4. 新曲
5. Ryan
6. Swimmer
EN. 新曲

<INFORMATION>

『Scramble Fes 2022』
2022年11月5日(土)Spotify O-EAST
料金:5600円(スタンディング・入場整理番号付・ドリンク別・税込)
時間:OPEN 13:30 / START 14:30 / CLOSE 21:00
※変更可能性あり
主催・企画:CCC ミュージックラボ株式会社
制作:ライブマスターズ株式会社
協力:ツタロック / Rolling Stone Japan

出演:
Haruy
DYGL
tonun
BREIMEN
Yogee New Waves
Laura day romance
鋭児
ミツメ

チケット発売中
イープラス:https://eplus.jp/scramblefes2022/
ぴあ:https://w.pia.jp/t/scramblefes2022/
ローソンチケット:https://l-tike.com/scramblefes2022


『MAO』
Haruy
SPACE SHOWER MUSIC
発売中

1.Snake
2.Swimmer
3.Lovely
4.Dont catch the now
5.Ryan

https://haruy.lnk.to/MAO

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