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ZOMBIE-CHANGのメイリンが語る、BPM速めのビートに惹かれる理由

Rolling Stone Japan / 2022年11月3日 18時0分

ZOMBIE-CHANG(Photo by Naoki Usuda)

メイリンのソロプロジェクト、ZOMBIE-CHANG(ゾンビーチャング)。2016年のデビュー以降、ジャンルに捉われないオリジナリティ溢れる音楽性の背景には、クラブミュージックへの傾倒があった。5thアルバム『STRESS de STRESS』ではさらにその表現を研ぎ澄ませ、変幻自在なサウンドを完成させた。

※この記事は2022年6月発売「Rolling Stone Japan vol.19」に掲載されたものです。

ガバキックが好き
 
ーダンスミュージックにハマったきっかけは?

メイリン 理由はわからないんですけど、一時期、クラブによく遊びに行っていたときがあって。バンドのライブの雰囲気とは違って、全然知らない音楽でも勝手に音を感じて皆がフロアで踊ってる。その曲を知ってる、知らないにかかわらず、みんなで踊れるっていうのが大前提で、恥ずかしいから踊らないみたいな人はほとんどいないんですよね。そのフロアだけは自由な空間で、人種も問わず踊れるというか、言葉がなくてもコミュニケーションを取れる。そこに魅了されました。もともと自分でパソコンのAbletonとかでエレクトロニックミュージックを作っていて、それを深掘りしていったらクラブミュージックにたどり着きました。あとはYouTubeで、例えばBoiler Roomを見てると、自分の好きな音楽がどんどん関連で出てくるんじゃないですか。そういうところから広がっていったりして。去年の緊急事態宣言中は、家でトランスやゴアトランスを爆音でかけてたんです。ゴアトランスに一瞬すごいハマって、BPMが150から180の曲から、どんどんハードコアになって、200のガバにもハマりましたね。



ーBPMが速い曲を求めてたのはなんでなんですかね?

メイリン たぶんなんですけど、私、心拍数が高めなんです。130以下だと、眠くなっちゃうんですよ。なので、140くらいからの方が楽しく踊れたりする。それが何を求めてたかは分からないですけど、眠くなるのはあまり好きじゃなかったんですかね(笑)。もう130以下のものは許せないみたいな気持ちで。今回のアルバムは音で発狂してます。

ーそこにはどういう衝動があるんでしょう? 怒りとか?

メイリン 怒りとか、ストレスというか。私の根本的な性格で、これは嫌だなって思うことをあんまり言えなくて。まあ、最終的に言ってしまうんですけども。そういうことを人に遠回しに伝えたいっていう心の葛藤みたいなものが、常に作品を作る上でのテーマとして一貫してある。今まで作った作品も、美しいことを歌いたいとか、人への愛を歌いたいとかはほとんどなくて。動物への愛はありますけど、人への愛を歌いたいって気持ちは根本的になく、どう文句を言おうかみたいな(笑)。いかにして相手に不快な思いをさせないように、文句を伝えるかみたいなものがあります。

ー好きなDJとかいるんですか?

メイリン ガバにハマったときは、「Casual Gabberz」っていうフランスのレーベルかな。Bandcampにもあるんですけど。それはハマりました。あとはBoris Brejchaとか。


アルバム『STRESS de STRESS』について

ー『STRESS de STRESS』のなかで一番チャレンジングだった曲は?

メイリン 「Stress」です。キックを今までにないくらい作り込んで。ガバキックとは何ぞや、というところから始まり、ローとハイとミドルの部分をレイヤーして、ハイの部分はどれくらい削って、ローの部分をどれくらい足すかとか、細かい作業を繰り返して、うーんどうだろうっていうのを、何日もかけてやりましたね。単純に、私がガバキックがすごく好きで。ガバキックって一言で言ってもいろんなものがあって、自分のオリジナルのガバキックを作ろうとすると、もう楽しくてしょうがなかった。ガバはキックがメインの音楽だと思うので、丹精込めて練り上げた感じです。



ー僕の世代で言うと、ガバといえばデジタル・ハードコアみたいなのを連想するんですが、BPMがとにかく速くてスラッシュメタルばりのバスドラの乱打というか。

メイリン (笑)パンクと近いのかなともすごく思います。結局、私はそういうハードコアな、というかBPMが速いものが好きなのかなって。パンクも速いじゃないですか。それで整頓されてるというか、カッコいいですよね。

ーバンドの皆で「せーの!」で音を出すのとは違って、キック含めてトラックのディテールにいくらでもこだわることができるし、さらに自分のボーカルも入ってくるとなると、一人だと無限にやりたいことができますね。

メイリン だから今は歌は割とどうでもいいというか。曲そのものに一応意味とか筋書きはあるんですけど、意味のないことを歌うのは私はちょっと違うなと思っていて。トラックでいかに満足できるかを考えることが今は多いです。

ー『STRESS de STRESS』でも「歌がここでようやく入ってきた」っていう展開の曲もありますよね。

メイリン 私の性格なんだと思います。長年アルバムを出してきて、いつの間にかインストになってるバンドって結構あって、最終的にそこに行きつくんだろうな、とは私もすごく思うんですけど、まだそこには行かないでおこうみたいな気持ちは少なからずある。やっぱり作るからには歌を聴いてもらいたいし、あまりにも全部が変わっちゃうと、え、何これ? どうした?ってなってしまうかなって。

ー歌にフォーカスしようと思えばできるけど、今はそういう作り方じゃない。

メイリン そうですね。もう確実に。性格的に何かやれって言われると一発目に「嫌だ」って言葉が出てきて、否定したくなる性格なので。例えばお仕事で「キー高めに歌って」みたいなことがよくあったので、そういうものへの反抗でもあるんだと思います。

ーそういうところはパンクマインドが息づいてる。

メイリン もう性格なのかもしれない(笑)。

ーそう考えるとダンスミュージックって懐が深いですよね。歌があっても無くてもどっちでもいい。

メイリン 柔軟ですよね。そこはすごく優しい世界だなと思います。

ークラブイベントに出演する機会も増えてきていると思いますが、これからの活動はどうして行きたいですか?

メイリン コロナ禍ではヨーロッパツアーが中止になったりしたので、ヨーロッパツアーやフランスでもまたライブがしたいですね。オンラインでいろんなことができるようになったので、ある程度稼げるようになったら活動の拠点も日本じゃなくてもいいのかなとは思います。なので、そのために頑張りたいですね。楽曲提供とか、トラックを作ったり、そういう仕事が多くなればいいなと思います(笑)。

ーメイリンさんのこだわりのガバビート、実際にライブで体感してみたいです。

メイリン 私もライブしないでお客さんとして聴きたいです。フロアに行きたい(笑)。




『STRESS de STRESS』
ZOMBIE-CHANG
Roman Label / BAYON PRODUCTION
発売中

ゾンビーチャング
2016年に1stアルバム『ZOMBIE-CHANGE』、2017年3月には2ndアルバム『GANG!』、2018年に3rdアルバム『PETIT PETIT PETIT』をリリース。フジロック・フェスティバルへの出演、初のツアーを国内3都市と、中国、台北、香港のアジアツアーも決行。ザ・ウィークエンドが、自身で選曲したApple musicのRadio Program「beats1」に「イジワルばかりしないで」を選曲、またInstagramの告知ティザーのBGMでも使用され大きな話題に。2019年6月にはフランスで開催される音楽フェス「La Magnifique Society」に出演。9月には『PETIT PETIT PETIT』をUKのレーベル「Toothpaste Records」よりVinylでリリース。音楽プロジェクト以外にも、モデル、執筆業などでも活動中。

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