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ルイス・コールが明かす、超人ミュージシャンが「理想のサウンド」を生み出すための闘い

Rolling Stone Japan / 2022年10月24日 19時5分

ルイス・コール(Photo by Richard Thompson)

ルイス・コール(Louis Cole)の音楽は、ノウワー(Knower)での活動がメインだった初期からポップで尖っていて、日本でも一部で話題となった2013年のソロ作『Album 2』の頃から、奇妙なのにキャッチ―な作風はずっと一貫している。Brainfeederと契約した2018年の前作『TIME』でいくらか洗練されたが、エキセントリックな奇才という印象は今も変わらない。

彼の音楽がここまでの影響力をもつようになるとは正直思わなかったが、例えばドミ&JD・ベックの話題となったデビューアルバム『NOT TiGHT』は、明らかに「ルイス・コール(とサンダーキャット)以降)」を感じさせるものだ。ここ日本でも、多くのミュージシャンがルイスに賛辞を送っている。そういう意味でも、次の一手には大きな注目が集まっていた。

最新作『Quality Over Opinion』は、肩の力が抜けた素晴らしいアルバムだ。ルイスらしい奇妙さもあるし、人懐っこいソングライティングの手腕も発揮されている。20曲もの楽曲を収めたことで、その創造力やあふれ出るアイデアが様々な形でアウトプットされているのも楽しい。気合の入りまくった『TIME』とは違う、普段着のルイスがここには詰まっている。

そんなルイスとの取材ではニューアルバムのことも尋ねつつ、彼の音楽に対する取り組み方、もしくは音楽家としての姿勢みたいなものを掘り下げてみた。そこまで口達者なタイプではないはずだが、ノウワーの相棒であるジェネヴィーヴ・アルターディとの欧州ツアーの移動中、iPhoneでのZoom取材に応じてくれた彼は、ずいぶん饒舌に話してくれた。超人ミュージシャンとして愛されながら、彼の個性は言葉にしづらいところもあったが、理解するためのヒントが少しもらえたような気がする。

また、このあと12月に開催される、大編成のビッグバンドを率いてのジャパンツアーをもっと楽しむために、「ルイス・コールのビッグバンド観」についても話してもらった。来日公演への期待とともに読んでもらいたい(全公演が即完売となり、東京の追加公演、大阪・名古屋の追加チケット販売が決定)。



―前作『TIME』からリリースの間隔が空いていますが、いつ頃から作り始めていたんですか?

ルイス:前作を作り終えてからすぐに着手したから、制作期間は4年くらい。ただ、毎日やっていたわけじゃなくて断続的にね。アルバムの中には前作よりも前に作っていた曲もある。1曲目の「Quality Over Opinion」、7曲目の「Failing in a Cool Way」、10曲目の「True Love」は、未完成のまま残しておいた曲を仕上げたものだ。

―それらの曲は、前のアルバムには合わなかった?

ルイス:というよりは、なんか納得がいかないから、デモ状態のまま放っておいたって感じかな。僕はとにかく書きたいことがいっぱいあるから、そういう作りかけの曲がたくさんあって、ずっと気にかけているんだよ。それで、思い出した時にふと聴いてみたら、急にピンとくることがある。今回もそのパターンだった。



―あなたはソロ作をほとんど一人で作っていると思うので、そんなに関係なさそうな気もしますが、パンデミックの前後で何か違いはありましたか?

ルイス:いくつかあるよ。例えば、ツアーがなくなって時間の余裕ができたことが、昔のアイデアを完成まで漕ぎ着けることに繋がった。頭のなかを整理できたから、さっき挙げた数曲を完成させられたんだ。あとはアイデア探しも捗ったし、サウンドについてのリサーチもどんどん進めることができた。これも家にいる時間が長かったおかげだね。

それから、世界中に悲しみや怒りが満ちているなかで「自分が言いたいことと、みんなが聴きたいことは一致するのだろうか」と考えたりもした。そういったことを模索する時間にもなったよね。結果的に「こういうことを歌いたい」という思いを、何とかまとめることができたのが今回のアルバムだとも思う。

―歌詞にもメッセージみたいなものがかなり入っている?

ルイス:そうだね。でも、誰もが世界の現状について語っているなかで、僕がいまさら語るようなことはしたくない。それで結果的に、僕のパーソナルなことを歌うことにした。それは僕にしか書けないユニークなことだし、個人的な見解として何かを伝えることが、僕にとっては最適なやり方だろうと思ったんだ。

―パーソナルなことって、例えばどういうことですか。

ルイス:ハートブレイクがあったんだよ。あと、健康面にも問題があった。どちらもすでに解決しているんだけど、その経験によって世界の見え方も変わったんだよね。他にはハッピーな状況を歌った曲もあるし、みんなとの繋がりを歌った曲もある。最終的にいろんなことを歌っているアルバムになったね。

ファンク、メシュガー、ハーモニー

―「Im Tight」は100曲くらい録音したファンクを継ぎ接ぎして作ったそうですが、その制作プロセスを聞かせてもらえますか?

ルイス:あの曲に関しては、一つのシンプルなビートの上に、できるだけたくさんセル(訳注:これ以上割ることのできない音楽の最小構成単位)を乗せていこうと思った。ファンクの小さい世界とも言える16小節のセルを、結果的に100近く作ったんだ。実際に使ったのはそれよりも少ないんだけど、とにかく大量に作って、それをキルト地のように繋ぎ合わせた。自分がしっくりくる形でね。

―この曲は、ドラムのリズムパターンはシンプルだし曲中でそんなに変化していないですよね。その一方で、ベースやシンセのフレーズは滑らかにずっと変わり続けている。

ルイス:同じドラム・ビートの上で、ベース、キーボード、ギターのパートが、小さなファンクのセル状で変化していく、そんな曲が作りたかった。こだわったポイントとしては、単なるパッチワークで終わるんじゃなくて、ちゃんと曲だと思える流れを作ることだったね。

―その小さいセルには、かなり多様なファンクのスタイルがあったと思いますが、そのインスピレーションとなったのは?

ルイス:僕がやったみたいに、相性のいい小さなパートをいくつも作る達人といったらジェイムス・ブラウンだ。彼自身がほとんどを書いたんだけど思うけど、彼と彼のバンドは、基本的なギターとドラムのパートが永遠に続く感じで、シンプルなんだけど相性が抜群だった。この手の音楽に関して一番影響を受けたのはジェイムス・ブラウンだね。



―曲の途中でハードコアっぽいボイスやサウンドを用いた「Let Me Shack」は、あなたの作品では珍しいタイプの曲だと思いました。

ルイス:僕はアグレッシブなエレクトロニック・ミュージックが好きなんだ。サウンド・エフェクトを多様した曲作りとかね。スクリレックスのサウンド・エフェクトを上手く使った曲作りや、やりすぎなくらいコテコテなグルーヴが好きで、以前からそういう音楽も作っていたんだけど、なかなか発表する機会がなかった。でも、この曲は面白いから新作に入れることにしたんだ。



―ハードコアやメタルからも影響を受けたことはありますか?

ルイス:メシュガーが大好きだね。彼らにハマったのはここ1、2年なんだけど凄く好き。若い時に一番聞いたメタル・バンドはナパーム・デスで、しょっちゅう聴いてた。コンセプトに力強さを感じたからね。

―メシュガーのどんなところに惹かれますか? 

ルイス:激しいグルーヴ感だね。彼らの演奏もそうだし、曲作りに変拍子を取り入れたりしていて数学的で、複雑だけどグルーヴ感が半端ない。聞き手として細かいところはわからないけど、テンポ感がひたすら気持ちいいんだ。



―メシュガーの音楽がインスピレーションになった曲はありますか? 個人的にはそれこそ「Let Me Shack」あたりかなと思ったんですが。

ルイス:「Let Me Shack」の最後の激しい音とかは近いかもしれないね。あと、「Bitches」(サム・ゲンデルが参加)なんかはメシュガーっぽい感じがほんの少しあるかもしれない。リフ主体の演奏とか、一つのパートをギターとベースがユニゾンで弾く感じとかね。ただ、直接的な影響を受けているというよりは、品質のレベルにおいて参考にしているという意味合いのほうが強いかもしれない。メシュガーを聴くと、「自分ももっと頑張らないと」って思わされるから。



―メシュガーは複雑なリズムでも知られていますが、あなた自身はソングライターとして、もしくはドラマーとして、複雑なリズムを表現することにどれくらい関心がありますか?

ルイス:僕はそこまで複雑であることにこだわりはない。音楽的にいい感じだと思えるならアリだけど、ただ複雑というだけでは、あまり脳を刺激されないんだ。ある特定の感情を伝えるうえで、複雑なリズムを取り入れるのが唯一の方法だと思えばそうするけどね。

―では、あなたが作曲するうえで歌詞、メロディ、コード、アレンジのどの部分に一番やりがいや自分らしさを感じますか。

ルイス:どれも好き。そうやって切り分けて考えた場合、その一つ一つが自分のスピリットの違う面だったり、気持ちや感情を表現するいろいろな方法を与えてくれる。

そのなかでも、自分を特別な世界に引き込んでくれるのはハーモニーだ。特定のコード進行や単体のコード、あるいはハーモニーでもいいんだけど、それでしか伝えられない入り組んだ深い感情があると思っている。真っ直ぐでわかりやすいものじゃない、もやもやした感情。強く感じるのに、それがどんな感情か自分でもわからない。そういう感情を表現するのが好きなんだ。複雑にいろいろ入り組んでいて、細かいニュアンスやディテールが詰まっている表現をね。



―あなたが書く複雑なハーモニーは、他のミュージシャンにとって分析対象になっているでしょうし、みんなが自分なりに再解釈したくなる要素だと思います。

ルイス:自分の音楽が分析対象になるのはクールだね。僕は自分でも何をやってるのかわかってないところがある。他の人がそれを解き明かしてくれるのは嬉しいことだよ。

―多くのジャズ・スタンダードには親しみやすさと共に、チャレンジしたくなるテクニックや自由に解釈できるような仕掛けが入っています。あなたが作る曲もポップでありながら、演奏したくなるような要素が詰まっていますよね。そういった要素は狙って入れているのでしょうか?

ルイス:その辺はあまり意識していないかな。僕としては、自分が好きな音楽を追求している。例えば、印象的で口ずさみやすいメロディも好きで、そういう地に足のついたものと、激しい演奏などのぶっ飛んだ要素を組み合わせるのが好きなんだ。個人的に聴きたくなるような音楽を、自分で作ってみようという発想が大きいんじゃないかな。

今明かされる、唯一無二のドラム録音術

―ニューアルバムは曲ごとに異なるアイデアがたくさん入っていて、デモっぽいラフさも残されているような気がしました。あなたは曲を作る際に、どの時点で「完成した」と判断しているのでしょうか?

ルイス:いい質問だね。それは僕が常に抱える闘いだ。曲ができたと思っても、整いすぎている、洗練しすぎていると感じることもある。それだと伝えたい感情がちゃんと伝わらないと思うんだ。だから、あえてデモっぽく聴こえるようにすることもある。そのほうが、曲の本当にあるべき姿に近いから。

一つの曲と長い時間をかけて向き合わないといけないこともある。ときには何カ月も、それが完成したと思えるまで。これは闘いだ。曲がいつ完成したかは、いつも明快なわけじゃない。でも、僕の場合、自分のなかで「これで完成だ」と感じる瞬間がある。ずっと取り組んでいくなかで、そう思える瞬間があるとき訪れるんだ。



―アルバム最後の「Little Piano Thing」はとても幻想的なサウンドですが、これはどのようにして録音したのでしょうか?

ルイス:家に物凄く古いアップライトのピアノがあって。もしかしたら100年くらい前のものかもしれないんだけど、どういう歴史があるのかは全然知らない。ある晩、マイクを数本立てて、何も決めずにそのピアノを弾いてみた。ちょうど感傷に浸っている時期で、自分が抱えている思いを吐き出さないといけないと思ったんだ。そうやって生まれたのがこの曲だった、というわけ。



―この曲の音像もだいぶ変わってますが、おそらくあなたはマイクのセッティングに関しても、普段からいろんな工夫をしていますよね?

ルイス:そうだね。特にドラムに関してはこだわりがあるよ。他の楽器に関しては、今もいろいろ試したりもするけど、ドラムはもう散々試し尽くしてきたから、自分がほしい音を完全に把握できている。だからこそ、ドラム・マイクをどこに置くか凄くこだわりがある。

―まさに、あなたが叩くドラムの音色は、仮にブラインドテストをしてもルイス・コールの演奏だとわかるくらい特徴的だと思います。

ルイス:そう言ってもらえて嬉しいよ。

―あの音はどうやったら出せるのでしょう? 秘訣は録音にあるのでしょうか、それともプレイやセッティング?

ルイス:一番はプレイだと思う。どこに音符を置くか、どこで叩くか、とか。バスドラムとシンバルをまったく同時に叩くとか。そういうプレイによる特徴が一番大きいと思う。あと、僕はバスドラムを大きい音で叩くんだけど、それも自分のサウンドに欠かせない要素だと思っている。他には、ドラムのチューニングの仕方とか、ドラムヘッドに何を使っているかとかも関係してくる。その後に、マイクの立て方とミキシングが重要になってくる。


ルイス・コールらしいドラムが録音された、サンダーキャット「I Love Louis Cole」



―そのマイキングとミキシングの方法について、説明できたりしますか?

ルイス:いいよ。例えば、バスドラムには薄いジャズ・ヘッドを使うのが好きなんだ。多くの人々がバスドラムに分厚いプラスチックのヘッドを用いていて、そうすると音の長さが短くなる。でも僕は、薄いヘッドを使うのが好きで、バスドラムのなかにもタオルを入れず、マフリングをしない。だから響くんだけど、ヘッドを緩くチューニングすることで、長くは響かないようにしている。段ボール箱をビルの上から落としたみたいな、「ドンッ」という感じの音。そのバスドラムの音が、僕の一番の特徴かな。

あと、マイクをスネアとバスドラムのちょうど間に置くのが好きなんだ。それがメインのマイクになる。他にもマイクは置くよ。スネア、バス、オーバーヘッドにも立てる。でも、そのバスドラムとスネアの間に置くマイクがメインで、最も音を拾っている。あと、ドラムにはあまりコンプレッションを掛けない。ほんの少し掛けるだけで、代わりにオーバードライブを掛けて歪ませている。だから半分クリーンで、半分歪んでいる。というのも、ドラムの音をライブで聴くと、耳が自然と歪みを加えるから。そういう生のエネルギーを伝えたいんだ。

―そういうドラムの鳴りについて、ロールモデルにしてきた演奏家は?

ルイス:トニー・ウィリアムス、キース・カーロック、あとは(新作にも参加している)ネイト・ウッドの影響も大きい。ネイトはドラマーとしても最高だし、ソングライターとしても素晴らしい。僕が歌うようになったのは彼の影響も大きい(笑)。アグレッシブなサウンドと言う意味では、その辺かな。





努力を惜しまないこと、曲を作り続けることの意味

―あなたやKnowerの楽曲は、InstagramやYouTubeで多くの人たちにカバーされています。自分の曲が他人に演奏されること、共有されることについてはどう考えていますか?

ルイス:凄くクールだと思う。褒められているようで、見つけると嬉しくなる。誰かがカバーしてくれたり、曲に合わせて演奏してくれたりするのはありがたいと思うよ。

―特に気に入ってるカバー動画は?

ルイス:ドラムのカバーで凄いのがいくつかあった。マイク・ミッチェルやStixx Taylor(Devon Taylor)がノウワーの曲を演奏しているんだけど、彼らはあり得ないくらい巧くて、僕には到底できないことをやっている。彼らのドラムは完全にぶっ飛んでいるね。それと、名前を忘れてしまったんだけど、ある男性が、「After the Load Is Blown」をアカペラでカバーしている動画もよかったね。




―先日、ドミ&JD・ベックにインタビューをしたとき(後日掲載予定)、「ルイス・コールは自分たちの音楽にとって母親のひとり」と語っていました。2017年にドミと共演していましたが、彼らとの交流について聞かせてください。

ルイス:彼女がノウワーのライブを観に来たことがあって、終演後にジェネヴィーヴも交えて会ったんだ。あとで彼女が演奏するのをオンラインで見て、「へえ、ピアノがすごく巧いんだな」と思った。それからしばらくして、彼女がLAに来たとき、僕たちの家に泊まったんだ。それが2017年だった。そのとき一緒にハウス・ショーをやったんだけど凄く楽しかった。それから何度か共演しているけど、あのときが初共演だったね。

2人とは最近もメッセージでやりとりをした。彼女たちはアルバム、僕もシングルを出したところで、お互い「グッジョブ!」って送りあった。今は大人になりつつあるけど、出会った時はまだ本当に若かったからね。成長真っ只中の時期だったから。



―ドミとJD・ベックは、自由でクリエイティブな制作のためには練習や研究、楽曲の分析など、日々の努力が重要だと語ってました。あなたも努力の人だと思いますが、自分の音楽活動において「練習」はどんな意味をもっていますか?

ルイス:僕に与えられた才能でいうと、もちろん音楽的な感性にも恵まれたと思うけど、一番の才能は、努力を惜しまない能力と、努力に対する貪欲さだと思う。ビル・エヴァンスも、あのレベルに達するまでに努力したと語っていたから、やっぱり努力こそが与えられた最大の才能なのかもしれない。熱心に取り組む意欲にも恵まれて、毎日練習し、曲作りをすることにもやりがいを感じているからね。僕は自分の音楽を前進させることに時間のすべてを費やしている。そうするのが好きだから。そう思えることは幸せだし、ありがたいことだよね。

―レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテは、若い頃にギターを1日15時間も練習していたそうですが、あなたもそんなふうに練習していた時期があったりするのでしょうか。

ルイス:15時間はさすがにないかな(笑)。それが自分の肉体にとって健全なのかもわからない。2018年〜2019年にかけて、1日に4〜5時間くらい練習していた時期があった。自分にとってはそれが究極だね。ドラムをそれだけ長く練習するのはイカれている。でも、それが役に立った。あのときの僕に必要だったんだ。

今は毎日45分、週に5日。それが僕には合っている。自分が前進していると感じられるんだ。ただ最近は、ノウワーの新しいアルバムのミキシングに取り掛かっているから、そっちに時間が取られているけどね。



―そんなにドラムを練習しているなら、普通はドラマーとしての活動に専念しそうなものですが、あなたは一方で大量のストックもあるくらい、ずっと曲を書き続けているわけよね。そもそも何のために曲作りをしているのでしょうか?

ルイス:曲を作り続けることで、音楽を通して感情や想いを伝えることができる。僕は強い気持ちを音楽で伝えることが何より好きなんだ。そして、演奏スキルが上達すればするほど、そういう想いをより明確に表現できるようになる。それに何より、僕が音楽を作る理由は、それが地球上に僕自身が存在している意義だと思っているから。そもそも音楽を作ることが、僕の一番好きなことだからってのもあるよね。

―演奏することよりも、曲を書くことのほうが好き?

ルイス:もし分けなきゃいけないとしたら、そうなるね。僕が一番好きなのは、新しい音楽を生み出すこと。自分の存在意義を全うしていると感じられる瞬間だから。

ビッグバンド哲学、来日ツアーに向けて

―最後に、ビッグバンドについても聞かせてください。新作の7曲目「Falling in A Cool Way」は、パンデミック前からライブで演奏していましたよね。様々な場所でホーンセクション入りの編成で演奏され、あなたのライブアルバム『Live 2019』にも収録されていました。

ルイス:この曲のビートはかなり古いんだ。もともと2014年にノウワー用に書いたんだけど、結局ノウワーで使うことなく寝かせたまま、たまにライブでホーンセクションを交えて演奏していた。その演奏が凄くよかったので、ライブアルバムにも入れることにしたんだ。




―『LIVE 2019』『Live Sesh and Xtra Songs』などでビッグバンドの音源を発表していますし、世界中でビッグバンドのライブも行っていますよね。ビッグバンドというフォーマットのどんなところに惹かれていますか?

ルイス:あれだけの人数がステージにいて、みんなで演奏するというのが魅力だね。物凄く迫力があるし、他にはないエネルギーがあるところが好きなんだ。それに、ホーンセクションの音が昔から好きだし、ビッグバンドというセットアップで、何か新しいことができると思った。だから、アレンジも作曲もやりながら凄く刺激を感じるんだ。

―「When Youre Ugly」などの曲はビッグバンドとの相性がいいですよね。もしかしたら作曲する時点ではホーン・アレンジで考えていたのを、あとでシンセに置き換えたりすることもあるのかな、と思ったりしたのですが。

ルイス:「When Youre Ugly」や「Doing the Things」なんかは前もってホーンを入れようと思って書いたけど、他の曲はホーン入りの編成で演奏できるようにアレンジを書き換えないといけなかった。他にもホーンセクション用に編曲を試みたものの、上手くいかなくて、ライブでやるのを断念した曲もあるよ。




ノウワーとWDRビッグバンドの共演動画、バンドの初期楽曲をWDR首席指揮者のボブ・ミンツァーが編曲

―南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校に通っていた頃、ビッグバンドに参加したり、スコアの作編曲について学んだことはありますか?

ルイス:スコアはそんなに勉強しなかったけど、たくさん聴いたよ。ギル・エヴァンスやチャールズ・ミンガスをよく聴いた。あとは高校時代に、僕の父親が学校の課外授業のバンドを指導していて、ホーン・アレンジをやっていて、かっこいいギル・エヴァンス風のアレンジを持ってきたりするんだ。そのバンドにも僕は在籍していた。それが今につながっている部分はあると思う。

―ギル・エヴァンスやチャールズ・ミンガスは、どういうところが好きですか。

ルイス:ギルの書く音楽はとにかく美しく、深みがあると思う。その場の雰囲気をガラっと変えることができて、まるで魔法みたいに引き込まれる。個人的には、マイルス・デイヴィスと一緒にやっていたときが真骨頂だと思うけど、他の作品もいいよね。彼のクランチーな音を聴かせるアレンジが好きだ。

―ギルのオーケストラには、フレンチホルンやチューバが入っていたり、普通のビッグバンドの編成とはかけ離れた部分もありますよね。

ルイス:その通り。彼のそういう面も好きなのは間違いない。チャールズ・ミンガスも独特のオーラを放っていて、これまた従来のホーン・アレンジの決まりを完全に無視している。そんなのどうでもいいと思えるくらい、生命力を感じるところが好きだね。




―12月の来日では、日本人のミュージシャンと共演するそうですね。その場合は日本のミュージシャンにもおそろいの衣装が用意されるのでしょうか?

ルイス:みんなのためにスケルトン・スーツを買って用意してあるよ(笑)。だから準備万端だ。

―サイズも揃えたんですか?

ルイス:フリーサイズだから、誰が着てもダボダボなんだ。見た目的にも面白くていいと思うよ(笑)。





ルイス・コール
『Quality Over Opinion』
発売中
国内盤CD:歌詞対訳・解説付き、ボーナストラック1曲収録
日本語帯付きLP、Tシャツ・セットも発売(数量限定)
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12961


LOUIS COLE BIG BAND
JAPAN TOUR 2022
サポートアクト:ジェネヴィーヴ・アルターディ

2022年12月5日(月)名古屋CLUB QUATTRO *追加販売決定
2022年12月6日(火)大阪・梅田CLUB QUATTRO *追加販売決定
2022年12月7日(水)東京・渋谷O-EAST *SOLD OUT
2022年12月8日(木)東京・神田SQUARE HALL *追加公演

追加公演チケット詳細:
★10/25(火)午前10時~イープラス最速先行(抽選)受付開始
購入ページ:https://eplus.jp/louiscole/
※受付期間:~10/30(日)23:59
★11/5(土)一般発売開始

イベント詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13100

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